2012/3/17

先週末はインフルエンザにかかり辛い一週間でした。
イチ押しは文句なしのエンターテインメント映画と
オスカー女優の圧倒的な演技を魅せつける作品。それにしても
今回はフランス映画が2本とイギリス映画が2本あります。

アーティスト  監督 : ミシェル・アザマヴィシウス  出演 : ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ
The Artist  2011年 フランス映画
今週のイチ押し:1927年、ハリウッド。サイレント映画界のスーパースターのジョージ・ヴァレンティンはまさに絶頂期を迎えていた。新作の舞台挨拶のために愛犬と一緒に舞台に上がったジョージは拍手喝采を浴びた。映画館の前も多くのファンでごった返していたが、その中のひとりがジョージを突き飛ばしてしまう。優しく対応するジョージに感動した彼女は、なんとジョージの頬にキスをした。その写真は翌日の新聞を賑わせた。彼女の名前はぺピー。映画女優を夢見る新人だ。オーディションでジョージの映画のエキストラ役を得たぺピーはジョージの楽屋を訪ねた。ジョージは「目立つ」ためにと彼女の唇の上にアイライナーでほくろを描いた。その日からぺピーの快進撃は始まる。端役からスタートした彼女は瞬く間にヒロインになった。1929年、映画界にトーキーが登場した。トーキーはぺピーにはさらに追い風だった。一方、サイレント映画に拘るジョージは全財産を使ってサイレントの大作を作るが興行は大失敗。いつしか、ジョージは映画界から姿を消していく・・・
私評:パーフェクト!完璧だ!!・・・サイレント映画なのにセリフがあるのかって??それは見てのお楽しみ。さて、今年のアカデミー賞で大反響を起こしたこの映画。古いスタイルのはずのサイレントがすごく新鮮に見えた。CG映画や3D映画も良いけど、映画の原点を見つめ直すと映画に必要なのは“スター”。この映画はまさに、映画スターの夢物語なのです。そしてこの作品のジョージはまさにサイレント映画時代の寵児ダグラス・フェアバンクス!まあ、彼はビジネスでも色々と仕掛けたのでジョージのように破産はしなかったけど・・。ラストシーンでぺピーが仕掛けたジョージを復活させる作戦は(これこそ使い古されたネタなのですが)特大の感動を私に届けてくれました。これぞ“ザッツ・エンターテインメント!”だけど、こんなネタをご本家のハリウッドが撮らずに、フランスが作ったというのもちょっと皮肉ですね・・。主演のジョージを演じるのは今年のオスカー俳優ジャン・デュジャルダン。良いです。オスカー獲って当然です。ぺピー役はすごい美人と言う訳ではないのに華があるベレニス・ベジョ。ジョージの運転手兼世話役にはジェームズ・クロムウェル、映画会社の重役にジョン・グッドマン。そして忘れてはいけないのはカンヌ映画祭で“パルムドッグ賞”を獲得した名犬アギー君。彼が良い芝居をするんですよ!監督は「OSS117私が愛したカフェオーレ」のミシェル・アザナヴィシウス。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙  監督 : フィリダ・ロイド  出演 : メリル・ストリープ、ジム・ブロードベンド
The Iron Lady  2011年 イギリス映画
今回のイチ押し:マーガレット・サッチャーが政界を去って長い年月が流れた。夫のデニスはすでに他界し、子供たちは独立していた。しかし、マーガレットの目には今でもデニスが映っている。彼との会話が日常化している。そして彼女は人生を顧みる。小さな雑貨店を営む父は町民議員で、彼女は父の演説を見て育った。オクスフォード大学を卒業したマーガレットは本格的に政治家を目指す。下院議員選挙に落選しすっかり落ち込んでいたマーガレットに声をかけたのはデニス・サッチャー。そこで彼はマーガレットにプロポーズをする。専業主婦はできないとキッパリ答えたマーガレットに「だからこそ、君と結婚するんだ」と告げた。双子の母となったマーガレットだったが、彼女の政治への関心は高まるばかり。ついに彼女は下院議員に当選した。男社会の国会議事堂ではまったくの異分子だったマーガレットは決して負けなかった。ヒース内閣が総選挙で敗れたのをきっかけに保守党首選へ、そしてついには英国史上初の女性首相へと登りつめた・・
私評:私はお茶碗を洗うだけの女にはなれないの・・・今年のアカデミー賞で最優秀主演女優賞を獲得したのが、この映画のメリル・ストリープ。それゆえに彼女の演技がとても気になるところ。サッチャーと言えば、1979年にイギリス首相に就任して11年もの長きに渡り勤めあげたまさに「鉄の女」。私が印象に残っているのが1982年のアルゼンチンによるフォークランド紛争。TVでの戦争の映像、そしてサッチャーの演説もしっかりと記憶に残っています。今でこそ女性議員は当たり前ですが、そういう意味ではサッチャーは先駆けなんですよね。私の記憶の中で最初に知った女性の政治家は彼女です。この作品では夫のデニスの亡霊(?)とのやりとりの中で昔を回顧するという描き方なのですが、これが実にいい演出。しかし、やはりこの映画の一番の見所はメリル・ストリープの演技です。彼女はカメレオンのようにどんな人にでもなっちゃうんですよね。老いたサッチャーの演技も素晴らしい。デニス役は「ムーラン・ルージュ」のジム・ブロードベンド。彼がまた、素晴らしい演技を見せてくれます。そしてもうひとり注目は若かりしマーガレットを演じる新人のアレキサンドラ・ローチ。顔もメリルに似てる??監督は「マンマ・ミーア」の女性監督フィリダ・ロイド。女性監督だからこそ、この作品は描き切れたのかもしれません・・?
