見てください。ずらりと並んだ邦画の数々。
今週は5作品のうち、なんと4作品が邦画。
しかも、秀作が揃っています。今週はどれをイチ押しにしてもおかしくない。
さよならCOLOR | 監督・出演:竹中直人 | 出演:原田知世、段田安則 | |
2004年 日本映画 | |||
今週のイチ押し:海岸沿いの病院に勤める佐々木正平の元に、一人の患者が訪れる。彼女はなんと彼の高校時代からの憧れの女性笈川未知子だった。彼女は子宮ガンを患っていた。正平は未知子に自分のことを憶えているか?と聞くが、彼女の記憶の中に正平はいなかった。その日から正平はなんとか自分のことを思い出してもらおうと、未知子の病室に通うが・・。一方、未知子には雅夫という恋人がいるが、彼は未知子の友人と浮気中。しかも、彼女は雅夫の子供を宿していた。正平は未知子のガンの治療に没頭し、全ての力を注ぎ込んでいた。その甲斐あって未知子の病気は徐々に回復していたが、彼女の治療に没頭していた正平の体も恐ろしい病魔に冒されていた・・・ | |||
私評:ぼくは、ずっとずっと君にこだわるんだ・・・竹中直人って役者としてはあまり好きになれないのですが、彼自身の監督作品の中では本当にイイ味を出しています。そのキャラクターのどれもがとても「惨め」で「カッコ悪い」のですが、どれもが「ピュア」で「一途」なのです。彼の前作「連弾」では惨めな夫&父親、「東京日和」では妻に翻弄され続ける夫を見事に描き、今回の「さよならCOLOR」では高校時代からの「気持ち悪い男」の純愛物語。そのほのぼのとしていて淡々とした演出とは裏腹に、「一途な心」が成しえるかもしれない奇跡と、そして胸を締め付けるような結末に私は泣いた。本当に心から泣いた・・。監督・主演は竹中直人。そして今回のヒロインは飄々とした雰囲気と凛とした表情を持ち合わせる不思議女優の原田知世。そして私の目を引いたのは正平に援交を迫る女子高生役の水田芙美子。「スウィングガールズ」でちょっと不良のベーシストを演じた子です。その他段田安則、中島唱子、三浦友和、中島みゆき、内村光良、風吹ジュンなどなど。そしてエンドクレジットで流れる永積タカシの歌う「さよならCOLOR」がまたイイ歌なんです。 | |||
メゾン・ド・ヒミコ | 監督:犬童一心 | 出演:オダギリジョー、柴咲コウ | |
2005年 日本映画 | |||
今週のイチ押し:塗装会社の事務員として働く沙織は、ある事情から借金を抱えていて、仕事の合間に風俗のアルバイトの募集を読んだりしている。そんなある日、彼女の元に晴彦という美しい男がやってくる。彼は沙織の父親での恋人だった。沙織の父は彼女と母親を捨ててゲイになったのだ。晴彦は沙織に彼女の父「卑弥呼」が作ったゲイのための老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」の雑用のバイトをするよう依頼しに来たのだ。実は「卑弥呼」は末期ガンで余命幾許もないのだ。破格のバイト料と遺産をチラつかされた沙織は恐る恐る「メゾン・ド・ヒミコ」を訪ねた。個性的な住人たちに最初は嫌悪感を抱いていた沙織だったが、次第に彼らと打ち解けていく。しかし、そんなある日沙織は彼女の母親が、沙織に内緒で父親に会っていたことを知って愕然とする・・ | |||
