2008/6/22

今回はレベルが高すぎです。どの作品も
イチ押しにしたいくらいですが、7作のうち
敢えて2つに絞り込みました。なんだか今回は思い入れが強すぎて
文章が長いんですけど・・・(笑)

奇跡のシンフォニー  監督:カーステン・シェルダン  出演:フレディ・ハイモア、ケリー・ラッセル
Augst Rush  2007年 アメリカ映画
今週のイチ押し:11年前の満月の夜。チェリストのライラとロックミュージシャンのルイスは運命的な出会いを果たした。一晩を共に過ごした二人だったがライラの父親によって二人の約束は破られてしまう。たった一夜の恋人だったが、ふたりともお互いを忘れることはなかった。ライラはその夜、子供を身篭った。しかし、その子供は死んだと父親には知らされていた。エヴァンはNYの男子養護施設で育った。彼は身の回りのあらゆる音がメロディとして受け入れられる天才的な音楽センスを持っていた。そしてその感覚は彼の両親と繋がっていると信じていた。児童福祉局のリチャードはえヴぁンに養子になることを勧めるが、エヴァンは受け入れなかった。ある晩、エヴァンは施設を抜け出し自分から親を探そうと決意した。マンハッタンに辿り着いたエヴァンは街に溢れる音たちに驚きながらも興奮していた。音に誘われるまま街を歩いていたエヴァンはいつしか迷子になってしまう。そんな時公園でギターを弾きながらパフォーマンスをしているアーサーと出会う。彼の誘いでエヴァンはストリート・パフォーマンスをして生計を立てている子供たちが住む廃墟に足を踏み入れる・・
私評:あなたの音楽はどこから来るの??・・・この映画は現代のファンタジー。あり得ない話ではあるのですが、こんな「奇跡」を信じてみたくなります。そしてその奇跡に向かって運命が動き始めると、私の鼓動も徐々にヒートアップ。そして感動のクライマックスでは号泣でした。ストーリーは最初から読めているのですが、思惑通りにストーリーが流れていくのもなんだかとっても心地良いのです。この映画の少年はまさに現代のモーツァルト。もしも、モーツァルトが現代にいたら様々な音に溢れた都会でどんな音楽を作っただろうか?なんて考えてしまった。この映画の音楽はマジですばらしいです。街の雑踏が徐々にメロディーになったり、ギターもハモニックスを使ったり上から叩きつけたりと変わった演奏法で音楽を紡いでいく。そして両親役の二人のステージのシーンがシンクロするところとかもすごく良い演出でした。エヴァン役は現在の最高の子役の一人「チャリチョコ」のフレディ・ハイモア。今回の彼の演技も完璧です!彼の父親役は「M:I:3」のジョナサン・リース・マイヤー。彼も映画の中でギターを弾いて歌います。母親役は「ウェイトレス:おいしい人生のつくりかた」のケリー・ラッセル。その他ロビン・ウィリアムズ、テレンス・ハワード、ウィリアム・サドラーなど良い役者揃い。監督は名匠ジム・シェリダン監督の娘、カーステン・シェリダン。
インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国  監督:スティーブン・スピルバーグ  出演:ハリソン・フォード、ケイト・ブランシェット
Indiana Jones and the Kingdam Of The Crystal Skull  2008年 アメリカ映画
今週のイチ押し:1957年、ネバダ州。なぞの一行が一般立ち入り禁止の実験場にやってきた。あっという間に門番を撃ち殺した彼らはKGB。そして彼らの車のトランクから開放された男は・・、インディ・ジョーンズ博士だった。KGBを指揮しているイリーナの命令でインディは特別な木箱を探すことに。木箱を見つけたインディは格闘の末、なんとか逃げ出すことはできたが木箱はKGBに獲られてしまう。大学に戻ったインディだったがFBIが彼を疑い、ついには大学を解雇されてしまう。NYに向かったインディは列車を追いかけてくる青年の言葉に耳を疑った。「オックスリーが殺される!」オックスリーはインディの大学時代からの友人だった。青年の名はマット。オックスリーはマットの育ての親のような存在。ペルーからマットの母親宛に届いた手紙に「クリスタルスカルが見つかった」と書かれていたという。オックスリーを追ってペルーに向かったマットの母親も捕まってしまい、彼女がインディ・ジョーンズの名をマットに教えたと言う。マットが持っていた手紙を解読したインディはマットを伴いナスカの地上絵があるペルーへと向かった・・
