2006/2/26

ひさびさのレビューです。観たい映画はてんこ盛りなのですが
全然観切れていないんです。今回のイチ押しは南米の衝撃作と
アカデミー賞でもノミネートされた感動作。

タブロイド 監督:セバスチャン・コルデロ  出演:ジョン・レグイザモ、レオノール・ワトリング
Tabloid  2004年 メキシコ映画
今週のイチ押し:犯罪都市、エクアドル。この街で子供ばかりを襲う連続殺人鬼「モンスター」を追ってマイアミの人気レポーター、マノロがやってきた。被害にあった双子の弟のインタビューをしようとした瞬間、彼はトラックの前に飛び出してしまう。トラックを運転していた聖書の販売員ビニシオは、トラックを動かそうとするが、彼が逃げると勘違いした村の男たちに集団リンチにされ、火をつけられそうになる。マノロの一行はその現場を撮影し放送をする。翌日、留置所を訪れたマノロはビニシオに会う。そこでビニシオは彼の無実をテレビで証明して欲しいと申し出る。その代わり「モンスター」に関する情報を出すと言うのだ。そこでビニシオは「ある情報」を教える。マノロはビニシオに言われた所を掘ってみると、警察も発見できなかった少女の遺体を発見する。しかし、マノロはその遺体を元通りに埋めてしまう。ついにマノロとビニシオは手を組むことになった。そしてマノロは大スクープを映像で捕らえようとする・・
私評:真実はどこにある?・・・これはヤバイ映画です。一昨年見た「シティ・オブ・ゴッド」もかなりの衝撃作でしたが、『タブロイド』はそれに勝るとも劣らない映画でした。とにかく犯罪が日常茶飯事のように起きている街自体がとても恐ろしい。そしてマノロとビニシオのやり取りはまるで「羊たちの沈黙」のよう。そして物語は何度もどんでん返しを見せ、ビニシオを利用しようとしていたマノロが追い詰められていく。シナリオの面白さはもちろんですが、すごくテンポの良い展開が素晴らしい。主演は「ロミオ&ジュリエット」のジョン・レグイザモ。そして彼のパートナーのプロデューサー役には「トーク・トゥ・ハー」のレオノール・ワトリング。そしてこの映画でいちばんの演技を見せるのがビニシオ役のダミアン・アルカザール。すごいです!また、この映画のプロデューサーは『ハリー・ポッター アズカバンの囚人』の監督アルフォン・キュアロン。彼が認めた才能溢れる監督はセバスチャン・コルデロ。こんな面白い映画が単館上映なんて勿体無い・・。
ウォーク・ザ・ライン 君につづく道  監督:ジェームズ・マンゴールド  出演:ホアキン・フェニックス、リース・ウィザースプーン
Walk The Line  2005年 アメリカ映画
今週のイチ押し:1950年代、ロカビリーの黄金時代を築き上げたリーゼントの男。彼の名はジョニー・キャッシュ。少年時代からゴスペルやカントリー音楽が好きだった彼は、カントリー音楽一家のカーターファミリーの次女ジューンに夢中だった。しかし、彼は最愛の兄を事故で亡くしてしまう。そしてその時父親が彼に吐いた言葉がずっとトラウマになっていた。兵役を終え結婚をした彼はセールスマンになるがまったく実績が上がらず、夫婦生活も悲惨。そんな彼の唯一の楽しみは友人と組んだゴスペルバンドで演奏することだった。ある日、レコード会社に飛び込みオーディションの約束を取り付けた彼はついにプロデビュー!カール・パーキンス、ジェリー・リー・ルイス、エルビス・プレスリーらとツアーを回ることになった。そしてついに彼は運命の女ジューンと共演を果たした。彼はこの出会いに運命を感じずにはいられなかった・・
