今回はどれもイチ押しにしたいくらい良い映画が揃いました。
それにしても観たい映画が邦画ばかり。これは嬉しいことですね。
レイクサイド・マーダーケース | 監督:青山真治 | 出演:役所広司、薬師丸ひろ子、豊川悦司 | |
The Lakeside Murder Case | 2004年 日本映画 | ||
今週のイチ押し:有名私立中学の入試に備え、湖のほとりの別荘で3組の家族が合宿を行っていた。この別荘は医師の藤間の所有する家で、彼の家族の他に有名な建築会社に勤める関谷とその家族、そしてアート・ディレクターの並木とその家族がここに集っていた。栄光塾の講師である津久見は絶大なる信頼をそれぞれの家族から得ていたが、唯一並木だけはいわゆる「お受験」については懐疑的だった。並木と妻の美菜子は別居中だったが、娘の受験のために体裁を繕いこの合宿に参加していたのだ。ところが、この合宿に思わぬゲストが現れる。並木の愛人の英理子だった。その夜、英理子に呼ばれた並木は仕事と偽り別荘を抜け出すが、途中で考えを改め別荘に戻った。すると、別荘の居間に一体の死体が横たわっていた。それは英理子の屍だった。並木の妻の美菜子に、並木と別ることを強要したため、美菜子が殺してしまったと言う。子供たちのためにこの事件を闇に葬ることを決めた3家族は、英理子の死体を湖に沈める事を決めるが・・・・ | |||
私評:私が殺したの・・・・・東野圭吾の本格ミステリーが映画化された。この映画は犯人探しのミステリーを目的として作られているのではなく、家族、親子の絆を深く抉った作品です。ともすれば愛情とエゴとは紙一重のもの。私には子供はいませんが、きっと父親であれば、子供のためにこんな事もしてしまうかもしれない。愛情ゆえにとんでもない事をしてしまう事だってあるかもしれない。つまり、愛情と悪行も表裏一体のもの。そんな人間の怖さと愚かさを真正面から捉えている。それはある意味滑稽にも見えるのですが・・。この映画の最大の見所は役者の演技です。特に薬師丸ひろ子と柄本明の演技は鬼気迫るものがあります。もちろん彼ら以外のキャストも演技派揃いなので、映画の最初から最後までピンと張り詰めたような緊張感が持続するのです。まさに名優の名演技を見た!鶴見慎吾と杉田かおるが夫婦役で出ているのは、「金八先生」のその後のような感じもしましたが・・・。そして被害者の英理子を演じる眞野裕子の大胆不敵な演技も印象的でした。そして事件は意外な展開を見せるのですが・・・。それはここには絶対に書けません・・・・。監督は「ユリイカ」の青山真治。 | |||
北の零年 | 監督 :行定勲 | 出演:吉永小百合、渡辺謙、豊川悦司 | |
Year One in the North | 2004年 日本映画 | ||
1904年。淡路の稲田藩の人々は幕府から北海道への移住を命じられる。雪も見たことがない四国の民が、北海道へと渡ったのだ。そこは原生林に覆われた未開の土地だった。一行のリーダー的存在の小松原英明は、民衆を鼓舞し自らの手で自分たちの国を作ろうと精魂を傾けていた。そしてそこに第2団の使者として彼の妻志乃と娘の多恵もやってくる。しかし、開墾は進むが農作物がまったく根付かず、しかも次の移民を乗せた船が難破すると言う悲劇が彼らを襲う。失意の民を救うべく英明は札幌へと、この地で行える農業についての調査に出かけた。しかし、彼はその後消息を絶ってしまう。その村は活気を失くし、誰もが生きていくのに精一杯。そしてそんな苦悩の矛先は英明の妻である志乃に向けられる。そしてこの村にいる事ができなくなった志乃と多恵は、吹雪の中を英明のもとへと旅立つ。そしてふたりは雪の中で精も根も尽き果ててしまう。しかし、彼女たちは偶然にもこの土地にやってきていたアメリカ人のエドウィン・ダンによって救出される。そして多恵とふたりで新たな生活を始めるのだが・・・・ | |||
