今回のイチ押しは珠玉の夫婦ドラマと、久々にじっくり楽しめたホラー映画。
このギャップがなんとも・・・
今度は愛妻家 | 監督:行定勲 | 出演:豊川悦司、薬師丸ひろ子 | |||
2009年 日本映画 | |||||
今週のイチ押し:北見俊介は売れっ子のカメラマン。女癖が悪く、いい加減な性格ではあるが写真の腕は確かだ。彼は昨年のクリスマスに妻のさくらと沖縄旅行に出かけて以来、仕事をやめて自堕落な生活をしている。そんな俊介にさくらは口うるさく注意をするが彼は聞く耳を持たない。そんなある日、俊介の元に女優志望の蘭子がやってくる。オーディション用の写真を撮ると呑みの席で約束をしていたのだ。友達と旅行に出かけるというさくらを追い出して蘭子を家に招き入れた俊介。しかし、運悪くさくらは電車に乗り遅れたと家に戻ってきてしまう。そんな俊介にさくらは愛想を尽かして、家を出ていってしまう。いつまでたってもさくらは帰ってこない。最初は独身生活を謳歌していた俊介もだんだん不安になっていく。そんな時、さくらを訪ねて若い青年が訪ねてくる。彼はさくらの元教え子で、ふたりは文通をしていたのだ。俊介の不安はさらにヒートアップ。この家に出入りしているオカマの文ちゃんは、そんな俊介を心配している。しかし、突然さくらが戻ってくる。大喜びの俊介だったがさくらは俊介に離婚を言い渡す・・ | |||||
私評:ねぇ、最後に写真を撮ってよ・・・・驚きのドラマでした。上に書いたシノプシスの後にとんでもないどんでん返しが待っています。それは主演の豊川悦司がささやく一言。思わず「えっ??」って自分の耳を疑ってしまった。とにかく前半はコメディタッチで場内は爆笑の渦。ところが途中で作品は全く違う方向に動き出します。そして後半はもう涙涙・・・。なんだかとても温かいドラマなのですが、やはり愛する人との”別れ”のシーンは辛いですよね。できれば後半について思い切り語りたいのですが、それは私が受けたあのショックをネタばれしてしまう事なのでここには書きません。誰かこの映画を観た人と、心行くまでネタばれトークをしたいです。主演は「愛の流刑地」「椿三十郎」の豊川悦司。彼って演技が下手なイメージがあるのですが、今回は(たぶん行定監督の演技指導が良かったのでしょう)めちゃめちゃ良かったです。チャランポランなのですが、妻に見せた最後の愛情表現。素晴らしかった。さくら役は「うた魂」の薬師丸ひろ子。彼女の演技は完ぺき。今回はちょっとだけドジだけど、一生懸命に俊介を愛そうとする妻を好演。その他、「彼岸島」の水川あさみ、そして登場シーンで場内が大爆笑だったオカマ役は「20世紀少年」の石橋蓮司。監督は「ひまわり」「世界の中心で愛をさけぶ」の行定勲。最近の彼の映画は大味な感じがしていたのですが、久々に彼らしいしっかりしたドラマを観られました。 | |||||
エクトプラズム 怨霊の棲む家 | 監督:ピーター・コーンウェル | 出演:バージニア・マドセン、カイル・ガルナー | |||
The Haunting in Connecticut | 2009年 アメリカ映画 | ||||
今週のイチ押し:ガンを患っている息子マットのために、長い距離をドライブするサラ。彼女は息子が通うコネチカットの病院の近くに家を探したいと思っていた。そんな彼女が偶然発見したのは破格値の「その家」だった。曰く付きの家ではあったがサラはその事を自分の胸にしまいこんだ。しかし、この家に着いたその日からマットの身に不可思議な事が起こり始める。マットは導かれるかのように自分の部屋に地下の一室を選んだ。その部屋には開かないドアがあった。そしてマットを襲う数々の幻覚。それはガンの治療の薬による副作用なのか??そんなある日、突然開かずのドアが開いた。そしてこの家が葬儀場で、その部屋で死体防腐処理が行われていたことが明らかになった。この家には何かがあると感じたマットと従姉のウエンディはこの家について調査を始める。そしてウエンディはかつてこの家で降霊会が行われていた事を示す記事を発見するが・・ | |||||
