2008/11/23 その2

今回の5タイトルは正直どれをイチ押しにしても良いくらい。
悩んだ挙句、ふたつを選びました。ホラーはお約束なので・・

1408号室  監督:ミカエル・ハフストローム 出演:ジョン・キューザック、サミュエル・L・ジャクソン
1408  2007年 アメリカ映画
今週のイチ押し:オカルト作家のマイクは実際に事件が起きた現場に赴き取材をしている。今日も彼は幽霊が出るというホテルを訪ねたが・・・。そんなある日、彼の元に不思議な葉書が届く。NYのドルフィンホテルの絵葉書で、裏には「1408号室には入るな」と書かれていた。早速、このホテルの部屋について調べてみると過去に多くの人たちがこの部屋で死んでいた。ある者は窓から身を投げ、そしてある者は水死・・。居ても立ってもいられなくなったマイクはホテルに電話をするが、予約係は「1408号室は売り切れです」とオウムのように答えるだけだった。ホテルに到着したマイクは支配人のオリンの部屋に行き、宿泊を諦めるように説得される。マイクが調べた自殺者の他に22人もの宿泊者が自然死をしていたこと、そして掃除中のメイドに起きた事件などを聞かされてもマイクの気持ちは変わらなかった。鍵を受け取り、部屋に入るとそこはごく自然な客室だった。しかし、マイクは想像を絶する恐怖を味わうことに・・
私評:もう、私のことを愛してないの??・・・・S・キング原作の短編が恐ろしい映像になった。キング作品のこういう恐怖を映像化するのって本当に難しいと思うのですが、今回は素晴らしい出来です。ホテルが舞台というと、キングの名作「シャイニング」を思い浮かべますが、勝るとも劣らない恐怖体験をさせてもらいました。どちらの作品にも共通しているのは主人公が味わう「狂気」です。そして得体の知れない「何か」は主人公のウイークポイントを、これでもかっ!ってくらい攻め立てる。そして想像を絶する恐怖が・・。という訳で、私は久々に映画を見ながらビビりました。スプラッター映画に飽きていた自称ホラーファンの私をここまで脅してくれれば恐怖映画としては満点です。しかし、ただのホラー映画で終わらないのがキング作品。登場人物たちも見事に描かれています。主演はマルチな俳優ジョン・キューザック。胡散臭いオカルトライターというのが彼にピッタリ。そして不気味な支配人役にはサミュエル・L・ジャクソン。監督はスウェーデン出身のミカエル・ハフストローム。ハリウッドの監督とは一味違う演出が、この作品に合っていたのだと思います。
天国はまだ遠く  監督:長澤雅彦  出演 : 加藤ローサ、徳井義実
 2008年 日本映画
今週のイチ押し:夜の宮津駅に一人の若い女が降り立った。彼女の名前は千鶴。彼女はタクシーの運転手に「北」に向かうようにいう。そしてタクシーが彼女をおろしたのは「絶景の宿 たむら」という民宿の前。彼女を迎えたのはここでひとり自給自足の生活をする青年田村だった。部屋に入ると千鶴はおもむろに睡眠薬を大量に飲み続けた。そして彼女は深い眠りへと落ちていった。しかし、彼女は32時間後の朝に目を覚ました。自殺に失敗したのだ。階下に降りていくと田村が魚を焼いている。一緒に朝食を摂る。体には何の異常もない。外に出た千鶴は民宿の周りの自然に触れた。森を歩き、風を感じ、そして夜は星を眺めた。それらは千鶴にはすべてが新鮮だった。仕事も恋愛もすべてうまくいかず自殺をするためにここにやってきたはずなのに、田村のさりげない優しさや、この町の空気が彼女に力を与えていく。しかし、そんな田村も大きな秘密を抱えていた・・
私評:あんたホンマ幸せもんやな・・・・なぜか今回はホンワカした日本映画が多いです。ちょっと疲れ気味でもあり、こういう作品を好んで選んできたのかもしれません。そんな私にピッタリだったのがこの映画。いつだって気張って生きているけど、時々何もかも捨てて逃げ出したくなる事がありますよね?だけど、結局は元の鞘に戻らなければならないのは分かっています。そんな時になんだか悪いものを全部吸い出してくれるような場所があります。それは雄大な景色だったり、美味しい食事だったり、そして人との出会いだったり・・。この映画の主人公はそれらをすべて吸収して、明日に泳ぎだしていく・・。これはまさに私への応援歌的な映画でした?がんばるぞ!!主演は癒し系女優の加藤ローサ。弱々しくて情けない彼女がひと皮向けて去っていくシーンはサイコーでした。そして意外や意外!?良い演技を見せるのがチュートリアルの徳井義実。彼はルックスが良いので、今後は役者としても活躍できるかも??そしてこの映画のもうひとつの主役と言って良いのが全編に流れるピアノ音楽。これを担当するのが「のだめ」で有名になった清塚信也。監督は「ココニイルコト」の長澤雅彦。
