ペースダウンはしましたが、それでもけっこう観てます(笑)。
今回のイチ押しは驚愕のミステリーとほんわかとした邦画です。
サベイランス | 監督:ジェニファー・リンチ | 出演:ビル・プルマン、ジュリア・オーモンド | |||
Surveillance | 2007年 カナダ映画 | ||||
今週のイチ押し:サンタフェの田舎町で凶悪な連続殺人事件が起こっていた。その事件の捜査のためにFBIからエリザベスとサムのふたりが派遣された。ふたりは地方警察で保護されている3人の殺人事件の目撃者に事情聴取を開始する。ひとりはこの警察署の署員で、事件現場で相棒を殺害されてしまった。そしてコカイン中毒のボビーはBFとあるビジネスを済ませた後に、事件現場に遭遇したのだ。そしてもうひとりは8歳の少女ステファニー。彼女は母親、兄、そして新しい母親のBFとドライブの途中だった。家族を目の前で皆殺しにされ口を固く閉ざしている。エリザベスとサムは3つの部屋に3台のカメラを置き、同時に取り調べを開始する。そして事件の核心が見え始めた時、予想外の犯人が動き始める。果たして真の犯人は??? | |||||
私評:何か悪い物を見たの・・・・この映画は起こった事件の取り調べ中に『嘘の証言』をするふたりと言葉を発しない少女の描く絵のバックで、実際に起こった「事実」が描き出されるという不思議な手法をとっています。黒澤明の「羅生門」と比較されていますが、私はちょっと違うと思いました。ところが・・、途中からとんでもない犯人が浮かび上がり、物語は全然違う方向へと動き出します。この辺りの展開が私はすごく好きです。しかし、さすがは“カルト映画の帝王”「ツイン・ピークス」「マルホランド・ドライブ」のデヴィッド・リンチの娘の作品。気持ち悪いキャラクター、そしてあの独特の”間”が父親譲りです。主演は「インデペンデンス・デイ」「The JUON 呪怨」のビル・プルマン。彼がめちゃめちゃ(イイ意味で)気持ち悪いんです。彼の相棒役は「レジェンド・オブ・フォール」のジュリア・オーモンド(お久しぶりって感じですね)。そして警察署長役で「スキャナーズ」「ターミネーター4」のマイケル・アイアンサイドが登場します。そして驚きの演技を見せるのが、子役のライアン・シンプキンスちゃん。監督は私の大好きな「ボクシング・ヘレナ」以来、14年ぶりに登場したジェニファー・リンチ。 | |||||
食堂かたつむり | 監督 : 冨永まい | 出演:柴咲コウ、余貴美子 | |||
2010年 日本映画 | |||||
今週のイチ押し:倫子はカレーの国の男に騙され、そのショックで声を失ってしまう。祖母が遺したヌカ床と、料理のレシピを持って故郷のおっぱい村に戻ると、子供の頃からどうしてもなじむ事が出来なかった母のルリコが豚のエルメスと一緒に暮らしていた。倫子は庭の片隅にあった物置を改装してちいさな食堂を始めた。お客様は1日1組だけ。決まったメニューはない。そこで食事をした熊さんは別れた妻から電話があり、村の女子校生は片思いの彼とここで食事をして気持ちを通じ合えた。いつしか倫子の食事は願いを叶えるという噂が町に広がった。そんなある日、倫子はルリコが経営するスナックで、衝撃的な事実を知らされる。実はルリコは処女懐妊で、水鉄砲を使って妊娠したというのだ・・。不倫の子供だから倫子と名付けられたと思っていた倫子は愕然。しかし、ルリコがずっと運命の男との約束を守り続けていた事にはもっと驚いてしまう・・・ | |||||
