2012/2/19

今回はどれも良い映画です。しかし、イチ押しの2本は
ずば抜けて私の心に深く残りました。

ものすごくうるさくて、ありえなくらい近い  監督 : スティーブン・ダルドリー  出演 : トーマス・ホーン、トム・ハンクス、サンドラ・ブロック
Extremely Loud & Incredibly Close  2011年 アメリカ映画
今週のイチ押し:オスカーの父、トーマスは911のワールド・トレード・センターで死んだ。オスカーは遺体の入っていない空っぽの棺が埋められるのを見て、釈然としない物を胸に抱いた。オスカーは父が大好きだった。父は生き方が不器用なオスカーが困難に立ち向かえるよう“探偵ゲーム”を用いた。父がヒントを与え、オスカーはそれを徹底的に調べ上げる。オスカーの人間嫌いが少しだけ緩和された。父が死んでから塞ぎこんでいたオスカーは久しぶりに父のクローゼットに入った。そこで彼は青いツボを落として割ってしまう。その中には小さな袋に入った鍵があった。オスカーはその鍵が父からのメッセージだと信じて、何の鍵かを調べ始める。鍵屋を訪ねたオスカーは、店主から鍵を見つける難しさを教えられるが、鍵の袋に”BLACK“と書かれている事も教えてもらった。彼はNYの電話帳から”BLACK“の名字の人間をリストアップして、ひとりひとり訪ね歩く事にした。しかし、オスカーには誰にも言えない秘密があった・・
私評:パパは、僕に話しかけていたんだ。それなのに・・・強烈な映画いでした。めちゃめちゃ泣きました。映画の最初から小刻みなテンポで、映画はどんどん進んでいきます。父の死を乗り越えられない少年が一本の鍵に託す“何か”。その実態さえ分からないのですが、とにかく彼は探し始める。そこから始まる奇蹟のなんとも感動的なこと・・・。彼が紡いだ人々の絆。ついに鍵の正体が明らかになった時、そこからまた新たなドラマが始まる。そしてオスカーがずっと言えずにいた秘密。こんなに緻密で、しかも後半に次々と襲いかかる感動のストーリー。素晴らしい!本当に素晴らしい。最高のドラマでした。主演はこれが映画デビューのトーマス・ホーン。まさに天才です。約130分の映画の中で彼のセリフの量はハンパじゃないです!父親役はトム・ハンクス、母親役はサンドラ・ブロックというオスカー受賞俳優コンビ。クレジットでは彼らの名前が先に出ますが、主演はホーン君です。オスカーの向かいに住んでいる、喋れない“間借り人”役は「エクソシスト」のマックス・フォン・シドー。(彼のラストの荷物を持ってあげるシーン大好きです)。その他、バイオラ・デイビス、ジョン・グッドマン(ちょっと痩せた?)、ジェフリー・ライト、ゾーイ・コールドウェルという豪華な脇役。監督は「リトル・ダンサー」「愛を読むひと」のスティーブン・ダルドリー。
メランコリア  監督 : ラース・フォン・トリアー  出演 : キルスティン・ダンスト、シャルロット・ゲンズブール
Melancholia  2011年 デンマーク、スウェーデン、フランス、ドイツ映画
今回のイチ押し:その日はジャスティンにとって最良に日になるはずだった。広告代理店に勤めるジャスティンは最愛の夫となるマイケルとふたりで結婚パーティーの会場へと向かっていた。すでに2時間も遅刻しているふたり。しかし、ジャスティンは異常なくらいハイだった。そんな彼女にヤキモキしているのは姉のクレア。今回のパーティの仕切りはクレアと裕福な夫ジョンが仕込んだもので、相当な額の金を注ぎ込んでいる。しかし、クレアが心配しているのはジャスティンが抱える“鬱”だった。そして彼女の予感は的中する。徐々に覇気がなくなり、会場を去って隣接するゴルフコースで放尿をしたり、バスタブに浸かったり・・。新郎のマイケルが優しい言葉を掛けるが・・・。結局パーティは散々でジャスティンは出席していた職場のボスと揉めて職を失い、そしてマイケルまでも失ってしまう。彼女が空を見上げると蠍座の方角に真っ赤に燃える大きな星があった。その星は地球に向かっていたのだ。数週間後、人類はその事実を知る・・・
