2007/7/22

今週も強烈な邦画作品に出会いました。それは私の少年時代の、
思い出のリフレイン・・。そして女性映画とはばかる事なかれ・・。
男性にもお勧めのこの映画です。

サイドカーに犬  監督:根岸吉太郎  出演:竹内結子、松本花奈、古田新太
 2007年 日本映画
今週のイチ押し:今日の客は嫌なヤツだった。おまけに会社にコンプレインの電話を入れるなんて。カオルはもうすぐ30歳になる不動産屋に勤めるOL。翌日有給を取ったカオルは行きつけの釣堀に行った。そこで話しかけてきた女の子は小学校4年生。カオルの小学校4年の夏は刺激的だった。その年の夏に母親が家出した。そんなある日、ヨーコさんはやってきた。夕食を作りに来てくれたのだ。タバコを吸い、ドイツ製のカッコいい自転車に乗り、買い物の仕方も豪快なヨーコさん。でも、カオルはそんな彼女に惹かれた。それからカオルはヨーコさんと仲良しになった。自転車の乗り方を教えてもらった。歯が溶けると言われていたコーラを飲ませてもらった。しかし、父の交友関係にヨーコさんが口を挟んだとき、父は「メシ、もうイイや」と言った。ヨーコさんに誘われ二人きりの夏休みを過ごすことになった・・
私評:自転車に乗れるようになると、世界が変わるよ・・・ちょっと長くなるかもしれませんが・・・。この映画を観て、小学校6年生のときに、よく私を遊びに連れて行ってくれたお兄さんのことを思い出した。彼はまさにこの映画のヨーコさんのように豪快。しかも私を子ども扱いせずなんでもさせてくれた。マクドナルドのハンバーガーを初めて食べさせてくれたお兄さん。いつもカッコいい車で私を迎えに来てくれた。キャッチボールをしてくれた。チン毛の話を真面目に語ってくれた。このお兄さんは叔母の持っていたアパートの住人で、お兄さんと遊ぶことは家族も周知だったのです。私はこのお兄さんが大好きで、一緒にいる時間がとても幸せだった。でも、お兄さんは急にいなくなってしまった。長野にある実家を継ぐことになり、東京を離れたのだ。それからしばらくは文通を続けていたけど・・・。そんな訳で私は映画を観ている間中、ずっとそのお兄さんの事を考えていました。それくらい雰囲気までよく似ていて、胸がいっぱいになってしまいました。私はこういうピッタリ合うお兄さんがいたのですが、多くの人が近所のお兄さんやお姉さん、親戚なんかにこんな存在がいたのでは??そして家族の中では子供だった自分が、ちょっとだけ大人になったような気分を味わったことがあるのでは??私が甥っ子に接する態度はいつもこの時のお兄さんがベースになっています。まだ中学1年生で子供ですが、大人と同じ扱いをしてあげることって大切なんですよね。しかし、親はそんな事をしてはいけない。この映画のヨーコさんのような人、周りにいませんか??こんな爽やかで豪快で優しいヨーコさんを演じるのは久々にスクリーンに帰ってきた竹内結子。彼女もやっぱりスクリーンで威力を発揮する女優ですね。そして驚きの子役、カオルを演じる松本花奈ちゃん。彼女もすごい演技力です。そして大人になったカオルを演じるミムラもイイですよ〜。その他、古田新太、鈴木砂羽、温水洋一、椎名詰平、樹木希林、・・などなど、イイ役者が出番の多少はあっても味わい深い演技を見せます。エンドクレジットの曲は、いまや人気絶頂のYUI。監督は名匠根岸吉太郎です。
ボルベール<帰郷>  監督:ペドロ・アルモドバル  出演:ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ
VOLVER  2006年 スペイン映画