私評:おいしい、おいしいよ・・・・不思議な映画です。フワフワした優しい映画でもあるのですが、妙にシュールなシーンがあったりする。だけど、この映画を見ていると笑顔になっちゃいます。倫子の料理に癒される人々が見せる笑顔、そしてそこに出される本当においしそうな料理の数々。これらを見ているだけで、顔の筋肉がどんどん緩んできます。いちばん美味しそうだったのが「かつおだしのお茶漬け」?ルリコの結婚式の料理と、ラストに倫子が食べる料理はちょっと抵抗があります。その答えは映画をご覧になれば分かっていただけるかと。原作を読んだときは妙に納得していたのですが、実際に映像になると・・・そして要所に置かれた笑えるシーン。特に倫子と豚のエルメス(この豚は某バラエティ番組で人気の”幸子”のお母さんだそうです)の会話はツボでした。主演は映画ごとに新しい顔を見せる「少林少女」「容疑者Xの献身」の柴咲コウ。今回はそばかす顔の冴えない女の子役。ルリコ役は「おくりびと」「ホテル・ハイビスカス」の余貴美子。彼女がまた良いんです・・。その他、ブラザー・トム、三浦友和、志田未来、満島ひかりというキャストは、まさに不思議な取り合わせですが、この映画にはピタリと納まっています。監督は冨永まい。 | |||||
インビクタス 負けざる者たち | 監督 : クリント・イーストウッド | 出演:モーガン・フリーマン、マット・デイモン | |||
Invictus | 2009年 アメリカ映画 | ||||
1994年、ネルソン・マンデラは南アフリカの大統領に就任した。彼がまず着手をしたのは白人の職員たちへの意識づけだった。「皆さんの力が必要だ!」南アフリカは不況、失業、犯罪の増加など多くの問題を抱えていた。それらを解決するためには黒人と白人という人種の垣根を取り払い、一致団結することだとマンデラは確信していた。手始めにマンデラは、黒人で固められていた大統領警護班に白人のメンバーを追加した。そんなある日、マンデラはラグビーの国際試合を観戦した。ラグビーは白人が愛するスポーツで、黒人にとってはアパルトヘイトの象徴であった。事実、黒人の観客は自国ではなく敵国の応援をしている。その時、マンデラはアイデアを思いついた。彼はナショナルチームの主将であるフランソワ・ピナールをお茶に招待した。マンデラは獄中で彼自身を奮い立たせたという「詩」について語った。そしてフランソワはマンデラの真意を汲み取った。それは南アフリカに一番必要とされることだと・・・・ | |||||
私評:こんなに狭い場所に27年間も・・・・これは実際にあった奇跡のような物語です。スポーツ作品では「根性」とか「友情」とかで勝ち進むというのが定番ですが、弱小だった南アフリカのチームは1995年のラグビーワールドカップで本当に優勝してしまう。これは映画にしなくてはいけない題材ですよ。チームや観客という小さな括りではなく、まさに国が一つになった瞬間。昨年、ワールドベースボールクラシックで「侍ジャパン」が優勝した時にも感じた「国が一つになる感動」をふたたび味わった感じです。スポーツってそういう力を持っているんですよね・・・。すごい迫力で描かれるラグビーの試合の映像も要注目です!そんな彼らを牽引したネルソン・マンデラという人物についても非常に感銘を受けました・・。主演のマンデラを演じるのは「ウォンテッド」「ダークナイト」のモーガン・フリーマン。深みのある人間像を見事に演じています。そしてフランソワ役は「ボーン・アルティメイタム」「インフォーマント」のマット・デイモン。監督は齢80歳にしてまだまだ現役「グラン・トリノ」「チェンジリング」のクリント・イーストウッド。彼の作品にしては珍しく?爽やかな映画でした! | |||||
フローズン・リバー | 監督 : コートニー・ハント | 出演:メリッサ・レオ、ミスティ・アップハム | |||
Forzen River | 2008年 アメリカ映画 | ||||
ニューヨーク最北部の小さな町でふたりの息子を抱えながら1ドルショップで働くレイ。新居を買うために溜めてきたお金をギャンブル狂の夫に持ち逃げされショックを受けるが、子供たちの前では毅然とした態度を通していた。ビンゴ会場で夫の車を運転する女性を見つけ、彼女の車を追跡すると彼女はモホーク族の保留地へと入って行った。彼女の名前はライラ。彼女は義理の母に連れ去られた自分の子供といつか一緒に暮らしたいと思っていた。彼女はまとまった金を稼ぐために凍った川を車で渡り、カナダからアジア人の不法移民を密入国させる稼業に手を染めていた。レイもお金に困っているという事を見抜いたライラはレイにパートナーに引き入れた。1回の運びで1200ドルを稼ぎ、レイはクリスマスの夜に再び、ライラとともに凍った川を渡るが・・・・ | |||||
