今回は邦画が強い!特にイチ押しの2作品は私的には
かなりお気に入りです!!
夕凪の街 桜の国 | 監督:佐々部清 | 出演:麻生久美子、田中麗奈 | |
2007年 日本映画 | |||
今週のイチ押し:広島に原爆が落とされてから13年。皆実は母親とふたり暮らし。貧しいながらも明るく生きていた。そんな彼女に思いを寄せる青年がいた。同僚の打越だ。ある日、彼は皆実に思いを伝える。しかし、彼女の口からは思いもよらぬ返事が返ってきた。実は彼女の妹は原爆の被害者で、皆実の背中で息を引き取ったのだ。奇跡的に生き残った皆実は「生きていてはいけない」、そして「幸せになってはいけない」のだという。ところが彼女も被爆していたのだ。やがて原爆は彼女の健康をも蝕み始める・・、そして現代。皆実の姪に当たる七波は、父親の不可解な行動を心配していた。(父は皆実の弟)思いきって父を尾行した七波は幼馴染の東子と出会い、一緒に父を追跡することに。父が向かったのは広島だった。そこで彼は姉の皆実に所以のある人たちを訪ねまわる。そして七波は、父と母の縁についても知ることに・・ | |||
私評:「何で原爆は広島に落ちたんだ!」「落ちたんじゃない、落とされたのよ」・・・毎年8月6日になると広島に落ちた原爆についてTVの特番がたくさん放送され、この歴史的な悲劇を風化させないよう私たちに訴えかける。この映画でも原爆の恐ろしさ、悲惨さを真正面から描いている。しかし、この映画で衝撃的だったのは、直接被爆していないいわゆる2世代目、3世代目の悲劇だった。皆実の弟の旭は疎開していたため、被爆はしていないが、彼が愛した女性は被爆者・・。これは悲劇の連鎖を呼ぶだけなのでしょうか?・・この映画で一番の見所は麻生久美子の演技です。クレジットでは田中麗奈の方が上ですが、誰がなんと言おうと、この映画の主演は麻生久美子です。儚く散った女性をみごとに演じています。しかし、彼女のセリフは怖いくらいストレート。私評の冒頭のセリフもそうですが・・。七波役は田中麗奈。現代娘らしい溌剌とした演技がグッドです。そして良かったのが脇役の4人。藤村志保、堺正章、吉沢悠、そして伊崎克則・・。完璧です。監督は「半落ち」の佐々部清です。 | |||
怪談 | 監督:中田秀夫 | 出演:尾上菊之介、黒木瞳、麻生久美子 | |
Kwaidan | 2007年 日本映画 | ||
今週のイチ押し:煙草売りの新吉は美しい顔と優しい心を持った青年。彼が三味線の師匠、豊志賀と出会ったのは偶然ではなかった。そしてふたりが深い中になるのも・・。実は新吉の父親は御家崩壊した武士で、豊志賀の父はしがない高利貸し。豊志賀の父は新吉の父に裏切られ殺されたのだ。最後に「怨みます・・」という言葉を残して累ヶ淵に捨てられた。そんな過去を知らず新吉と豊志賀は愛し合う。異常なまでな嫉妬心で新吉を束縛する豊志賀は、ある日顔に怪我を負ってしまう。そしてその怪我が元で彼女は死んでしまう。豊志賀が残した遺言は「この後女房を持てば必ずやとり殺す」という恐ろしい言葉。新吉は豊志賀の弟子のお久と江戸を離れふたりの故郷である羽生へと向かう。しかし、そんなふたりにも過去の忌まわしい呪いが降りかかる・・・・ |
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私評:ずっとずっと一緒だよ・・・・これは有名な三遊亭円朝の原作「真景累ヶ淵」の映画化。「累ヶ淵」は過去に何度も映画化されているが、今回はその決定版。しかし、日本の怪談は本当に怖い。スラッシャー映画のような殺人鬼とは、違い怨みつらみで殺される・・。女の恨みはマジで怖い・・?ましてや美しい女の恨みは、もっと怖い・・・。悲劇の連続でボロボロになっていく新吉が可愛そうでした。しかし、ラストで豊志賀の胸に抱かれた新吉の顔の穏やかさがせめてもの救いかも?そして美しい映像も見所のひとつです!新吉役は歌舞伎界のホープ尾上菊之助。彼がこの映画の核になるのですが、この役はピッタリでした。そして豊志賀役は黒木瞳。めっちゃ怖いです・・。そして新吉の周りに集まってくる不幸な女たちに井上真央、麻生久美子、瀬戸朝香。ちなみに衣装担当は黒沢明の娘、黒沢和子です。監督は「リング2」でハリウッドデビューした中田秀夫。この映画は世界50カ国で公開されるらしいのですが、海外でも良い評価を得て欲しいですね。 | |||
