2006/7/9

今回はバラエティ豊かなラインナップが揃いました。イチ押しは
フランスの巨匠のオシャレな恋愛映画と、お約束のホラー映画です。(笑)

親密すぎるうちあけ話  監督:パトリス・ルコント  出演:サンドリーヌ・ボネール、ファブリス・ルキーニ
Confidence Trap Tntimes  2004年 フランス映画
今週のイチ押し:美しい人妻アンヌは、セラピーを受けるためにある事務所のドアをノックした。そこで待ち受けていたのは身なりのきちんとした神経質そうな紳士、ウィリアム。アンヌは長椅子に腰掛け、夫との私生活を語り始める。ウィリアムは呆然として彼女の話に聞き入ってしまった。なぜなら、彼はセラピストではなく「税理士」だったから。そうアンヌは部屋を間違えてしまったのだ。その日は自分の素性について何もいえなかったウィリアム。本当のことを話さなければ・・・、だけど、彼女のことがとても気なる・・。そんな葛藤に悶え悩んでいたウィリアムの元に、ふたたびアンヌが訪ねてくるが・・・
私評:「どうやって」じゃなくて「なぜか」を聞いてくれ・・・これぞパトリス・ルコント節。コミカルでリアル、そしてちょっとエロい。私が好きなルコント作品に「髪結いの亭主」「橋の上の娘」があるのですが、ちょっと倒錯した主人公の男の感情にすごくシンパシーを感じた。今回の「親密すぎるうちあけ話」のウィリアムってまさにそんなキャラクターなんですよ。この作品はとそれらと肩を並べる傑作でした。そしてこういう映画に絶対必要なのが「男心をかき乱す」ミューズの存在。今回のサンドリーヌ・ボネールは、そういう意味ではまさに適役でした。うまい表現かどうかは分かりませんが「清楚なエロ」という感じがします。(彼女の「灯台守の恋」も同じようなキャラでした・・)そして絶妙な演技を魅せるのがウィリアム役のファブリス・ルキーニ。完璧です!!こういうオシャレな大人の恋愛映画も、時々見ると良い刺激になります。パトリス・ルコントにはこういう映画をどんどん撮ってほしいですね。
バタリアン4  監督:エロリー・エルカイェム  出演:ピーター・コヨーテ、エイミー・リン
The Return of The Living Dead :Necroplice  2005年 アメリカ映画
今週のイチ押し:アメリカ軍が極秘に開発した「トライオキシン5」はかつてアメリカの小さな町がゾンビで溢れかえるという事件を巻き起こした。軍はこの凶悪な薬物を抹消したと思っていた。しかし、ロシアのチェルノブイリ原発の施設の奥にこの薬品が残っていたのだ。アメリカの巨大企業ハイブラテックは科学者のチャールズをこの地に送り「トライオキシン5」の回収に成功した。高校生のジュリアンは叔父のチャールズに引き取られて暮らしていた。そんなある日、ジュリアンの友人のジークがバイクで転倒し病院に担ぎ込まれた。病院に駆けつけたジュリアンはジークが死亡したと聞かされる。ところがハイブラテックでバイトをしている友人のケイティーから連絡が入り、ジークはハイブラテックに担ぎ込まれるのを目撃したという。ジュリアンと仲間たちはジークを救出するため施設に潜入する。しかし、そこで彼らが見たものは実験用のたくさんのゾンビたちだった・・・
私評:ブレイ〜ン!!脳みそくれ〜!!・・1985年に公開された「バタリアン」はかなり衝撃的な作品だった。スプラッター映画としても強烈だったが、ゾンビと化していく主人公の苦痛が伝わりなんだか悲しくもありました。そして「バタリアン2」は完全な駄作だったのですが「3」は私的にはかなりの名作。バタリアンにならない様に体に痛みを与えて自我を守り通そうとするヒロインが切なくて・・・。おっと、バタリアンについて語ると長くなるのでこの辺で・・。今回の「4」はかなりの低予算で作られているのですが、肝心要のところで金をつぎ込んでいます。それはスプラッターシーン。大出血、頭爆破、内臓ぶちまけ・・、けっこうキモイシーンが多いです。そして施設の奥にいたのは究極のバトルゾンビ??これはけっこう笑えます。主人公の高校生たちはほとんど無名の活きのいい若者たち。そんな中で「E.T.」のピーター・コヨーテが科学者役で登場。しかも、けっこうせこいオッサンの役です。とほほ・・。監督は私のお気に入り「スパイダーパニック」のエロリー・エルカイェム。ちなみに、今年の秋には「バタリアン5」が公開されます。あのタールマンが復活するらしい・・
花よりもなほ  監督:是枝裕和  出演:岡田准一、宮沢りえ、古田新太
 2006年 日本映画

