2005/4/3

今週もバラエティ豊かな組み合わせで映画が見れました。
中でも韓国の気鋭キム・ギドクの映画は強烈でした。・

サマリア  監督:キム・ギドク  出演:クァク・チミン、ハン・ヨルム
Samaritan Girl  2004年 韓国映画
今週のイチ押し:女子高生のヨジンは、刑事の父親とふたり暮らし。彼女には仲良しの友人チェヨンがいた。ふたりはいつか一緒にヨーロッパに行こうと約束をしていた。チェヨンはそのための資金を稼ぐために援助交際を始める。体を売ることに何のためらいもないチェヨンにヨジンは戸惑いを覚えたが、彼女が男と会っている間の見張り役をすることに。しかも、チェヨンは客のひとりに恋をしてしまい、ヨジンは言い知れぬ嫉妬を感じてしまう。ところがある日、警察の取締りから逃れようとしたチェヨンは、ホテルの窓から飛び降り命を落としてしまう。チェヨンの死を、自らの責任と感じたヨジンは今までチェヨンが援交で稼いだお金を、援交相手に返して回る。しかし、彼女の父親がその現場を見つけてしまう・・
私評:男たちは私の前で子供になるのよ・・・いつも、問題作を作り上げる韓国のキム・ギドク監督の作品。ふたりでひとりのような、恋とも憧れともとれる少女同士の繊細な関係から、物語はスタートする。親友の援交を目の当たりにする事によって生まれる嫌悪と嫉妬。そして不幸な事故によって、幼い少女が背負う罪悪感と絶望感。そしてそんな娘を見つめる父親とその狂気。このように物語は3つに分かれている。手持ちのカメラの揺れ、何ともそっけないセリフなど全てがリアルで、ある意味計算されつくしている。そして映画は心の中の触れられたくない場所に踏み込んでくるんですよね。私は特に売春に罪悪感を持たないチェヨンの、行動とはまったく正反対の「少女の笑顔」が痛々しかった・・。そして金を返された男たちの気持ち、娘の行動を知った父親の気持ちなど、セリフにならない心の葛藤が心に飛び込んできた。ギドク監督って映像で語るのですね・・・。主人公のヨジン役はクラク・チミン、チェヨン役はソ・ミンジョン。ふたりとも普通の女の子なのです。だからこそ、彼女たちの行動が心に痛い。キム・ギドク監督は「春夏秋冬、そして春」でかなり毒が抜けた感じがしたのですが、やはりこういう映画が彼の真骨頂でしょう。
コントロール  監督 :ティム・ハンター  出演:レイ・リオッタ、ウィレム・デフォー
Contorl  2004年 アメリカ映画
凶悪犯リー・レイ・オリバーの死刑が今まさに始まろうとしている。最後の最後まで悪態をつき誰一人悲しむ者はいない。そして彼の体に静かに薬物が注入され、リー・レイは静かに目を閉じた。数時間後、リー・レイは目を覚ました。そこにいたのは薬物学者のコープランド博士と製薬会社のベナー。リー・レイは新薬の実験台に選ばれたのだ。その薬とは凶暴性を抑える新薬「アナグレス」。リー・レイは実験台になるか、再び死ぬかの選択から実験台になることを選んだ。服薬が始まりしばらくすると効果が現れ、リー・レイの心の中に「哀れみ」の感情があふれ出す。そしてコープランドはリー・レイを実験室から解放し、一般人と一緒の生活をさせることに。実験は成功したかのように思えたが、リー・レイに恨みを持つ男が、彼を付け狙う。しかし、その実験にはある「陰謀」が隠されていた・・・・・