今週のイチ押し:美しく、そして強い母親ライムンダ。彼女に2つの「死」が降りかかる。ひとつとは彼女の夫。仕事もしない夫が、娘に手を出したのだ。カッとした娘は包丁で彼を刺し殺してしまう。死体の処理に困ったライムンダは、今は空き家になっている隣のレストランのフリーザーに彼を押し込んだ・・。そしてもうひとつの死は彼女の最愛の叔母。しかし、ライムンダは叔母の葬儀には出席せず、姉のソーラと叔母の隣人のアグスティナに葬儀を任せて、自分はレストランの死体の処理で悩んでいた。そんな彼女に近くで撮影をしている映画スタッフが声を掛けてきた。事の成り行きで彼女は撮影のクルーたちの、食事を世話することになった。葬儀に出たソーラはそこで奇妙な噂を耳にする。死んだはずの彼女の母を近所の人たちが見かけたというのだ。葬儀を終えて家に戻ったソーラは車のトランクを開けてビックリ。そこにいたのは紛れもない、彼女の母だった・・

私評:いつかきっとあなたの父親のことは話すから・・カンヌ映画祭で史上初、一本の映画の6人の女優全員が最優秀主演女優賞を獲得した。この噂を聞いたときから、私はこの映画を首を長くして待っていました。しかも「女性の映画」というジャンルを確立してしまったと言っても過言ではないペドロ・アルモドバルが監督と来れば期待せずには居られません。彼の女性賛歌3部作の最終章となるこの映画ですが、私は前作の「トーク・トゥ・ハー」が好きなんです。「トーク・・」は男性の目からの女性賛歌だったので、感情移入しやすかったんですよね。今回の「ボルベール 帰郷」は完全に女性がメインの映画。しかも、10代の娘からおばあちゃんまでの6人の女性による「人生の賛歌」であり「家族(母娘)の賛歌」なのです。6人が皆、他人には計り知れないトラウマを持っている。でも、心の拠り所を持っている彼女たちは本当に力強く生きていくのです。そして心の拠り所=故郷なのですね。主演は最近すっかりハリウッド色が強かったペネロペ・クルス。彼女は美しいだけじゃないですね・・。彼女の役者としての技量がしっかり表に出た作品です。その他カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ブランカ・ポルティージョ、チェス・ランプレアヴェ、そしてヨアンナ・コパという素晴らしい女性たち。最後にペネロペの胸が・・・刺激的でした。
封印殺人映画  監督:ジェフ・マックイーン  出演:ジョン・カーペンター、ウエス・クレイブン
Going To Pieces: The Rise and Fall of the Slasher Film  2006年 アメリカ映画
1980年代、映画業界は空前の「スラッシャー映画ブーム」だった。その魁と言えるのがホラー映画の名作中の名作ジョン・カーペンター監督の「ハロウィン」だ。1978年に公開されたこの映画は大ヒットし1980年に世界中で大ヒットした「13日の金曜日」の典型とされた。それは若い男女が顔を隠した殺人鬼に無残な殺され方をするスラッシャー映画の誕生でもあった。「13金」で特殊メークを担当したトム・サヴィーニ、「鮮血の美学」「スクリーム」「エルム街の悪夢」のウェス・クレイブン、ロブ・ゾンビらが貴重な映像の数々、貴重な証言を元に語るドキュメンタリーです。「プロムナイト」「夕暮れにベルが鳴る」「ブギーナイツ」「ローズマリー」「血塗られた花嫁」「「血みどろの入江」「サスペリア」「血のバレンタイン」「誕生日はもう来ない」「マニアック」「バーニング」「スプラッター・ユニバーシティ」「淫獣の森」「ブラッド・ピーセス」「悪魔のサンタクロース」「サマーキャンプ・インフェルノ」「シンシア・悪魔の惨劇」「血ぬられた入寮式・呪われた女子大の謎」「デビルジャンク」「肉欲のオーデション/切り裂かれたヒロインたち」「ハイスクールはゾンビテリア」・・・(何本知っていますか??)ホラー映画ファンは必見のスラッシャー・ドキュメンタリーです・・
