2014/5/17

今回はすべてイチ押しにしたいくらい良い映画が揃ってます。
大人のソープドラマ、大人のコメディ、そして青春コメディ

とらわれて夏  監督 : ジェイソン・ライトマン  出演 : ケイト・ウィンスレット、ジョシュ・ブローリン
Lobor Day  2014年 アメリカ映画
今週のイチ押し:1987年の夏の終わり、13歳のヘンリーは引きこもりの母親アデルとふたり暮らし。再婚した父からは一緒に住もうと言われているが、彼はアデルを守る事を決めた。レイバーデイを間近に控え、ふたりは月に一回の買い物に出かけた。そこでヘンリーは傷を負った見知らぬ男に助けを求められた。男の名はフランク。アデルが断るとフランクはヘンリーの首に手を回し強引に車に乗り込んできた。フランクは脱獄囚だった。彼は盲腸の手術の直後に、窓から飛び降りたため傷口が開き出血していたのだ。傷が治るまで居させてくれれば危害は加えない。人が来たらアデルの手足を縛って人質に見せかけ匿っているとは言わせない。フランクは約束通りふたりには紳士的に、そして静かに接した。アデルを椅子に縛ったためフランク自らが料理をしてふたりに食べさせた。翌日、フランクはアデルのために働いた。朝食を作り、車を直し、掃除をして・・・。最後にはヘンリーとキャッチボールもした。次第にふたりとの距離を縮めて行くフランク。そしてアデルもフランクの優しさに触れて強く惹かれ始めていた・・・
私評:あと3日一緒にいられるなら、罪が増えてもかまわない・・・心に沁みる映画でした。物語の設定は特に奇を狙った物ではなく、とてもシンプル。しかし、そのシンプルさの中に深い味わいと感動を閉じ込めている。勢いで描くのではなくじっくりと、しっかりと描かれた映画です。それだけに演じる側も演出する側も難しい作品なのですが、完璧なキャッストがそれを更なる高みへと誘うのです。アデル役はオスカー女優「タイタニック」のケイト・ウィンスレット。片田舎の地味な主婦なのですが、彼女はあるトラウマを抱えています。大人の色気がプンプン漂う主婦を好演。フランク役は「MIB3」のジョシュ・ブローリン。彼も故意ではなく事故で恋人を殺してしまった過去を持っている。過去に大きな喪失をしたふたりの男女が、人生を一瞬にして取り戻すような恋に落ちるのです。あ~、なんてロマンチックなんでしょう。このふたりのハーモニーが完璧です!ヘンリー役は「グリーン・ランタン」のガトリン・グリフィス君、そして大人になったヘンリー役は「スパイアーマン」シリーズのトビー・マグワイア。監督はハリウッド映画の若き天才、「JUNO/ジュノ」「マイレージ・マイライフ」のジェイソン・ライトマン。
ブルー・ジャスミン  監督 : ウディ・アレン  出演 : ケイト・ブランシェット、サリー・ホーキンス
Blue Jasmine  2013年 アメリカ映画
今週のイチ押し:飛行機のファーストクラスから颯爽とサンフランシスコに降り立ったのはエレガントで美しいジャスミン・フレンチ。彼女はリッチなセレブの生活を続けていたが、夫との結婚生活が破たんして財産は全て取り上げられて一文無し。しかも精神安定剤を飲み続けていないと気持ちが持たない。そんな彼女が身を寄せたのが血の繋がりのない妹のジンジャー。彼女は前の夫と別れてふたりの息子を抱えるシングルマザー。スーパーのレジをしながら生活するジンジャーに対しても、未だにセレブ気分が抜けないジャスミンはちぐはぐな事ばかり言ってしまう。実はジンジャーの元の夫はジャスミンの元夫のハルに騙され、せっかく当たった宝くじの大金を失くしてしまったという経緯があった。ジャスミンは再出発のプランを模索していたがどれも現実的ではない。しかたなく歯科医の受付をしながらパソコン教室に通い、ネットでインテリアデザイナーの資格を取る事に。しかし、物事がそんなにうまく運ぶ訳もなく、彼女はますます精神のバランスを崩していく。そんなジャスミンにもようやくチャンス到来。素敵な男が彼女の前に現れたのだ・・・
私評:ちょっと待って手が離せないの・・・今年のアカデミー賞で主演女優賞を獲得。去年の映画なのになぜ公開までにこんなに時間がかかるのでしょう??しかし、この映画の主人公のジャスミンは普通で考えればとんでもなくイヤな女。だけど、彼女ってすごく弱くて、賢くなくて、だけど悪気がないので観ていてもあまり嫌いになれない。いや、むしろ可愛く見えちゃうこともある。たぶん、彼女の自分自身でひとりで立ち直る事はできないと分かっている。妹のジンジャーにも感謝の気持ちでいっぱいなのに、上手く表現する術を知らない。ある意味、とっても可愛そうな女なのです。そんな女性の心情をストレートに覗き込むようにして捉えたこの映画は、とっても残酷なのかもしれません。笑いもふんだんに盛り込まれてはいますが、どの登場人物もうまく行ってない。人生ってこんな物だよ・・という皮肉に溢れた作品なのかもしれません。主演は「エリザベス」「アイム・ノット・ゼア」のケイト・ブランシェット。彼女の演技は最高。惨めな女が精いっぱい背伸びしてギリギリのプライドを保っていると言った演技と表情、素晴らしかった。彼女の元夫で詐欺師役は「ロック・オブ・エイジズ」のアレック・ボールドウィン。妹のジンジャー役は「私を離さないで」のサリー・ホーキンス。彼女もいかにも尻軽なんだけど、けっこう言う事はまじめな女を好演。監督は最近作には本当にハズレがないウディ・アレン。彼の監督作で、彼が出演していない作品は面白い!というジンクス。また、当たりました!?