時は元禄。生類憐みの令が発布されたこの時代は、いわゆる天下泰平の平和な時代。貧乏長屋は今日も賑やかな住民たちの声で朝を迎える。その長屋には青木宗左衛門という武士が住んでいた。彼は父親の仇討ちのために信州の松本から江戸に出てきて、すでに3年の月日が経っていた。この男、実は剣の腕がからきしでたとえ仇を見つけても返り討ちにあうのが一目瞭然。しかし、青木にもこの長屋で暮らす楽しみがあった。それは向かいに住む美しい未亡人に抱いているほのかな恋心。実家からの仕送りも途絶えがちで、決して裕福な生活ではなかったが、こんな暮らしもまんざら悪くないと青木は思っていた。そんなある日、仇の金沢という男をついに発見した。しかし、彼には身重の妻と可愛いひとり息子がいた・・・・

私評:桜が散るのは、来年もまた咲くためですから・・・・いいな〜、この映画。まるで山本周五郎の小説のような優しさと温かさを感じる映画。まずはひと癖もふた癖もある長屋の住人たちの会話が最高。歯に衣着せぬ彼らの話が私には痛快。そしてこんな下町人情物語の中に絶妙のバランスで「四十七士の討ち入り」が挿入されているところなんか実に「粋」なんです。そんな彼らの会話を都々逸にすると「どん底(黒澤明監督)」に似ているかもしれませんね。とにかくこの映画はキャスティングが最高です。主演はV6の岡田准一。彼はルックスも良いのですが、役者としての素晴らしい技量を持ち合わせています。今回は腰抜け侍をステキに演じています。未亡人役の宮沢りえはもはや達人の域まできています。今回はちょっとコミカルなシーンもあって高感度がさらにアップ。そして長屋の人々の古田新太、香川照之、田畑智子、加瀬亮、江沢萌子、平泉成などなどに加え、バラエティの上島竜平、千原靖史、木村祐一などがいい感じで入っているし、寺島進、遠藤憲一、中村有志、原田芳雄、石橋蓮司、浅野忠信、夏川結衣という超〜強力な役者陣。そして監督は「誰も知らない」の是枝裕和。肩の力を抜いて、ホッとできる映画です。ちなみにタイトルの「花よりもなほ」は浅野内匠頭の辞世の句。「風さそふ 花よりもなほ 我はまた 春の名残を いかにとかせむ」
サインレントヒル  監督:クリストフ・ガンズ  出演:ラダ・ミッチェル、ショーン・ビーン

Silent Hill

 2006年 アメリカ映画

ローズのひとり娘シャロンは夢遊病で、その都度叫びながら「サインレントヒル」という町の名前を口にした。実はシャロンは養女で、彼女の出生と関連があるのかもしれないと考えたローズは「サイレントヒル」について調べた。そしてその町は実在した。夫の制止を振り切りシャロンと「サイレントヒル」に向かった。その途中、車の前を横切った少女を避けようとしたローズはハンドルに頭をぶつけ気絶してしまう。気がついたローズは、シャロンの姿が消えていることに気付く。そしてひとり「サインレントヒル」の町に辿り着いた。灰が降り続き、静寂に包まれた町でローズはシャロンを探し続ける。また、彼女を追ってこの町に辿り着いた警察官のシビルがローズに合流する。そしてこの町にサイレンが鳴り響いた時、町は姿を一変する。「人間の形に似た」クリーチャーたちがふたりに襲い掛かる・・・・

私評:アレッサはいつだってひとりだった。あの子は魔女・・・何年か前にPS2で「サイレントヒル」のゲームをしたことがあったのですが、これがまたけっこう怖いゲームでした。霧に覆われた町を歩いていると、霧の中から「人間もどき」のクリーチャーが襲ってくる。最初は銃を持たない主人公が棒切れで戦うのですが、これがまたリアルで・・・。映画の中でもこれを髣髴するシーンが出てきます。これがけっこう不気味・・。しかし、従来のホラー映画はヒロインが逃げてばかりなのですが、「サイレントヒル」のローズは娘を助け出す目的のため、どんどん突き進んでいく。これがまた、ドキドキの演出なんですね。最後はちょっと話がデカくなりすぎた感がありましたが、良い感じでまとまったと思います。主演は「メリンダとメリンダ」のラダ・ミッチェル。すごい迫力の演技です。彼の夫役は「フライトプラン」のショーン・ビーン。そして謎の少女アレッサの母親役でデボラ・カーラ・アンガーが登場。そしてシャロン役は現在公開中の「ローズ・イン・タイドランド」で主演しているジョデル・フェルランドちゃん。監督は「ジェボーダンの獣」のクリストフ・ガンズ。けっこうスプラッターなシーンもあります・・・。