私評:これが最後よ・・・2008年度のサンダンス映画祭でグランプリを獲得した作品です。あのタランティーノが絶賛!この映画を見逃すわけにはいきませんね。ギリギリの環境で子供のためにふたりの母親が犯罪に手を染める。素人丸出しで、しかも協調性もないふたりの仕事は緊張が漲る。極寒の地の、まさに凍りついた夜は、その緊張をさらに増幅させるのです。そしてついに・・・。ラストのレイ、ライラのそれぞれの決断はなんだかむなしくもあるのですが、ふたりの女のあいだに芽生えた「妙な絆」みたいな物が心をくすぐりました。この映画を観ている間中、頭に浮かんできたのが(かなり違うタイプの映画ですが)「テルマ&ルイーズ」。女同士の絆という部分では共通点があるかも??レイ役は「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」のメリッサ・レオ、そしてライラ役はミスティ・アップハム。どちらも華のない女優なのですが、それが妙にリアルで良い雰囲気を出しているのです、監督はこれが長編デビューとなる女性監督のコートニー・ハント。 | |||||
Dr. パルナサスの鏡 | 監督 : テリー・ギリアム | 出演:ヒース・レジャー、クリストファー・プラマー | |||
The Imaginarium of Doctor Parnassus | 2009年 イギリス・カナダ映画 | ||||
ロンドンの町に今にも壊れそうな馬車で登場したのはパルナサス博士が率いる一座。ステージの上には不思議な鏡があり、その中に入った者は自分の願望を反映した幻想的な世界を体験できるのだ。博士はかつて、僧侶だったが悪魔と取引をして永遠の命を手に入れていたのだ。しかも、博士が唯一愛した女性を手に入れるために、再び悪魔と取引をして、生まれた娘が16歳になったら差し出す約束をしていた。そして博士の娘のヴァレンティナの16歳の誕生日は目前に迫っていた。そんな時、一座は橋の下で首を吊られた男を助ける。彼は記憶を無くしていた。彼は一座のために巧みな言葉で客を集め、そんな彼にヴァレンティナも惹かれていく。そしてヴァレンティナの誕生日が3日後に控えた日に、再び悪魔が博士の前に現れる。そこで悪魔はある賭けに勝てば娘を渡さなくても良いと告げる。その賭けとは鏡の世界に入った人間に「悪魔の欲望の道」と「博士の節度の道」を選ばせ先に5人を獲得した方が勝ちというものだった・・・・ | |||||
私評:誰も信じるな・・特に鏡は・・・・「ダークナイト」で死後にオスカーを獲得したヒース・レジャーの未完の遺作を、彼の盟友であるジョニー・デップ、ジュード・ロウ、そしてコリン・ファレルというなんとも贅沢な3人が、ヒースの鏡の中での役を継承し遂に完成したのがこの映画。しかし、後から取ってつけたような違和感はまったくないのが不思議です。この映画はすごくブラックなファンタジー映画なのですが、これは監督がモンティ・パイソン出身のテリー・ギリアムだからですね。今でこそ、最新の映像技術で彼のとんでもないファンタジーの世界も描きだすことができますが、彼の初期の頃の「バンデッドQ」や「バロン」を作った頃に今の技術があれば、さらに面白い映画ができたでしょうね。ようやく彼の感性に映像技術が追いついた感があります。それにしてもこんなとんでもない映像を作り上げるギリアム監督の頭の中はどうなっているのか?パルナサス博士役は「インサイダー」のクリストファー・プラマー、悪魔役は歌手としても有名な「ドラキュラ」のトム・ウェイツ。そして輝くばかりの美しさを魅せるヴァレンティナ役はスーパーモデルのリリー・コール。 | |||||