私評:これは「まぶた」だよ。人間の・・・・また、ホラー映画をイチ押しにしいますが、この映画は私の好きなホラーという題材を置いといても面白いっす!劇場では予告編は一回も観てないし、WEBの公式サイトもなんだか手抜きの作品だったので、あまり面白くないのかな〜・・と思っていたら、これが大きな嬉しい誤算でした。というか、めちゃめちゃ面白いホラー映画でした。最近流行のスプラッターな映像はほとんどない、言わば正統派スリラー映画なのです。こういう家にまつわるホラーだと「悪魔の棲む家」という名作がありますが、今回の映画も「実話」という点で一緒なのです。とにかくこういう映画は映画館で見て欲しい!今回は家のきしむ音や、どこからか聞こえてくる不気味な物音が場内を駆け巡る。そして最後にとんでもない展開になるのですがこれが実話ならすごい事です。本当に最後の最後まで、しかも映画の隅々まで楽しめました。主演は「サイドウェイ」「キャンディマン」のバーニア・マドセン。マット役はTVシリーズ「ヴェロニカ・マーズ」で大人気のカイル・ガルナー。監督はこれが長編デビューとなるピーター・コーンウェル。 | |||||
バンデイジ | 監督 : 小林武史 | 出演:赤西仁、北野きい、伊藤歩 | |||
Bandage | 2010年 日本映画 | ||||
1990年代の日本はバンドブーム真っただ中。高校生のアサコは親友のミハルの勧めで「LANDS」というバンドのCDを聞き、すぐにファンになってしまう。ミハルとふたりで出かけた「LANDS」のライブでアサコはバックステージに潜入し、彼らと接触する機会を得た。アサコの事を気に入ったボーカルのナツは、彼女をLANDSの練習場に連れていく。アサコはマネージャーのユカリに追い出されてしまうが、ナツはそんな事ではめげない。体調不良になったユカリの元にアサコを走らせ、ユカリの替わりにLANDSのマネージャーを務めさせた。そしてアサコは深くLANDSに関わっていく。そんな時、ナツが書いた曲「元気」が大ヒットしLANDSはメジャーバンドに上り詰めていく。しかし、メンバーたちは自分たちがやっている音楽に疑問を抱き始める。一方、アサコはナツへの自分の思いが分からず戸惑いながらもLANDSに寄り添っていく・・・・ | |||||
私評:大事に育ててきたバンドですから・・・・Mr. Childrenのプロデューサーとしても有名な小林武史が監督した作品。それゆえにこの映画には音楽への情熱が詰まっている。ナルシスト的な音楽業界の表現や会話が、ちょっとイヤらしい感じもするのですが、逆にリアルで私は好きですね。もちろん、音楽の見せ場もたくさんあるので、さながらライブ・ドキュメンタリーとその裏のドラマを見ているようでした。だけど、それだけで終わらないのは脚本を「スワロウテイル」「リリィ・シュシュのすべて」を監督した岩井俊二が手掛けている事。(この2作品では小林武史は音楽を担当)ここで映画としてのクオリティがぐっと高くなっているのです。主演は初の映画主演となったKAT-TUNの赤西仁。まあ、演技はともかく不器用な男役は彼には合っていたと思います。アサコ役は「幸福な食卓」「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」の北野きい。彼女は確実に進化しています。冒頭にサッカーボールを蹴るシーンがあるのですが、めちゃめちゃカッコいいです!その他、若手の俳優たちが良い演技でサポートしています。そして私が注目したのがマネージャーのカオリを演じた伊藤歩。岩井俊二映画ではお馴染みの彼女ですが、綺麗になりましたよね〜。そしてゲストで登場するチューリップの財津和夫が・・・!!主題歌の「BANDAGE」もすごくお気に入りです。 | |||||
サロゲート | 監督 : ジョナサン・モストウ | 出演:ブルース・ウィリス、ラダ・ミッチェル | |||
Surrogates | 2009年 アメリカ映画 | ||||
