2001/11/5号

映画祭の合間を縫って劇場にも足を運びました。
来年公開のD・リンチ作品をいち早く見てきました。最高です!

マルホランド・ドライブ  監督 : デヴィッド・リンチ  出演 :ナオミ・ワッツ、ローラ・ヘレナ・ハリング
Mulholland Drive  2001年 アメリカ映画  
マルホランドドライブを疾走する1台の車。車は突然停まり、運転手は後部座席の女に銃口を向けた。その時、もう1台の車が猛スピードで突っ込んできた・・。女はやっとの事で車から這い出し,よろよろと夜の街を歩き続けた。そして1軒の高級アパートにまんまと忍び込んだ・・。ベティは女優を夢見てハリウッドにやって来た。叔母が手配したアパートの中には、なぜかもう一人の女が・・。彼女は事故のショックで記憶をなくしてしまったのだ。リタ・ヘイワースのポスターから名前を拝借し,彼女はリタと名乗る。2人は協力し,リタの正体を探し始める・・・。
私評:Welcome to the Lynch World ・・・・。久々にリンチらしいアヤシイ映画を見ました。前作の「ストレートストーリー」は良い映画だけど、アレはリンチのスタイルではないですよね。今回は謎が謎を呼ぶミステリー仕立て。彼のツインピークスにはまった人にはきっと楽しめるでしょう。続々と登場するアヤシイ登場人物たち。TP同様に捨石のような使われ方の人がいっぱい。というのは、メッチャアヤシイのに、全然メインのストーリーに絡まず,結局なんだったの?って感じの人たちです(笑)。映画のプレスシートに載っている登場人物の顔写真は実に34。しかし、映画を見終わった後,全ての顔を覚えているというのも、リンチのすばらしい演出のおかげなんでしょうね。また、音楽はいつものアンジェロ・パダラメンティ。(今回は映画に出演もしています) これがまた、TPによく似ているんです。こんなにエロチックで,ミステリアスで、そして不可解な映画を見たのは久しぶりでした。主演のナオミ・ワッツは映画の中で色んな顔を見せてくれる。最初の登場シーンの晴れやかな顔、女優としての顔、そして娼婦の顔・・・。また、ローナと好対照なところが良いのでしょうね。そのローナは見るからに肉感的で・・・。しかし,この2人の女優の体当たり演技がこの映画の一番の見所と言って良いかも??
 リリィ・シュシュのすべて  監督 :岩井俊二   主演:市原隼人、忍成修吾、伊藤歩
All About Lily Chou Chou  2001年 日本映画
1999年、13歳の夏。雄一にとっては最高の夏だった。同じクラスになった星野と友情を育む。そして彼は久野陽子を教えてくれた。そして剣道部の仲間と沖縄行きを計画する。秋葉原で不良がカツアゲした金を盗む事に成功。4人のバカンスが始まった。しかし,星野は2度も命を落としそうになる。しかも旅で知り合った青年の死を目の当たりにする。夏休みが終わり,新学期。クラスの不良を蹴り倒して以来、星野は豹変してしまう。そしてどんどん不良の道を歩む星野は雄一を苛めのターゲットに据えた。2000年、14歳。相変わらず雄一は星野の奴隷のようだった。そして雄一は幾つもの悲劇を目撃する。彼のただ唯一の逃げ場は,彼が主催するリリィ・シュシュのファンサイトだけだった・・・。

