またまた、約一ヶ月ぶりのレビューです。そしてまたまた数もあまり見ていません。
イチ押しはこのふたりの女の音楽を通した友情と闘いを描いた
ドイツ映画です。
4分間のピアニスト | 監督:クリス・クラウス | 出演:モニカ・ブライブロイ、ハンナー・ヘルツシュプルング | |
Four Minutes | 2006年 ドイツ映画 | ||
今週のイチ押し:おんぼろのトラックの助手席に座る老女。荷台にはグランドピアノ。そして車は刑務所へと入っていく。老女の名前はクリューガー。彼女は類まれなるピアノの才能を持ちながら過去のしがらみから道を誤ったピアノ教師だ。そこでクリューガーは天才ピアニストに出会う。彼女の名前はジェニー。クリューガーはジェニーの才能をいち早く見抜き、その才能を開花させる事に残り少ない人生を賭けようと思った。しかし、ジェニーは愛を知らずに育った粗野な性格。癇癪持ちですぐに暴れる問題児。しかし、そんな彼女に怯むことなくクリューガーは真正面からジェニーに立ち向かった。やがて、二つの才能は火花を散らしながらも、徐々に大輪の花へと変わっていく。コンテストに出場したジェニーは圧倒的な素晴らしさを見せ付けた。その帰り道で寄った病院で、ジェニーは逃走を図るが失敗。そこでジェニーは衝撃的な過去をクリューガーに告げる・・ | |||
私評:下劣な音楽は嫌いよ・・・この映画はふたりの女性の魂のぶつかり合いを真正面から描いた作品です。それがとにかく凄まじいまでに強烈で、見ているこっちが怖くなるほど。しかし、その二つの魂が融合したときに紡ぎだされる「音楽」はまさに極上の芸術。そしてお互いが持っているトラウマをお互いに開放し、ふたりはひとつになる・・。ドイツ映画ってこういう「深い人間ドラマ」作品が多いですよね〜。また、良い作品が多い。この作品については万人に受けるとは思いませんが、私には極上の映画。そしてクライマックスの4分間の演奏シーンはもう放心状態・・。ちょっと例えが悪いかもしれませんが、「フラッシュダンス」で最後にジェニファー・ビールスが見せた踊りくらい強烈でした。クリューガーを演じるのはドイツでは超有名らしいモニカ・ブライブトロイ。彼女は「ラン・ローラ・ラン」にもでていましたね。ジェニー役はオーディションで選ばれた無名の女優ハンナー・ヘルツシュプリング。彼女の演技はマジですごいです。そして収容所の憎らしい囚人役で「バンディッツ」のヤスミン・タバタバイが登場。(どこかで見たことがある顔だと思っていたんだ・・)監督はドイツ映画の明日を担うクリス・クラウス。 | |||
オリヲン座からの招待状 | 監督:三枝健起 | 出演:宮沢りえ、加瀬亮、原田義雄 | |
2007年 日本映画 | |||
京都の小さな映画館「オリヲン座」がその長い歴史に幕を下ろす日が来た。ゆかりの人々には最終日の特別興行の招待状が送られた。昭和30年。先代のオリオン座館主の」豊田松蔵は妻のトヨとふたりで映画館を切り盛りしていた。そんなある日、やせっぽちな青年が映画館にやってきた。そして唐突に松蔵に映画館で働かせて欲しいと申し出る。最初は軽くあしらっていた松蔵も青年の熱意に負けて、彼を雇い入れることにした。青年の名前は扱いも伝授される。しかし、松蔵は折からの肺病のためにあっさりとこの世を去ってしまう。留吉とトヨはふたりで映画館を守っていこうとするが、周りからは「師匠のかみさんを寝取った男」「若い男に乗り換えた女」と陰口を叩かれた。さらにテレビの台頭で映画産業はますます斜陽化していく。しかし、ふたりは先代の夢を壊すことなく貧乏に耐えながら映写機を回し続けるが・・・・ | |||
私評:おやっさん、僕にいわはったんや。オリヲン座、ほかしたらあかんって・・・浅田次郎の代表作がついに映画化された。この作品は「鉄道員」の本に入っている短編で私も大好きな話。それが今回映画化されると聞いて、とても楽しみにしていました。そしてこの映画の完成度の高さに感激。これぞ私が望んでいた「浅田ワールド」だったのです。そして日本版「ニュー・シネマ・パラダイス」なのです。映画の中で懐かしい映画の映像が見られるのですが、中でも強烈なのが「無法松の一生」。板妻こと坂東妻三郎主演のこの映画は日本映画の名作中の名作。この作品が映画の中で大きな役割を果たすのです。そして、途中からは涙が止まらなくて困ってしまいました。主演の宮沢りえ、加瀬亮はまさに完璧なキャスティング。そして松蔵役の宇崎竜童、晩年の留吉を演じる原田義雄が素晴らしかった。その他にも樋口加南子、田口トモロヲ、中原ひとみなどなど、名優がぞろぞろ。監督は三枝健起。 | |||
