今回はめちゃめちゃレベルが高いです。必見の社会派映画と
心に優しい日本映画がイチ押しです。他の2作品も捨てがたい・・・
ホテル・ルワンダ | 監督:テリー・ジョージ | 出演:ドン・チードル、ソフィー・オコネドー | |
Hotel Rwanda | 2004年 南アフリカ=イギリス=イタリア映画 | ||
今週のイチ押し:1994年。ルワンダのホテル“ミル・コリン・ホテル”の支配人ポールは、その手腕で多くのゲストを満足させていた。ルワンダでは部族による内戦がようやく治まろうとしていたが多数派のフツ族と少数派のツチ族のいがみ合いは続いていた。フツ族の民兵はツチ族に嫌がらせをし、ラジオでも終日、ツチ族に対する批難が放送されていた。ポールはフツ族であったが民兵の態度に嫌悪を感じていた。なぜなら彼の愛する妻がツチ族だったのだ。そんな折、フツ族の大統領が何者かによって暗殺された。もちろん嫌疑はツチ族に掛けられ、ルワンダは一気に戦場へと変貌していった。フツ族によるツチ族の大虐殺が開始されたのだ。ポールは家族を守るべく、ホテルへと逃げ込み戦況が治まるのを待つが状況は酷くなるばかり。そしてホテルには次々とツチ族の難民が訪れ、ポールは彼らをホテルで匿わざるをえなくなってしまう・・ | |||
私評:♪アメリカはユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカだけど、ユナイテッド・ステイツ・オブ・アフリカは生まれない。イギリスはユナイテッド・キングダム・オブ・イングランドだけど、ユナイテッド・キングダム・オブ・アフリカには成り得ない・・・これは映画のエンドクレジットで流れる歌の一説です。アフリカのシンドラーと呼ばれた男の物語はとにかくこの映画は強烈だった。国内でふたつの部族がいて、虐殺が始まる。その光景の凄まじさは目を覆いたくなる。しかし、私がいちばん胸を痛めたのは、その大虐殺が起こり、ルワンダがSOSを発しているのにヨーロッパ、そしてアメリカが手を引いてしまうシーンです。平和維持軍は戦いには関与しないし、少数派のツチ族は誰も頼る当てがなくなってしまうのです。しかしヨーロッパより、アメリカよりもっと酷いのは私だ。だって、そんな事があった事自体知らなかったのだから。他人事と決め付け知らん振りをする事はこんなにも残酷なことなんだと思い知らされた。この時10日間でなんと100万人の人が死んだ。まさに『大虐殺』と呼ぶにふさわしい。その事を私たちは知るべきだと思うし、目を背けずに真正面から見据えることも必要だ。主演のドン・チードルはさすがにオスカー候補になっただけの事はあります。まさに鬼気迫る演技でした。そして平和維持軍の大佐役でニック・ノルティ、TVのカメラマン役でホアキン・フェニックスが登場しますが、彼らは本当に脇役です。監督は脚本家としては輝かしい実績を残すテリー・ジョージ。本当にこの映画が公開されて良かった・・ | |||
博士の愛した数式 | 監督:小泉堯史 | 出演:寺尾聰、深津絵里 | |
2005年 日本映画 | |||
今週のイチ押し:新学期の教室にひとりの数学教師が入ってきた。彼は√と呼ばれている。彼は最初の授業で彼に√と名づけたひとりの博士のことを語り始めた。√が小学生の時、彼の母親の杏子は家政婦としてある家に出向いていった。杏子を雇った女性は彼女の義弟のために家政婦を必要としていたのだ。義弟=博士は交通事故で頭を打って以来、記憶に障害が出てしまい、記憶が80分しか持たなくなってしまったのだ。恐る恐る博士を訪ねた杏子だったが、博士のなんとも言えない優しい人柄と、彼の語る数学論に惹かれてしまう。そしていつしか杏子の息子(√)を交え、3人の不思議な交流が始まった・・ | |||
私評:それはじつに潔良い数字だ。4の階乗ですね・・・小泉堯史と寺尾聰の組み合わせと言えば、あの名作「雨あがる」、そして「阿弥陀堂便り」で私を思い切り感動させたコンビ。日本人の心にスーッと入り込んでくる優しい映画作りは今回も変わらない。そして本当に心地良い気分にさせてくれる映画でした。そして映画を見終えた後は、誰かに思い切り優しくしてあげたくなると思いますよ。これぞ最高のデートムービーかもしれません?そして映画の中で語られる『数学の魅力』も私には刺激的でした。とにかく寺尾聰の演技は最高!そして家政婦役の深津絵里、博士の姉役の浅丘ルリ子、成人してからの√を吉岡秀隆が実にみごとに演じています。このキャスティングに非の打ち所がありません。小泉監督得意の日本の美しい映像もこの映画の大きな見所のひとつです。超おススメの映画です。 | |||
