2008/8/10

夏休みと言うことで公開作品もたくさん。
イチ押しは全米で大ヒット中のダークヒーローと
モラルなき子供の臓器販売を描く問題作。

ダークナイト  監督:クリストファー・ノーラン
 出演:クリスチャン・ベイル、ヒース・レジャー
The Dark Knight  2008年 アメリカ映画
今週のイチ押し:ゴッサムシティの平和のために戦い続けるバットマンことブルース・ウェインの前に、新たな強敵が現れる。極悪非道の男、ジョーカーだ。彼の想像を絶する行動は、ゴッサムシティを再び混乱の渦に陥れる。そんな時、悪の完全撲滅のために立ち上がったのがハーベイ・デント地方検事。彼はバットマンに牽制を与えながらも、ジョーカーに勝負を挑む。一方、ジョーカーはゴッサムシティの影のボスたちを集め、バットマンを殺すことを提案。その条件は莫大な金額のキャッシュだった。天才的な頭脳を駆使して、バットマン、そしてハーベイ・デントを翻弄するジョーカー。そしてその魔の手はデントの恋人で、ブルース・ウェインの元恋人でもあるレイチェルにも及んでいた。果たしてバットマンは、どうやってジョーカーに挑むのか?ジョーカーの仕掛けた数々の罠がバットマンを窮地に追いつめる・・
私評:彼はヒーローじゃない・・・全米でとてつもない成績で過去の記録を次々と塗り替えているこの映画。やはり、その噂は本物だった。バットマン自体が従来のヒーロー物とは一線を隔した作品ではあるのですが、今回の作品はそのシチュエーションを100%生かしつつ、最初から最後まで抜け目のない、完璧なシナリオで私を堪能させてくれました。とにかく息つく間もないくらいのジョーカーの波状攻撃。そしてバットマンは超えてはならない一線を越えてしまうのですが・・・。とにかく「すごい!」の一言で片付いてしまう作品でした。主演は前作に続きバットマンを演じるクリスチャン・ベイル。彼のなんとなく暗い感じがこのキャラに合っています。しかし、そんな彼を食ってこの映画の主役と言っても良いのが今年急逝したヒース・レジャー。彼の鬼気迫る演技はまさにオスカー物。ジャック・ニコルソンが演じたジョーカーより、個人的にはずっと良かった。そしてデント地方検事を演じるのがアーロン・エッカート。彼もジョーカーの手に掛かり・・・。その他、前作より登場のマイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、ゲイリー・オールドマン。そしてレイチェル役はマギー・ギレンホール。監督はクリストファー・ノーラン。
闇の子供たち  監督:阪本順治  出演:江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡
 2008年 日本映画
今週のイチ押し:日本の新聞社のタイ支局に勤める南部は、東京からある情報を入手する。それは日本人の子供がタイで臓器移植の手術をするという情報。早速、調査を開始した南部は臓器の元密売人と接触した。そこで彼は驚愕の事実を知らされる。提供者の子供は生きたまま臓器を抉り取られているというのだ。その頃、日本からタイの社会福祉センターに音羽恵子という若い女性が到着した。彼女はアジアの子供たちのために何かをしたいという情熱を持ってこの地にやってきたのだ。女性所長のナパポーンと視察に出かけた彼女は貧民層の厳しい現実を目の当たりにする。ナパポーンは最近センターに来なくなったアランヤーという少女の家を訪ねるが、そこに彼女の姿はなかった。実は彼女は売春宿に売り飛ばされていて、欧米や日本からやってくる幼児性愛者の相手を強いられていたのだ。そこでは散々こき使われた挙句、病気になった子供はゴミのように捨てられていたのだ・・
私評:それでもあなた方は人間ですか??・・・梁石日の原作が完全映画化された。私はこの本を読んでいたのですが、まさかこれが映画化されるとは思いもしませんでした。というのも、あまりに内容が過激で登場する現地の子供たちにこの演技を強いることなど、モラル的にできないと思ったからです。しかし、日本映画界の反逆児阪本順治は果敢に映画化に挑んだ。映画は思ったとおりかなり過激で子供たちが可哀想で何度も画面から目をそむけそうになってしまった。特に大人たちの性のおもちゃにされるシーンや、エイズになったため、ゴミ袋に入れられ捨てられるシーンなどは想像を絶します。しかし、これは実際に行われている「事実」なのです。そして無力な日本人がそんな事件に首を突っ込んでいくと・・・。そして南部の中の心の闇も首をもたげていく。という訳で、決してお気楽な映画ではありません。出演は江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、佐藤浩市など、こういう社会派映画らしからぬ豪華な顔ぶれが揃いました。そしてこの作品に共感した桑田佳祐が主題歌を書き下ろしています。私はこの映画を通して、世界中に向けてこのメッセージを送るべきだと思いました。
