2004/11/2

東京国際映画祭で見た宮崎駿監督の新作、今年のアカデミー女優の
問題作、そして誰もがノーマークであろう邦画の3本がイチ押しです

ハウルの動く城  監督:宮崎駿  声の出演:倍賞千恵子、木村拓哉
Howl's Moving Castle  2004年 日本映画
今週のイチ押し:戦争が始まる。若い兵士たちは銃に花を刺し戦地へと行進する。しかし、それは死への行進でもあった。荒地から繋がる街で小さな帽子屋を切り盛りする18歳の少女ソフィー。その帽子屋は彼女の亡き父が営んでいた店だった。彼女にはレティーという妹がいたが、彼女は街一番のアイドル。この街のカフェの看板娘だった。ちょっと真面目すぎるソフィーは妹が時々羨ましくなるが、コツコツと働いていた。そんなある日、ソフィーは街で美しい青年と出会う。何かに追われているらしい彼は、ソフィーの手をとると空へと飛び上がった。彼はハウルという魔法使いだった。ひと時の空のデートにうっとりするソフィー。しかし、その事が気に入らない荒地の魔女はなんと彼女を90歳のおばあちゃんに変えてしまう。家に帰れないソフィーの前に現れたのは街の人々が恐れおののく「動く城」だった。そこでソフィーは再びハウルと出会う。ハウルは自分の魔法が戦争に使われることが嫌で、ひとり逃げ回っていたのだ・・・・
私評:あなたは弱虫なんかじゃない・・・・さすがに宮崎作品にハズレなし!魔法と科学が同居する時代に起こる戦争で、国王が魔法の力を多用するのですが、それに歯向かう魔法使いハウル。つまり、この映画は反戦の意が強く込められた作品です。それゆえ戦いのシーンはかなりの迫力で、ちょっと怖いくらいでした。しかし、最後の最後には、とびきりの「感動」を届けてくれます。いつもの事ですが、宮崎作品はキャラクターが良いですね〜。ソフィー、ハウルはもちろん、本当に小さな役のキャラクターまでが、とても愛すべき存在。特に私はハウルの弟子のマルクルがお気に入り。今回の主役ソフィーの声を担当した倍賞千恵子は私的にはかなり良かったです。キムタクはあまり期待しないほうが・・・。しかし、まだ何か不完全燃焼な部分があるんです。これは「千と千尋の神隠し」を見た時もそうだった。きっと2度3度と見るうちに、どんどん良さが伝わってきそうな気がします。
モンスター  監督 :パティ・ジェンキンス  出演:シャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ
Monster  2003年 アメリカ映画
今週のイチ押し:1986年。フロリダの町で雨に打たれながらアイリーンは死のうと思っていた。彼女は娼婦。8歳の時に叔父にレイプされて以来、幸せという物から見放されてしまった。愛する人もいなければ、愛してくれる人もいない。しかし、彼女はポケットの5ドルを使ってから死のうと思った。それはたった今、男から稼いだ金。これを使わなかったら、あの男にタダで奉仕したことになってしまう・・・。バーのカウンターでビールを飲んでいたアイリーンにひとりの女が話しかけてきた。彼女の名はセルビー。見るからにレズビアン。最初は邪険にしていたアイリーンだったが、彼女と話をしているうちに心が晴れていく。そしてさっきまで死のうと思っていた事も忘れてしまう。ふたりは急速に親しくなっていく。今の家から実家に帰ることになっていたセルビーを強引に誘い出し、アイリーンは2人でここを離れようと持ちかける。そして約束の夜、アイリーンは資金作りのために男の車に乗っていた。しかし、いきなり凶暴になった男に殴られ、危うく暴行を受ける寸前にアイリーンは銃を抜いた。死体を担ぎ出し、彼の車でセルビーの元へと向かう。そしてふたりの旅が始まった。アイリーンはセルビーのためにきちんとした職を持とうとするが世間は彼女に冷たく、またしても娼婦へと逆戻り。しかも、アイリーンは次々と男たちを殺して金を奪っていた・・・
私評:自分のしてきたこと、全てが許せない・・・・あの輝くばかりの美しさのシャーリーズ・セロンが13kgも体重を増やし、特殊メイクまで施して演じたシリアル・キラー。最初にこの話を聞いたとき、デ・ニーロやトム・ハンクスみたいな事をして、いかにも2番煎じのような気がしてしまった。そして今年のアカデミー賞での最優秀主演女優賞の獲得。いったい、どれくらいスゴイのが見てやろうじゃないか!そして1回目にこの映画を見た時はビックリした。というか、ショッキングだった。あのシャーリーズ嬢がこんな粗野で激しい女を演じるなんて・・・。アカデミー賞も納得の演技だった。そして先日、このモンスター事、アイリーン・ウォーノスの映像を見て、またビックリしてしまった。先日見た、シャーリーズにそっくりじゃないか!そして今日、2回目の「モンスター」を見てシャーリーズの素晴らしさに再び震えました。凄すぎる・・。それにしてもこの監督が「最初からアイリーンはあなたしかできない」と言ったそうだが、それを見抜いた監督もすごい。また、この映画でキーになっているのがセルビー役のクリスティーナ・リッチ。弱い女ではあるのでしょうが、魔性の女なのでしょうね。(しかも、アイリーンにとっての・・)それにしても監督のパティ・ジェンキンスはこの映画が初監督作品!これからを注目したいですね。 