私評:地球は邪悪よ・・・・長年、鬼門だったラース・フォン・トリアー監督とようやく分かりあえたような気がします(笑)。今まで散々、私の神経を逆なでし続けた監督の作品に私は酔いしれました。地球滅亡と言う大きなスケールな事件を描きつつも、いざ、そういう状況に陥った時の人間の心理もシニカルに、そして的確に描いています。人間は色々な物を“所有”する事で“生甲斐”を得ている部分が多い。それは物だけではなく、家族や恋人だったり、“愛”だったり“夢”だったり。しかし、もうすぐ地球が滅ぶと分かった時、一番強い人間は何も持っていない人。この映画のジャスティンはすべてを失なったために最後の最後まで正気でいられるのですが・・・。実は監督も主演女優も「うつ病」になった事あるらしい・・。そして彼の作品ならではの美しい映像の数々にはため息がでました。オープニングの8分、そして究極のエンディング。映像の中に込められた、彼の哲学が爆発したようでした。主演は「スパイダーマン」シリーズ、「チアーズ」のキルスティン・ダンスト。今回は彼女の美しいヌードも拝めます。クレア役は「アンチ・クライスト」のシャルロット・ゲンズブール。その他、キーファー・サザーランド、シャーロット・ランプリング、ジョン・ハート、ステラン・スカースガード、ウド・キアーなどなど、そうそうたる面々がひと癖もふた癖もあるキャラを演じます。監督は「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「奇蹟の海」「ドッグヴィル」「マンダレイ」のラース・フォン・トリアー
タイム  監督 : アンドリュー・ニコル  出演 : ジャスティン・ティンバーレイク、アマンダ・セイフライド
in Time  2012年 アメリカ映画
近未来。人類は25歳で成長を止め、老化はなくなった。しかし、25歳以降、時間は通貨となり余命時間を稼ぐために人々は働いた。全ての人々の左腕には余命を告げるタイマーが刻印され、それがゼロになる事は死を意味した。つまり、金のある裕福な者ほど長生きで、貧乏人ほど早く死ぬ。スラム街に住む青年のウィルもその日を生き延びるのにやっとの生活をしていた。そんなある日、ウィルは金持ちが住む富裕ゾーンからやってきたハミルトンと言う男をギャングから救った。ハミルトンはすでに100年以上も生きていて、人生にウンザリしていたのだ。彼はウィルに余命のすべて116年を渡し、自らの命を絶った。ウィルは母親とその時間を分かち合い、富裕ゾーンに行く事を決めるが運悪く、彼の母は命を落としてしまう。ウィルはひとり富裕者が住むゾーンに辿り着きカジノで大富豪の娘、シルビアと運命的な出会いを果たす。彼女は退屈な生活にウンザリしていたのだ・・・・
私評:君の天職だろう?・・・めちゃめちゃスタイリッシュなSFアクション映画でした。この作品のアイデアがすごく良いですよね。人間は25歳以上歳をとらない(老けないから、みんな若い!)。しかし、生きるためには働いて金の替わりに時間を稼ぐ。そして買い物も全て時間。金持ちは永遠に生きられ、貧乏人は速攻で死去。今までありそうでなかったアイデアです。偶然、たくさんの時間を手にしたスラムの若者がリッチな者たちの街で大暴れ?そしてそれを監視する“時間警察”も絡んで、物語はどんどん膨らんでいきます。主人公のふたりのカップルが「ボニーとクライド」みたいでカッコ良かった~!ラストもまさかの展開だったので大満足です。ウィル役は「ソーシャル・ネットワーク」でも存在感を示したジャスティン・ティンバーレイク、そしてシルビア役は「マンマ・ミーア」「赤ずきん」のアマンダ・セイフライド。このふたりがとても絵になります!時間警察役は「バッドマン ビギニング」「インセプション」のキリアン・マーフィ、ウィルの母親役は「カウボーイ&エイリアン」のオリヴィア・ワイルド。監督はSF映画の名匠「ガタカ」「シモーヌ」のアンドリュー・ニコル。
人生はビギナーズ  監督 : マイク・ミルズ  出演 : ユアン・マクレガー、クリストファー・プラマー
Beginners  2010年 アメリカ映画
「私はゲイだ」。父・ハルの突然のカミングアウト。長年連れ添った母親が他界し、ハル当人もがんを宣告された直後のカミングアウトだった。堅物で融通の利かない男と思っていた父が、パーティではしゃぎ、服装も若がえり、そして若いボーイフレンドまで作った。しかし、こんなに楽しそうな父の笑顔は初めて見た。一方の息子のオリバーは38歳、独身、アートディレクター、友人は飼い犬だけ。そんなオリバーは見違えるように人生を謳歌している父を見て、戸惑いも感じたが、父との話の中で、彼の長年の人生の葛藤を知り、オリバー自らの人生を見つめなおしていく。しかし、ハルはあまりに突然にこの世を去って行った。落ち込むオリバーは仕事仲間の企画したパーティで風変わりな女性アナと出会う。似た者同士のふたりは急速に惹かれあう。しかし、ふたりが一緒に住む始めた頃からお互いの間に不協和音が流れ始め、そしてふたりは別れてしまう・・・・