私評:14歳のリアル・・・。イジメ、恐喝、万引き、売春・・・14歳のリアルってこんな世界なのでしょうか?今の14歳は私の14歳の頃より、かなり進化している。しかし、ある部分ではすごく子供に思える。この映画のシーンでも、思わず嫌悪感を覚えるようなシーンがけっこう出てきます。それはあくまでも映画の中だけの世界なのかもしれませんが、イジメシーン、レイプシーンの彼らには「心」がないです。まあ、そんな少年たちと交流の場を持たない私は、彼らを呼び出して説教をするつもりは毛頭ないですが、あまり「リアル」であって欲しくないね。そういった,嫌悪感さえ感じるシーンがあったりするのに、映画を見終わった後のあの何とも言えない不思議な快感は一体なんだったのか?これが岩井俊二のマジックなんです。きっと、この映画の14歳の表面的な行動には,面食らっていた私も、心のどこかで主人公の雄一に同調する部分があったのかもしれない。今,思えばあの頃はメッチャ楽しかったはずなのに、どこかに孤独感を抱え、そしてどこかに絶望感も抱えていた。それは日常の不安であり、どうにも押さえる事ができない衝動であったり・・・。ある部分では,すごく進化している今の14歳も、ある部分ではあの頃の私より遥かに幼稚で、またある部分では共有する感情を見出す事ができた。生涯の中でも一番センシティブな時代だからこそ、傷つきやすくて、しかも暴走しやすい。だからこそ、心に妙なものが残ったのでは??この映画について書こうと思うと、けっこう膨大な量になってしまいそう・・・。 
ピストル・オペラ  監督:鈴木清順  主演:江角マキ子、山口小夜子、韓英恵
Pistol Opera  2001年 日本映画
ピストルを恋人のように愛する殺し屋ナンバー3、通称野良猫は謎の殺し屋組織「ギルド」のエージェント、上京から連絡を受けては,仕事をこなしていた。彼女の手際の良さは殺し屋の仲間の中でも、一目置かれていた。ある日,上京からランキングナンバー1の通称「百目」を殺せという命令を受ける。しかし、誰も百目の顔を知らない。そして逆に百目に追い込まれて行く野良猫。最後の決闘の場所は世界恐怖博覧会の会場だった・・・・。

私評:ちゅうちゅう、たこかいな〜。和服姿にブーツ、そして懐にはピストル。江角マキ子,カッコ良過ぎるぜ〜。それに元来彼女は運動神経が良いのですよね。だから,アクションシーンもすごくカッコイイ。しかし、清順映画っていうのは面白い。かなり,ロケハンもしているのでしょうね。野良猫が住む家、美しい森、そしてすごい階段のある壁。それらのカメラへの収め方が実にユニークで、しかもカッコイイ。セット撮影はもう,彼のお手のものですからね。極彩色に彩られたセット&照明、桜吹雪、おまけにアングラの怪しいダンサーまで登場。最後はお決まりの楽屋落ち!いやはや,清順ワールドを堪能しました。「ツゴィネルワイルゼン」「夢二」などを面白いと思えた人は、ぜったい楽しめる作品です。最後に野良猫に付き纏う謎の少女役の韓英恵(かん・はなえ)がすごく魅力的。あどけなさの中に妖艶さを備えた彼女は今後が楽しみ。
URAMI 怨み  監督: ジョージ・A・ロメロ  主演:ジェイソン・フレミング、ピーター・ストーメア
Bruiser  2000年 アメリカ映画
ヘンリーは雑誌社に勤めるまじめな男念願がかなって郊外に一軒家も建てるが,内装が途中でとにかく働き続けていた。彼の収入の少なさを妻のジャニーンはいつもバカにする。そして友人のジミーは新車のベンツに乗りまわしているのに、ヘンリーの投資には利益をあげてくれない。会社のボスのミロには同僚の前でボロクソに貶され、しかもジャニーンはパーティの席でミロとのお熱い場面をヘンリーに見せつけるのだった。みんなに存在自体を否定され、落ち込みの極致・・。次の日、彼は目を覚まして鏡を見てビックリ。そこには白い仮面が貼りついていて剥がそうにもとれない。本当に顔がない男になってしまったヘンリーに失うものなどもう何もない。怒りのファントムと化したヘンリーは妻に、友人に、そしてミロに復讐を開始する・・・。

私評:ロメロ・イズ・バック!!ホラーの巨匠ジョージ・A・ロメロが8年ぶりに放った新作映画。どうしても,彼にはゾンビのイメージが強いのですが、今回はホラーテイストを感じさせながらも、サスペンスタッチになっている。しかし、彼の作品に根底にはいつも、社会批判が流れています。今回も心のない,人間として下劣な奴等が台頭し、主人公のような心優しい真面目な男がバカを見る世の中に対する、不満がいっぱい込められていた。日頃,仕事でストレスを貯めている人(もしくは、上司を殺してやろうと考えている人<笑>)は、早まった事をする前に、この映画を見てヒートダウンしましょう(笑)。けっこう見終わった後がスッキリするホラー映画というのも珍しいかも??主演は映画の中では真面目そうだけど悪人顔のジェイソン・フレミング。超・ムカツク,ビッチ妻がレスリー・ホープ。そして実に芸域が広いピーター・ストーメアが、映画を見ながら,首を締めてやりたくなった上司役。これも後味爽快系映画と,敢えて呼ばせていただきます(笑)。


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