私評:あの時、私が薬を飲んでいれば・・・・またしても、銀座シネパトスで素晴らしい映画を拾った。(まさに「拾った」という言葉がピッタリ)善人も悪人も両方演じられるレイ・リオッタ、ウィレム・デフォー、スティーブン・レイの3人がひとつの画面に収まっているという構図からしてワクワクするじゃないですか!やはり、役者が良いと映画も引き締まります。それに加え物語の設定、そして先が見えない展開がより一層映画を面白くします。そしてサスペンスの醍醐味だけでなく、リー・レイやコープランドが吐露する過去の痛手や懺悔が、人間ドラマとしての面白さも醸し出す。都内の小さな単館だけの公開なんて、本当にもったいない映画です。そして物語の最後に「トンでもない事実」が浮上します。そしてあまりに理不尽な最後・・。ちょっとブルーになってしまいました。出演者は上の3人と紅一点のミシェル・ロドリゲス。すごく濃い演技陣でしょう??監督は「リバース・エッジ」(この映画、観ていません・・)のティム・ハンター。きっと、劇場での公開はあっという間に終わってしまうのでしょうね・・
隣人13号  監督:井上靖雄  出演:中村獅童、小栗旬、新井浩文
The Nighbor No. Thirteen  2005年 日本映画
村崎十三は少年時代、クラスメイトの赤井トールのイジメに遭っていた。それは想像を絶するもの。なんと赤井は十三の顔に塩酸をぶちまけた・・。そして現在、十三は平和荘というアパートの13号室に越してきた。その上の階の23号室にはなんと赤井がいたのだ。赤井は妻と子供を愛して、家族を大事にしていたが昔からの凶暴さは変わっていなかった。赤井が勤める建築会社に十三も勤め始める。そう、十三は赤井から受けた屈辱の数々を胸に復讐の機会を狙っていたのだ。しかも、彼の中の別人格「13号」が時々顔を出し、十三の意識を抑えて大暴れしていたのだ。まず、13号の犠牲になったのは隣に住む金田だった。そして建築会社で十三に心を寄せてきた関肇も、13号の存在を知った事により犠牲に。そしてついに13号の狂気の矛先は赤井家に向けられた。まずは、赤井の妻と仲良くなった十三と13号の思惑は??・・・
私評:おい、これはやりすぎだろ〜!!・・・・井上三太の伝説的なコミックマンガが映像化された。先日、マンガの方は読んだのですがこの無茶苦茶なストーリーをどう映像化するのか?と映画に期待をしていました。もちろん、コミックでしか表現できない内容も多々あるのですが、オリジナルのイメージを損なうことなく、うまくシナリオが料理されていました。しかし、内容はかなり過激です。原作の中では13号が赤井の息子に手を出すシーンが嫌いだったのですが、映画の中では・・・??(ネタバレ禁止モード)ところが、終盤でけっこう長廻しでの撮影シーンが多く、せっかくのサスペンスがダラダラとしてしまったのが残念。そして映画の最後は原作とは違うネタを用意しています・・。13号を演じるのは中村獅童。ヤバイです。かなりイッチャってます。十三は「あずみ」の小栗旬。そして赤井役は、まさに適役の新井浩文。そして彼の妻役はパフィの吉村由美。監督は近作が初監督作となる井上靖雄。私が一番ウケたのは学校のトイレの大きな○○○。
タッチ・オブ・スパイス  監督:タソス・ブルメティス  出演:ジョージ・コラフェイス、タソス・バンディス
A Touch of Spice  2003年 ギリシャ映画
1959年、トルコのコンスタンチノーブル。少年のファリスは数々のスパイスの香りが漂うおじいちゃんの屋根裏部屋が大好き。スパイスに関する様々なウンチクと独得の哲学を語るおじいちゃんは彼のヒーローだった。しかし、時代はギリシャとトルコの国交が緊迫している。ほどなくギリシャ人はトルコからの強制退去が始まり、ギリシャ国籍を持たないファリスの父親は家族ともども国を去ることに。ファリスの好きなトルコ人の少女サイメ、そして大好きなおじいちゃんとも別れ別れになってしまう。しかし、その時、おじいちゃんは「サイメを連れて、後から行く」と約束する。しかし、5年たってもおじいちゃんはやってこない。そんな時ファリスの元におじいちゃんとサイメがやってくると言うニュースが届く。サイメを驚かせようと彼女の大好きなナスの肉詰めを徹夜で作るファリス。しかし、二人はやってこなかった。ところがファリスの作った料理が、あまりにも美味だったため、彼には悪魔が憑いていると噂され、料理を禁止されてしまう・・・・・