透光の樹  監督 : 根岸吉太郎  出演:秋吉久美子、永島敏行、うじきつよし
 2004年 日本映画
今週のイチ押し:CM製作の会社の社長、今井郷は仕事で立ち寄った金沢で鶴来の街を訪ねた。この街は彼がまだ若かった頃、日本刀作成のドキュメンタリーを作るために来たことがあった。それから25年。昔の面影を追いながら街を走っているとき、一人の女性が目に飛び込んできた。彼女は刀鍛冶の娘、千桐だった。実は今井は25年前の女子高生だった千桐に恋をしていた。千桐は一人娘と病床の父を抱えて、貧しい生活を送っていた。しかも、借金も抱えていたのだ。状況を知った今井は、その借金を自分に払わせて欲しいと申し出る。「そのかわり、あなたを自由にしたい・・」それからふたりの密会が始まる。最初は借金のためと腹をくくった千桐だったが、次第に今井に溺れていく。燃え上がるような恋に身を焦がすふたり。しかし、今井は不治の病に冒されていたのだ・・・
私評:この右手は郷さんの右手、右の乳房は郷さんの右胸・・・・高樹のぶ子原作の官能小説が見事に映像化された。濡れ場が多くR−18になってはいるものの、物語は美しく、そして悲しいラブ・ストーリーになっている。まあ、子供が見てもこの深い恋愛ドラマは理解できないだろうから、R−18で正解かもしれませんが・・・。物語の舞台となる金沢の美しい景色も、この映画の見所。人里離れた料亭に向かう途中、狂ったように咲き誇るカタクリの花。荒波の海を臨む露天風呂。昔ながらの家並み。そして圧巻は悠然と立つ六朗杉。圧倒されました。そして随所に散りばめられたエロチックなセリフの数々。しかし、不思議と嫌らしさを感じない。これは主演のふたりが素晴らしいからなのでしょう。千桐を演じるのは不思議女優、秋吉久美子。彼女はもう50歳だというのに相変わらずアンニュイな魅力がいっぱい。しかも、この映画でバンバン脱ぎます(笑)。この歳で脱げるのはシャーロット・ランプリングか彼女くらいでしょう?今井を演じるのは永島敏行。私はこのふたりの若い頃の、ちょっとエロい作品をけっこう見ているので、本当に大人になったふたりが絡んでいても何の違和感もありませんでした。そして見事なまでに愛のセリフを紡いでいく。これぞ大人の、しかもリアルなラブ・ストーリー。監督は5年ぶりに作品を撮った根岸吉太郎。
エクソシスト ビギニング  監督:レニー・ハーリン  出演:ステラン・スカルズガルド、イザベラ・スコルポ
Exorcist Beginning  2004年 アメリカ映画
メリーは故国のオーストリアを離れ、今はアフリカの地にいた。彼は信心深い神父だったが第2次世界大戦中に巻き込まれたナチスの残虐な行為から人々を救えなかったことを悔いて、今は聖職を離れ考古学者となっていた。そこで彼は古美術商の男と出会い、教会遺跡の発掘チームに加わることになった。まだ、キリスト教が布教する前に建てられた教会。しかも、その教会は建ててすぐに埋められた形跡があった。そこでメリンは若き神父フランシス、そしてミステリアスな女医のサラと出会う。そんなある日、村の少年のジョセフに異変が起こる。まずは、彼の兄が突然ハイエナに襲われ絶命する。すぐそばに、ジョセフがいたにも関わらず、ハイエナは彼の兄だけを狙ったのだ。そして起こる連続猟奇事件。現地人はジョセフに悪魔が取り憑いたのだという。メリーは発掘中の教会の中でおぞましい物を発見する。逆さに吊るされたイエス、そして更に奥へと続く階段。そこで彼がみたものとは?・・・・・
私評:目の前に神はいないぞ、メリン・・・・とにかく私は1973年版の「エクソシスト」が怖い。それは少年時代に見たあの恐怖が、細胞の奥深くまでしっかりと浸透してしまっているからでしょう。他のホラー映画はたいていひとり、部屋で(しかも電気を消して)見ていても全然平気なのですが、この「エクソシスト」だけはダメなんです・・。という訳で、私にはめちゃめちゃ怖い映画でした。「エクソシスト」の1作目を髣髴するようなシーンが随所にあるので、1作目とオーバーラップしてしまうのです。クライマックスで悪魔とメリンの対決は心臓が飛び出しそうでした。しかも、映画館が空いていたのでよけいに怖かったです。こんな時は日頃はうるさいと思っているおしゃべりな観客や、携帯の明かりが欲しくなります・・・(笑)。主演は『ドッグヴィル』『キング・アーサー』のステラン・スカルスガルド。彼の起用は正解でした。あのメリー神父の何とも言えない不気味さと、若さからの行動力を兼ね備えていました。そしてサラ役は『サラマンダー』のイザベラ・スコルプコ。彼女は美しいですよね〜。そして監督は(一応)レニー・ハーリンらしい。しかし、彼の前に監督を務めていたポール・シュレイダーがどれだけ撮影をしていて、それをどれだけ使ったのかは不明。どう見ても、レニー作品じゃないんですよね・・。特撮部分だけ、彼が手掛けたとか??
