2009/3/28

今回の作品はどれもがイチ押し候補。
その中でも私好みの2作品をチョイスしました。

ダウト　〜あるカトリック学校で〜	監督：ジョン・パトリック・シャンリィ	出演：メリル・ストリープ、P・S・ホフマン
Doubt	2008年 アメリカ映画
	今週のイチ押し：1964年、ニューヨークのブロンクスにあるカトリックの学校で教鞭をとる若い女性教師シスター・ジェイムズは、この学校で唯一の黒人の生徒が人気者のフリン神父の元から戻った際に違和感を覚えた。しかも、生徒から酒の匂いがしたのだ。その事が気になったシスター・ジェイムズはこの学校の校長でもあるシスター・アロイシスに相談を持ちかけた。厳格で異常なまでに神経質なアロイシスは、ジェイムズの言葉を信じ、フリン神父が生徒との間で「不適切な関係」を持っていると確信をする。フリン神父を呼び出したふたりは事実を問いただすが、フリン神父はきちんとした理由を述べ、ジェイムズは納得するがアロイシスから「疑惑」が消える事はなかった。アロイシスはフリン神父に黙って生徒の母親を呼び出し、事情を説明すると、母親の口からはとんでもない答えが戻ってきた・・
	私評：噂とはばら撒いてしまった枕の中の羽と同じ。それを回収することは容易ではないのです・・・この映画を見ようと思った理由はこの映画からアカデミー賞で主演女優賞、主演男優賞、そして助演女優賞に2名がノミネートされたからです。元々、舞台劇だったこの作品は登場人物が4人。つまり、全員がオスカー候補になったのです。その理由は映画を見たらば一目瞭然。彼らの演技に圧倒されっぱなしです。この映画には「Doubt（疑惑）」だけが描かれていて「Truth（事実）」はない。それゆえフリン神父の「不適切な関係」があったのかどうかも分からない。つまり、それらは見る側に委ねられているのです。ここで名女優メリル・ストリープが「彼はやった」と言えば、みんな信じてしまいそうになるのですが、彼女を跳ね返すほどの威力をもった演技で対抗するフィーリップ・シーモア・ホフマンが素晴らしいです。そのふたりの間で揺れ動くエイミー・アダムスも、主演のふたりを一層盛り立てるのです。そしてメリル・ストリープをも黙らせる、強烈な母親を演じるヴィオラ・デイヴィスもすごいです。監督はこの作品の原作者でもあるジョン・パトリック・シャンリー。
ウォッチメン	監督：ザック・スナイダー	出演：ジャッキー・アール・ヘイリー
Watchmen	2009年　アメリカ映画
	今週のイチ押し：1985年、ある男がマンションの窓から突き落とされ死んだ。彼の名はエドワード・ブレイク。かつて、ウォッチメンで「コメディアン」と呼ばれていた。ウォッチメンとはアメリカの歴史に介入しては、時代を動かしてきた者たち。しかし、彼らのヒーローとしての活動は1977年に政府により禁止された。そして彼らは歴史の表舞台から姿を消したのだ。エドワードの事件現場のそばで顔のない男ロールシャッハが「スマイルバッチ」を見つけた。それはエドワードのトレードマークだった。ロールシャッハは独自に捜査を開始する。しかし、彼の行く手にも何者かが妨害を企てる。母親もウォッチメンの一員だったローリーは化学実験の事故によって肉体を失いながらも、再生し数多の特殊能力を身につけたDr.マンハッタンことジョンと一緒に過ごしていた。そして発明家のダニエル、別名ナイトオウルは世界が認める世界一の天才エイドリアンの元を訪ね、エドワードの死について意見を求める。それぞれの元ウォッチメンたちは何者かによって命を狙われる事に。果たして犯人の真の目的とは？？・・・