秘密のかけら | 監督:アトム・エゴヤン | 出演:ケビン・ベーコン、コリン・ファース | |
Where The Truth Lies | 2005年 カナダ・イギリス・アメリカ映画 | ||
1972年のL.A.。有能なジャーナリストのカレンはある有名人の暴露本を執筆しようとしていた。そのターゲットは1950年代に一世風靡をしたコンビ、ラニー・モリスとヴィンス・コリンズのふたり。テレビが世間に出始めたばかりの頃、テレソンというチャリティー番組が彼らの人気を決定付けたのだ。また、ふたりは少女時代のカレンの憧れでもあった。ところがふたりはある女性の殺人事件に巻き込まれコンビを解消したのだ。カレンは出版元を落とし、ヴィンスに多額のギャラを支払うことでインタビューの合意を得た。そしてヴィンスは当時の酒と女と薬にまみれたふたりについて語り始めた。そしてついに死んだ女性の話に至ったとき、驚くべき新たな事実が浮かび上がってくる・・・・ | |||
私評:事実を聞きたい?きわどい話になるぞ・・・・見終えた直後の感想は、「なんと雰囲気のある映画なんだろう」。華やかで、セクシーで、ミステリアスで、そして切ない。完璧なまでに私はエゴヤン監督の世界に引きずり込まれた。そして後半はどんでん返しに継ぐどんでん返しで息づく暇もない。ほとんど完璧です!そして素晴らしいのがキャスティングです。ラリーとヴィンス役にはケビン・ベーコンとコリン・ファース。ケビン・ベーコンはいつもの厭らしさが思い切り出ていて良かったですね〜。そしていつものキャラを逆手にとって裏の顔を持つ男を演じるコリン・ファースが素晴らしい。そしてすごいのがふたりの女性です。まずはカレンを演じるアリソン・ローマン。ついこの間「マッチスティック・メン」で14歳の少女役を演じたかと思ったら、今回は本当にセクシーな女性役。良い意味でイヤラシイです。そして事件の被害者モーリーンを演じるレイチェル・ブランチャードがグッドです。久々に良いミステリーを見たな〜・・。監督は「スウィート・ヒアアフター」のアトム・エゴヤン。 | |||
フライトプラン | 監督:ロベルト・シュヴェンケ | 出演:ジョディ・フォスター、ショーン・ビーン | |
Flightplan | 2005年 アメリカ映画 | ||
突然の夫の事故死で傷ついたカイルは一人娘のジュリアとともにNYに移ることを決意した。彼女は元々飛行機の設計の仕事に携わっており、今日乗るジェットは彼女がデザインしたものだった。飛行機に一番乗りしたふたりは疲れもあり、いつしか眠りに落ちていった。カイルが目を覚ますとジュリアの姿が消えていた。カイルは必死になって機内を探すが、娘は一向に見つからない。しかも、搭乗者名簿にジュリアの名前はなかった。誰もがカイルの妄想と決め付けるが、カイルはジュリアが残した「ある痕跡」を発見し娘が機内にいることを確信する。果たして誰が?何のために??カイルの孤独な戦いが開始された・・・・ |
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私評:娘さんはあなた似ですね・・・・ジョディ・フォスターの新しい作品はアクションスリラー。しかも舞台は飛行中の大型ジェット機の中。ちょっと彼女の「パニックルーム」とシチュエーションが似ているのですが、今回は娘を必死に守ろうとする母親としてヒステリッィクにわめき散らす、一歩間違うと煩いだけの女になってしまうところを天才ジョディ・フォスターはギリギリのところで演じます。まあ、オチ自体はそれほどビックリと言う内容ではないのですが、98分という短い時間にギッシリとミステリーを詰め込んだ作りはとても好感が持てました。共演は機長役で「ロード・オブ・ザ・リング」のショーン・ビーン、そしてスチュワーデス役で「プール」のエリカ・クリステンセン。そして航空保安官役で「K−19」のピーター・サースガードが出演。監督はドイツ出身で今回がハリウッドでビューとなるロベルト・シュヴェンケです。 | |||