5月だって言うのに夏日が続きくたくた。
今回はどれもイチ押しにしたいくらい良い映画揃い。
韓流映画の底時からを見た衝撃作、そして今年のアカデミー賞を
騒然とさせた作品!
私の少女 | 監督 : チョン・ジュリ | 出演 : ペ・ドゥナ、キム・セロン | ||||||
2014年 韓国映画 | ||||||||
今回のイチ押し:ソウルからとある海辺の町に左遷されてきたエリート警察官のヨンナム。赴任した当日、ヨンナムはドヒという少女に出会う。母親はなく義父ヨンハとその母親と一緒に暮らしているドヒは家庭内でも暴力にあい、学校でもいじめに遭っている。また、ヨンハは海外からの移民を労働力にして漁港の仕事をしている。逃げ場のないドヒはヨンナムに助けを求めた。そんなある朝、ヨンナムの部屋のドアをドヒが叩いた。父親と祖母に暴力を受けたと言う。その直後、ヨンナムの携帯が鳴る。ドヒの祖母が原付バイクで海に突っ込み死んでしまったのだ。その後もヨンハの暴力から逃げてきたドヒをヨンナムは一時的に引き取ることにした。ヨンナムとドヒの奇妙な共同生活が始まる。そんな時、ヨンナムを訪ねてソウルからひとりの女がやってくる。実はヨンナムは性同一性障害で、それがきっかけで左遷されたのだ・・ | ||||||||
私評:私と行く?・・・衝撃作です。ふたりの女優見たさに劇場に行ったのですが、まさかこんなショッキングな作品とは!田舎の隔離された集落は欺瞞と偏見に満ちていてなんとも恐ろしいスポットに感じられるのです。ここで過去の事件を引きずる女と家族からのDVに怯える少女が出会う。このふたつの悲しい魂の出会いがある事件を引き寄せます。そして噂や憶測が独り歩きを始めるのですがその実態は信じがたい内容でした。しかし、この映画の最大の見所はふたりの女優の演技です。ヨンナム役は「ほえる犬は噛まない」「空気人形」、そして最近ではハリウッドで活躍中のペ・ドゥナ。この作品に惚れこみ2年ぶりに韓国映画に出演しました。ドヒ役は「アジョシ」のキム・セロン。いちどはこの作品のオファーを蹴ったらしいのですが、オーディションで適材が見つからず製作陣が彼女に再アプローチをして出演が決まったとか。このふたりの女優のオーラはハンパではありません。しかも、お互いが化学反応を起こしているかのように魅力を引きあい出している。監督はこれがデビュー作でカンヌ映画祭の「ある視点部門」にノミネートされた期待の女性監督チョン・ジュリ。それにしても韓国映画は奥が深いし、クオリティも高い! | ||||||||
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) | 監督 : アレハンドロ・G・イニャリトゥ | 出演 : マイケル・キートン、エドワード・ノートン | ||||||
Birdman or The Unexpected Virtue Of Ignorance | 2014年 アメリカ映画 | |||||||
今回のイチ押し:落ち目のハリウッドスターのリーガン。かつて彼は「バードマン」という作品でスーパーヒーローを演じ、一世を風靡したがそれ以来は鳴かず飛ばずのまま20年以上が過ぎていた。齢も60を超えて世間からは「かつてスーパーヒーローを演じた男」というレッテルになっている。そんな彼がアイデンティティを取り戻すためにブロードウェイへの進出を試みることに。そんな無謀な企画の題材となったのは、彼が俳優となるきっかけになったレイモンド・カーヴァーの短編小説だった。自らが主演をして身内をサポートに引き入れ企画は進行していく。しかし、リーガンは舞台制作を通して己の内なる声と戦うことになる。しかし開演を目前にして、キャストのひとりが事故で怪我をしてしまう・・ | ||||||||