	私評：これが真の平和だ・・・・シノプシスも書き始めたらすごい長さになってしまったので、かなり削ってしまいました。それくらいストーリーは幾重にも重なり、そしてそれらを詳細に描いている映画です。難解だという噂を聞いていたので、覚悟して見に行ったのですが私はストーリーとキャラクターにはまりサイコーに楽しむことができました。まさに至福の170分。事件を追うウォッチメンたちの姿を描きながら、彼らのバックグラウンドも的確に、そしてじつに面白く描き出している。ラストの強引とも思えるオチも私は大好きです。そして私が好きなのがこの監督ならでは映像美学。バイオレンスの中に美学を感じ取れるのです。映画が終わった後、私はなんだかすごく高揚していたのですが、若いオネエちゃんが「訳わかんない〜！」と言っていました。これもこの作品の意図なのか、変に分かりやすい解釈にせず、強引なまでの哲学を貫き通している。好き嫌いがはっきりする映画だと思いますが、私はかなり好きです！！出演は終始マスクをしているので、あまり素顔を晒さない「がんばれ！ベアーズ」のジャッキー・アール・ヘイリー、エドワード役は「P.S.アイ・ラブ・ユー」の歌手役が印象的だったジェフリー・ディーン・モーガン。Dr.マンハッタン役は「M:I:3」でトムの上司を演じたビリー・クラダップ。そしてナイトオウル役は「ハードキャンディ」のパトリック・ウィルソン。監督はザック・スナイダー。
フィッシュストーリー。	監督：　中村義洋	出演：伊藤淳史、多部未華子、大森南朋
	2009年　日本映画
	2012年、世界の終りまであと5時間。地球に巨大な彗星が近付いていた。そんな中で１軒だけいつもと同じように営業しているレコード店があった。店長と客の間にはいつもどおりマニアックな会話が飛び交う。そこに現れた怪しい男。彼は世界が終ってしまう事を力説する。すると店長はこうつぶやいた「正義の味方が世界を救う！」・・1982年、気の弱い大学生の雅史は健太郎と悟の奴隷。今日も雅史の車で合コン会場に向かっている。そこで出会った女がこうつぶやいた。「今日私と会う男は世界を救う男」・・・1999年、2009年、それぞれある事件が起きている。しかし、それらの事件の裏にいつも流れているのがパンクバンド「逆鱗」の「FISH　STORY」だった。「逆鱗」は「セックスピストルズ」のデビューの前の年、1975年にデビューをしたバンド。今日は3枚目のアルバムのレコーディングだが、彼らのレコードは全く売れなかった・・・・
	私評：ところでフィッシュ・ストーリーってどういう意味？？・・・人気作家・伊坂幸太郎が原作の短編が驚きの映画になった。時代を飛び越えて紡がれる数々のストーリー。そこに繋がりが見出せたとき、物語はとんでもないフィナーレを迎えます。そもそもこの物語は発想が面白い。そしてそれぞれの時代に起こる奇妙な出来事と、それに関わる不思議な人たちの描き方がめちゃめちゃ面白いです。そしてそれぞれの時代に流行った物がさりげなく差し込まれているのも憎い演出です。また、このフィッシュストリーという曲が何度も映画の中で掛かるので、しっかり覚えてしまいました！最後に描かれる「FISH　STORY」のオチは笑えました！！出演は伊藤淳史、高良健吾、多部未華子、森山未來、大森南朋、浪岡一喜、高橋真唯、そして石丸謙二郎などなど個性派の役者がそろいました。監督は「アヒルと鴨のコインロッカー」に次いで伊坂作品を手掛ける事になった中村義洋。
REPO!　レポ	監督：ダーレン・リン・バウズマン	出演：アレクサ・ヴェガ、サラ・ブライトマン、パリス・ヒルトン
REPO!	2008年　アメリカ映画