私評:ティーンエイジャーが居る限りスラッシャー映画は永遠に不滅なのだ・・・こんな映画が渋谷のレイトショーで公開されていました。実は「ルネッサンス」を観た映画館だったので、勢いでそのままレイトに突入。いや〜、でもこの映画を観られて良かったです。ホラー映画ファンの私にはバイブルにもなりかねない映画ですね。いまだにこれだけのファンを引きつけるスラッシャー映画の魅力って一体何なのでしょうか?それではここで(映画の中で語られている)スラッシャー映画の定義です。@銃撃だと1コマで終わってしまう恐怖をジワリと見せ付ける。殺人シーンは怖がらせるから面白い」。A「縄や傘、ドライバーなどを凶器にする方がスリルがあり、次の展開が楽しみなる。パターンを守るのもスラッシャー」・・。なるほどね・・。しかし、その反面凶悪事件とスラッシャー映画はすぐに結び付けられるよね。凶悪犯がディズニーを見ていても有害とは言われないし・・。全米で1位になってもその扱いは変わらない。でも、私の他にも映画館ではこの映画を観ながら目を爛々と輝かしている輩がいっぱいいました。彼らは明日の凶悪犯罪予備軍ではなく、一介のホラー映画ファンなのです・・。この映画ではスラッシャー映画に携わる人々の心の叫びが描かれているのです・・・。
ゴーストハウス  監督:パン・ブラザーズ  出演:クリステン・スチュワート、ペネロープ・アン・ミラー
The Messengers  2006年 アメリカ映画
大都会シカゴからノースダコタの古い屋敷に越してきた一家。父のロイは失業してこの土地でのひまわりの栽培にかけていた。一人娘のジェスはシカゴで事件を起こし、それが原因で弟のベンは失語症になっていた。母親ともコミュニケーションが取れない。そんな一家にとってここでの新生活は新しいスタートになるはずだった。ある日、ロイはカラスの群れに襲われてしまう。彼を助けたのは通りすがりの旅人のジョン。彼は収穫までひまわり栽培を手伝うことにした。家に異変が起こり始めたのはそんな矢先。家の中で起こり始めた怪奇現象を不審に思っていたジェスを、家の中の何かが襲い掛かる。家具を壊し、壁を引き裂く。ジェスは必死の思いで警察を呼ぶが、警察が到着したとき、家の中は何もなかったかのように元通りになっていた。誰も信じてくれない状況でジェスはますます孤立していく・・・・
私評:ベン、何が見えるの??・・・・「the Eye」で世界中を震え上がらせたタイの兄弟監督オキサイドブラザーズが、ついにアメリか進出。プロデューサーはあのサム・ライミ。この組み合わせだけでもワクワクしちゃいますよね。設定はそのものズバリ「幽霊屋敷」の話です。この手の作品は過去に何作もありますが、パン兄弟らしい演出は恐怖を増幅させます。そのいちばんの演出は「異常に長い間合い」です。ゴーストらしき物がジェスの後ろに立っているのですが、ピントが合っていないためなんだかよく分からない。それがゆっくりと彼女に近づいてくる・・ゆっくり、ゆっくり・・。その間約1分。これはパン兄弟が他の作品でもよく用いる演出ですが、めっちゃ怖いんですよ。そして物語はある写真が元で急展開。謎というより意味不明なところもあるのですが、ホラー映画はこれでイイでしょう!?主演は「パニックルーム」でジョディ・フォスターの娘を演じたクリステン・スチュワート。美しい大人になりました・・。父親役は「シークレットサービス」のディラン・マクダーモット、母親役は「レリック」のペネロープ・アン・ミラー(なんだか久しぶり・・)。今年の夏、ヒンヤリしたい方はこのお化け屋敷映画で!