私評:ホームで振り返ると再会の約束になる。だから振り返るな・・・トルコとギリシャの複雑な関係について、まったくと言っていいほど知識がなかった私は、この映画を見て初めて数々の事件を知りました。この映画の監督はまさにこの映画の主人公ファリスと同じくトルコを強制退去され、そして長きに渡って故国に帰ることがなかったという。しかし、この映画はそんな歴史的な事件を背景にした家族の物語。笑いもたっぷり含まれているので、決して暗くなってしまう事はありません。彼の少年時代の数々のエピソード、そして大人になってからのサイメとの再会、家族の事件などが淡々と語られる。そう、この映画はファリス=監督の半生を描いた物語なのです。それにしてもお国が違えば、食文化も違う。この映画には不思議な食べ物が続々と登場。あまり、おいしそうには見えなかったのですが・・・。監督はタソス・ブルメティス。彼の作品は見た事がありません・・。そして役者の中で目を引いたのはめちゃめちゃ面白いお父さん役のイエロクリス・ミハイリディスと成人したサイメを演じる美貌のバサク・コクルカヤ。異国情緒溢れる、家族の触れ合いと初恋の行方を楽しみました。
スパイダー・フォレスト 懺悔  監督:ソン・イルゴン  出演:カム・ウソン、ソ・ジョン、チャン・ヒョンソン
Spider Forest  2004年 韓国映画
テレビ・プロデューサーのカン・ミンは、森の中の小屋で彼の上司のプロデューサーと婚約者が殺されているのを発見。その場を立ち去ろうとした彼は何者かに襲われた。朦朧とした意識の中でトンネルの中を歩いていたカン・ミン。そこでも彼は人影を確認。しかし、その直後、彼は車に跳ねられて重傷を負ってしまう。病院に担ぎ込まれた彼は、大手術の後、命は取り留める。そして2週間後。意識を取り戻した彼は森で見つけた死体について語り始める。彼の友人で刑事のチェ刑事は、カン・ミンの話を手掛かりに小屋を見つけ、中で死体も発見する。そこで一体何があったのか??しかし、カン・ミンは頭を強く打ったため記憶が曖昧で、過去と空想と現実が入り混じってしまう。過去に飛行機事故で妻を亡くしたこと、婚約者のスヨンとの関係、死んだ妻にそっくりの写真店の女スイン。重症の体を引きずり再び森へとやって来たカン・ミンが辿りついた驚愕の事実とは??・・・
私評:森・・クモが・・・殺される・・・韓国はこういうミステリアスなサスペンス映画がけっこう多いですね。この映画の場合、それが「超自然現象」なのか、それとも単なる「妄想」なのかが分からないのですが、独特の雰囲気を持った映画です。しかし、「過去」「現実」「空想」がそれぞれ話の中で入り混じり、内容を把握しづらかった。それに加え(これは私だけかもしれませんが)ヒロインのソ・ジョンとカン・ギョンホンが似ていて、どれがどれで誰が誰なんだか分からなくなってしまった・・(笑)。最後の最後に強烈なオチがあるのですが、私は「ふ〜ん」って感じでした。しかし、映像は素晴らしかったです。カン・ミンを演じるのはカム・ウソン。そして韓国の樋口可南子(だと私は思っている)ソ・ジョンとこれが映画デビューとなるカン・ギョンホン。(彼女の濡れ場があるせいで(?)、この作品はR18です)監督はこの映画が2作目となるソン・イルゴン。しかし、私はこの映画をしっかり理解していません。誰か教えて・・。


前回の記事も読んでね〜!



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