2006/3/12(その2)

今回は本当にイチ押し候補作品が多かった。正直ここに書いた作品は
どれがイチ押しになってもおかしくないです。
充実したムービーライフだ!

ヒストリー・オブ・バイオレンス  監督:デヴィッド・クローネンバーグ  出演:ヴィゴ・モーテンセン、エド・ハリス
A History Of Violence  2005年 アメリカ映画
今週のイチ押し:インディアナ州の小さな田舎町でダイナーを営むトムは、愛する妻とふたりの子供に囲まれ小さくも幸せな日々を送っていた。ある日、彼の店にふたり組の強盗が訪れる。彼らはこの街に来る前にも残虐な手口で犯罪を重ねていた。従業員の女性に銃を向けたその瞬間、トムは彼らに飛び掛りあっという間にふたりを葬ってしまう。店員の命を救ったトムは一躍ヒーローとなりテレビにも出演する。数日後、彼の店に黒ずくめの男フォガティが訪れる。彼はトムをジョーイと呼び、潰された左目を見せ付けるのだった。彼はテレビに映った彼を見て、この街にやってきたのだ。人違いだと必死に説得するトムの言葉など耳に入らないフォガティは、ついにはトムの家族に近づき始める。そしてついにフォガティがトムの家へとやってきた時・・
私評:腑に落ちないんだ・・・デビッド・クローネンバーグ監督の久々の作品なのに、すごく地味に公開されています。前作「スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする」は正直イマイチでしたが、今回の作品は強烈だった。オープニングでのゆっくりとした演技の長回し撮影で、私の気持ちをしっかり掴んだあとは、エンディングまで一気に突き進んでいく。暴力が暴力を生み、そして主人公トムの行く先々で血の雨が降る。まさに21世紀のペキンバー映画??あまり、ネタばれはできないのですが、想像もつかない展開に裏切られ続けること間違いなし。主演は「ロード・オブ・ザ・リング」のヴィゴ・モーテンセン。めっちゃカッコイイです。彼の妻役には『アサルト13 要塞警察』にも出演しているマリア・ベロ。そしてエド・ハリス、ウィリアム・ハートなどが勿体ないくらいの使われ方。クローネンバーグ作品でこんなに興奮したのは『クラッシュ』以来。おススメです。 
うつせみ  監督:キム・ギドク  出演:イ・スンヨン、ジェヒ
3-Iron  2004年 韓国映画
今週のイチ押し:青年はバイクで町を駆けながら留守宅を探している。そしてその家に侵入し、家人が戻るまでつかの間の時間をその家で過ごすのだ。歯を磨く、シャワーを浴びる、料理をする、テレビを見る、洗濯をする、そして記念写真を撮る。ある日、彼は大きな家に侵入した。いつものように家の中を物色し始める。しかし、ただひとついつもと違っていたのはその家に人が残っていたこと。人妻のソナは夫の暴力にあい顔を腫らしていたが、不思議な青年を物陰からそっと見ていた。そしてふたりは運命の出会いを果たした。いち度は家を出た青年だったが彼女のことが気になってふたたび家に戻ってきた。お互いの孤独な心を埋めるかのように二人は寄り添う。静かで柔らかなふたりの時が流れていく。しかし、ソナの夫が帰宅しふたりの楽園は壊されてしまう。ソナを詰る夫に青年はゴルフボールを叩きつけ、ソナを連れて家を飛び出すが・・
私評:愛しています・・・・韓国の映画監督キム・ギドクは私が注目している監督のひとり。前作「サマリア」では援助交際を下地にした少女たちの友情と彼女たちに翻弄される大人を描いたが、今回は孤独な魂が呼び寄せあった男女の静かな愛がテーマだった。とにかく主演のふたりはほとんどセリフがない。特に青年を演じるジェヒは一言もセリフを発しない。それなのにここまで私の心を掴んだのは、彼らの表情と目の演技なのです。そして物語の後半で青年が体得した究極の愛の交換が可笑しくもあり、そして美しくもあり・・。愛に言葉はいらないなんて事は私にはあり得ませんが、“こんなやり取りもアリだ”と納得させられてしまう。感動でした。無言の青年を演じるジェヒは不思議な雰囲気を醸し出す。ちょっと不気味でもあるのですが、すごく魅力的。そして彼に心惹かれる孤独な人妻を演じるのは、本当に美しいイ・スンヨン。英語タイトルの”3-iron”とはゴルフの3番アイアンのこと。ゴルフをされる方はみんなご存知ですが、あまり使われないクラブなんですよね・・。キム・ギドクの次回作品「弓」も必ず見に行きます!
エミリー・ローズ  監督:スコット・デリクソン  出演:ローラ・リニー、トム・ウィルキンソン
Exocism of Emily Rose  2005年 アメリカ映画
今週のイチ押し:19歳の大学生エミリー・ローズは変わり果てた姿で命を落とした。彼女の死は自然死ではなく、彼女と家族が絶大な信頼を寄せていたムーア神父が過失致死罪で起訴された。彼はエミリーに獲り憑いた悪魔を祓っていたという。神父の弁護を担当する事になったのは優秀な女性弁護士のエレンだった。彼女は超自然現象などまったく信用していなかったが、ムーア神父の真摯な態度から、いつしか彼の無罪を信じ始めていた。そしてついに裁判が開始された。エミリーは精神病だったため、悪魔払いより医学的な処置が必要だったと主張する検事側に対して、悪魔の存在を立証する事に決めたエレン。そしてついにムーア神父本人が証言をおこなう。そこで語られた事は想像を絶する悪魔とエミリーを取り巻く人々の戦いだった・・
私評:123456・・・私はホラー映画が好きなのは周知のことと思いますが、唯一怖くてなかなか観ることができないのが「エクソシスト」。「エミリー・ローズ」はまさにこのエクソシストの話だったのでけっこう気合を入れて見に行きました。しかしこの映画は、怖さはもちろんですが不思議な感動がある映画でした。こういう超自然現象ってあるんでしょうね。この映画も実際にあった事がベースになっています。そしてこの映画の怖さが「音」です。ドーンというすごい音はもちろんホラーの定番なのですが、この映画は息遣いさえも聞こえるような静かなシーンが延々と続くのです。その怖さたるや・・しかし、これは映画館だからこそ味わえるのです。久々にホラー映画でドキドキしました。主演は演技派女優ローラ・リニー。そしてムーア神父を演じるのが「エターナル・サンシャイン」のトム・ウィルキンソン。エミリー・ローズを演じるのはめちゃめちゃ怖い顔のジェニファー・カーペンター。監督は脚本家として有名なスコット・デリクソン。あ〜、夜中の3時が来るのが怖い・・・。
マンダレイ  監督:ラス・フォン・トリアー  出演:ブライス・ダラス・ハワード、ダニー・グローバー
Manderlay  2005年 デンマーク映画