SHAME -シェイム-  監督 :スティーブ・マックイーン  出演 : マイケル・ファスベンダー、キャリー・マリガン
SHAME  2012年 イギリス映画
NYに住むブランドンは一流の会社勤め。リッチでスタイリッシュな外見とは裏腹に、彼はセックス依存症という病を抱えていた。仕事以外の時間は、とにかくセックスしか頭に浮かばない。地下鉄の中で目が合った若い女を追いかけ、ナンパに失敗したブランドンは娼婦を家に呼び、その欲望を吐き出すがその行為が終わるとすぐに、渇きをおぼえるのだ。彼の心が満たされることはなかった。そんなある日、彼の家に妹のシシーがやって来る。歌手として生計を立てている彼女は極度のさびしがり屋で、男がそばにいないと壊れてしまう。独自のセックスライフを送ってきたブランドンの日常はシシーの登場で歯車が狂いはじめる・・
私評:私にことが嫌い?久々に濃~い内容のドラマに遭遇。セックス依存症の男が抱える罪悪感とさびしがり屋の妹が紡ぐのは、都会暮らしの孤独。リッチで何でも手に入るブランドンだが金では買えない「欲望を満たす何か」を求めて彷徨っている。周りにはたくさんの人々がいるのに、なぜか心は孤独を抱えている。何かにつけシシーを邪魔者扱いするブランドンだけど、依存症の事をまさか妹には言えず、どんどんどツボにはまって行きます。その姿が切なくもあり、惨めであり、そして滑稽でもあり。また、ワンカットがすごく長くて、とても緊張感があります。今は亡き相米監督の演出を思い浮かべてしまったのは、私だけではないはず・・。主演は「Xメン ファーストジェネレーション」のマイケル・ファスベンダー、シシー役は「ウォール・ストリート」「私を離さないで」のキャリー・マリガン。まさかのヌードシーンもあります!監督はあの名優と同姓同名のスティーブ・マックイーン。
シャーロック・ホームズ シャドウゲーム  監督 : ガイ・リッチー  出演 : ロバート・ダウニーJr、ジュード・ロウ、ノオミ・パラス
Sharlock Holmes A Game Of Shadows  2011年 アメリカ映画
ヨーロッパの各地で爆弾事件が続発。世論はアナーキストの犯行と見ているがシャーロック・ホームズの意見は違っていた。事件に絡んでいると睨んだのはアイリーン。しかし、彼女も危うく爆弾事件に巻き込まれそうになるがホームズによって救われた。ロンドンのベイカー街のホームズの家にワトソンが訪ねてきた。明日はワトソンの結婚式。独身最後の夜を仕切るはずだったホームズは事件に夢中になっていた。最近、世界中で起きている重大事件は一見、何の繋がりもなさそうだが全てが繋がっていて、それらの事件の裏にいるのは天才数学者のジェームズ・モリアティだと言うのだ。パーティ会場に現れたのはなんとホームズの兄のマイクロフトただひとり。しかし、ホームズはその会場で占いをしているシムに用があったのだ。どうやらシムの兄が事件に大きく関わっているらしいのだ。しかし、パーティ会場でのドタバタの最中にシムは姿を消してしまう・・・・
私評:The End? ・・・前作に続きアクションシーンは凄いのですが、シナリオはペラペラに薄くてコナン・ドイルもあの世で怒っている事でしょう(笑)。あのラストのモリアーティとの戦いのシーンの締めくくりなんて、あれで良いの!?あまりに捻りがなさすぎる・・・。しかし、この映画のテンポの良さと、超スローモーション映像のアクションシーンは凄い。なんたって130分くらいがポンポンポーンと進んでいく。だから、コナン・ドイルの小説のようなスタイリッシュな謎解きやミステリアスな雰囲気を期待しなければ良いのですよ。役者は最高級ですので、ストーリー以外では高得点かもしれません??主演は前作に引き続きホームズ役にロバート・ダウニー・jr、ワトソン役はジュード・ロウ、アイリーン役はレイチェル・マクアダムス。新たな布陣としてモリアーティ役で「ザ・ウォード 監禁病棟」のジャレッド・ハリス、マイクロフト役は「ゴスフォード・パーク」のスティーブン・フライ、そしてシム役は「ミレニアム」シリーズで一躍有名になったノオミ・パラス。監督は前作に引き続きガイ・リッチー。ところで私が一番好きなシャーロック・ホームズの小説は「四つの署名」です。