ウッジョブ! 神去なあなあ日常  監督 :矢口史靖  出演 : 染谷将太、長澤まさみ、伊藤英明
Wood Job!  2014年 日本映画
今週のイチ押し:希望大学に落ち、彼女にはフラれて落ち込んでいた勇気は18歳。彼が偶然目にした林業研修のプログラムの表紙には美しい女性が・・・。すぐにこのプログラムへの参加を決意した勇気だったが、研修場所は三重県の山奥。コンビニもなければ携帯の電波も繋がらない。同期でプログラムに参加した仲間もポツリポツリと逃げ出していく。その理由のひとつは恐ろしい野性人のヨキの存在だった。勇気も夜逃げを図るが、そこで偶然出会ったのはチラシの表紙の女性、直紀だった。そして彼女のバイクには「中村林業」の文字が・・・チャランポランな人生を送ってきた勇気だったが、直紀の存在もあり、なんとか1ケ月の研修を終えて、彼が選んだ職場はもちろん「中村林業」!しかし、そこにはあの強烈な野性人ヨキも務めていた。愚痴を言い続けながらも、勇気はなんとなく仕事にも慣れ、人々との交流も増えて村のメンバーとしての地位も獲得。しかも、今年は48年ぶりに大奇祭「大山祇祭り」が行われる年。なんと勇気も祭りの要員として参加する事になるが・・・
私評:愛羅武勇・・・矢口監督が初めてオリジナルの脚本から離れて、原作のある作品を映画化しました。その作家さんは「船を編む」で本屋大賞を獲得した人気作家の三浦しをん。なんだか面白そうな匂いがプンプンしてきますよね。映画の方は相変わらずのゆるゆるな展開の中で最後にデカイ感動をブチ込むと言う矢口方式で、安心の面白作品でした。とにかくこの監督はキャラクターの描き方がうまい。主演はもちろんですが、隅々の方まで念入りに描きこんでいます。そしてクライマックスの祭りは大迫力。見事なエンターテインメント作品でした!主演は出演作が目白押しの「ヒミズ」「永遠の0」の染谷将太。そのまま地で演じたのでは?と思えるほどピッタリ。直紀役は「岳」「モテキ」の長澤まさみ。エレガントさは金具利捨てて、田舎のお姉ちゃんを好演。究極の野性人ヨキ役は「海猿」「悪の経典」の伊藤英明。その他、優香、西田尚美、光石研、そして矢口作品の常連の柄本明。もうひとり良いキャスティングだったのがお笑いのマキタスポーツ。彼と染谷将太と言えば、テレビ番組「みんなエスパーだよ」が思い浮かぶのですが、今回はベテランの山の男を凛と演じます。監督は「ウォーター・ボーイズ」「スウィング・ガールズ」「ハッピー・フライト」の矢口史靖。
悪夢ちゃん The 夢ovie  監督 : 佐久間紀佳  出演 : 北川景子、木村真那月
 2014年 日本映画
6年生になった悪夢ちゃんこと結衣子のクラスに美形の転校生の完司がやってきた。完司を見た児童たちは、彼を夢で見たことがあると言って騒ぎ出すが、結衣子も完司とそっくりな少年、夢王子が出てくる悪夢を見ていた。しかし、結衣子は、担任教師の彩未や祖父の万之介にも完司が出てくる悪夢の内容を隠そうとする。夢の中で結衣子は少年夢王子に憧れ、恋をしていたのだ。不思議な魅力を持つ完司は62組の児童たちの心を捉え、クラスのリーダー的存在になっていく。やがて、完司の言葉に触発された児童たちは、クラスメートの葵のお父さんが路上で販売している「ハム・パンケーキ」売ろうと動き出す。商売繁盛で大成功に見えた矢先、パンケーキを食べた客が食中毒を起こしてしまう。それは結衣子の見た悪夢と重なっていた。「輝ける未来を切り開くのは自分自身」と説いてきた彩未は、新たに襲い掛かる悪夢と現実にどのような道を示すのか・・