ブラインドサイト 小さな登山者たち | 監督:ルーシー・ウォーカー | 出演:サブリエ・テンバーケン、エリック・ヴァイエンマイヤー | |
Blidsight | 2006年 イギリス映画 | ||
チベットでは盲目の人たちはひどい差別にあっている。それは子供たちも同じこと。そんな彼らに手を差し伸べたのはドイツ人の女性サブリエ(彼女も盲目)。当初は中国政府からも反発を受けた彼女だったが、チベットの子供たちの教育を施すために学校を設立した。そんなある日、サブリエと子供たちに全盲のアメリカ人登山家のエリックの存在を知り、彼を学校に招待する。ダメもとで書いたサブリエの手紙がエリックの心を動かしたのだ。そしてついに彼はチベットにやってきた。その時、エリックの口からとんでもない提案が飛び出す。なんと、子供たちと一緒にエベレストの北側の7000mの山に登るというのだ。そして6人の少年少女が選ばれた。彼らは皆、それぞれに厳しい状況の元で生きている。そんな彼らの挑戦が始まった・・・・ | |||
私評:ボクは絶対最後まで諦めない・・・・これはとんでもないドキュメンタリーでした。(チベットは人口250万人のうち3万人が盲目だそうです。)ただでさえ大変な7000メートルの山に全盲の子供たちが登る。もちろん、足場も悪いし、この挑戦には危険がいっぱい付きまとう。それゆえ、彼らをサポートするスタッフも最高のメンバーが揃った。そしてマンツーマンで山を登っていく。私の心を強く惹きつけたのは少年少女の無垢さと、そして最後までやりぬく!という心の強さだ。これを成し得ればきっと何かが変わる!彼らがそう信じているのです。私は最近、「何があっても最後までやり通す」という気合が足りないような気がしていたのですが、そんな彼らが歯を食いしばって頑張っている姿は、私の力になりました。そしてそれは私だけではなく、映画を観る全ての人が感じることができる力だと思います。そして小さな登山者たちにエールを送りたくなりますよ・・。 | |||
フリーダム・ライターズ | 監督:リチャード・ラグナヴェネーズ | 出演:ヒラリー・スワンク、イメルダ・ストーントン | |
Freedam Writers | 2006年 アメリカ映画 | ||
94年のロス暴動直後のロサンゼルス郊外にあるロングビーチのウィルソン高校に、英語教師エリン・グルーウェルが赴任してきた。彼女のクラスにはアフリカ系、ラテン系、アジア系が入り混じり教室内には見えない国境線が張られていた。エリンは彼らの教育意欲を掘り起こすため、毎日色々ユニークな方法で努力し、互いのことを知るために彼らに毎日の日記をつけるよう推奨する。ある日の授業中、生徒の一人を馬鹿にした絵を見つけた彼女は、同じような理由でホロコーストが生まれたことを説明する。そして彼らに「アンネの日記」を教材として読ませようとする。しかし、その試みは彼らの意識を変えて、彼らの心の中にくすぶっていた何かが芽吹き始める。それは奇跡への第一歩だった・・・・ | |||
私評:ミスGは良いと思ったことは必ずやり通す・・・これが実話じゃなかったらこんなに都合の良いストーリーはないね・・ってくらい。しかし、この話は実話なのです。物語の途中でホロコーストの生き残りの人たちとの交流会や、アンネ・フランクを匿った人を学校に呼んだりと、「マジかよ!?」と思えるくらいの突拍子もないことをエリンと生徒はやり遂げるのですが、その方法が実にユニーク。エリンにいたってはアルバイトでブラジャーの売り子までやって頑張っちゃうのです。しかし、それらがバラバラだった生徒たちを少しずつ結び付けていく。感動的なセリフも多くて、私はかなりこの映画を気に入りました。主演は製作総指揮も買って出たというオスカー女優ヒラリー・スワンク。やっぱり、彼女はうまい!そしてエリンに何かと当たる同僚教師に「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」のイメルダ・ストーントンが、まさにドローレスのようなキャラを演じます。(ちょっと笑えた)監督は「パリ、ジュテーム」のリチャード・ラグラヴェネーズ。映画の中に出てくる「ホロコースト博物館」?に私も行ってみたい・。 | |||