スカイ・クロラ  監督: 押井守  出演:菊池凛子、加瀬亮、栗山千明
The Sky Crawlers  2008年 日本映画 
いつの時代かは分からないが、そこは戦争中のどこかの国。カンナミ・ユーイチは戦闘機のパイロット。彼は新たな基地へと派遣された。しかし、彼には過去の記憶がない。彼は<キルドレ>。大人にならない種族で普通に生きていれば死ぬこともない。しかし、彼は危険な戦いにいつも挑んでいた。彼が赴任した基地の女性司令官クサナギ・スイトもかつてはエースパイロットとして活躍した<キルドレ>。ひとめで彼女の魅力に惹かれたユーイチだったが、彼女はかつての恋人を殺したという。しかも、彼女は<キルドレ>であるにもかかわらず子供を産んでいた。戦況はどんどん悪化していく。敵のエースパイロット“ティーチャー”によって次々と仲間が撃墜されてしまう。そんな折、ユーイチの中に封印されていた記憶が少しずつ蘇ってくる。そして彼は自分自身の運命と戦う決意をするが・・・・・
私評:私を殺してくれる。さもないと私たちいつまで経ってもこのままだよ・・・押井守監督の作品と言えば、激しいアクションの中に深い人間ドラマを織り込んだリアルなアニメが売り。そして最新のCG技術で見せるすごい映像も彼の作品の見所。そのすごい映像はこの映画の中では空中戦の映像で遺憾なく発揮されている。この映像は強烈ですよ〜。そしてドラマが進むごとに解き明かされていく<キルドレ>の、そしてユーイチ、スイトの秘密。こういうドラマの面でも今回の作品は良くできています。ラストシーンはかなり感動しました。声優陣は菊池凛子、加瀬亮、谷原章介、栗山千明などのフレッシュな俳優を起用。しかし、菊池凛子はイマイチでした・・・。そしてユーイチらが通うダイナーの奥さんの声を担当しているのが、私たち世代にはめちゃめちゃうれしい、ひし見ゆり子(ウルトラセブンのアンヌ隊員)です。この映画のエンドクレジットの後にとんでもないオチがあるので、最後まで席を立たないように!
ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一髪  監督:河崎実  出演:加藤夏希、黒部進
 2008年 日本映画
G8(主要国8カ国首脳会議)が行われている洞爺湖では、地球温暖化を含めた重要な会議が白熱化していて。しかし、そんな時、札幌に謎の宇宙怪獣が現れ会場は大パニック。さっそく、首脳陣の避難を要請するもアメリカ大統領の口から出た「ここで逃げたら国民に対してカッコ悪い」の一言で事態は急変。サミットは「G8宇宙怪獣対策本部」に変わった。主催国の日本はマイクロウエーブを使って昭和新山に「ギララ」と名付けられた怪獣をおびき出す作戦を打ち出すも失敗。続いてイタリア、ロシア、イギリス、ドイツと次々と奇天烈な作戦を実行するもギララには通用しなかった。一方、このサミットを取材に来ていた東京スポーツの記者隅田川すみれは取材中に、洞爺湖畔の森の神社でギララが彫られた神社を発見。村の言い伝えに寄れば洞爺湖の守り神タケ魔人がギララを阻止すると言われていた・・・・
私評:ネチコマ、ネチコマ、ネチコマ・・・・「かにゴールキーパー」「日本以外全部沈没」の河崎実が映画人生のすべてを賭けて作ったのがこの「大バカ映画」。ご存知の方もいると思いますが・・「宇宙怪獣ギララ」は松竹が東宝の「ゴジラ」、大映の「ガメラ」に対抗して作った怪獣映画。しかし、まったく成功せず松竹の怪獣映画はこの1作のみ。それゆえに後になってから「幻の怪獣映画」みたいに持て囃された映画なのです。しかし、この映画はただの「大バカ」映画ではありません。昭和の怪獣映画に負けない(いや、完全に負けている)ミニチュアセットに感動。そして各国が送り出す大バカな作戦に大爆笑。そして最後に出てくるタケ魔人はパンフレットによるとビートたけし!(と書いてあるのですが素顔は見せず、本人かどうかは不明)ソノシートっぽいパンフレット(800円也!)もコレクターとしてはうれしい一品。そして極めつけは先日亡くなった水野晴雄さんの登場シーン。顔は笑っていましたが、かなり痛々しい姿でした・・。主演はおバカな演技を真顔でこなしてポイントアップの加藤夏希。そしてオタクにはうれしい「ウルトラマン」の黒部進、「ウルトラセブン」でアマギ隊員を演じた古谷敏、「キャプテン・ウルトラ」の中田博久、そして本家本元の「宇宙怪獣ギララ」主演の和崎俊也が登場します。