近未来、世界は自分の身代りのロボット「サロゲート」で溢れていた。それは自分が自宅に居ながらして、遠隔操作でロボットを操るシステム。外での危険はサロゲートが受けるだけなので人類は平和になり、殺人事件など皆無になっていた。しかし、そんなシステムに反旗を翻す人権擁護団体もあった。そんなある日、FBI捜査官のトム・グリアは相棒のジェニファー・ピータースとある事件の現場に立ち会った。そこには眼球が破壊された2体のサロゲートがあった。一体は身元の分からないタキシードの青年。そしてもう一体の若いブロンドの女性のオペレーターの元を訪ねたふたりは、脳を破壊され死んでいる「男」の遺体を発見する。サロゲートを壊しても人体には被害はないはずなのに・・??前代未聞の事件は秘密裏に調査が行われた。そんな時、タキシードの青年のオペレーターの身元が判明する。彼はサロゲートを発明したライオネル・キャンター博士の息子だった。博士はサロゲートの販社VSIの創設者のひとりだったが、7年前に職を解かれ公の場からは姿を消していた・・・・ | |||||
私評:生身の君が欲しいんだ・・・・近未来はこんなことも可能になるのかもしれませんね。しかし、先日見た、『アバター」もこのサロゲートも人類は「自分」という「殻」を捨てて、ヤドカリのように外身だけを変える事によって見た目の格差をなくしたいのかもしれませんね。しかし、遠隔操作のロボット同士ではできないのが、真に愛する人間同士の触れ合い。「それを無くしてしまってもいいの?」というのがこの映画のそこにあるテーマだと思いました。SF映画としてはすごく面白い題材だし、しかもアクションシーンもふんだんに盛り込まれ、時間はたったの89分。お気軽に映画を楽しむには最高の一本かもしれません。まあ、観終わった後に、なんにも残りませんが・・・。主演は「ダイ・ハード4」で再びアクション映画に復帰したブルース・ウィリス。今回の捜査官役が、私はジョン・マクレーンに見えてしまいました(笑)。ジェニファー役は「メリンダとメリンダ」「サイレントヒル」のラダ・ミッチェル。そしてキャンター博士役で「ブッシュ」のジェームズ・クロムウェルが登場。監督は「U−571」「ターミネーター3」のジョナサン・モストウ。こういう限りなくB級に近い大作を撮らせたら、彼の右に出る者はいません! | |||||
かいじゅうたちのいるところ | 監督 : スパイク・ジョーンズ | 出演:マックス・レコーズ、キャスリン・キーナー | |||
Where the Wild Things Are | 2009年 アメリカ映画 | ||||
マックスは8歳の男の子。最近は不満がいっぱいだ。お姉ちゃんのクレアは自分の友達とばかりつるんでいて遊んでくれないし、ママは仕事に家事、そして恋に忙しい。大好きだったパパは離婚してもういない。そんなある日、マックスの不満が爆発してテーブルの上で暴れ始める。怒るママを尻目にマックスは家を飛び出していった。見知らぬ浜辺には一艘のボートがあり、マックスは海原へと漕ぎだした。そしてついに見知らぬ島へと辿り着いた。そこにいたのは見た事もない大きな体のかいじゅうたち。突然現れた人間の子供にかいじゅうたちも驚きを隠せない。とっさに考えた作り話でかいじゅうたちの気を引いたマックスは彼らの王様になった。そして命令を下す。「かいじゅう踊りをはじめよう!!」みんなで過ごした楽しい時間。そしてかいじゅうのリーダーキャロルは「ずっと王様でいてくれ」とマックスに話す。しかし、幸せな時間は長くは続かない。かいじゅうたちからマックスに不満の声が上がり始める・・・・ | |||||
私評:じゃあ、喰ってやる!!・・・世界的に有名な童話だそうですが、私は全く知りませんでした。昨年から何度となく劇場で見てきた予告編を観ていて、「なんだか不思議な映像だな〜」と気に留めてきたのですが・・・。この話は決して子供向けの童話ではない。しかし、私は主人公のマックスがただの我ままなガキにしか見えなくて、まったく感情移入ができずじまい。異形のかいじゅうたちも、なんだか・・ねえ〜・・・(以下、自粛)そんな中で私が目を付けたのが音楽です。この映画の音楽が実にすばらしい!特にカレン・Oのハミングの歌、最高です。主演のマックスを演じるのは(本名も)マックス・レコード君。そして彼の母親役は「ザ・インタープリター」のキャスリン・キーナー。そしてかいじゅうたちの声を担当するのは「アダプテーション」のクリス・クーパー、「サブウェイ123」のジェイムズ・ガンドルフィーニ、「ラスト・キング・オブ・スコットランド」のフォレスト・ウィテカー・・とう超豪華な顔ぶれ。監督は「マルコヴィッチの穴」のスパイク・ジョーンズ。 | |||||