私評:ロープと言え、ロープだと・・・・・インディ・ジョーンズが20年ぶりに帰ってきた。私を含め多くの映画ファンがこの映画の虜でしょう。この映画を見ていてまず驚いたのは、ハリソン・フォードが60歳台の中盤とは思えない動きを見せるところ。20年前のインディよりも年を重ねた設定にはなっているのですが、そんなの関係ないくらい機敏だし、何よりシルエットがぜんぜん変わっていないのがビックリです。そして映画が始まると私はすでにインディの世界にトリップ。今回はSFっぽい内容も含まれているのですが、その辺りはメインのスタッフにジョージ・ルーカスがいるのだからなるべくしてなった感じがしました。そして20年前より格段に進歩したCGの威力で、映像の迫力が何倍にもなっていました。できればCGを減らして昔のようなリアルな映像を作ってほしかったのですが・・・また、今回の注目はインディを痛めつけるKGBの悪女役に抜擢されたケイト・ブランシェットの演技。怖い女なのですが、コミカルな部分も見せてくれます。そして1作目から27年ぶりにヒロインにカンバックしたカレン・アレン。彼女も60歳に近いのに溌剌としていてグッドでした。そして新たな布陣としてインディと共に危険な旅をするマット役には「トランスフォーマー」のシャイア・ラブーフ。その他ジョン・ハート、レイ・ウィンストン、ジム・ブロードベントなど渋い役者が揃いました。インディの父役のショーン・コネリー、インディの良きパートナー、マーカス役のデンホルム・エリオットは写真だけの登場でした。監督はもちろんスティーブン・スピルバーグ。
幻影師 アイゼンハイム  監督: ニール・バーガー  出演:エドワード・ノートン、ジェシカ・ビール
The Illusionist  2006年 アメリカ・チェコ映画 
19世紀末のウィーン。ここでは奇術が一斉風靡していた。中でも人気を博していたのが幻影師のアイゼンハイム。彼のイリュージョンは神秘に満ちていた。その噂を聞きつけた、時の皇太子レオポルドが彼のショーを観覧しにやってきた。彼の傍らには婚約が噂される公爵令嬢のソフィを連れていた。ショーの最中に舞台に上がった彼女を見てアイゼンハイムは愕然とする。彼女こそ幼少時代から彼が愛し続けていた女性だった。家具職人の家に生まれたアイゼンハイムは幼いころから奇術に長けていて、それをソフィに見せていた。いつしかふたりは心を寄せ合うが身分が違う二人の恋は引き裂かれてしまったのだ。数日後、アイゼンハイムは皇太子に呼び出され宮殿を訪れた。彼のイリュージョンを解明しようとする皇太子に対し挑発的な芸を見せたアイゼンハイムは、皇太子に恥をかかせ反感を買ってしまう。アイゼンハイムの危険を察知したソフィは彼の元を訪れるが、封印していた想いが一気に開放され、ふたりは結ばれる。皇太子の命を受け執拗にアイゼンハイムを監視するウール警部。そして彼はアイゼンハイムとソフィの密会を見てしまう・・・・
私評:すべては幻なのです。あなたたちが見たものはトリックです・・・・この映画の噂はかなり前から聞きつけていたのですが、やっと日本にお目見え。しかし、待った甲斐がありました。こういうストーリー大好きです。こういう演出大好きです。私の大好きなキャストがまた、たまりません。しかも、劇中のイリュージョンの面白さも楽しめるのです。そして驚くべきラスト。ここでは絶対に語れませんが、度肝を抜かれました。ネタバレが怖いのであまり書かずにおきましょう。主演はエドワード・ノートン。彼の堅実な演技はこの映画の核。また、このキャラクターがピッタリでした。ソフィ役は肉体派女優のジェシカ・ビール。アクションだけじゃなくてこういう役もしっかりできるのですね〜。そして警部役はポール・ジアマッティ。彼は映画の中では公僕でありながら、アイゼンハイムの芸に魅せられるという重要な役。そして憎き皇太子役は悪役がこれほど似合う男がいるのか!?ルーファス・シーウェル。(でも、実際の彼は良い人のような気がする)監督はニール・バーガー。
ジュノ  監督:ジェイソン・ライトマン  出演:エレン・ペイジ、ジェニファー・ガーナー
JUNO  2007年 アメリカ映画