ドラゴン・キングダム  監督 : ロブ・ミンコフ  出演:ジャッキー・チェン、ジェット・リー
The Forbidden Kingdom  2008年 アメリカ映画
ジェイソンはカンフー映画オタクの青年。彼の行きつけはチャイナタウンで老主人が営む質屋。そこには珍しいDVDがたくさんあった。そんなある日、彼は店の中で古びた金色の棒を発見する。主人が言うにはこれはある人の持ち物で、受取人が現れることなくずっと店に置いてあるという。その夜、ストリートギャングに絡まれたジェイソンは彼らの命令で質屋を訪ね、店のドアを開けさせた。すると彼らは店の金を奪い、あろうことか主人を銃で撃ってしまう。金色の棒を持ってその場を逃げたジェイソンはビルの屋上から転落・・・。目が覚めたジェイソンがはなんと古代の中国にいた。そこで出会った酔っ払いの男ルー・ヤンによって、彼が持っている棒が孫悟空の如意棒だと知らされる。そしてジェイソンこそが孫悟空を解放しこの世に平和をもたらす“導かれし者”であると告げる・・・・
私評:ひとつの山に二匹の虎、それも良いんじゃないか・・・ついに夢のコンビが同じスクリーンの中で大暴れする日がやってきた。香港映画のアクションスター、ジャッキー・チェンとジェット・リーだ。この2人の初共演がハリウッド映画というのも皮肉な感じがするが、逆にこれが良かったのではないでしょうか?この映画には香港映画への「愛」が詰まっているからです。香港で作ればもっとすごいアクションができたかもしれませんが、逆に外から見た香港映画の面白さをたくさん取り込んだのがこの映画の面白さでしょう?主演の2人に酔拳をやらせたり、少林寺の型をやらせたりするサービス精神がいかにもハリウッドなんですね。しかし、そんな事が気にならないくらいにノリノリで、しかもマジで戦う二人の姿にはちょっと感動してしまいました。余談ですがこのふたりの最初のクレジットでスタッフの気遣いを感じたのは2人の名前の頭文字が“J”なので、ジャッキーの名前を横に、ジェットの名前を縦に出していました。その他、本来主演であるジェイソン役はマイケル・アンガラーノ、女戦士スパロウ役はミュージシャンのリュウ・イーフェイ、白髪魔女役は「シルバーホーク」のリー・ビンビン。監督は「スチュワート・リトル」のロブ・ミンコフ。アクション監督は「グリーン・ディスティニー」「キル・ビル」のユエン・ウーピン。ちなみに彼はジャッキーの出世作「蛇拳」「酔拳」の監督でもあります。
インクレディブル・ハルク  監督:ルイ・レテリエ  出演:エドワード・ノートン、リヴ・タイラー
The Incredible Hulk  2008年 アメリカ映画
科学者のブルース・バナーはロス将軍の元で人体実験をしている最中、大量のガンマ線を浴びてしまう。それ以来、怒りを感じて心拍数が200を超えると巨大なモンスターになってしまうという特異体質になった。ブルースはそんな自分の体を軍事実験に使用しようとするロスの元から逃げ出し、ブラジルでひっそりと暮らしていた。そして彼はテコンドーを学び、怒りのコントロールを学んでいた。元の体に戻るべく方法を模索していた彼の前に「ミスター・ブルー」というハンドルネームの男が現れる。彼とのインターネットでのやり取りでようやく光明が見えたその時、ロスの送った兵士たちがブルースの元に現れる。その中にはイギリスが誇る最高の兵士ブロンスキーも含まれていた。やがて、ブルースは怒りを爆発しモンスターに変身。ブロンスキーはその圧倒的なパワーを見せ付けられる。軍事実験の事を知ったブロンスキーは実験に自ら志願する・・・・
私評:ハルク・スマッシュ!!・・・・今年のアメリカはコミックヒーローの当たり年。そのひとつがこの「ハルク」です。アメリカでは大ヒットですが、日本は難しいでしょうね・・。今回のハルクは最初の実験シーンを思い切り端折って、いきなりハルクの登場。そしてブルースの逃亡生活が始まる。その辺りはアクション映画というより、ひとりの男の苦悩をじっくりと描いている。これはアメリカンコミックのヒーローがみんな抱えている悩みなんですね〜。そしてハルク同様実験台としてモンスターに変身するブロンスキーとのガチンコ対決も見物です!でも、最後はちょっと呆気ないかも??ブルース・バナー役は演技派俳優エドワード・ノートン。そして彼の恋人役はリヴ・タイラー。ロス将軍役はオスカー俳優ウィリアム・ハート、そしてブロンスキー役はティム・ロスという豪華な俳優陣。監督は「トランスポーター」のルイ・レテリエ。


前回の記事も読んでね〜!



I Love Movieに戻る