私評:♪Because Youre Mine, Walk The Line・・・ここまで深く、そして執拗に人を好きになることが出来るだろうか?ちょっと間違えるとストーカーにもなりかねない?でも、振られても、振られてもいつまでも好きでいられる?でも、本当に好きってこういう事なのでしょう。この映画のジョニー・キャッシュとジューン・カーターは実在の人物。そして十数年のときを経て二人は結ばれた。ふたりは結ばれるべくして結ばれた完璧なカップル。映画を見た後は、ジョニーとジューンの大ファンになっているはず。実際、このふたりはその後の人生を添い遂げ、ジューンが死んだ僅か4ヵ月後にジョニーも後を追っている。なんともステキなカップルじゃありませんか。しかし、「君へつづく道」は決して平坦ではなかったのです。このステキなカップルを演じているのはホアキン・フェニックスとリース・ウィザースプーンのふたり。このふたりは映画の中の歌も実際に本人が歌っています。しかも、かなり上手い!とってもステキな映画です。監督は『17歳のカルテ』、『ニューヨークの恋人』のジェームズ・マンゴールドです。 
悪魔の棲む家  監督:アンドリュー・ダグラス  出演:ライアン・レイノルズ、メリッサ・ジョージ
The Amityville Horror  2005年 アメリカ映画
1974年11月13日、ニューヨーク州ロングアイランドの一軒家で一家惨殺という事件が起こる。犯人は家族の長男。逮捕された彼は「家に命令された」と供述した・・。そして1年後、ジョージ・ラッツとその家族がこの家にやってくる。彼らが夢にまで見た邸宅が破格の値段で手に入る。不動産屋はこの家で起きた事件をジョージに告げるが、彼らはそんな事は気にせず購入を決めた。しかし、その夜からジョージに異変が起きはじめる。妻のキャシーには3人の子供がいた。子供たちはキャシーの連れ子だったがジョージは良き父親になろうと努力をしていた。末娘のチェルシーは見えない友達ジョディと話をし始める。毎夜、3時15分になると目を覚ますようになったジョージ。その時間は1年前の惨殺事件が起きた時間だった。徐々に正気を失っていくジョージ。そして恐ろしい現象が次々と家族を襲う・・・・
私評:この家には悪魔がいるの・・・この映画は1979年に公開された作品のリメイク。79年版も私は映画館で観ました。正直、あまり怖い映画ではなかったのですが、実際に起こった事件だと思うと、ちょっと鳥肌が立ちます。そして今回のリメイク版がどうだったかと言うと、かなり良く出来ていました。旧作の良さを引き継ぎつつ、ちょっと新しい展開が追加されている。そしてもちろんCGを上手く使って良い感じに仕上がっていました。そしてやっぱりホラー映画は映画館で観なくちゃいけませんね。かなりドキドキさせられました。そして音の恐怖も十分に味わいました。ジョージを演じるのは「ブレイド3」のライアン・レイノルズ。彼の鬼気迫る演技も見所のひとつです。妻のキャシー役はめっちゃ美人のメリッサ・ジョージ。そして神父役でハリウッドの重鎮フィリップ・ベイカー・ホールが出演。製作はマイケル・ベイ。監督はこの作品がデビューとなるアンドリュー・デイビス。
美しき野獣  監督:キム・ソンス  出演:クォン・サンウ、ユ・ジテ
Running Wild  2006年 韓国映画

