2014/1/29

今回は試写会で観た作品を先取りでご案内。
これが二本ともめちゃ面白い作品でした。

ローン・サバイバー  監督 : ピーター・バーグ  出演 :マーク・ウォルバーグ、テイラー・キッチュ
Lone Survivor  2013年 アメリカ映画
今週のイチ押し:20056月、アフガニスタン。アメリカ最強の兵士シールズの駐屯地で4人の兵士に対してある命令が下る。タリバンの中でも要注意人物の筆頭に挙げられている男を山岳地帯で見張るのが彼らの任務だった。名付けて「レッド・ウイング作戦」。目的地に辿りついた4人は「耳たぶのない」ターゲットの男を確認。しかし、通信状態が非常に悪く、ついには通信が途絶えてしまう。次の瞬間、小隊長のマイケルは目を疑った。大勢の武装したタリバン兵士が彼ら取り囲んでいたのだ。逃げ場がないと判断した彼らは戦う事を選んだ。しかし、最新の武器を携えた200人にも及ぶ敵に適う筈もなく、彼らは断崖絶壁を飛び下り必死の逃走を試みる・・
私評:タイムカードを押すぞ・・・この作品の話は実話です。4人の兵士のうちのひとりが奇跡的に生還をするのですが、これがまた想像を絶する展開です。ほぼ全編に渡ってSEALSの兵士たちの屈強さが「これでもか!」というくらい描かれています。実は監督がかなりの海軍オタクなのだそうです。納得・・・。それにしても戦闘シーンの迫力はハンパないです。顔をかすめるように飛び交う無数の銃弾、マシンガンでの砲撃、そして極めつけはロケットランチャーがガンガン飛んでくるのです。そのシーンの怖いのなんのって・・・。断崖からのダイブシーンもとっても痛そうです。とにかく山中に着地する30分辺りからは最後まで力が入りっぱなしでどっと疲れてしまいました。それくらいリアルなのです。4人の兵士役は「テッド」のマーク・ウォルバーグ、「バトルシップ」のテイラー・キッチュ、「ダーケスト・アワー」のエミール・ハーシュ、「メッセンジャー」のジョン・フォスター。彼らを仕切る上官役には「スター・トレック」のエリック・バナ。監督は「ハンコック」「バトルシップ」のピーター・バーグ。
フルートベール駅で  監督 : ライアン・クーグラー  出演 : マイケル・B・ジョーダン、オクタヴィア・スペンサー
Fruitvale Station  2013年 日本映画
今週のイチ押し:オリバーはガールフレンドのソフィーナ、そして彼女との間に生まれたタチアナと3人暮らし。ソフィーナとは結婚はしていないが、彼女を心から愛している。しかし、オリバーには前科があり、出所したばかりの彼には職がない。以前に働いていたスーパーの店長に掛け合うが、彼のポストはすでになかった。家賃の支払いもありオリバーは再び麻薬の仲介をしようとするが、母のバースデーカードを選びながら車を走らせているうちにその思いはすっと引いて行った。大晦日の晩は親戚が集まり母親のバースデーパーティ。そしてその後、オリバーとソフィアナはタチアナを親戚に預け、サンフランシスコの花火を見に、仲間たちと出掛けた。普段は車で出掛けるのだが、その日は母親のアドバイスで電車を利用した。しかし、それがとんでもない悲劇を呼ぶ事に・・
私評:クサはお前のために全部捨てた・・・サンダンス映画祭で作品賞と観客賞をWゲットしたこの作品。話は実際に合った事で、黒人青年が駅で警官に撃たれて死亡。しかし、その時の様子は一部終止、携帯の動画に録画されていたのです。映画は実際の動画のシーンからスタートします。そして彼が死ぬまでの3日間が描かれます。映画の中でのオリバーの第1印象は前科者だし、けっこうテキトウそうだし、口先だけの男みたいでまったく良くなかったのですが、そんな男が妻に、娘に、そして母親に見せる精一杯の愛情と、家族のために更生しようと頑張る姿を見て行くうちにどんどん彼に感情移入してしまいました。そして起こる悲劇・・・。分かってはいても悲しみと腹立たしさで泣いてしまいました。しかし、これぞインデペンデント映画のパワー。良い映画を観たな~・・・。主演は「クロニクル」のマイケル・B・ジョーダン。彼の母親役には「ヘルプ~心がつなぐストーリー」でオスカーを受賞したオクタヴィア・スペンサー。そして製作にはオスカー俳優のフォレスト・ウィテカーが名を連ねています。監督はライアン・クーグラー。これからこの映画を観ようと思ったら、絶対に予告編は観ないでください!
鉄くず拾いの物語  監督 :ダニス・タノヴィッチ  出演 :セナダ・マリアノヴィッチ、ナジフ・ムジチ
An Episode In The Life Of An Iron Picker  2013年 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ=フランス=スロバキア映画
ボスニア・ヘルツェゴヴィナに住むナジフは妻のセナダ、そしてふたりの娘と暮らしている。生活は貧しいが幸せな一家だ。ナジフの仕事は鉄くずを集めて売っていた。時には近所に住む弟と一緒に車を解体して金属の部分だけを売ったりもする。そんなある日、セナダが腹痛を訴え倒れてしまう。車で病院に運ぶとお腹の子どを流産していて、死んだ子供を取り出す手術が必要だと言う。保険証がないため980マルクをすぐ支払うように病院から言われるが、そんな大金を作る事はナジフには不可能だった。妻の命が危ないからと必死に病院と交渉するが、「お金がないなら手術はできない」と頑なに拒否をされた。そんな時、セナダの妹が保険証を貸してくれると申し出るが・・
