2013/10/5

今回は単館系が強い!園子温の超絶コメディ、
哀しいヴァンパイア、そして実話の救出劇。ジャンルは違えど
どれもおススメ。実は今回は他のふたつもおススメです

地獄でなぜ悪い  監督 : 園子温  出演 :國村隼、長谷川正巳、堤真一、二階堂ふみ
Why Don't You Play In Hell  2013年 日本映画
今週のイチ押し:武藤組の武藤大三は妻のしずえに面会するため刑務所を訪れた。しずえは大三の留守中に敵対する北川会の襲撃を受けて、ひとりで応戦するがそれが過剰防衛とされ投獄されたのだ。その事件が元でCMが決まっていた娘ミツコのオンエアーはなくなり、しずえは心を痛めていた。そんなしずえのために大三はミツコを主演にした映画を知り合いのプロデューサーに頼んでいたが、ミツコは仕事をボイコットして失踪してしまう。ようやくミツコを見つけて確保するも時すでに遅く、ミツコには代役が立てられていた。大三は仕方なく組員を集めて映画製作をする事を発表する。しかも、北川会を継いだ池上と言う男は、積年の恨みを晴らさんと一度は手打ちをした武藤組に宣戦布告をしていたのだ。武藤の手下のアイデアで北川会に殴り込みをかけて、それを映画に撮ることにしたが誰もが素人ばかり。監督もミツコが強引に監督を押しつけた公次で、右も左も分からない。そんな時、偶然神社に木箱から古い紙切れが出てくる。そこに書かれていたのは・・
私評:♪全力歯ぎしりLet’ Go!ギリギリ歯ぎしりLe’s Fly・・・園子温監督が久々にハチャメチャな映画を作りました。この映画はコメディです。この映画はバイオレンスです。この映画はラブストーリーです。そしてこの映画は監督の心の叫びです。とにかく映画への愛がいっぱい詰まった映画です。園監督の名作中の名作「愛のむきだし」をさらにパワーアップさせて凝縮した感じ?そして恐らく園監督が好きなのであろう、深作欣二監督の「仁義なき戦い」のオマージュ的映像もけっこう盛り込まれています。いや~面白かった。今年一番、アドレナリンが分泌された映画かも??北川大三役は脇役として数々の映画に出演している國村隼!敵対する北川会を継いだ池上役には「俺はまだ本気出してないだけ」の堤真一。映画集団ファックボンバーのリーダーでとにかく映画命の男・平田を演じるのは「家政婦のミタ」の長谷川博巳。彼は園監督の分身です。騒動に巻き込まれる公次役は役者として歌手として、そして作家として人気を博す橋本公次。しずえ役はお笑い芸人の友近。そして注目はミツコ役の二階堂ふみ。「ヒミズ」「悪の経典」「脳男」などですごいインパクトを残して彼女ですが、このミツコ役は最高。園監督は満島ひかりに続き、沖縄出身のすごい女優を育てました!監督は「冷たい熱帯魚」「ヒミズ」の園子温。
ビザンチウム  監督 : 二ール・ジョーダン  出演 : ジェマ・アータートン、シアーシャ・ローナン
Byzantium  2012年 イギリス・アイルランド映画
今週のイチ押し:16歳の少女、エレノアは姉のクララと一緒に住んでいる。クララはストリップのダンサーをしていたが客と喧嘩をして店を飛び出した。そんな彼女をずっと追ってくる男の影があった。男はクララを家で追い詰め捕らえようとするが、逆にクララにワイヤーで首を切られてしまう。血だらけの部屋に火を放ちクララはエレノアを連れてその町を後にした。ふたりが辿りついたのは海辺の町だった。実はふたりはヴァンパイアで19世紀から生きている。しかも、クララはエレノアの母親だった。クララを変えたのはダーヴェルと言う男。彼は戦地で重い病気にかかり死にそうになるが、ある孤島の小さな神殿で儀式を受けて不老不死のヴァンパイア軍団の一員になったのだ。その事実を知ったクララは自ら島を訪れヴァンパイアとなるが、男だけで構成される「同盟」からは除外され追われる身となったのだ。数年後、彼女は成長した娘エレノアにも儀式を受けさせ不老不死の体にした。そして現在に至るまでふたりは逃避行の人生を送ってきたのだ・・