私評:ここは私たちの土地です・・・・日本映画が久々に放つ、壮大なる大河ドラマです。北の原野を舞台に逞しく生きた人々のドラマはとても感動的でした。彼らのフロンティア・スピリッツは、まさにサムライの誉れ。とにかく未来がまったく見えない土地で生き抜いた人々にはそれぞれのドラマがあります。それらを2時間50分の中にギューっと圧縮して作られたのがこの映画。当時の人々の夢とロマン、しかしそれらをことごとく打ち破る苦悩と絶望が見事なまでに描かれています。劇中で吉永小百合扮する志乃が、「夢を諦めない限りきっと助けがある」というようなセリフを言うのですが、それを信じたからこそ彼らは初心を貫き通すことができたのでしょう。この物語はもちろんフィクションですが、実際に淡路から北海道に移住した人々がいたことは事実。そして映画の中のいくつかのエピソードは史実に基づいている。今の私たちに必要なものって、もしかしたこういう「開拓精神」なのかもしれないですね。出演者は吉永小百合、渡辺謙、柳葉敏郎、石田ゆり子、豊川悦司、香川照之・・といった日本映画を代表する顔ぶれ。しかし、私の涙を誘ったのは少女時代の多恵を演じた大後寿々花ちゃんです。彼女の演技は素晴らしかった。監督は「世界の中心で、愛をさけぶ」の行定勲。 | |||
ネバーランド | 監督 : マーク・フォースター | 出演:ジョニー・デップ、ケイト・ウィンスレット | |
Finding Neverland | 2004年 アメリカ映画 | ||
1903年、ロンドン。劇作家のジェームズ・バリの新作が公開されるが、評判は散々。翌日の新聞でも最悪の評価だった。失意のジェームズはいつもの通り愛犬と一緒に公園に出かけ、そこで運命的な出会いを果たした。デイヴィス家の4人兄弟とその母シルビアだ。意気投合した彼らは、その後何回も時間を共有していくが、三男のピーターだけは父親の死以来、空想の世界に飛び込むことを頑なに拒んでいた。そんな家族と過ごす時間が、ジェームズの創作意欲に火をつけた。デイヴィス一家との出来事が彼の新作に次々と注入されていく。そしてついに彼の新作の準備が開始された。ぬいぐるみの犬、海賊、大人になれない子供、時計を飲み込んだワニ、そして妖精の粉。劇場の興行主は一抹の不安を隠せない。そしてジェームズは初日に25席を子供たちのために確保して欲しいと申し出る・・・・・ | |||
私評:ママが見えるよ・・・久々に思い切り泣いた。涙がボロボロこぼれて困ってしまった。しかし、あれだけ泣いたのに観終えた後はなんだかとっても爽やかだった。私は少年時代から「ピーター・パン」の大ファンで、ディズニーの映画はもちろん、榊原郁恵のステージも見に行きました。しかし、この物語にこんなステキな裏話があるとは知りませんでした。主人公のジェームズ・バリは、とにかく人を喜ばせる事が好きだったのでしょうね。「ピーター・パン」はいつでも私にパワーをくれる作品。いつまでも大人になりたくない訳ではないのですが、子供の心も持ち続けて行きたいと思うのは私だけでしょうか??主演のジョニーデップは、いつもと違ってすごく自然な演技で良かったです。しかし私的に素晴らしかったのが、シルビア役のケイト・ウィンスレット。そろそろ彼女もオスカーを獲るのでは? そしてピーター役は「トゥー・ブラザーズ」でも光っていたフレディ・ハイモア君。彼が泣かせてくれます!その他にも名優ダスティン・ホフマン、「フォーン・ブース」のラダ・ミチェル、「ドクトル・ジバコ」のジュリー・クリスティー、「トレイン・スポッティング」のケリー・マクドナルドと豪華な脇役陣も要注目です。監督は「チョコレート」のマーク・フォースター。 | |||
パッチギ! | 監督:井筒和幸 | 出演:塩谷瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ | |
2004年 日本映画 | |||