河童のクゥと夏休み | 監督:原恵一 | 出演:富澤風斗、西田尚美 | |
2007年 日本映画 | |||
学校帰りの道で康一は大きな石に躓いた。その石を掘り出して割ってみるとなんと中から河童の子供が現れた。「クゥ〜!」と鳴くので康一はクゥと名付けた。しかも、クゥは人間の言葉を話した。康一の家族も最初は驚いていたが、一緒になってクゥを匿うことにした。ところが、クゥはある日家を出て行くという。彼の父親から人間と河童は一緒に住めないと言われていたのだ。康一はクゥの仲間の河童を探すために、河童伝説が残る遠野へと出向く。恵まれた自然の中で活き活きと遊ぶクゥ。しかし、そこで河童の仲間を見つけることは出来なかった。遠野から戻ると康一の家の周りには記者が待ち構えていた。どこからともなく河童の噂が流れてしまったのだ。しかも、クゥは写真を撮られて週刊誌に載ってしまう。クゥの存在が世間に知れ渡り、続々と人間が集まってくるが・・・・ | |||
私評:父ちゃん、まだ来ちゃいけないと言っているのか??・・夏休みに合わせて家族みんなで楽しめる映画が公開された。しかし、この映画は子供向けではない。むしろ子供心を遠い昔に置き忘れてしまった大人のためのファンタジーです。映画を観ていてとても懐かしい感じがしたんですよね〜。それもそのはず、この映画の監督の原恵一は、私の大好きな「クレヨンしんちゃんの「モーレツ!オトナ帝国の逆襲」の監督なのです。この映画も私の心の中の「懐かしい」という部分を思い切り刺激して感動させてくれた映画。「河童のクゥと夏休み」は、まさにそんな映画でした。かなり泣けました・・。声優にはクゥと康一は子供たちが行っているのですが、かなり上手。そして父親役をココリコの田中直樹、そして母親役は西田尚美が当たっています。このふたりのキャスティングは正解でしたね!夏休みは子供向けのアニメがたくさん公開されますが、日本ならではのこういう作品が公開されるのは本当に良い事だと思いますよ。面白かった! | |||
レミーのおいしいレストラン | 監督:ブラッド・バート | 出演:パットン・オズワルド、イアン・ホルム | |
Ratatouille | 2007年 アメリカ映画 | ||
す晴らしい嗅覚と味覚を持ち、レストランのシェフになる事を夢見ているねずみがいた。彼の名前はレミー。彼はフランス料理界が誇るグストーが著した「誰でも名シェフ」という本が好きだった。しかし、レミーの父親は彼のそんな夢を打ち砕いた。そんなある日、住み慣れた家を離れることになったレミー一家。しかも、レミーは家族と離れ離れになってしまう。一人ぼっちで落ち込むレミーに声を掛けたのは、なんと本の中のグストー。グストーに導かれて屋根を駆け上るとそこはレミーの憧れの街、パリ!しかも、グストーのレストランは目と鼻の先だった。店を覗くと、そこにはリングイニという見習いの料理人がいた。しかも、彼は店の大事なスープを台無しにしてしまう。居ても立ってもいられなくなったレミーは、自分でスープの味を調えてしまう。しかも、その現場をリングイニに見られてしまう。人間の言葉を理解できるレミーはリングイニから、彼の仕事を手伝って欲しいと依頼される。それはレミーの夢のスタートだった・・・・ | |||
私評:料理は誰のものでもない・・・ピクサーの新作はなんとネズミが料理人になるというとんでもないお話。私の中ではネズミといえば病原菌に運び屋で不潔なイメージなので、映画の中でレミーがどんなにおいしそうな料理を作ってもちょっと・・・・。しかし、ドラマ自体はさすがにディズニーブランド。かなり感動的でした。そこに描かれているのは「夢を諦めない心」「友情、そして家族を大事にすること」「そして自分を信じること」。それらが押し付けや嫌味ではなく、さらりと描かれているところがイイですね。確かにアニメだからできる世界ではあるのですが、ピクサーの映画のキャラクターは誰もが「一個の人間」と同じ扱い。それが私たちの心に訴えかけるのでしょうね。声優の中でひと際目を引くのが料理評論家のイーゴ役で登場のピーター・オトゥール(アラビアのロレンス)。監督はアイアン・ジャイアント、Mr.インクレディブルのブラッド・バート。 | |||