ホワイト・プラネット  監督:ディエリー・ラゴペール  出演:北極熊、あざらし、ジャコウウシ、カリブー
White Planet  2006年 フランス・カナダ映画
北極に長い冬が訪れる。メスの白熊は秘密の巣穴の潜り込み2匹の子供を産んだ。小さな命を愛おしげに見守る母親。暗黒の冬の上空では神秘的なオーロラが踊る。春がやってきた。巣穴から子供と一緒に這い出てくる白熊。アザラシの子供を狙う母熊。南方の針葉樹ではカリブーたちが雪をほじくり、餌を探す。彼らは知っている。この後、北極に向かっての長い旅が始まることを。やがて、北極は白夜の季節になった。次々と氷棚が溶け熊たちにとっては餌不足の季節になる。その前に母熊は必死に猟を続ける。やがて北極にも夏が訪れ、ツンドラには様々な生命が息吹く。そしてそれらに導かれるかのようにやってきたのは伝説の鯨イッカク。そして巨大なホッキョククジラも無数のプランクトンを求めて海原を闊歩する・・・・
私評:北極はここ30年でフランスの面積の2倍に当たる氷棚が消滅した・・・北極。そこはまさに地球上のもうひとつの惑星のようだ。暗黒の冬から、春、夏への移行は地球の歴史の縮小版を見ているようにも思えた。そしてそんな厳しい環境でも生物は力強く生き続けている。この映画は彼らと厳しい自然を見事に切り取ったドキュメンタリーです。その圧倒的な美しさの前に私はひれ伏し、そして感動した。この映画を見に行った日、東京はかなり蒸し暑くて仕事後の私はグッタリしていたのですが、この映画はそんな私にとっての一服の清涼剤であり、そして力強く生きる生物たちは私にパワーをくれました。まさに、夏にはピッタリの映画です。そして映画は最後に自然環境への警鐘を我々に訴えかけます。地球の温暖化によって、今世紀中に地球の気温は7から10℃上昇するという。目に見えて小さくなる北極の棚氷は海面の上昇をもたらし、人間にとって危険な状況をもたらすとされている。しかし、それ以上に危険なのは北極に暮らす生物たち。彼らを守るためにも、私たちは今からでも、出来ることがあるのではないでしょうか?? 
明日の記憶  監督:堤幸彦  出演:渡辺謙、樋口可南子、
Memories Of Tomorrow  2006年 日本映画
広告代理店の部長、佐伯はバイタリティ溢れる仕事人間。部下からの信頼も厚く念願の大きなビジネスを取りまとめ、まさに順風満帆。家庭では優しい妻の枝実子とひとり娘の梨恵の3人暮らし。その娘は間もなく結婚する。そんな時、佐伯は体調の不良を感じ始める。そしてこれまでなかった「物忘れ」が激しくなり、大事なアポを忘れてしまったり、人の名前を忘れてしまったりが激しくなる。とりあえず病院で検査を受けた佐伯は、若い医師から病名を知らされ愕然とする。「若年性アルツハイマー」!脳の機能が次第に低下していく病気で治療方法は、現在はまだ見つかっていない。病気は次第に進行していくが、娘の結婚式、優しい部下に見送られての退職、孫娘の誕生と人生の感動的な出来事を、必死に心に刻もうとするが・・・・
私評:生きてりゃ良いんだよ・・・・今、もし自分が「アルツハイマー病」になったらどうなってしまうだろう?きっと、私は全財産を使って施設に入るしかないでしょうね。アルツハイマー病の映画と言えば、昨年大ヒットした「私の頭の中の消しゴム」やジュディ・デンチ、ケイト・ウィンスレットの「アイリス」などがありますが、どの映画にも共通しているのが病にかかった側よりも、その家族やパートナーが大変な思いをするという事。「明日の記憶」でも樋口可南子演じる、佐伯の妻が献身的に彼を支えていく。私はどちらかというと主演の渡辺謙より樋口可南子の役に感動してしまいました。病名を聞かされて取り乱すふたりが泣くシーンは、私ももう号泣でした。そんな辛くて暗くなりそうな時に某登場人物が「生きてりゃいいんだよ!」と高らかに叫ぶ。そうなんだよ。人間は生きてりゃ良いんだよ。後半は私的には、ちょっとテンションが下がってしまったのですが、かなり良い映画でした。主演はいまや日本を代表するハリウッドスターの渡辺謙。実はこの映画で彼は初主演なのですね。妻役は最高の演技を見せる樋口可南子。そしてビックリするほど良い演技を見せたのが、医師役のミッチーこと笈川光博。監督は「トリック」の堤幸彦。


前回の記事も読んでね〜!



I Love Movieに戻る