私評:ねえ、チューして・・・テレビ版から劇場版にアップグレードされた今作。いつも通り、テレビ版はまったく見ておりません!唯一、劇場公開の前日に放送されたスペシャル版はももいろクローバーZも出ていたので観ましたが・・・。子供用の作品かと思いきや、けっこう手の込んだストーリーで意外な展開が私は面白かったです。CGとかもイイ感じで使われています。実はちょっとバカにしていたのですが、実際に観てみたらかなり面白かったです。主演の彩未役は「ルームメイト」の北川景子。彼女って演技は下手なイメージがあったのですが、この作品では殻を突き破った感があって男勝りな教師役を好演していました。結衣子役は木村真那月ちゃん。TVシリーズからの常連はGACKT、優香、小日向文世。そしてこの映画のゲストとして「ROOKIES」の佐藤隆太、「コドモ警察」のマリウス葉。主題歌を歌うのはももいろクローバーZ。オープニングは布袋寅泰の曲、エンディングの曲は中島みゆきの曲。さすがはももくろ。監督はテレビドラマ出身でこれが劇場デビュー作となる佐久間紀佳。
ネイチャー  監督 : ニール・ナイチンゲール、パトリック・モリス  出演 : マウンテンゴリラ、アフリカゾウ、ナイルワニ
Nature  2014年 イギリス映画
都会の町に雨が降った。雨は地球上のすべての生物の命の源だ。世界で一番雨が多いアフリカ大陸の熱帯雨林。ここに住む生きものはすべて戦いを強いられる。この地で悠々と暮らすマウンテンゴリラの一家の姿を追う。次にカメラが向かったのは燃え盛る地下世界。火山活動が活発な東アフリカ。有毒ガスが噴き出し人間を寄せ付けない。しかし、その熱が育んだ藻を食べるためフラミンゴの大群がここを訪れる。世界最古の砂漠ナミブ。不毛の地のように見えるが、ここでも生命は活動している。灼熱の平原を移動するアフリカゾウ、美しいサンゴ礁の海、赤道直下の高温でありながら夜は氷点下まで気温が下がるエチオピアのシミエン山地。ここは一日の中に夏と冬がある。この地で毎日同じルーティンの日々を送るケラダヒヒ。山から染み出した水はやがて巨大な河川となって荒れ狂う激流となる。水が必要なヌーは危険を承知の上でナイルワニが生息する川で水を飲む。そこには世界一危険なハンターが。やがてアフリカの大地に天からの恵みの雨が降り注ぐ・・
私評:地球、初体験・・・。BBC製作のドキュメンタリーは過去にも「アーズ」「ディープ・ブルー」などを観てきましたが、毎回クオリティーが高くなっています。それは撮影機材の質が格段に上がってきているからです。今作は4K/3Dの最高級カメラをとんでもない高地や海底、そして危険な動物がウヨウヨいる熱帯雨林に持ち込んでこれでもか!ってくらいの接写で対象の生き物の生態を映しだします。そして被写体以外にも美しい大自然の姿を最高の画質で見せつけます。まさに映画館に居ながらにしてアフリカの大自然のど真ん中にいるような錯覚に陥ります。そして楽しみたいのが「音」です。映画館の最高の音質だからこそ味わえる大自然の奏でる音は、時に優しく、そして時には凶暴に私たちに語りかけてきます。エンドクレジットの後に4分くらいのメイキングの映像があるのですが、これがまたすごい。今見たばかりの映画のシーンがこうやって撮影されたんだ!とまたまた感動。映画が始まる間にテロップが入りますが、くれぐれも明かりが付くまで席を立たないで!日本作品のナビゲーターは「お・も・て・な・し」アナウンサーの滝川クリステル。彼女のナレーションもとても心地良かったです。監督はニール・ナイチンゲール、パトリック・モリスのふたり。


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