パンズ・ラビリンス | 監督:ギルレモ・デル・トロ | 出演:イバナ・バケロ、セルジ・ロペス | |
Pan's Labyrinth | 2006年 スペイン・メキシコ映画 | ||
昔々、地底の世界は争いもなく平和だった。しかし、地上に興味を持ったモアナ姫は一人地上に出て、そのまま記憶を失くしてしまった・・。それから月日は流れ、今は1944年。おとぎ話が好きな少女オフェリアは、身重の母と一緒に新しい父親ビダル大尉の待つ駐屯地へと向かっていた。旅の途中でオフェリアは、道端の小さな石に気を止めた。それを拾い上げた彼女は迷うことなく石塚の隙間に埋め込んだ。すると中から一匹のナナフシが飛び出してきた。父親の待つ駐屯地に着いたオフェリア。しかし、彼女はビダル大尉を好きになれなかった。その夜、オフェリアの元にナナフシが姿を見せた。昆虫は妖精に姿を変えて彼女を庭の奥にある「ラビリンス」へと導いた。そこで彼女を待っていたのはヤギの頭に人間の体を持つパン(牧師)。彼はオフェリアがなんとモアナ姫だと告げる・・・・ | |||
私評:人生はおとぎ話じゃないのよ・・・すごい・・。何がすごいって全てがすごい。ストーリーは、ただのフェアリーテイルに留まらない。映像はハリウッドで修行を積んだ監督ならではのクオリティの高さと、そして抜群のアイデア。そして演出の上手さは天下一品。ちょっと前に「本当は怖い○○童話」みたいな本が流行りましたが、本来の童話が持つ残酷でダークな部分を包み隠さず、子供向けにしていないところがこの映画の面白さかもしれない。それは私の意表をつく演出で、恐ろしいほどの驚き、刺激、そして感動をくれました。主人公のオフェリアを演じるのは弱冠12歳のイバナ・バケロ。彼女のキャスティングは最高です。このくらいの少女でしか醸し出すことができない独特の儚さ、残酷さ、そしてエロス。その全てをスクリーンで放つことができる彼女はまさに妖精。そして残酷な大尉役は「ハリー、見知らぬ友人」のセルジ・ロペス。監督は「ブレイド2」「ヘルボーイ」のギルレモ・デル・トロ。彼は元々才能があると思っていたのですが、ついに完全開花って感じですかね??それにしても手に目がある変な怪物はかなりキモイ・・。実は夢に出てきました・・・。 | |||
ブレイブ・ワン | 監督:ニール・ジョーダン | 主演:ジョディ・フォスター、テレンス・ハワード | |
The Brave One | 2007年 アメリカ映画 | ||
NYでラジオのパーソナリティを勤めるエリカは、婚約者のデイヴィッドと幸せな時を過ごしていた。そんなふたりを悪夢が襲った。ふたりは夜のセントラルパークを散歩中に3人の暴漢に襲われたのだ。容赦ない攻撃がふたりを襲う。そしてエリカが目を覚ましたのは3週間後だった。デイヴィッドの母親から彼の死を知らされ絶望に襲われるエリカ。行き場のない怒りを警察にぶつけても、彼らはまじめに事件と向かい合っていない。しかも、彼女はその事件が原因で常に恐怖に苛まれていたのだ。そんな彼女が自分を守るために手に入れたのは一丁の銃だった。そんなある日、エリカがコンビニで買い物中に強盗に出くわしてしまう。銃を持った犯人に向かって思わず引き金を引くエリカ。しかし、その一件から彼女の中の何かが目を覚ます。深夜の地下鉄で彼女に近づいてきたチンピラに、何のためらいもなく銃を放ったのだ。捜査に当たったマーサー刑事は、二つの事件が同一犯であると目をつけるが・・・・ | |||
私評:銃を放つとき手が震えた?・・・ジョディ・フォスターという女優は本当にすごい。彼女の放つ緊迫感が画面からビンビン伝わってくる。その恐怖が、その怒りがこの映画の全てです。この映画を見ていてすぐに頭に浮かんだのが「デスノート」です。エリカもまるでデスノートのキラのように民衆から崇められる。キラとエリカは、目的こそ違えど、憎むべき悪への制裁を加え続けるのです。しかし、この作品のラストは私的にはちょっといただけない。あれでいいのか??というか、あの終わり方が(形こそ違えど)実はまかり通っている現実なのかもしれない??いやはや、何とも怖い映画でした。主演は最近「戦う女」になっているジョディ・フォスター。今回もオスカー女優の名に恥じぬ強烈な演技を見せます。事件を追う刑事役には「Ray」のテレンス・ハワード、デイヴィッド役は「LOST」のサイード役が印象的なナビーン・アンドリュース、エリカのボス役には「バック・トゥ・ザ・フューチャー3」のメアリー・スティーンバージェン。監督は「クライング・ゲーム」「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」などの名匠ニール・ジョーダン。 | |||