ワンマンではみ出し捜査が得意な刑事チャン刑事は、出所する弟を迎えに刑務所に向かった。弟を逮捕したのはチャン自身だった。しかし、弟は母親の病の治療のために悪の道へと進んでしまったのだ。しかし、その弟はまもなく悪の組織の刺客に殺されてしまう。チャンは独自の捜査でドガン組が関わっていることを突き止め、ゴルフ練習場に屯していた彼らの元へとひとり向かう。しかし、ドガン組を追っていたのは彼だけではなかった。若き検事、オ・ジヌが彼をずっと張り込んでいたのだ。そこにチャン刑事が現れたためオ検事は現場に向かうが、ドヨン組のボスヨンチョルを逃してしまう。あまりに無鉄砲なチャン刑事にとオ検事は格闘になるが、チャン刑事の正義感を見出したオ検事は手を組んでドガン組を挙げようと申し出る・・・・

私評:ファイト・・・韓流ブームが下火になってきたとはいえ、まだまだパワフルな韓国映画。その中でも人気の高い、クォン・サンウとユ・ジテのふたりが主演のクライムアクション映画。ストーリー自体はこれと言って飛び抜けてすごい展開はないのですが、ふたりの主人公と悪の組織の戦いはなかなかの迫力。しかも、悪の方が圧倒的に強い。そんな組織に体ごとぶつかっていくクォン・サンウの格闘シーンはすごいです。(マルチュク青春通りを超える迫力)その他にもスタントなしでかなり危険なシーンに挑んでいます。一方、頭脳で悪に挑むユ・ジテはまだ若いけれどすっかりベテランの余裕。このふたりのコラボがこの映画を支えています。そしてヨンチョルを演じるソン・ビョンホがイイ味を出してます。この映画の音楽を担当しているのは川井憲次。日本人がこういう場でも活躍しているのは嬉しい限りです。監督はこの映画が長編デビューとなるキム・ソンス。 
サイレン  監督 : 堤幸彦  出演:市川由衣、田中直樹、西田尚美
Forbidden Siren
 2006年 日本映画

由貴はフリーライターの父と病弱な弟とともに、ここ夜美島へとやってきた島に到着した彼らを出迎えたのは島の医師南田だった。土着文化と移民文化が混ざり合ったこの島には不思議な雰囲気が漂っていた。家に地到着した由貴は隣家の里美から島暮らしのアドバイスをもらった。「付き合いが大事」「夜は出歩かない」「森の鉄塔には近づかない」、そして最後に里美が語調を強めて「サイレンが鳴ったら外に出てはならない」と言った。由貴は島のあちこちで不思議なものを見てしまう。奇妙な宗教、不思議な旋律の歌、そして弟の英夫が話をしていた赤い服の少女。次から次へと謎が彼女に降りかかり疑心暗鬼になっていく。そしてついに島中にサイレンが鳴り響く。そして由貴は1976年に起きた、島中の人間の失踪事件を知る。その時の生存者の男が繰り返し唱えていた言葉は・・・・

私評:変わらぬ者こそは 果てしなき命 この世の理越ゆる者・・・「トリック」の堤監督の作品ということで見に行った映画。ホラーだと言うことでかなり期待して見に行ったのですが怖さの方はまったくと言っていいほど感じられなかった。(まあ、私はホラー映画の怖さはかなり麻痺していますが・・)しかし、あのオチはどうなんでしょうね〜・・。ちょっと卑怯な気もするのですが・・。弟君の行動を見抜けば、もしかしたらオチを読むことができるかも??クライマックスは「ランド・オブ・ザ・デッド」っぽい?見所はキャスティングの妙でしょうか。主演の市川由衣ちゃんは前々から可愛いな〜と思っていたのですが、なかなかブレイクしなかった。でも、やっと陽の目を浴びた感じですかね。そして意外とこの映画にはまっていたのがココリコの田中直樹。彼は「みんなのいえ」等でもいい感じでしたね。そして不気味な女を演じる西田尚美!こんな役は初めてでしょうね。そしてお父さん役が森本レオ。赤い服の少女は「妖怪大戦争」の高橋真唯。この映画は『音』に拘っているので、どうせ観るなら音の良い映画館で観ましょう! 