私評:これからがスタートだ!・・・今年のアカデミー賞最優秀作品賞を受賞したのがこの作品。公開後、速攻でこの映画を見に行ったのですが、その衝撃たるや・・・。このレビューも最初は支離滅裂になってしまい書き直しています。この映画のメインのテーマは「再生」。かつての栄光にすがりついて生きるのではなく、常に新しいチャレンジをすることが人生では本当に大事。歳をとると「昔は良かった」とか「今の人たちは・・」みたいな言葉がつい口から出てしまう。しかし、常にチャレンジャーである事、そして再び輝くことは容易ではなく、もしかしたら全てを失ってしまうかもしれない。それこそ清水の舞台から飛び降りる事が自分にはできるのか??たぶん、できない。あらためて思い知らされました。そして人生はやり直しがきかないという事を伝えたかったのか、この作品はほぼワンショットで作られている。(もちろん上手な編集を加えています。)主演は「バットマン」の頃は大人気だったマイケル・キートン。まさに役を地で演じている。ジャンキーから復活した彼の娘は「テッド」のエマ・ストーン。彼の弁護士兼舞台のプロデューサー役は「ハングオーバー」のザック・ガリフィアナキス、そして強烈なインパクトを残すのが「グランド・ブダペスト・ホテル」のエドワード・ノートンと「キング・コング」のナオミ・ワッツ。監督は「バベル」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。 | ||||||||
百日紅 Miss Hokusai | 監督 : 原恵一 | 出演 : 杏、松重豊、濱田岳 | ||||||
2015年 日本映画 | ||||||||
文化11年。そろそろ江戸時代も後期の江戸の下町。浅草の橋の上をつかつか歩いていくのはお栄という若い女。彼女はかの有名画家である葛飾北斎の娘だ。お栄自身も北斎と一緒に絵を描いている。腕は確かだが北斎は何が足りないか分かっている。ふたりの家は散らかり放題。しかも、その家にはもうひとりの住人が居る。彼の名は池田善次郎(のちの渓斎英泉)。口は達者だが絵の腕前はまだまだ。しかし、女好きの善次郎が描く枕絵はちょっとした人気を誇っている。お栄には年の離れた妹のお猶が居る。彼女は生まれつき目が見えない。そんな娘を不憫に思ったのか北斎はお猶には、なかなか会いに行かない。そんなある日、お栄の描いた地獄絵から、夜な夜な声が聞こえるという苦情が入る。お栄は北斎、善次郎と一緒にその家を訪ねるが・・・ | ||||||||
私評:だからおめえの絵は何かが足りないって言ってるんだ・・・この作品の原作者、杉浦日向子さんは江戸文化の研究の一人者だった。彼女が亡くなってもう10年。かつてNHKの「お江戸でござる」の後説も面白かったな~。そんな彼女の原作がアニメ化された。原作は30のエピソードがあるのですが、映画版はその中の面白い話をピックアップした感じ。また、杉浦さんといえば妖怪の話がつきもの。今回も地獄の屏風絵の話、ろくろ首の花魁などちょっと怖い話が盛り込まれているところがまたグッドです。私の好きな原作の世界が見事に描かれていました!そしてこの映画は声優陣が素晴らしい!お栄役は「真夏の方程式」の杏。自ら「歴女」と言っている彼女にはピッタリの役かも?北斎役は「ソロモンの偽証」の松重豊。彼って実写だと演技が上手いとは思えないのですが、この映画の北斎はお見事!そして善次郎役は「舞妓はレディ」の濱田岳。彼のうまい!その他、高良健吾、美保純、麻生久美子、矢島晶子など。監督は「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」「カラフル」の原恵一。 | ||||||||
海にかかる霧 | 監督 : シム・ソンポ | 出演 : キム・ユンソク、パク・ユチュン | ||||||
HAEMOO | 2014年 韓国映画 | |||||||