私評:沙織に会いたい ピキピキピッキー!・・柴咲コウというのは本当に不思議な女優だと思う。普段の彼女にはちっとも魅力を感じないのですが、スクリーンの彼女の放つオーラはすごい。「GO」でも「着信アリ」でも「黄泉がえり」でも、彼女は本当に魅力的だった。そして今回の「メゾン・ド・ヒミコ」はそんな彼女の真骨頂。あの大きな瞳に不安をいっぱい抱えた女性を好演。晴彦を演じるオダギリジョーも良い感じなのですが、今回は完全に脇役。(クレジットでは彼の名前が一番ですが・・)そして超個性的なゲイの皆さんがめちゃめちゃ楽しくて、時には切なくて素晴らしいです。特に「卑弥呼」を演じる田中泯とルビーを演じる歌澤寅右衛門の演技(もしかして地なのかも?)は素晴らしかった。監督の犬童一心監督は「タッチ」の監督でもあるのですが、やはり「ジョゼと虎と魚たち」や「金髪の草原」が代表作。そして今回もそんなリアルなんだけど、ちょっとファンタスティックな、そして悲しいのだけれど、ふっと笑顔になれそうな演出が最高。そして映像の美しさも注目です。私はディスコで尾崎紀世彦の『また逢う日まで』にあわせて踊るシーンが好き〜。 | |||
運命じゃない人 | 監督:内田けんじ | 出演:中村靖日、板屋由夏 | |
A Stranger of Mine | 2005年 日本映画 | ||
サラリーマンの宮田は典型的な『イイ人』。結婚を前提に付き合いマンションを買った途端に姿を消してしまった元カノの、あゆみの事まで心配しているお人よし。そんな宮田のことをいつも歯痒く思っているのが神田。その夜、宮田の元に神田から電話が入った。「あゆみの事で話がある」。その誘いに乗って宮田は指定されたファミレスへとやってきた。神田は宮田にあゆみの事を忘れて新しい恋を見つけるように言い、突然後ろの席に座っていた真紀に声を掛け、自分は仕事が入ったと席を立ってしまう。宮田と真紀は何とか食事を終え、宮田は家に送ろうとするが、彼女は婚約破棄をされたばかりで帰る家がなかったのだ。イイ人の宮田は彼女のために自分のベッドを提供するが、なんとその夜彼の家に別れたはずのあゆみがやってきた・・・・ | |||
私評:30を超えたらもう運命の出会いとか、自然の出会いとか一切ないから。もうクラス替えとか文化祭とかないんだよ・・・・・みなさんから絶賛の声も寄せられ、私もあのアヤシイ予告編を観て以来とても気になっていた映画をやっと観てきました。みなさんが賞賛する理由は映画を観れば一目瞭然。まずは、時間を行ったり来たりする摩訶不思議な演出。最初は戸惑っていたものの、段々と快感になってくるから不思議。そしてシュールなんだけど、妙に的をついたセリフの数々。「電話帳をなめるな!」は名言かも??それにしてもこの映画の宮田は絵に描いて額に入れたような『イイ人』。そんな彼の周りで大事件(?)が起こるのですが、彼はいつも浮いている。そしてついには暴力団とそこから盗まれた金を巡っての大活劇に・・??このエンディングは予想できなかったですね〜。主演の宮田役は中村靖日、真紀役は霧島れいか、神田役は山中聡、そして(一番私の目を引いた)あゆみ役は「光の雨」の板屋由夏。監督はこれが長編デビュー作となる内田けんじ。この映画は「ぴあ・フィルムフェスティバル」のスカラシップ作品です。 | |||
シンデレラマン | 監督:ロン・ハワード | 出演:ラッセル・クロウ、レネー・ゼルウィガー | |
Cinderella Man | 2005年 日本映画 | ||
ボクサーのジミー・ブラドックは家族のために戦い続けた。連戦連勝で将来を有望視されたジミーだったが1929年、右手のこぶしの骨折を折りに連戦連敗。しかも、アメリカは大恐慌になり、彼は今まで稼いだ金を全て失くしてしまった。それから4年。彼は日雇いの仕事や時々のボクシングの試合で金を稼いでいたが、その金は家族4人を養うにはあまりに少なすぎた。しかも、怪我を押して出場した試合で彼は再び右手を骨折しボクシングのライセンスまで取り上げられてしまう。ついには生活保護の列に並ぶジミーの姿があった。そしてかつてのボクシング委員会でカンパを求めたり・・。プライドをかなぐり捨ててでも家族を守りたいという彼の姿はある者には同情を、そしてある者には嫌悪感を与えた。しかし、そんなジミーにチャンスが巡ってきた。明日のボクシングの試合で世界ランク2位の男と戦う挑戦者が見当らず、彼に白羽の矢が立ったのだ。もう、絶頂期は過ぎたジミーだったが家族のために再びリングに上がることを決意した。それは彼にとっての引退試合になるはずだった・・・・ |