おかえり、はやぶさ  監督 : 本木克英  出演 : 藤原竜也、杏、三浦友和
 2012年 日本映画
2003年、火星探査機「のぞみ」が火星軌道に乗る事が出来ず、宇宙に消えた。5年半のプロジェクトがここに終了したのだ。プロジェクトマネージャーの大橋伊佐夫は「税金を無駄遣いした」と世論から批難を浴びた。この様子を目の当たりにした「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーの江本は「成功以外の選択肢はない」と部下を鼓舞した。そこには大橋伊佐夫の息子の大橋健人もいた。2005年、ついにはやぶさは目的の小惑星「イトカワ」の近くに到着した。姿勢制御のためのリアクションホイールが3基のうち2基が故障。すでにはやぶさは傷ついていた。はやぶさは2度の着陸を試みタッチダウンを成功させた。ミッションを一つ終えた江本は伊佐夫に助言を求めるが、彼は冷たく断った。地球への帰路に就いたはやぶさを新たなトラブルが襲いかかる。燃料漏れが起こり体勢を崩してしまったのだ。健人の的確な行動でなんとかその場は切り抜けるが・・・・
私評:人は宇宙と言う見えない力に支えられているからこそ、強さと賢さを得た・・・はやぶさの映画もこれで3つ目。どの映画を見ても結末は一緒なのですが、今回は3Dが売り。無限に広がる宇宙での3Dはやっぱり効果抜群。しかし、ハリウッドが作ればさらにすごい3Dになったでしょう。そして今回ははやぶさのプロジェクトと同時に架空のキャスティングでちょっとしたドラマも仕込んでいます。そんなところがいかにも配給元の“松竹”っぽいですね。しかし、興行成績は散々みたいです・・・。大橋健人役は「デスノート」の藤原竜也。相変わらずワンパターンの演技です。紅一点の理学チームのスタッフに「妖怪人間ベム」の杏。くしくも東映版の「はやぶさ」の主演は彼女の父親の渡辺謙なんですよね。伊佐夫役は「アウトレイジ」の三浦友和。その他、大杉漣、宮崎美子、田中直樹(ココリコ)、前田旺志郎、森口瑤子などなど・・・。監督は「ゲゲゲの鬼太郎」「釣りバカ日誌13」の本木克英。まあ、柳の下にドジョウは3匹もいないという事・・。
ピラミッド 5000年の嘘  監督 : パトリス・プーヤール  出演 : ジャン・ピエール・マルタン、ピエール・ルイジ=コパ
Pyramid  2012年 フランス映画
ピラミッドには数々の解明できない謎がある。しかし、それらの謎の中には、捏造された物も多々ある。建設期間がたったの20年!その真偽は?また、ピラミッドは本当に王家の墳墓なのか?現代のテクノロジーを持ってしても、不可能に近い建築技術など、各方面の専門家の意見を交え実証していく。また、石積みの技術はイースター島やペルーの古代遺跡などに数々の共通点が発見された・・・・
私評:あなたが今日まで持っていた常識は打ち破られる・・・映画館でディスカバリーチャンネルを観ている感じですね。だけど、今回の対象がピラミッドなので大画面に映えます。しかし、よくテレビの特番とかで取り上げられるような七不思議的な内容については何の答えもない。私はどうやってあんな巨大な物を作ったのかとか、1ミリの狂いもない建築技術などの解明を期待したのですが、謎は謎のまま。解明されたのは、今まで語り継がれた「伝説」には嘘があったということ。まあ、壮大なドキュメンタリーではあるのですが(-_-;)こういうジャンルがお好きな方にはお薦めかもしれません?監督はパトリス・プーヤール。


前回の記事も読んでね~!



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