私評:あなたに平安を、光に導かれますように・・・これは哀しいヴァンパイア映画です。しかし、普通のヴァンパイアと違うのは噛まれたからヴァンパイアになるのではなく、ある島の小さな石の祠に入るとヴァンパイアになるのです。その時、蝙蝠たちが飛び交い、島を流れる水の色は赤く染まる。しかし、彼らの生きる糧は人間の血。そこは変わりません。不老不死でクララとふたりで生きてきたエレノアは常に孤独を感じていて、永遠の時間も重荷になっていく。そこがこの映画のメインテーマ。そんなヴァンパイアの哀しみを見事に描いています。そして素晴らしいのが映像です。明るい映像はまったくなくどんよりした曇り空か夜の映像ばかりなのですが、これがまた哀しみを増幅させるのです。主演は「ヘンゼル&グレーテル」「タイタンの戦い」のジェマ・アータートン。セクシーで凶暴で、そして母性が強いというクララを見事に演じています。エレノア役は「ラブリー・ボーン」のシアーシャ・ローナン。彼女もすっかり大人っぽくなりました。その他、サム・ライリー、ジョニー・リー・ミラー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。監督は「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」以来、久々にヴァンパイア映画を撮ったニール・ジョーダン。哀しくも美しい映画でした・・・。
キャプテン・フィリップス  監督 : ポール・グリーングラス  出演 : トム・ハンクス
Captain Phillips  2013年 アメリカ映画
今週のイチ押し:20093月。いつも通りの準備を整え仕事に向かうリチャード・フィリップは空港で妻と別れた。彼はマークス海運に勤めていて、今回の仕事はオマーンからケニアに物資を運搬するコンテナ船の船長。オマーンのサラーサ港を無事に出発して船は大海へと出た。時を同じくしてソマリアの海岸では海賊の人集めが行われていた。2台の小型ボートを率いて沖に出た彼らは簡易レーダーで単独で航行する大型船を発見する。それこそフィリップが乗船するコンテナ船だった。海賊の襲撃に備える訓練をしている最中、猛スピードでこちらに向かってくる2台のモーターモートを発見したフィリップは、船の速度を上げて左右に舵を取る事で波を起こし、彼らを封じ込める。しかし、翌日にふたたびモーターボートがやって来る。エンジンも2つになりスピードを増したボートはコンテナ船に近づき、銃撃を開始。フィリップスは船員たちに訓練通り船底のエンジンルームに隠れるよう指示をする。やがて、ボートに追いつかれ、乗船してきた若者たちに抑え込まれたフィリップスと数名のクルーたちは必死に交渉をするが・
私評:訓練通り隠れて合言葉を言うまで出てくるな!みんな頑張れ!・・・2009年に実際に起こった事件です。その時最後に救出されたフィリップスの手記がこの映画のベースになっています。最初の30分でフィリップスの人柄や家族、そしてソマリアの若者たちの実情が上手にさっさと描かれます、そして海賊との攻防を経て舟が乗っ取られ、そしてフィリップを人質に・・・。このように話がどんどん進んでいきます。銃を持っているソマリアの若者たちはたったの4人。そして船長救出のためにアメリカが放ったのは2席の戦艦、ヘリコプター、そして最強のSEAL。この攻防はまったく先が見えず、ハラハラドキドキの連続。刻一刻と変わっていく状況下でフィリップはどのように救出されたのか??それは映画を見てのお楽しみです。しかし、この監督の映画ってカメラを固定しないで手持ちで撮影するので、ただでさえ揺れている船の上でさらに揺れて・・・。私はこの撮影法はどうも苦手です。主演はアカデミー賞の常連、ハリウッドの名優トム・ハンクス。これまで「フィラデルフィア」「フォレスト・ガンプ」で2度オスカーを手にしていますが、この作品でまた獲るかも??出演シーンは少ないですが彼の奥さん役は「マルコヴィッチの穴」のキャサリン・キーナー。出演シーンの多いソマリアの若者たちは無名の俳優たちです。監督は「ボーン・スプレマシー」「ユナイテッド93」のポール・グリーングラス。
パッション  監督 : ブライアン・デ・パルマ  出演 :レイチェル・マクアダムス、ノオミ・ラパス
Passion  2012年 フランス・ドイツ映画