ミュンヘン  監督:スティーブン・スピルバーグ  出演:エリック・バナ、ジェフリー・ラッシュ
Minuch  2005年 アメリカ映画
1972年9月5日、ミュンヘンオリンピックの選手村にパレスチナゲリラ「ブラック・セプテンバー」が侵入しイスラエルの選手とコーチを人質に取り、しかも全員を殺害するという事件が起きた。イスラエル政府は各国の対応に激怒し、ついには自分たちの手で犯人に報復をする事を決める。その任務に就いたのはイスラエル秘密情報機関のアヴナーだった。国家を愛する彼はテロの首班とされる11人の暗殺を請け負った。ヨーロッパに渡ったアヴナーは4人の男たちと合流し、ターゲットを追った。最初の標的はローマにいた。彼を見つけ出したアヴナー一行は彼を射殺。初任務の成功を喜んだ。そして彼らは一人、また一人と標的を定めては殺していく。しかし、そんな彼らにも刺客が向けられる。また、自分たちの行為が本当に正しいのか?という疑問が彼らを覆い始める・・・・
私評:俺たちは高潔な人種のはずじゃなかったか・・・ミュンヘンオリンピックの最中、私は怪我をして病院に入院していました。(小学5年の時)この時日本は男子バレーボールが金メダルをとって大騒ぎになっていた。平泳ぎの田口、女子バタフライの青木、そして体操の塚本など、今でも鮮明に脳裏に焼きついています。このテロ事件のことは知っていましたが、当時の私は日本の活躍しか興味がなくて・・・。今回この映画を観て初めて裏事情を知ったのですが、映画はオリンピック中に起きた「テロへの報復」が主題。「目には目を」の精神が本当に正しいのか?死の裁きを死で報復する事が妥当なのか?最初は国家の命令で動いていた彼らの中に、ムクムクと沸いてくる。俺たちの行動は本当に正しいのか?スピルバーグ監督はこの辺りを描きたかったのでしょうね。しかし、淡々としたテンポで、如何せん長い・・。史実を映画にするにはカットする部分がなかったのでしょうね・・。主演は「ハルク」のエリック・バナ、彼の上官役でジェフリー・ラッシュ、アヴナーの仲間で南アフリカからやってきた車両のスペシャリスト役で、次期007のダニエル・クレイグも登場。監督は言わずと知れたスティーブン・スピルバーグ。
PROMISE 無極  監督:チェン・カイコー  出演:真田広之、チャン・ドンゴン
無極  2005年 中国映画
死体だらけの戦場で一人の少女が食べ物を漁っていた。そんな彼女の前に「満神」が現れる。『満神』は少女に世の中の全ての男に望まれる姫にすると約束する。その代わりに彼女が失ったものは「真実の愛を得ること」。少女の名はチンション。やがて彼女は大人になり王妃の座に着いた。天から俊足を与えられた男クンルンは奴隷として生きてきた。そんな彼が始めて心から欲するものを見つけ出し。また、深紅の甲冑を身に着けることを許された無敵の大将軍クァンミンはこれまでの戦は全戦全勝。家臣からの信頼も厚かった。そんな彼の前に「満神」が現れる。彼女は「お前の運命も、もはやこれまで」と予言する。そして冷酷な北の公爵を含め、3人の男はチョンシンが抱えた『運命』に挑む。果たしてチョンシンは真実の愛に出会うことができるのか??・・
私評:彼女の運命を変えてみせる・・・チェン・カイコー監督というのは不思議な監督です。彼の前作「北京バイオリン」は最高だった。そして「キリング・ミー・ソフトリー」もすごく好き。もちろん『さらば、わが愛/覇王別姫』は最高!しかし、「始皇帝暗殺」は失敗としか思えない出来栄え。こう並べてみると彼はローバジェットの小作品の方がイイのかも?そして今回の作品がどうだったかというと「かなり強引な映画」でした。ストーリーはありきたりと言えばありきたりなのですが、それを力技の展開で最後まで見させてしまう。それは(いい意味で)演出の技なのです。そして今回の作品の場合それを後押ししているのが映像。壮大な大地を持つ中国ならではの映像、色とりどりの衣装、そして特撮のすごさで観客の目を掴んで離さない。けっこう笑っちゃったりもできて、親しみのある映画と言えるかも??大将軍役は日本代表の真田広之。中国でも貫禄を見せます。もちろん、アクションシーンも彼なら軽くこなしてしまいます。韓国代表は「チング」のチャン・ドンゴン。彼が笑わせてくれます・・??香港からはチャウ・シンチー映画『喜劇王』のイメージが強いセシリア・チャン。


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