童貞ペンギン  監督・出演:ボブ・サゲット  出演:サミュエル・L・ジャクソン、クリスティーナ・アップルゲイト
Farce of the Penguins  2007年 アメリカ映画
理想の♀ペンギンとの純愛を夢見るカール。そして頭の中はセックスだらけのタフガイ、ジミー。2匹はとっても仲良し。繁殖期を迎えた彼らは遠く70マイル先で待つ♀の元へと険しい旅に出る。一方、♂ペンギンを待つ♀たち。本当に愛する相手を見つけたいメリッサ。「早くセックスがしたい!」とこの季節を待ちわびていたヴィッキー。長い旅路の間中、カールは悩み続けていた。いままでのガールフレンドはみんな自分から去って行った。それは自分のせい??そして旅路の先で♀に出会っても、また捨てられてしまうのでは??そしてカールとメリッサは運命的な出会いをして、さっそく結ばれる。「これが最高のセックスだ〜!」2匹の愛は絶頂に・・。ところがジミーはイイ女に出会えず落ち込んでしまう。その夜、暗闇の中を徘徊していたジミーは躓いて穴の中にナニを突っ込んでしまうが・・・・
私評:サミュエル!お前なんかモーガン・フリーマンのケツのシミだ!・・・この映画はドキュメンタリーの名作「皇帝ペンギン」のパロディーです。映画の途中で「皇帝ペンギン」のペンギンらしきフランス語を話す2匹のペンギンも登場します。そしてこの「童貞ペンギン」もちゃんとしたペンギン他の生の映像を使用しています。その会話がめちゃめちゃシュールで面白い。とにかく表現がストレートすぎて・・・(以下自粛)。ナレーション担当のサミュエル・L・ジャクソンも思わず、得意のFから始まる単語を連発。そしてペンギンたちとの壮絶な罵りあい・・??カールの声は監督のボブ・サゲット自身が担当。彼はTVのバラエティ番組から映画デビューした変り種。そしてメリッサ役は「クリスティーナの好きなコト」でエロトーク炸裂だったクリスティーナ・アップルゲイト。ヴィッキー役はコメディエンヌであり歌手でもあるモニーク。そして嫌われ者の♀ペンギンでアザラシに○○○れてしまうヘレン役は大御所ウーピー・ゴールドバーグです。一応、R15ですので・・??
ルネッサンス  監督:クリスチャン・ボルクマン  出演:ダニエル・クレイグ、キャサリン・マコーマック
Renaissance  2006年 フランス・イギリス・ルクセンブルグ映画
2054年のパリ。医療関連の大企業である「アヴァロン」社の研究者イローナが誘拐された。アヴァロンのCEOであるダレンバックは何が何でも彼女を奪回するように警察に圧力を掛ける。そして彼女の救出の責任者になったのが、向こう見ずの男カラス。さっそくイローナの足跡を追ったカラスは、イローナが誘拐される前に姉のビスレーンと会っていたことを知る。ビスレーンと会ったカラスはイローナが早老症治療をしていたという情報を得る。そしてアヴァロンの無料クリニックに勤務するムラー博士がその研究の協力をしていたという。ムラーを訪ねたカラスはアヴァロンの社員の銃撃にあう。もはやアヴァロンとムラーが何か重大な秘密を隠していることは明らかだった。ビスレーンはアヴァロンのコンピューターをハッキングして、ムラーと日本人の中田の研究資料を発見する。ふたりは早老の研究をしているうちに「不老不死」の研究を成功させていたのだ・・・・
私評:We are on your side for Life …. Avalon・・・フランスが産んだ新しいグラフィックモーションピクチャー。製作費はなんと23億円!モノクロの画面と近未来のパリの風景画が見事にマッチしていて雰囲気は最高。平面的には「版画」のような絵なのですが、すごく奥行きがあるのです。人間の表情などは現代のCGアニメと比較すると劣る感じがするのですが、モノクロ=影と光だけの表情は、また違った雰囲気を持っていて面白い。そしてこういう映画にありがちな「ビジュアルだけ」の映画にはなっていないところもこの映画の良い所。SF近未来サスペンスというジャンルなのですが、シナリオもけっこう面白くて飽きることなく映画に没頭できました。でも、こういう実験的な映画は好き嫌いがハッキリ出るでしょうね。そしてもうひとつの注目は豪華な声優陣。主人公のカラス役は新007のダニエル・クレイグ。その他、「サウンド・オブ・サンダー」のキャサリン・マコーマック、ジョナサン・プライス、イアン・ホルムなど脇役も手抜きがありません。監督はこれが初の長編作品となるクリスチャン・ヴォルクマン。それにしても2冊組み1500円のパンフレットはいかがなものか・・??


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