1968年の京都。修学旅行で京都にやってきた九州の学生が朝鮮学校の女学生にからんだ。その直後、朝鮮学校の生徒が大挙して彼らをボコボコにしていった。その事件に巻き込まれたのが地元の高校に通う松山と吉田。その時、松山はキョンジャに一目ぼれをする。二人は学校の先生の命令で、朝鮮学校を訪ねサッカーの試合の申し込みに出掛けるが、そこで松山はキョンジャが属する吹奏楽の演奏で「イムジン河」を聞いて感動をしてしまう。その曲は不安定な国交も絡み、発売中止になっていた。松山は彼なりの革命の一環としてフォークソングを歌い始めた。キョンジャに積極的にアタックを続ける松山は、キョンジャの兄で朝鮮学校の番長でもあるアンソンが故郷の北朝鮮に帰るための宴会に飛び入りをしてイムジン河を歌い上げた。以来、朝鮮学校と交友を始める松山。しかし、朝鮮人を疎ましく思う地元の不良たちとの喧嘩は絶える事がなかった。そしてついにその抗争中に悲劇が起こる・・・・・ | |||
私評:これが俺のパッチギじゃ〜!!・・・井筒監督がなんとも熱い青春映画を作り上げた。パッチギとは「突き破る、乗り越える」という意味らしいが、この映画の中ではアンソンの必殺頭突きもパッチギと呼ばれていた。とにかく喧嘩のシーンが多くて、ちょっとうんざりするけれど、その中に心温まるエピソードが幾つも盛り込まれていて、クライマックスでは感動で涙が出そうになった。「イムジン河」は、当時歌ってはいけない歌。しかし、それは国同士の微妙な関係のために勝手に決められた事で、この物語の中ではまさに北朝鮮と日本の橋渡しになっているのです。この曲は聞いたことがあると思ったら「悲しくてやりきれない」の元歌だったのですね。とにかくこの映画には若くて勢いのある役者が総出演。若者が持つ「熱さ」がスクリーンからビンビン伝わってきました。そしてその「熱さ」のはけ口は「喧嘩」だったり「音楽」だったり。それぞれ弾け方が、良いんですよ。そしてエンドクレジットで掛かる「あの素晴らしい愛をもう一度」は胸に沁みました。関西弁で「必死のパッチ」という言葉があるらしいのですが、この映画を見ていて、その意味が分かりました・・・(関西弁講師:ひこちゃんより) | |||
エヴァンジェリスタ | 監督:サイモン・フェローズ | 出演:ヘザー・グラハム、デヴィッド・ヘミングス | |
Blessed | 2004年 イギリス映画 | ||
ニューヨークに住むサマンサとクレイグは理想的なカップル。しかし、彼らの唯一の悩みは子供がいない事。不妊症に悩むサマンサは医師の勧めで、静かな湖畔にあるレイクビューという町の病院を訪ねた。検査の結果サマンサは健康体で妊娠の確率も高い事が分かり、さっそく体外受精を行うことに。女医のリーズはふたりの精子と卵子を受精させ、サマンサの子宮に戻す事に成功した。数日後、リーズから懐妊の知らせが届いた。サマンサのお腹の子供は順調に育っていく。しかも、双子だということが分かり、サマンサの喜びは2倍に膨れ上がった。クレイグはレイクビューのパーティーでシドニーという男を紹介された。彼は出版界でも大物で、売れない作家のクレイグには、まさに渡に船だった。そんなある日、サマンサの近くで黒いフードを着た男がつきまとい始める・・・・ | |||
私評:ルシフェルを甦らせてはいけない・・・1968年に「ローズマリーの赤ちゃん」という映画があったが、この作品はまさにそのテイストを引き継いだ映画です。悪魔の子を宿した女、そして彼女の周りに集まってくる怪しい人々、そして赤ん坊の出産を拒もうとする男・・。とにかく最後のオチまではすごく面白い展開だった。ところが最後の最後に「何だ??」という疑問を私に投げかけたまま映画は終わってしまった。救急車の中でクレイグは何を見てあのセリフを言ったのか??これは「謎」と言うより「手抜き」です。(笑)主演は相変わらず可愛いヘザー・グラハム。彼女のだんだんと大きくなっていくお腹がいかにも作り物っぽいのは許してあげましょう。クレイグ役は「バイオ・ハザード」のジェームズ・ピュアフォイ。そして謎の富豪シドニー役はこの映画の撮影中に亡くなったイギリスの名優デヴィッド・ヘミングス。クレイグの出版エージェント役は「アザーズ」のフィオヌラ・フラナガン。そして怪しいイタリアの神父役は「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムで有名なアンディ・サーキス。いかにもオカルト映画の匂いがプンプンする作品です。監督はサイモン・フェローズ。 | |||