2013/3/17

脳をフル回転させて6つの物語を理解せよ!
何度も観たくなる映画が今回のイチ押し!

クラウド・アトラス  監督 : ウォシャウスキー姉弟、トム・ティクヴァ  出演 :トム・ハンクス、ハル・ベリー、ペ・ドゥナ
Cloud Atlas  2012年 アメリカ映画
今週のイチ押し:1849年、アダムは奴隷貿易の契約を結ぶためにある島を訪ねる。そこで彼は鞭打ちをされている黒人の男と目が合う。帰りの船の中でアダムは病に倒れてしまい、偶然居合わせた医師に怪しい薬を盛られる。そしてその船室には鞭打ちをされていた奴隷が隠れていた。彼はアダムに助けを請うが・・・。1936年、音楽家志望のロバートは同性のルーファスと関係を持ち噂になる事を恐れてその地を離れた。著名な音楽家のエアズの元で仕事に就いたロバートは、自分でも作曲を始める。それは「クラウド・アトラス六重奏」。彼の曲をエアズにとられそうになるが・・・1973年、ジャーナリストのルイサは発電所の社長のフォックスが秘密裏に企てている原子炉の事故の情報をエレベーターに中で知り合ったシックススミスから得た。しかし、シックススミスは殺され、ルイサにも殺し屋の魔の手が襲いかかる・・・。2012年、編集者のガベンディッシュは担当している作家のダーモットがパーティで大衆の前で人を殺した事がきっかけで本が売れて、すっかり金儲けができた。しかし、投獄されたダーモットの仲間たちに金を強請られ、兄の元に助けを求めるが、彼に”老人専用の暴力施設”に入れられてしまう・・・2144年、2132年・・・
私評:命は自分のものではない・・・172分の長編映画の中に6つのエピソードが描かれています。上に書いたのは本当のさわりだけ。しかし、この六つのストーリーをひとつずつ描くのではなく、それこそごちゃ混ぜにして映画は進んでいきます。そして時間の経過とともに画面の入れ替わりの時間も加速。目まぐるしいまでの話の中でそれぞれのエピソードが紡がれていくという壮大な話です。この長い映画が、まったく長く感じませんでした。この映画の構成ってグリフィスの「イントレランス」と同じですよね。そしてこの作品の凄いところは主役級の人たちがすごいメークで何役もこなしているところ。しかも、それぞれのエピソードの主役が、他のエピソードでは脇役。エンドクレジットで名前が紹介されるシーンで彼らがどの役を演じていたかが出るのですが、ビックリです。これは必ず観ましょう!私はできればもう一回、劇場でこの映画を見てみたいです。出演者はトム・ハンクス、ハル・ベリー、ジム・ブロードベント、ヒューゴ・ウィービング、ジム・スタージェス、ベン・ウィショー、スーザン・サランドン、ヒュー・グラント、そして韓国のペ・ドゥナ。監督は「マトリックス」のウォシャウスキー姉弟(姉は性転換して女になった)と「パフューム ある人殺しの物語」のトム・ティクヴァ。見応えのある作品です。
プラチナデータ  監督 : 大友啓史  出演 : 二宮和也、豊川悦司、鈴木保奈美
 2013年 日本映画
子供を狙う連続殺人事件が発生。主任警部補の浅間は現場の無残な遺体を見て、雨の中で傘をそっと手向けた。そんな事件に朗報が入った。犯人のモンタージュ、そして詳細な情報が入り、公園で次のターゲットを狙っていた犯人を逮捕した。この情報は警察庁の科学捜査機関が開発したDNA解析システムによって割り出されたものだった。そのシステムの開発をした神楽はこのシステムで警察の捜査は大きく変わると宣言した。しかし、このシステムの開発に大きく寄与していた天才数学者の蓼科早樹と兄が殺された。しかも、現場から検出されたDNAは神楽の物だった。身に覚えがない神楽はひとり逃亡して事件の真相を追う。浅間は精神科の水上から神楽は「2重人格」であることを知らされる。逃亡を続ける神楽は自らが開発したDNA解析システムで行く先々ですぐに追い詰められてしまう。しかし、神楽は死んだ早樹が「モーグル」というもう一つのソフトを作製した事を知る・・・・
私評:本当のプラチナデータはこれの事か!!・・・私の大好きなミステリー作家の東野圭吾の作品。原作のイメージを活かしつつ、映画なりの進化を遂げた作品です。ミステリーはオチが分かっているとちょっと失速してしまう事が多いのですが、この作品はそれを知りながらも、存分に楽しめました!アクションシーンも存分に盛り込んであるので、エンターテインメントとしてもかなり上級。面白かったです~!主演は「GANTZ」の二宮和也。彼はやっぱり演技が上手い!ジャニーズの中もピカイチですね。浅間役は「今度は愛妻家」の豊川悦司。今回は地味な感じで脇に徹しているのが良いです。水上医師役は久々にスクリーンに復帰の鈴木保奈美、神楽の同僚で白鳥役には「妖怪人間べム」の杏、蓼科早樹役は「ヘルター・スケルター」の水原希子。このメンバーって二宮以外はみんな長身なんですよね。特に杏と水原希子は小さい二宮をどうやって大きく見せるかに苦労があったと思います(笑)。監督は「るろうに、剣心」の大友啓史。