秋深き  監督: 池田敏春  出演:八嶋智人、佐藤江梨子
 2008年 日本映画 
中学教師の寺田は、夜毎大阪の新天地のクラブに通っている。お目当てはホステスの一代。酒が飲めないのに通ってくる寺田に一代もまんざらではないようだ。ある夜、寺田は一大決心を胸にクラブへと出かけた。そしてようやく訪れたチャンス。寺田は一代に位牌を渡して一緒に仏壇に入ってくれと頼んだ。それが彼のプロポーズ。そして一代は寺田の申し入れを受け入れた。無理やり見合いをさせられ実家を飛び出した寺田は一代と二人の生活を始める。しかし、一代の後ろに見え隠れする「過去の男」らしき影が寺田を嫉妬に誘う。そんなある日、一代は「おっぱいが痛い」と病院に出かけた。検査の結果は乳癌。一代のおっぱいを大好きだと言っていた寺田にその事が言い出せない一代。しかし、ふたりだけの結婚式を挙げた後、一代は寺田にガンのことを打ち明けた。そして寺田の大好きなおっぱいを取らずに治す決心をするが・・
私評:これは寺ちゃんのおっぱいやで・・・都内は新宿の単館でひっそりと公開していますが、私を引き付けるには十分すぎる作品。まずは原作が「夫婦善哉」の織田作之助。しかも、この原作は私が高校時代に読んだものなのです。そして監督は日活ロマンポルノの名作「天使のはらわた 赤い淫画」「死霊の罠」などきわどい作品が多いが大好きな池田敏春。それに一代役が佐藤江梨子というトリプルインパクト。映画はなんだか仄々していて、そして寺田という主人公を見ながら「男はなんてバカなんだろう」と実感。そしてサトエリみたいないい女が、あんなに愛してくれたら、あそこまでバカになれるな〜と実感。なんだか映画を観ながら「うんうん」と頷いている私がいました。寺田役はバラエティから舞台まで幅広く活躍する八嶋智人。いいです。そして一代役はまさに「おっぱい女優」と言える佐藤江梨子。その他佐藤浩市、赤井英和、渋谷天外、山田スミ子という濃〜い面子。とっても切ないのですが、とっても温かい。そんな映画でした。
櫻の園  監督:中原俊  出演:福田沙記、菊川怜、上戸彩
 2008年 日本映画
ヴァイオリニストの夢を持つ桃は活発な女の子。しかし、努力もむなしく彼女の夢は絶たれてしまう。彼女はかつて姉が通っていた女子高校に編入することに。そこは名門中の名門で伝統を重んじる厳しい学校だった。新しい自分を見つけようともがく桃はある日、取り壊される予定の旧校舎でチェーホフの「櫻の園」の台本を見つけた。そこは元々演劇部の部室だったのだ。桃は友人たちに声を掛け、実際に舞台で演じないかと誘うと無邪気で明るい美登里と奈々美、そして陸上部のハイジャンプの選手で、学園の生徒たちに憧れの的である葵、そして葵に密かに好意を寄せる真由美たちが集まってきた。さっそく練習を始めるが、「櫻の園」はこの学園では曰くつきで演じることは禁止されていた。しかし、せっかくのチャンスを逃したくない桃は学校には内緒で舞台に立とうとみんなを説得する・・・・
私評:もう、逃げるのはやめたの・・・・18年前に同じ監督が演出を手がけた「櫻の園」を見ました。(つみきみほ主演)女の子ならではのナイーブな作品で、女子高という舞台が男の私にはミステリアスでもあり、妖しくもあり・・。その時は不思議な思いだけが残った。そして今年、キャストを新たにしてリメイクされた。これがまた、とてもすばらしい映画でした。女の子同士の微妙な友情と恋。そして青春を賭けてやり遂げる何かを見つけた時の若さの輝き・・。美しい桜の映像はもちろんですが、そこに映りこむ少女たちが本当に美しかったです。主演は福田沙記ちゃん。彼女はすごくまっすぐな演技をするのですね〜。来年公開の「ヤッターマン」も楽しみです。その他、タレント事務所のオスカーから活きの良い少女たちがわんさか登場。おじさんはとてもうれしかったです。そしてオスカーの先輩の米倉涼子、菊川怜、そして上戸彩も出演します。監督は「12人のやさしい日本人」の中原俊。
ハッピー・フライト  監督 : 矢口史靖  出演:田辺誠一、綾瀬はるか、
 2008年 日本映画