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私評:リングでの苦痛なら耐えられる・・・・こんなすごいボクサーが実在したんですね〜。『ロッキー』も真っ青のアメリカンドリームを手にした男。そして大恐慌時代の荒んだ世の中で民衆のヒーローとなった男。そんな彼の原動力はすべてが「家族への愛」だ。そしてそんな彼を献身的に支える妻と、そんな父をいつも慕っている子供たち。そんな姿は素朴ではあるけれど偉大なのですね。こんな映画的な人物がいたのに、なぜ今まで映画にならなかったのかが不思議なくらい、この映画は感動的でした。主演はラッセル・クロウ。私生活では暴れん坊ですが、こういう心優しい男の役もピタリとはまるから役者はすごいです。妻のメイ役はレネー・ゼルウィガー。この映画では良妻賢母を演じましたが、私生活ではすごいスピード離婚で世間を沸かせました。役者って本当にすごいです。そしてジミーのマネージャー役は「アメリカン・スプレンダー」のポール・ジアマッティ。監督はこういう人情ものを扱わせたら天下一品のロン・ハワード。彼の次の作品はあの「ダヴィンチ・コード」ですね。ストレートに感動したい人にはおススメの映画です。 | |||
忍 SHINOBI | 監督 : 下山天 | 出演:仲間由紀恵、オダギリジョー | |
Heart under Blade | 2005年 日本映画 | ||
徳川家康によって江戸幕府が作られ、天下泰平の世の中が訪れた。そんな時、家康の腹心南光坊天海は、伊賀と甲賀の奥地に住む「忍」たちの存在を危ぶみ、家康に忍同士の戦いを焚きつけた。さっそく家康に呼びつけられた伊賀のお幻と甲賀の弾正は、それぞれの部落から5人の兵を出し、戦うことを命令した。そしてそれぞれの砦から選ばれた者たちは、死闘を開始した。しかし、甲賀の次期頭領である弦之介と伊賀の次期頭領の朧は深い恋に落ちていた。弦之介は戦いを避けるため家康に直訴に向かう。しかし、残酷な運命は彼らを戦いへと誘っていくのだった。果たして、勝者は伊賀か、甲賀か??・・・・ |
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私評:運命など、変えてみせるさ・・・・山田風太郎の「甲賀忍法帳」の映画化です。私は山田風太郎作品はけっこう好きで読んでいるのですが、彼の原作はすごく映画的に描かれているので、実際の映画になるとちょっと物足りないという現象がたびたび起こります。「魔界転生」なんてその良い例ですね。今回の『甲賀忍法帳』は伊賀、甲賀の10人のユニークな忍者たちの戦いが原作の中でも一番の見所なのですが、特撮と生身のアクションがうまく絡み合い良い映画になっていました。セットの崩壊シーンなどは、かなりの迫力の映像になっています。そんなアクション映画の中で「ロミオとジュリエット」のような恋に落ちる弦之介と朧のふたりの絡みがすごく良いです。それぞれを演じるオダギリジョーと仲間由紀恵はビジュアル的にも最高の取り合わせ。そして忍者衆に椎名桔平、黒谷友香、りりィ、寺田稔、坂口拓、江尻エリカなど個性派俳優が勢ぞろい。監督は映画以外にもざま様なビジュアルアーティストとして活躍する下山天。 |
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