小さな漁船の船長のカンは不漁が続き金策に困っていた。故障した船の修理費、そして何より船員たちの給料を支払うため、中国からの密輸をしている知り合いの社長に仕事を頼みに出かけた。しかし今回、社長から依頼があったのは物品の密輸ではなく密航者の運搬だった。背に腹は変えられず仕事を請け負ったカンは出発後に船員たちにその事実を話した。待ち合わせのポイントで密航者を乗せた船が現れるが、折からの天候不良のため海上が荒れひとりの女性が海の落ちてしまう。そんな彼女を海に飛び込んで救ったのは最年少の船員のドンシクだった。無事に密航者たちを乗船させ嵐も去るが、今度は巡視船が船に近づいてくる。止む終えず船底の倉庫に密航者を押し込み、巡視の目をごまかすが倉庫内にフロンガスが充満し船底の密航者たちは全員死亡してしまう。しかし、ドンシクは救った女性に好意を抱き機関室に匿っていた・・・ | ||||||||
私評:俺が命に代えてもお前を陸に連れて行く・・・この映画は実際にあった事件がベースになった戯曲の映画化。今年のアカデミー賞の外国映画賞にノミネートもされていました。映画の途中で事故が起こってから船長のもとで保たれていた船内のバランスが一気に崩壊していく。事件を隠蔽するために行った人間のモラルを全て捨て去った行為は目を覆いたくなるような光景。そして事故に責任を感じて心神喪失になるもの、生き残った「女」をめぐって起こる男たちの闘争、そして事実を隠蔽するための内紛などが連鎖反応で起こる。畳み込むような展開に開いた口が塞がらない。ラストシーンは含みを持たせているがとても印象的でした。カン船長役は「チェイサー」「10人の泥棒たち」のキム・ユンソク、ドンシク役は元東方神起のメンバーで、現在ドラマで人気沸騰中のパク・ユチュン、そして唯一生き残った密航者ホンメ役はハン・イェリ。製作は「グエムル 漢江の怪物」「殺人の追憶」のポン・ジュノ。監督はポン・ジュノが絶大なる信頼を寄せるシム・ソンボ。彼は「殺人の追憶」の脚本家でもあります。 | ||||||||
ブラックハット | 監督 : マイケル・マン | 出演 : クリス・ヘムズワース、タン・ウェイ | ||||||
Blackhat | 2015年 アメリカ映画 | |||||||
香港の原子炉が何者かにハッキングされ爆破事故が起こる。その直後、同じハッカーと思われる人物が金融市場に侵入し大豆の株価をいじるという事件が起こる。中国警察のネット犯罪担当のダーワイはハッキングの形跡を調査したところ、かつて自分とパートナーのハサウェイが開発したプログラムだと気付く。ダーワイは金融市場の調査に当たっていたFBIと共同捜査をする事で服役中のハサウェイ、そしてダーワイの妹のリエンを捜査に加えることを条件にした。ハサウェイはFBIの厳重な監視下で一時的に出所が認められ、事件を解決に導けば釈放される事になった。香港の原発事故現場を訪れた一行は放射能汚染された現場から貴重なデータを取り出すことに成功するが、データには欠損があり全てを読み出すことができなかった。そこでハサウェイは国際安全保障局のデータベースに侵入し、データを復元するソフトにアクセスするが、その事が発見され指名手配されてしまう・・・ | ||||||||
私評:もう止められない・・・面白い!ハッキングのプロセスも面白いのですが、何と言っても見所はアクション。前半はどちらかというと頭脳戦なのですが、この監督がそのままでいるわけがない。途中からはドッカンドッカン爆破するし、これでもか!ってくらいの銃撃戦が続きます。シカゴ、香港、マレーシア、ジャカルタと目まぐるしい移動なのですが、ストーリーはシンプルで分かりやすい。130分の映画なのですが、面白い映画は時間の長さを感じない。見終えたあとは気分爽快・・とまでは言いませんがけっこうスカッとしました。ハサウェイ役は「マイティ・ソー」「キャビン」のクリス・ヘムズワース。インテリ役もできるんです!ダーワイ役は「ラスト・コーション」のワン・リーホン、リエン役は「捜査官X」のタン・ウェイ、そしてFBI捜査官のバレット役は「ヘルプ 心がつなぐストーリー」のヴィオラ・デイビス。監督は「ヒート」「パブリック・エネミーズ」のマイケル・マン。 | ||||||||