2005/11/20

2週間ぶりのレビューです。とにかく今回は泣ける映画が多かった。
しかも、悲しい涙ではなくやさしい涙なんですね。
歳をとって涙腺がゆるくなっただけなのでしょうか??

エリザベスタウン  監督:キャメロン・クロウ  出演:オーランド・ブルーム、キルスティン・ダンスト
Elizabethtown  2005年 アメリカ映画
今週のイチ押し:シューズ会社に勤める、若きデザイナーのドリューは自分に言い聞かせていた「大丈夫・・大丈夫」。彼のデザインした新しい靴が発売されたが、結果は散々。今回の彼のプロジェクトは10億ドルの損失を会社に与えたのだ。しかも、彼の恋人のエレンにまで愛想をつかされてしまう。失意のどん底の彼に追い討ちをかけるように妹からの電話。それは彼の父親の死を告げる電話だった。さっそく父が亡くなった土地、彼の故郷のケンタッキーへと向かうドリュー。そんな彼に話しかけてきたのはスチュワーデスのクレアだった。不思議な魅力の持ち主のクレアに、少し心が動いたドリューだったが、彼の心の傷は深すぎた。ケンタッキーのエリザベスタウンに着いたドリューを迎えたのは、温かい町の人々だった。そして棺に横たわる父との対面。戸惑いながらもしばし、仕事の失敗を忘れたドリューはクレアを思い出し、彼女に電話を掛ける・・・
私評:心行くまで絶望を味わい、十分に悲しみを堪能したら全てを捨てて前に進むこと・・・この映画は青年の復活の映画です。家族の物語です。小さな町の人々の絆の映画です。恋人たちの映画です。Life goes on・・。こんなに生きることに対して後押しをしてくれる映画も珍しいかも?落ち込んでいる人には勇気を、そして幸せを噛み締めている人には更なる幸せを与えてくれる。私はこの映画の中に好きなシーンが幾つもあるのですが、中でもドリューとクレアのオールナイトの電話のシーンと、ドリューの母親が葬儀で行うスピーチのシーンが大好き。きっと、何度も見るたびに、その時の私の心情に合わせて違う感動を与えてくれるはず。とても大事にしたい映画です。主演は本当に爽やかで好感が持てるオーランド・ブルームとキルスティン・ダンスト。この映画を観たら、きっとこの二人を好きになりますよ。ドリューの母親役は出番こそ少ないけど強烈なインパクトを残したスーザン・サランドン。エレン役は人気絶頂のジェシカ・ピール。そして靴会社の社長役でアレック・ボールドウィン。監督は今まで私の期待を裏切ったことがないキャメロン・クロウ。最後にこの映画の音楽は最高です。また、観に行きたいですね。
カーテンコール  監督:佐々部清  出演:伊藤歩、藤井隆、藤村志保
 2005年 日本映画
今週のイチ押し:出版社に勤める香織は新人女優のスキャンダルをスクープし有頂天になっていたが、翌日に女優が自殺未遂をした事により居場所をなくしてしまう。福岡の小さな出版社に移った彼女が担当したのは、一通のはがきに書かれた映画館の話だった。昭和30年代ごろから下関の映画館にいた幕間芸人を探して欲しいというリクエストに応え、香織はまず映画館を訪ねた。彼女は映画館で古くからモギリをしていた絹代から、貴重な情報を得ることができた。芸人の名前は安川修平。昭和の映画の全盛期に映画館に勤め始めたという。映画が大好きだった彼は映画館のためシャカリキになって働いていた。そんなある日、映写機のトラブルで映画が中断してしまう。その時修平はとっさに舞台に上がり即興で勝新太郎の真似をして観客を和ませたのだ。それ以来映画と映画の合間は彼のステージとなった。彼の人気は絶頂で、しかも彼のファンの女性と恋をして結婚・・。それはまさに順風満帆に見えた。しかし、テレビの普及により映画から人々が離れていってしまう・・
私評:星よりひそかに〜雨よりやさしく〜あの子はいつも歌ってる〜♪・・・・映画の帰りはついこの歌を口ずさんでしまいました。今回は「ALWAYS 3丁目の夕日」といい、この映画といい古き良き「昭和」が舞台になっているのが良いですね。しかし、この映画もそんな懐かしさだけを味わう映画ではないのです。映画と映画の間に物まねや歌を歌う幕間芸人の話ですが、当時の世相や映画の流行、そしてヒット曲も楽しむことができます。前にもここに書きましたが、私の母は若い頃に映画館に勤めていて、当時の話を聞かされていたのですが、今日の映画の中に母から聞いた話が再現されていました。ドアが閉まらなくなるくらいの観客。映画館の席の後ろに売店があったり・・。今は映画を観るのに「静かに!」とか「行儀良く」が当たり前のようになっていますが、当時はみんなで楽しむというスタイルだったのですね。(これは「ニューシネマ・パラダイス」でも描かれていました)主演は伊藤歩。今回はけっこう地味なキャラなのですがやはり良い味を出しています。そしてピッタリだったのが若き安川を演じる藤井隆と年老いた安川を演じる井上堯之。ふたりとも笑顔が良いんです。そして味わいのある藤村志保が素晴らしい。そして私の目を思い切り引いたのが安川の妻役の奥貫薫。最後まで舞台の彼を愛した女性なのですが、このキャラクターが素晴らしかった。監督は「チルソクの夏」「半落ち」の佐々部清。それゆえかこの話には在日朝鮮人のエピソードも含まれていました。とにかく素晴らしい映画。おススメです。
ALWAYS 3丁目の夕日  監督:山崎貴  出演:吉岡秀隆、堤真一、小雪、薬師丸ひろ子
ALWAYS  2005年 日本映画
昭和33年。まだ、東京でも地平線が見えた頃、世界に誇る東京タワーが建設されていた。そんな時、青森から集団就職で上の駅に着いたのは六子。彼女は東京での生活に大きな憧れを抱いていた。彼女を迎えに来たのは鈴木オートの社長の則文。しかし、鈴木オートは六子が考えていた大きな工場ではなく、小さな修理工場で彼女はちょっとショックだった。しかも、文則は六子の履歴書の「特技」を読み間違えていたのだ・・。鈴木オートの向かいの駄菓子屋には竜之介という売れない作家がいた。そんな彼が心を寄せていたのが近くで小さな呑み屋を営んでいるヒロミだった。そんなある日、ヒロミの元に身寄りのない少年淳之介がやってくる。自分で育てることができないと思ったヒロミは、龍之介を言い丸めて少年を彼に預けるのだが・・。東京のど真ん中の小さな町は、今日も笑い声が耐えない・・・・
私評:そこにはお守りを入れておいたから、困ったときは開けてごらん・・・昭和33年は私も生まれていないのですが、私が生まれた37年には、まだ当時の香りがたくさん残っていた。私が生まれた世田谷も当時はまだまだ田舎で、畑もたくさんあったし、映画の中にも登場するオート3輪は叔父が持っていたので、乗ったことがあります。考えてみれば今の時代に当然のように私たちの周りにある便利なものが、当時はまったくなかったのに楽しかった〜。(ほとんどおやじトークですみません)この映画にはそんな懐かしさがいっぱい詰め込まれています。しかし、この映画はそれだけではないのです。そこに描かれていたのは本来、私たち日本人が美徳としていたはずの人情がいっぱい。それが私の心の深いところをくすぐるんですね。そういう気持ちを私は大事にしたい。そして私は数々のエピソードに泣きっぱなし。完全にこの映画にやられました。出演は吉岡秀隆、堤真一、薬師丸ひろ子、小雪、堀北真希・・・・。中でも(見る前は絶対にこの映画では浮いていると思っていた)小雪がめちゃめちゃ良かった〜。しかし、この映画は誰もが主役なんです。監督は特撮畑出身の山崎貴。昭和のCG映像には驚きです。さあ、いっぱい泣きたい人はぜひこの映画を! 
親切なクムジャさん  監督:パク・チャヌク  出演:イ・ヨンエ、チェ・ミンシク
Sympathy for Lady Vengence  2005年 韓国映画