	そう遠くない未来。世界は臓器を患う奇病が流行。そこに登場したのが医療の「ジーン社」。彼らは臓器移植をしても支払いができない弱者のために手軽なローンを作ったのだ。その試みは当たり、ジーン社は大企業となりついには政治的な権力までも獲得した。ジーン社は金利を吊り上げ、支払いができなくなった者たちは合法的な暗殺者「レポマン」によって殺されてしまう。17歳の少女シャイロは母親マーニから受け継いだ血液の病気のために外出をしたことがない。マーニはすでに死んでいて、彼女は医者である父親ネイサンに育てられていた。その父親こそ「レポマン」であることを彼女は知らなかった。ジーン社のCEOのロッティはかつて、マーニと恋仲であったがネイサンに惹かれ、彼の子供を身籠った事に激怒しネイサンがマーニに毒を投与するように工作した。しかし、それは誰にも知られていなった。そんなある日、外の世界への興味が最高潮に達したシャイロの元に一本の電話が入る。彼は母親の死の真相、そしてシャイロの病気を治す特効薬を持っているという。その男こそ、ジーン社のロッティだった・・・・
	私評：すべてお前を守るため・・・・これまた強烈なインパクトを残す映画と出会えた。内容は陰惨なのですが、それをミュージカルにしてしまうところがすごい。退廃的でゴシックな感じのセットや衣装、そして次々と登場する怪しいキャラクター。なんと形容したら良いのか分からないくらいの「新しい映画」なのかも？？しかし、この映画、かなりグロテスクです。それもそのはず、監督はあの「SAW」シリーズの2から4までを手掛けた人。それゆえか血の量もはらわたの量もハンパじゃないので覚悟してください！？主演のシャイロを演じるのは「スパイキッズ」のお姉ちゃん役のアレクザ・ヴェガ。そして重要なカギを握るオペラ歌手役はあの歌姫サラ・ブライトマン。しかも、彼女の初出演映画です。そしてロッティ役はマフィア映画の常連ポール・ソロヴィーノ。そして彼のアホな娘役でパリス・ヒルトンが登場。今回の彼女は私生活と役柄が見事にマッチしていたような・・？？監督は「SAW5」を断ってこの映画を作ったというダーレン・リン・バウズマン。
その男ヴァン・ダム	監督 : マブルク・エル・メクリ	出演：ジャン=クロード・ヴァン・ダム、フランソワ・ダミアン
JCVD	2008年　仏・ルクセンブルク・ベルギー映画
	90年代のアクション映画を席巻したスター、ジャン=クロード・ヴァン・ダムも、今ではすっかり落ちぶれてしまった。彼の出演する映画はビデオスルーの小さなアクション映画ばかり。しかも、彼はアメリカで子供の親権をめぐって法廷で争っている最中。復活を賭けて挑もうとしていたアクション映画の主役の座はスティーブン・セガールに奪われ、彼の銀行の口座もついに底をついてしまう。しかし、なんとか彼の弁護士に金を支払うために、ヴァン・ダムはベルギーの郵便局を訪ねた。しかし、その郵便局は強盗に襲われていて、ヴァン・ダムも人質として囚われてしまう。しかも、たまたま中を覗き込んだ警官の勘違いでヴァン・ダムが犯人だという誤報が流れる。それを知った犯人はヴァン・ダムを警察との交渉の窓口に立てた。果たして事件の行方は？？・・・・・
	私評：セガールはポニーテールを切ると言って役をもらったんだ・・・・レビューがとっても遅くなってしまいました・・。ヴァン・ダム自らが、落ちぶれた自分自身を演じる！その情けなさといったら・・・。初っ端はアクション映画のシーン。最初はカッコ良いのですが、次第に息切れ。それをワンショットで撮っているのです。本来であれば「すげー！」と思うシーンがコメディになっているのです。その後もヴァン・ダムの自虐ギャグのオン・パレーで最後まで笑いっぱなしでした。特に映画の途中で挿入される、彼の「ぼやき」はサイコーでした。しかし、これで良いのか？ヴァン・ダム！？共演は危険な犯人役に「スパニッシュ・アパートメント」のジネティーヌ・スアレム。とぼけた刑事役で「TAXI４」のフランソワ・ダミアン（彼のパンツ姿・・笑えます！）。監督はマブルク・エル・メクリ。

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