16歳の少女ジュノは、好奇心からボーイフレンドのポーリーとセックスをした。それがトラブルの元になるとは・・。2ヵ月後、ジュノは妊娠検査薬を試すと、結果はピンクの+。いち度は中絶を試みるが、中絶半対中の同級生の「胎児でも爪がある」の言葉に考えを翻した。結局ジュノは子供を産んで、里子に出すことにした。両親にもその話をしたところ、最初は驚いていたものの全面的に彼女に協力をすることになった。タウン情報誌でジュノは養子縁組を希望するカップルを見つけだし、父親と一緒に彼らを訪ねた。ふたりはまさにジュノが理想としていたカップルだった。仕事を持ちながらも家事を完璧にこなし、しかも美人なヴァネッサ。音楽好きでジュノとも話が合う夫のマーク。季節が過ぎてジュノのお腹はどんどん大きくなっていく。そんなある日、ジュノはポーリーが他の女の子をプロムに誘ったと知り動揺してしまう・・・・
私評:もうちょっと大きく育てて搾り出してから届けるわ・・・この映画の会話のセンスは最高です。それもそのはず、監督は「サンキュー・スモーキング」のジェイソン・ライトマン。この映画のセンスもずば抜けていたが、その才能は「ジュノ」でもしっかり継承されています。とにかくすごい勢いの「言葉のキャッチボール」。そしてそんな言葉の端々に見られる本音と建前。そしていつの間にか見えなかったものが見えてくる。それは家族や友人のありがたさだったり、大好きな人への自分の想いだったり・・。地味な町の地味な人たちの物語だけど、すごく納得できたり、同感できたりして私は異常なくらいにこの物語に溶け込んでいきました。その大きな要因は主人公のジュノを演じるエレン・ペイジの演技。(彼女はこの作品でアカデミー主演女優賞にノミネートされました)小生意気でちょっとひねくれた女の子が時間を追うごとにどんどん身近な存在になっていくのです。その他の出演者は「エレクトラ」のジェニファー・ガーナー、「スパイダーマンシリーズ」のJ.K.シモンズ、「クリスティーナの好きなこと」のジェイソン・ベントマンなどなど。監督は「ゴーストバスターズ」の名匠アイバン・ライトマンの息子ジェイソン。
ザ・マジック・アワー  監督 : 三谷幸喜  出演:佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里
The Magic Hour  2008年 日本映画
クラブ「赤い靴」の支配人の備後は、こともあろうか彼のボス・手塩の女のマリに手を出してしまう。程なく、彼は手塩の手下たちに捕まり手塩の前に膝まづいた。そのとき手塩の口から「デラ富樫に会いたい」という言葉を聞き出した備後は、彼を連れてくることを条件に開放された。しかし、備後はデラ富樫など知らなかった。しかも、彼は名うてのスナイパーだという。そこで思いついたのが偽の映画監督になりすまし、顔の売れていない役者にデラ富樫を演じさせることだった。白羽の矢が立ったのは三流役者の村田大樹。初の主役でやる気満々の村田は備後の予想を超えた演技を見せ、天塩はまんまと騙されてしまう・・・・
私評:「俺がデラ冨樫だ」「なんかさっきも言ったような気が・・」・・・三谷幸喜の最新作。しかし、相変わらずテンポが良い。映画は130分とやや長めなのですが、そんな事はまったく気にならない。とにかく最初から最後まで笑いのオンパレード。出演人物がすべて怪しくて、おかしくて・・・。そして注目すべきは日本最大級のスタジオに組まれたセット。港町が一個すっぽり入っているのです。しかも、時代を感じさせるレトロ感あふれる小物の数々まで凝りに凝っています。しかし、この映画の見所はやはりキャストです。村田役の佐藤浩市・・・、面白すぎます!彼がこんなにコメディのセンスがあったとは・・。そして備後役は売れっ子の妻夫木聡。彼も芸域が広いですが、ボトムにはコメディがあるような気がします。そしてボスの女役は深津絵里。彼女も今までのキャラとは程遠い役を見事にこなしています。そしてひとり演技の下手さが目立つけど可愛いから許しちゃおう綾瀬はるか。ボス役は(アドリブを一切禁止されたらしい)西田敏行。そして笑わせてくれるのが「赤い靴」の従業員の伊吹吾郎。彼の「撤収!!」は最高!そして忘れてはいけないのが本人役で登場する市川崑。彼はこの撮影の後に亡くなりました。しかし、毎回毎回レベルアップしていく三谷映画。次回が楽しみです!!