13年間の服役を終え、クムジャは大きな決意を胸に抱いて刑務所を出た。服役中に張り巡らした数々の伏線。ついにそれを実行することができるのだ。出迎えた神父が差し出した豆腐をひっくり返したクムジャは「よけいなお世話です」と言い放った。13年前、彼女は誘拐犯として逮捕されたのだが、実はその裏にはある取引があったのだ。ソウルに戻ったクムジャは刑務所時代に世話をした女たちの元を訪ね歩いた。刑務所の中でクムジャはたくさんの女たちの世話をして「親切なクムジャさん」と呼ばれていたのだ。しかし、それは彼女がある男に復讐をするための作戦のひとつだった。ついに男の居場所を突き止めた彼女は、刑務所仲間の女たちの手を借り、着実に彼を追い詰めていく。しかし、彼女が企んでいたのは、ただ単に彼を殺すことではなかった・・・・

私評:親切はもうやめたの・・・パク・チャヌル監督の「復讐3部作」を締めくくるのがこの映画。クムジャによる復讐劇は凄惨でもあるけど、とても悲しい。そして淡々とした語り口ではあるのですが、パク監督らしいテンポの良い展開で面白かったです。しかも、ユーモアもたっぷり味わえます。それにしてもこの映画のイチバンの見所はイ・ヨンエの演技です。私の中では「ラスト・プレゼント」のやさしい妻役のイメージが強かったのですが、この映画の彼女は違います。親切な事をしているクムジャは笑顔なのですが、どこかに毒がある。そして出所後は本当にクールな女。そして娘の前でだけ見せる本当にやさしい笑顔。それらの顔を自在に操る彼女の演技は凄まじいまでに恐ろしく、そして美しい。そして強烈なインパクトを残す、悪役のチェ・ミンシクもすごいですね〜。もうひとつ注意したいのがカメオ出演の韓流スターたち。ソン・ガンホ、シン・ハンギュン、ユ・ジテ(復讐者に憐れみを)、オ・ダルス、キム・ビョンオク(オールド・ボーイ)などなど。しっかり見つけてください。
CUBE ZERO  監督 : アーニー・バーバラッシュ  出演:ザカリー・ベネット、ステファニー・ムーア
CUBE ZERO  2004年 カナダ映画