私評:38歳でまた、恋をするなんて・・・・うううう、私は50になっても恋をしてやる!!人生っていつ転機がやってくるか分かりませんよね。私は昨年の10月末に東京マラソンに当選してから、今まで走った事もない未知の領域にチャレンジをしています。まさに、私は“ビギナー”だったので新しい挑戦が楽しくもあり、怖くもあり・・・。だけど、そんな自分が好きです。そして今まで何度か転職をしてきましたが、その度にビギナーからの挑戦だった。人生って本当に何が起こるか分からない。だけど、人生で”じぶんがやりたい何か”をやり残すっていうのが、いちばんしてはいけない事。幾つになってもやりたい事にはチャレンジしていきたい。いつからだってビギナーとして始める事はできるんです。そんな勇気をくれる映画でした。主演はいつまでたっても爽やかな好青年が似合う「ムーラン・ルージュ」のユアン・マクレガー、カミングアウトした父役は「サウンド・オブ・ミュージック」のクリストファー・プラマー、そしてアナ役は「オーケストラ」「黄色い星の子供たち」のメラニー・ロラン。この3人がみんな素晴らしかった!!監督はマイク・ミルズ。
ハンター  監督 : ダニネル・ネットハイム  出演 : ウィレム・デフォー、フランシス・オコナー
The Hunter  2011年 オーストラリア映画
オーストラリアのタスマニア島に一人の男が降り立った。彼の名はマーティン。彼は元々傭兵だったが、今回の彼の仕事はバイオテクノロジー企業の「レッド・リーフ」に雇われ、タスマニアン・タイガーの生態サンプルを入手することだった。タスマニアン・タイガーはすでに絶滅したと言われているが、目撃情報を入手した「レッド・リーフ」が秘密裏にマーティンを送り込んだのだ。マーティンは現地のガイドのジャックが用意したベースキャンプへと向かった。そこはアームストロング家の人々が住んでいて、幼い姉弟が彼を出迎えた。父親のジャラは行方不明で、母親のルーシーは病弱で寝た切りだったが姉弟はたくましく生きていた。やがて、マーティンは大自然の奥深くへと分け入り、手際良く動物用のトラップを仕掛けていく。12日間を一つの工程としてベースキャンプと大自然を行き来するマーティン。孤高の戦士であるマーティンだったが、彼の介護で元気を取り戻したルーシー、そして子供たちと過ごす時間が、少しずつ彼を変えていった。そんなある日、行方不明のジャラも「レッド・リーフ」に雇われていた事が判明する・・・・
私評:なんでこんなにたくさんのスピーカーが木の上にあるんだ??・・・・この映画はアクション映画ではない。タスマニアの大自然を舞台にしているが、美しい光景はあまりなくて、雨雲に覆われた、ジメジメした感じ。ハンターは黙々と最新の道具を使ったトラップ、GPS、パソコンを駆使しながらも、自らの足で大自然の中を歩き回る・・・。それらが本当にリアルな感じで、ある意味ドキドキするんですね。そして孤独な戦士が羽を休める場所を得て、遥か昔に置き忘れてきた人間としての温かみを取り戻すあたりから、なんとなく物語が動き始めます。そして彼を追うもう一人のハンターが現れて・・・。ついには私の想像を絶する悲劇が彼を襲います。自然に中にどっぷり浸かったハンターが下した究極の判断とは??タイガーの生態を渡す事は人間がタッチしてはいけない領域なのか??なんだかとって重厚なドラマでした。主演は「プラトーン」の雰囲気のウィレム・デフォー、ルーシー役は「A.I.」のフランシス・オコナー、そしてジャック役は「ジュラシック・パーク」のサム・ニール。この3人に加えて子役のふたり(モルガナ・ディヴィスちゃんとフィン・ウッドロック君)が素晴らしいです。監督はダニエル・ネットハイム。


前回の記事も読んでね~!



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