私評:神は貧乏人には手を差し伸べないのか!!・・・これは実際に起こった話。しかも、この映画のキャストは病院の人間以外はすべてがその本人たち。もちろん、ナジフの家族も彼の家の周りの人たちも。ゆえに、この映画はドキュメンタリーっぽい作りになっています。それにしてもナジフの生活は酷い。「鉄くず拾い」という邦題がまさにそれを表しています。町から離れた所には極貧の人々がギリギリの生活をしている事実を監督は訴えたかったのです。しかも、ナジフは戦争に出兵していて兄弟を目の前で失くしている。戦争から解放されたら、国は何もしてくれない。手当も何もないのです。こういう映画を見るといつも思うのですが、私は本当に幸せな人間。貧乏ゆえに病院で手当ても受けられない人たちがいる事を、私たちは忘れてはいけない。しかし、この映画に出演してナジフはベルリン国際映画祭で主演男優賞を受賞。この映画をきっかけに「仕事」と「保険証」を手に入れたそうです。監督は「ノーマンズ・ランド」のダニス・タノヴィッチ。
ゲノムハザード ある天才科学者の5日間  監督 : キム・ソンス  出演 : 西島秀俊、キム・ヒョジン、真木よう子
 2013年 韓国=日本映画
イラストレーターの石神は自分の誕生日を妻と祝うために家路を急いでいた。部屋に入ると電灯は消されていて床にはキャンドルが灯っていた。そこで彼が見つけたのは床に横たわる妻。その時、彼の携帯が鳴った。相手はなんと妻。状況が掴めないまま佇んでいると今度は黒い服の男がふたり部屋に現れる。彼らは警察だという。彼らに状況を説明し、再び妻の元に戻ると、そこにいたはずの妻が忽然と消えていた。男たちはなぜか石神の事を「オ・ジヌ」と呼んでいた。彼らに連行されるが一瞬のすきを突いて石神は車中から逃げ出し、偶然通りかかった韓国人の記者カン・ジウォンに助けを求めた。翌日、石神は親友の伊吹の元を訪ねるが・・
私評:お前が知ってて、俺が知らない事を全部言え!!・・・実はこの作品の原作を読んでいました。これがジェットコースターみたいに次々と事件が起こる大傑作。映画はこの原作をさらに膨らませてあってなかなか面白かったです。今回の映画の面白いところは日本と韓国の共同作である事。配給は韓国のロッテ。しかし、日本のアスミックが資本参加しています。しかし、作品の最後の方がちょっとグダグダになっていたのが残念。結局、何だったの??という疑問が残ってしまった。主役は「CUT」「ストロベリー・ナイト」の西島秀俊。40歳を過ぎている彼ですが、危険なアクションも自分でこなしています。記者役は「誰にでも秘密がある」のキム・ヒョジン。彼女はセリフのほとんどが日本語なのですが、すごくうまい。石神を夫と慕う謎女には「モテキ」「そして父になる」の真木よう子。監督は「美しき野獣」のキム・ソンス。
小さいおうち  監督 : 山田洋次  出演 : 松たか子、黒木華、吉岡秀隆
 2013年 日本映画
ひとり暮らしの老女タキが死んだ。アパートのキッチンの前で死んでいたという。発見者は親類の大学生の健史だった。タキの遺品を整理していると健史宛の箱が見つかった。そこにあったのは生前から彼女がしたためていた「自叙伝」だった。昭和11年、山形の田舎から出てきたタキは東京の郊外に建つモダンな赤い屋根の家で女中として働き始めた。旦那様は玩具メーカーに勤める雅樹、優しい奥様の時子、そしてひとり息子の恭一は皆、タキに優しく接してくれた。ある日、恭一は高熱を出し病院に運ばれる。病名は小児まひでこのままでは歩けなくなってしまう。そんな恭一をおぶって、タキは毎日病院に通いマッサージを受けさせた。そんなタキの頑張りで恭一は歩けるようになった。そんなある日、雅樹は会社に新しく入った板倉という青年を家に呼んだ。若くて繊細な板倉は、今までに時子もタキも会った事がないタイプの男。ストコフスキーのレコードで意気投合した時子はあるときめきを感じていた・・
私評:私は長く生きすぎたの・・・昭和を描かせたら天下一品の巨匠・山田洋二監督の新作は今までにない作風。ちょっとミステリアスで、ちょっと危険なテイスト。しかし、昭和初期の上流階級の家族の生活や、戦争がもたらした悲劇の描き方はさすがです。私的には始まりから1時間半くらいはけっこう退屈で、安っぽい昼ドラを観ているようでしたが、後半の50分は感動と驚きの連続。格の違いを見せつけられました。この映画ではタキの上京から終戦までの話しか出てこないのですが、彼女が山形に帰った後、どうやって今まで生きてきたのかが知りたくなりました。この映画を語る上で外せないのは3人の女優たち。まずは、老いたタキを演じる倍賞千恵子。「男はつらいよ」のサクラ依頼、山田監督の作品の常連ですが今回の彼女の演技は特に素晴らしかった!そして時子役の松たか子。もはや若手女優の中では群を抜く演技力と美しさで今回も完璧に役になりきっています。もうひとりはタキ役の黒木華。「美人じゃない」役柄なのですが、誰もが好きになってしまいそうな若かりしタキをしっかり演じています。その他、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木聡、橋爪功&吉行和子(「東京家族」でも夫婦でしたが今回も!)室井滋、米倉斉加年、木村文乃・・・その他も、豪華な顔ぶれです。山田洋二監督83歳。次はどんな映画を撮るのかな??


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