シューテム・アップ  監督:マイケル・デイヴィス  出演:オーウェン・ウィルソン、モニカ・ベルッチ
Shoot'em Up  2007年 アメリカ映画
冬のニューヨーク。ひとりの男(スミス)がベンチに座っていると妊婦が彼の前を駆け抜けていく。そして男たちが女の後を追う。「こんなことに首を突っ込んじゃいけない」と思いつつも彼の足は妊婦が逃げ込んだ廃墟へと向かっていた。そして案の定、彼女を助ける羽目になったスミスは壮絶な銃撃戦に巻き込まれてしまう。しかも、彼女は産気づいてしまい、銃撃戦の最中で彼女は男の子を産み落とした。しかし、それもつかの間、彼女は眉間を打ち抜かれ絶命。スミスはなんとかその場を逃げ出した。スミスは娼婦のドンナを訪ね赤ん坊を預けようとするが、結局彼女もスミスと行動を共にすることに・・。しかし、なぜ、この死んだ妊婦は狙われていたのか?そしてこの赤ん坊まで狙われているのか?なぞのマフィア軍団との壮絶な戦いが果てしなく続いていく・・・・
私評:ただのベビーシッターさ・・・映画史上、最高に銃弾を使った映画かもしれない。その数なんと2万5千発。その大半は主演のクライブ・オーエンがぶっ放したもの。しかも、その撃ち方がなんともスタイリッシュでカッコ良いのです。スライディングしながら撃つ、カーチェイスをしながら撃つは、以前もあったかもしれませんが、「出産を手伝いながら撃つ!」「エッチをしながら撃つ!!」、そして「スカイダイビングをしながら撃つ!!」は初めて見ました。こんな一見コミカルなシーンが、渋くて無口な主人公が演じると、なんだか様になってしまうのです。いや〜、しびれました。クライブ・オーエンの他に、ドンナ役は相変わらず美しい「スパイバウンド」のモニカ・ベルッチ。そしてスミスを追う異常なマフィア役はポール・ジアマッティ。彼もめちゃめちゃキレてます!!あり得ないシーンの連続に私は終始爆笑しつつも、大興奮。これぞアクション映画の楽しみ方でしょう!?監督はマイケル・デイヴィス。
イースタン・プロミス  監督:デヴィッド・クローネンバーグ  出演:ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ
Eastern Promise  2007年 イギリス・カナダ映画
クリスマスが近いロンドンの病院。助産婦のアンナの元に身元不明の若い女が担ぎこまれた。彼女は子供を産み落とした後に息を引き取ってしまう。彼女の死に立ち会ったアンナは彼女のバッグから日記を取り出し、死んだ少女の身元を調べようとしたが、中に書かれていたのはロシア語で彼女には意味がわからなかった。日記に挟まれていた「トランシルバニアン」という名のレストランのカードを見つけけたアンナは早速訪ねると、店のオーナーのセミオンが出迎えた。彼も少女のことは知らないという。日記のことを話すと彼が翻訳をするという。実はアンナの叔父は自称元KGB。ロシア語がわかる彼に翻訳を依頼すると、その中にはおぞましい内容が書かれていた。彼女はレイプされて妊娠したのだ。彼はアンナに深入りしないように忠告する。そんな折、セミオンがアンナの病院を訪れる。日記に書かれているキリルとは彼の息子だという・・・・・
私評:俺はただの運転手さ・・・監督のデヴィッド・クローネンバーグと言えば「ザ・フライ」「スキャナーズ」のような強烈な映像が印象的だが、彼の映画は徐々に変化してきているのかもしれない。前作の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」は名作だった。今回の作品はどちらかと言うとロンドンで横行している「人身売買」をクローズアップした社会派作品で、その上にアンナと運転手(?)のニコライの話が乗っている感じ。往年のクローネンバーグ節を期待するとちょっと肩透かしに逢うかも??しかし、この映画で強烈な個性を見せる役者たちには本当にビックリした。主演のヴィゴ・モーテンセンの渋さ、キリル役のヴァンサン・カッセルの狂気、助産婦役のナオミ・ワッツが見せる恐怖、そして一番恐ろしいのは優しい笑顔の裏に悪魔のような顔を隠しているアーミン・ミューラー・スタール。彼の演技は絶品です。そしてリサーチを重ねてリアルに描き出したマフィアたち、そして東欧やロシアから売られてくる女たちの悲劇は決して映画の中だけのことではないそうです。クローネンバーグ、恐るべし・・。


前回の記事も読んでね〜!



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