窓のない作業場でウェインとドッドはモニターを眺めていた。その画面に映っていたのは一人の男の凄惨な最期だった。ふたりはキューブの監視係。キューブの中に閉じ込められた人間たちを姿の見えない上司の命令に従い操るのが彼らの仕事だ。そんな中で一人の女レインズがキューブの中で目を覚ました。立方体の部屋のそれぞれの中心には扉があり、その向こうにはまた立方体の部屋がある。隣の部屋に移ったレインズは、そこで自分と同じ服を着た4人と出会う。彼らは皆記憶がなく、なぜ自分がここにいるのかも知らない。しかし、そのキューブの中には多くのトラップが待ち受けていた。レインズを見たウェインは、本来合意を得てキューブに入れられるはずなのに、政治犯だった彼女は強引に入れられたのでは?という疑いを抱き、無謀にも単身彼女の救出へと出向いていく・・・・

私評:ここは一辺が26個の部屋を持つ立方体なんだ・・・「CUBE」の1作目を見たときはすごいショックを受けた。SFスプラッターとしての過激な映像はもとより、そのアイデアが素晴らしかった。その衝撃的な第1弾(1997年)から5年後の「CUBE2」を見たときは1作目が凄過ぎて、イマイチ感が否めなかった。そして今回はというと、トラップの数々はさすがにマンネリ化したような気がしましたが、ラストのオチは1作目を見た人にはたまらないでしょう!!私はかなり気に入ってしまいました。この手の作品のスプラッターは、そろそろワンパターンになってきたけど、それでもかなり強烈。痛そうでしたよ〜・・。出演者には特に有名人は出ていませんが、逆にそれがこの映画には良いのかも知れません。監督は「CUBE2」で共同脚本を書いたアーニー・バーバラッシュ。余談ですが、初日に行った私は「初日プレゼント」をもらったのですが、なぜかヘアブリーチでした。これはなぜ???

ダーク・ウォーター  監督:ウォルター・サレス  出演:ジェニファー・コネリー、アリエル・ゲイド
Dark Water  2005年 アメリカ映画
離婚調停中のダリアと夫のカイルの話し合いは一人娘のセシリアの親権を巡って泥沼の争うになっていた。なんとかセシリアを自分の元におきたいダリアは、娘の養育に適した仕事と住まいを早く見つけなければならなかった。雨の中、ダリアとセシリアはルーズベルト島を訪ねた。マンハッタンは家賃が高すぎて払えないダリアは、この地を住まいに選んだのだ。不動産屋のマレーに連れられて入ったのは古いアパート。雰囲気も決して良いとは言えなかった。9階の部屋を物色中、忽然とセシリアが姿を消してしまう。彼女は危険な屋上にひとりで上がっていたのだ。それまでこのアパートを嫌っていたセシリアはなぜか「ここに住みたい」と言い出す。アパートの手付けを払い、母娘二人の生活が始まった。しかし、最初の夜から、いきなり雨漏りが見つかる。鍵の開いていた上の部屋に入ったダリアは水浸しになっている部屋を見て愕然とする。また、娘のセシリアは「姿の見えない」友達と会話を始める・・・・
私評:私のママになって・・・日本を代表するホラー作家鈴木光司が書いた「仄暗い水の底から」のハリウッド・リメイク版。日本版の映画もすごく好きです。と言うのも、ただ怖いだけの作品ではなく母と娘の深い愛情が描かれているからです。それにしても日本版は怖かった。ビデオで見るとそうでもないのですが劇場で見たときは音の使い方でドッキリさせられましたね。そしてハリウッド版はオスカー女優のジェニファー・コネリーを主演に添え、ジョン・C・ライリー、ティム・ロス、ピート・ポスルスウェイトという脇役を配した万全のキャストに「モーターサイクルズ・ダイアリー」のウォルター・サレス監督という気合の入れよう。ところがこの映画は本来のホラーの枠を大きく外れ、母と娘の絆を綿密に描いた感動作になっておりました。それが吉と出るか凶と出るか・・・。日本の興行成績を見るとそれは歴然としていますね。逆に感動のドラマとして売った方が良かったのかもしれませんが・・・。ジェニファー・コネリーの演技はほとんど完璧。強い母親の愛情と目に見えぬ恐怖と対面する演技は素晴らしい。そして娘役のアリエル・ゲイドちゃんがかわいいんですよ。大きな目がとっても印象的。私の中ではかなり面白い映画ではあるのですが、怖さはほとんどありませんでした。 


前回の記事も読んでね〜!



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