ある日の空港。新人スチュワーデスの悦子はその日、初めて海外フライト。しかも、チーフパーサーは厳しい事で有名な山崎麗子。ノーテンキな悦子はいきなり麗子に怒られてしまう・・。鈴木は機長昇格訓練中のコー・パイロット。今日のフライトに合格すれば晴れて機長になれるのだ。その日の教官は優しい望月さん・・のはずだったが風邪のため、急遽威圧感たっぷりの原田にチェンジ。ついてない・・・ホノルル行きの飛行機に部品交換が必要とされていた。ライン整備士の小泉の断りを勘違いした若い整備士の中村は作業を始めてしまう。作業はなんとか時間内で終了したが・・・オペレーションコントロールセンター(OCC)では世界中で飛んでいる、その会社の飛行機をすべてチェックしている。天気のチェックも大事な仕事だ。ところがいま、東京に台風が向かっていた。無事に飛び立ったホノルル行きだったが、ある事件から東京に引き返すことに。ところが彼らの前には巨大台風が口を開けて待っていた・・・・
私評:You have! I have! ・・・「ウォーター・ボーイズ」「スウィング・ガールズ」が大好きな私が待ちに待っていた矢口史靖監督の新作が公開された。しかも、舞台は羽田空港。ANAの全面バックアップもあり空港内で働く人たちの姿が面白おかしく、しかもリアルに描かれている。このリサーチは半端じゃない!しかも、その等身大の人々にそれぞれドラマがあり、見事に描かれています。前2作ではクライマックスは音楽で盛り上げたのですが、この作品では空港スタッフたちの言葉のキャッチボールで盛り上げます。そして締めはフランク・シナトラ!こういう演出も矢口監督ならでは。出演者はパイロット役に田辺誠一と時任三郎。スチュワーデスには綾瀬はるか(この子がブスなんだけど可愛い!)寺島しのぶ、吹石一恵。グランドスタッフには田畑智子、吉田美樹・・その他、いっぱい出てきます。私の注目はやっぱり綾瀬はるか、そしてOCC役の肘井美佳。矢口監督の次の作品はなんのテーマなんでしょうね?私は必ず見に行きます!
ブラインドネス  監督 : フェルナンド・メイレレス  出演 : ジュリアン・ムーア、伊勢谷友介、木村佳乃
Blindness  2008年 カナダ・ブラジル・日本映画
ある都会。交差点に停止していた日本人の男の視界は急に真っ白になり、そのまま彼は失明してしまう。親切を装った泥棒に家まで送ってもらうが、彼はそのまま車を盗まれてしまう。病院で検診を受けるが原因は不明。しかし、失明をしたのは彼だけではなかった。世界中で次々と失明する者が増えていく。日本人の男を診察した医者も翌日には光を失ってしまう。政府は緊急に隔離する施設を用意し、失明した者たちを一箇所に集める。もちろん、医師もそこに連行されるが、なぜか失明しない医師の妻も盲目を装って同行する事にした。収容所の中は盲目の者たちが闇雲に徘徊し、秩序も衛生状態もどんどん悪化していく。ただ一人目が見える医師の妻が必要箇所にロープを張ったり、道案内をしたりするが、到底彼女一人の力では何も出来ない。しかも、第3病棟の王と名乗る男が武力で制圧を開始する。銃を持っている彼は食料を独占し理不尽な要求を他にするのだった・・・・
私評:僕にそれを強制することはできない。しかし、この飢餓を満たすにはそれしか・・・この映画は突然、世界中が失明するというショッキングな触れ込みで、かなり前から予告編等でチェックを入れていた作品です。もしも、実際にこのような病気が蔓延したら、どうします??ところが映画はその後のパニックに重点を置いて作られています。乱れる秩序の中で抉り出される人間のエゴ。そして急に目が見えなくなった人たちがどれほど無力かを真正面から描いています。映画の中で元々目が見えなかった人が出てくるのですが、彼の描かれ方も興味深かったです。しかし、いちばん酷いシーンは食料と引き換えに女を差し出すシーンです。あまり言ってしまうとネタばれになるので言いませんが、胸くそ悪くなりました。でも、実際こういう展開になるんでしょうね・・。主演は名女優ジュリアン・ムーア。彼女は最高ですね。日本からは伊勢谷友介と木村佳乃。その他、「ゾディアック」のマーク・ラファロ、「アイ・アム・レジェンド」のアリス・ブラガ、「アモーレ・ペレス」のガエル・ガルシア・ベルナル、そしてダニー・グローバーというインターナショナルなキャストが揃いました。監督はブラジルの巨匠「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレス。これは超問題作です。きっと考えさせられますよ・・。余談ですが・・、このパンフレット900円もしました。92ページもいらないから安くしてくれ!


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