クリスティーンは若くして広告会社のエグゼクティブに登りつめた美女。プライベート生活も派手だが現在勤務しているベルリン支社からNYの本社への復帰を虎視眈々と狙っている。彼女の部下のイザベルは新作のスマートフォンのプロモーションビデオを作りあげた。クリスティーンの承認を得てロンドンで行ったプレゼンは大成功。喜びを隠せないイザベルは出張に同行したクリスティーンの愛人のダークと熱い一夜を共にした。意気揚々と帰国したイザベルだったが、彼女の手柄はすべてクリスティーンのものになっていた。失意に落ち込むイザベルをクリスティーンは巧みな優しい言葉で手なずけて、あやつり人形化していくのだった。しかし、クリスティーンの冷酷な本性に気付いたイザベルは、かつてクリスティーンに横取りされたビデオを動画サイトに公開。するとそのビデオは世界中で称賛を浴びて、イザベルはクリスティーンを差し置いてニューヨークへの栄転のチャンスを物にした。しかし、タダでは転ばないクリスティーンはイザベルに反撃をしかける・・・・
私評:あの女は欲しい物はどんな手を使っても手に入れる・・・監督のブライン・デ・パルマが往年の彼の名作にたいして自らオマージュを捧げるような作品を作った。2画面に分割して見せる演出、目元のアップの多用、恐ろしい夢から何度も覚醒、そしてラストは・・・、セクシーで怖い!これらは彼の「殺しのドレス」や「ミッドナイトクロス」で見せた演出。だから、彼の昔の作品を見ている人は「お!これぞデ・パルマ映画!!」と膝を叩いてしまうと思います。作品は事件のオチがイマイチな感じがしたのですが、監督のテイストを感じる事ができるファンには溢涎の作品です。私も終始ニヤニヤしながら見ていました!クリスティーン役は「きみに読む物語」のレイチェル・マクアダムス、イザベル役は「ミレニアム」シリーズのリスベット役でブレイクしたノオミ・ラパス。このふたりの掛け合いがすごい!そしてイザベルの部下のダニ役には「パフューム ある人殺しの物語」のカロリーネ・ヘルフルト。監督のブライアン・デ・パルマは「ミッション・インポッシブル」みたいな映画も良いけど、やっぱりミステリーを撮って欲しいですね。
謝罪の王様  監督 : 水田伸生  出演 : 阿部サダヲ、井上真央、高橋克実
 2013年 日本映画
謝罪屋を生業とする黒島譲はどんなもめ事も丸く収めてしまう。司法書士を目指している帰国子女の倉持典子は車を運転中に追突事故を起こしてしまう。しかも、相手はヤクザ。海外では簡単に謝るものではないと仕込まれていた典子は相手を更に怒らせて、しまいには示談金400万円+デリヘル勤務という誓約書にサインをしてしまう。こんな事件も誠意を持って対応すれば即解決!こうして典子は黒島の元でアシスタントとして働くことになった。下着メーカーの沼田のセクハラ事件、暴行事件を起こした息子のために完璧な謝罪会見をしたい大物役者夫婦と、黒島は次々と奇想天外な手口で和解を取り付けて行く。そんな時、ある映画会社が作っていた作品にマンタン王国の皇太子がエキストラで出演したシーンが問題になり、国家間の大問題になってしまうが・・・・
私評:確かに・・パシカニ・・パスカル・・ラスカル・・・私も以前に勤めていたホテルで「謝罪」の技術は思い切り叩きこまれていますが、さすがに土下座はしたことがありません。相変わらずのハイテンションの阿部サダヲにどれだけ付いていけるかがこの映画を楽しめるかどうかの境目。150%、いや200%のパワーでガツガツ笑いをむさぼる彼の演技はもはや神技です。わたしは好きなんですよね~。また、今回は幾つかのエピソードがあるのですが、それらが時系列をずらして描かれていて、最終的には繋がっていくという技が使われています。これは脚本の宮藤官九郎が舞台で用いる方法。これがこの映画ではすごく生きています!主演の阿部サダヲはもちろん良いのですが、共演者も最高です。典子役には「八日目の蝉」で日本映画アカデミー賞女優賞を獲った井上真央。コメディもイケますよ!セクハラ社員役には「悪人」「宇宙兄弟」の岡田将生。彼にセクハラされる上司には「そして父になる」の尾野真千子。彼女ってコメディエンヌ方が合っていますね。むかつく大物俳優には「フラガール」の高橋克実、その妻の女優には「容疑者Xの献身」の松雪泰子、そして国際弁護士箕輪には竹ノ内豊。監督は「舞妓Haaaan!!!」「泣くもんか」「綱引いちゃった」の水田伸生。エンドクレジットで流れるE-girlsの「ごめんなさいのKissing You」がまた、グッドです!そして「腋毛ボーボー・・」の一節も頭に残ります・・・。


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