愛、アムール  監督 : ミヒャエル・ハネケ。  出演 : ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リヴァ
Amour  2012年 フランス・ドイツ・オーストリア映画
長年連れ添ったジョルジュとアンヌは音楽家の夫婦。その日、ふたりは教え子のコンサートを訪ね最高の余韻に浸った。翌日、ふたりで朝食を獲っていると突然アンヌの動きが止まった。ジョルジュが声を掛けても抜け殻になってしまったように何も答えない。しばらくすると元に戻ったが、アンヌは病に冒されていたのだ。手術は95%が成功すると言われていたが、アンヌは残りの5%になってしまい、術後は後遺症で右半身が麻痺してしまった。退院したアンヌはジョルジュに「二度と病院には戻さないで」と懇願され承諾した。ふたりだけの静かな生活が営まれていくが、アンヌの症状はみるみると悪化し、ジョルジュひとりの手には負えなくなってしまう。家政婦を雇うも彼女の不親切な行為はジョルジュを激怒させた。ふたりの娘のエヴァは言葉さえもまともに話せなくなってしまった母親を見て愕然とする・・・・
私評:怖い時もあるけど、あなたはいつもやさしい・・・私にとっては鬼門であるミヒャエル・ハネケ。カンヌでは何度もグランプリを獲っていた彼が、今年はアメリカのアカデミー作品賞にノミネートされた。(外国語映画賞は受賞!)今回のテーマは老いと介護を抱えた老夫婦の至高の愛の物語。誰にでも訪れる老い、そして死。それは自分にだけではなく家族にも訪れる。しかし介護は生半可な気持ちではできない。私の場合は目の前に老いた母がいるのでどうしても被せて見てしまった。映画を観ていて「お前にはここまでできるか?」と尋問されているような苦痛がありました。奥さんであれば、それはまた違うのかもしれませんが・・・。そして最後の最後に一番見たくない物を見せつけられる。これはハネケ映画の真髄でもあるのですが、観たくはないけど「ありうる答え」なだけに受け入れざるを得ない。強烈でした。ジョルジュ役は「男と女」のジャン=ルイ・トランティニャン、アンヌ役は今年のアカデミー主演女優賞候補にもなったエマニュエル・リヴァ。このふたりの演技は本当に素晴らしい!そしてふたりの娘役は「ピアニスト」のイザベル・ユペール。監督は私と同じ(323日生まれ)で「ピアニスト」「ファニーゲーム」のミヒャエル・ハネケ。
千年の愉楽  監督 : 若松孝二  出演 : 寺島しのぶ、高良健吾、高岡蒼佑
 2012年 日本映画
紀州の海を望む小さな村に住む産婆のオリュウ(オバ)と亭主で僧侶の礼如。産婆になったばかりのオバの元に女が産気づいたという知らせがあり、彼女は妊婦の元へ。そして男の子を取り上げた。その家は中本家。この家の男は代々、気性も激しく一本気。そしてその美しさで女を惑わし、愉楽を与えるが必ず不幸な最期を迎えるのだ。今日生まれた子供の父親はちょうどその時、腹を刺され虫の息だった。その傍らには礼如がいた。生まれた子供の名前は半蔵。彼も美しい男に育っていった。半蔵は界隈の未亡人と良い仲になり、その噂は小さな村にはすぐに響き渡る。大阪に出された半蔵は数年後に女を連れて村に戻ってきた。彼女のお腹には子供がいた。山仕事に就いた半蔵は子供のために働くが、またしても中本の血が騒ぎ出す・・・・
私評:ホトトギスはあの世とこの世を行きかう鳥じゃ。産婆と坊主が一緒におるんじゃ。ホトトギスもよって来るわい・・・昨年逝去された若松孝二監督の遺作。海を見下ろす坂の村で産婆を営むオバアが見てきた美しい中本家の男たちの話。そんな男たちは不幸な運命が降りかかると分かっている。美しいだけではなく猪突猛進で一本気な彼らは本当に魅力的だ。そんな男たちを時には母親目線で、時には恋人目線でずっと見てきたオバアが自分の死に際に彼らの話をするのですが、不幸な運命に負けずに生きろ!という強いメッセージも発信し続けるのです。本当に力強い演出で登場人物が全て生き生きとしているんですね。オバア役は若松作品「キャタピラー」で数々の賞を受賞した寺島しのぶ。今回は脱がないな~と思っていたら、やっぱり脱ぎました!(笑)中本家の美しい男たちは彦之介が「蛇にピアス」の井浦新、半蔵役は「横道世之介」の高良健吾、半蔵のじいさんが歳をとってから妾に産ませた三好役には「さんかく」の高岡蒼佑、半蔵の従兄の達男役は「ヒズミ」の染谷将太。どうです、女性たちは生唾ものでしょう!?そして礼如役には曲者役者の佐野史郎。


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