シークレット・ウインドウ  監督 :デヴィッド・コープ  出演:ジョニー・デップ、ジョン・タトゥーロ
Seacret Window  2004年 アメリカ映画
人気作家のモート・レイニーは湖畔の家でひとり執筆をしていた。しかし、彼は妻と離婚調停中で執筆にも身が入らず、スランプに陥っていた。そんなある日、彼の目の前にシューターという男が現れる。彼はモートが書いた『シークレット・ウインドウ』という作品はシューターの書いた『種まきの季節』の盗作だというのだ。最初は気に留めなかったモートだったが、執拗なシューターの嫌がらせが始まる。愛犬が殺され、そして彼の周りで次々と恐ろしい事件が起こる。その度にシューターが現れ、モートを脅迫するのだ。彼の条件はただ一つ。『シークレット・ウインドウ』は盗作だと世間に認め、エンディングが違う『種まきの季節』をシューターの名前で出版し直すことだった。しかし、シューターが物語を書いたという時期より早く、モートは執筆を済ませていた。その証拠となる雑誌が妻に家にあった。期限は2日。それが証明されれば、彼は身を引くというのだが・・・・・
私評:なぜ、昨夜電話に出なかったの?大変なことが起こったのよ・・・スティーブン・キング+ジョニー・デップという、私のとっては何とも美味しい組み合わせの映画。とにかくこの映画はジョニー・デップのひとり舞台。不気味な男ジョン・タトゥーロがあれだけ映えるのもジョニーの演技があってこそだ。とにかくこの映画は最初から最後までジョニーの演技に掻き回されっぱなし。ラストのオチも納得の展開でしょう。しかし、勘のいい人はこの映画の結末をかなり早い時点で嗅ぎつけてしまうかもしれません。実は私も偶然、この映画の結末が分かってしまいました。しかし、そこで映画の楽しみが終わってしまうのかというとそうではない。逆にそれからが「映画的には」面白いのです。モートとシューターの行く末はどうなるのか??これは間違ってもここでは言えません。キングのファンにはたまらない展開が待っています。主演はもうすっかり演技派のジョニー・デップ。彼の妻を演じるのは「コヨーテ・アグリー」のマリア・ベロ。そして彼女の新しい恋人は「ダーク・ハーフ」のティモシー・ハットン。監督は脚本家として有名なデヴィッド・コープ。
レディ・ジョーカー  監督 :平山秀幸  出演:渡哲也、長塚京三、徳重聡
Lady Jorker  2004年 日本映画
日之出ビール社長の城山が誘拐された。犯人は『レディ・ジョーカー』と名乗った。やがて身代金の要求が届く。金額は5億円。そして受け渡しが行われるが、警察は2回に渡って失態を演じてしまう。結局、金の受け渡しは行われず、城山も解放された。これで事件は終わったと世間は思っていたが、「レディ・ジョーカー」は城山を監禁中に、彼に大胆な犯行声明をする。それは日之出ビールの生命を断ち切ることもできる、恐ろしい犯行だった。犯人グループは競馬場で知り合った、何の共通項もない男たち。日之出を憎む男、金が欲しい男、日之出のスキャンダルに乗じて株で儲けようとする者・・・。そして日之出の取引きは無事に終わったかのように思えたが・・・・・・
私評:メリー・クリスマス、レディ・・・・高村薫さんの超ベストセラー小説が映画化された。私も5年位前に小説を読んだが、圧倒的な迫力でかなりの長編であるにもかかわらず一気に読み終えてしまった。映画がどうだったかというと、かなり消化不足の感が拭いきれません。あの長編を2時間に収めようというのが、まず持って無理でしょう。それゆえレディ・ジョーカーたちの、心情の深い部分に手が回らず、(特に布川淳一、高克己)最後は観客に彼らの行く末を投げっぱなしで終わったりしている。逆に渡哲也演じる物井清三には思い切り時間を割いているけど・・(この辺りは石原プロの力が働いているのかも??)とにかく、かなりのシークエンスが尻切れトンボ状態。これじゃあ、せっかくの原作も生きてこないでしょう・・。平山監督の前作「OUT」が好きなだけに、とても残念です。主演は存在感がピカイチの渡哲也。今回は小市民の役なのですが、やはり彼が放つオーラは異彩を放っています。そして彼の仲間は大杉漣、吉川晃司、吹越満、そして加藤晴彦。警察側は新人の徳重聡、國村隼。日之出ビール側は長塚京三、岸辺一徳、辰巳琢郎・・という豪華な顔ぶれ。中でも一番目を引いたのは吉川晃司です。彼は良い役者になりましたね!


前回の記事も読んでね〜!



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