ドッグヴィルを焼き払ったグレースは父親と一緒にアラバマに向かっていた。彼らが車を止めたのは「マンダレイ」。その時、黒人の女性が彼らに助けを求めて走り寄ってきた。大きな門をくぐるとそこには黒人の男が両手を縛られ、白人の男に今まさに鞭で打たれようとしていた。奴隷制度など過去の産物になっていたこの時代に、マンダレイでは「奴隷制度」がしっかり残っていたのだ。ママと呼ばれる農園の女主人と向かい合ったグレースは女主人に、これをやめないなら力づくで従わせると言い放つ。しかし、老齢の女主人は直後に息を引き取ってしまう。成り行きからこの地に留まる事になったグレースは黒人主権の「新しい共同体」を作ることにした。白人を雇う形にした新しいマンダレイでグレースは「教育」を始める。数々の試練を乗り越え綿の収穫を向かえたマンダレイで、誰もが新しい時代を歩み始めると信じていたが・・・・

私評:それは私の仕事・・・・ラス・フォン・トリアーの前作「ドッグヴィル」を観た時、「この監督の映画はもう2度と観ない!」と高らかに宣言したのですが、見に行っちゃいました。(笑)この映画は「ドッグヴィル」の続編で、3部作の真ん中になります。今回の映画も監督の得意な「皮肉」がいっぱい。相変わらず私の神経を逆撫でするような演出があるのですが、今回はすごくテーマが面白かった。「奴隷制度」を逆手にとって、思いもよらない切り口で物語は終結します。まさに、「やられた!」と言う感じ。そしてまさに「ドッグヴィル」のラストを思わせる展開になっていくのですが・・・??これ以上は言えません。前作でニコール・キッドマンが演じたグレース役(今回、彼女はこの役を断ったそうです。監督は彼女のためにこの作品を書いたのですが・・)は「ヴィレッジ」のブライス・ダラス・ハワード。あれだけインパクトがあったニコールの役ですが、ブライスは見事に演じきっています。(もしかして、ブライスの方が良いかも?)そして彼女の父役でウィレム・デフォー、女主人役でローレン・バコール、白人家族の娘役でクロエ・セヴィーニが登場しますが、全然目立ちません。黒人たちは「リーサル・ウエポン」のダニー・グローバー、「コーヒー&シガレット」のイザーク・バンコレ他、演技派が勢揃いです。ラス監督の次の映画はこの映画の最終章「WASHINGTON」。これはやっぱり観なくちゃいけないな。
県庁の星  監督:西谷弘  出演:織田裕二、柴咲コウ、酒井和歌子
 2006年 日本映画

K県庁のエリート社員の野村は成績もプライドも高い上昇志向の若者。今日も県を挙げての大プロジェクトのプレゼンを見事にやり終えた。しかし、彼が漏らした『民間との交流』という言葉から県庁のエリートが民間企業と人事交流をすることに。野村が派遣されたのは三流スーパーの「満点堂」。彼の教育係には彼よりずっと年下の、しかもパート社員の二宮あきだった。今まで彼が育んできた役人としてのスキルがまったく通用しない店で、彼はもがくがやることなすこと失敗ばかり。しかし、持ち前のポジティブさで店の改革を目指す。しかし、そんな時、野村は県のプロジェクトのメンバーから外されてしまう。そして婚約者までは彼の元を去っていく・・・

私評:あなたの誇りでしょ・・・なんとも小気味の良いストーリー展開。そして主演の織田裕二の(ちょっと『踊る大走査線』の青島とダブるけど・・)見事な演技、柴咲コウの不思議な魅力、超豪華な脇役人陣と見所満載の映画です。笑いと涙と感動が詰まった日本人向けのエンターテイメント作品です。しかも、政治を皮肉っているところが今の世の中にピッタリとあてはまり、タイムリーな作品でもあります。しかし、この映画のいちばんのメッセージは織田裕二扮する野村が言うセリフに込められています。「目の前にある障害を避けて通っていたら何もできない・・」そしてこの言葉を信じたふたりの起す奇跡は、見ていて本当に気持ちが良かった。私はこの映画を観ている間中、終始柴咲コウに目が釘付け。別に私の好みのタイプではないのですが、彼女って本当に映画だとオーラを出します。今回も不思議なオーラを出しまくり。そして県知事役の酒井和歌子!60年代の東宝映画の青春スターも今やすっかり貫禄の知事役です。憎々しげな役の石坂浩二もグッドでした。監督は映画監督デビューの西谷弘。


前回の記事も読んでね〜!



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