2005/9/4

もう、9月ですね・・。
今回は今年一番のクールでカッコイイ映画と、
久々に震えた日本のホラー映画がイチ押しです。

ビー・クール  監督:F・ゲイリー・グレイ  出演:ジョン・トラボルタ、ユマ・サーマン
Be Cool  2005年 アメリカ映画
今週のイチ押し:映画業界で成功したチリ・パーマーは、あまりに薄汚れた映画界に嫌気が差し元の取立て屋に戻ろうとしていた。そんなある日、友人のトミーとカフェで話をしていたチリはロシアン・マフィアの襲撃に遭遇し、トミーはその場で射殺されてしまう。トミーが最後に語っていた無名のシンガー、リンダに会いに出かけたチリは彼女のステージを見て才能を見抜くが、彼女はニックが経営する悪徳マネージメント会社と契約が(しかも、あと5年)なされていた。そんな事にお構いなくチリはリンダのマネージャーを宣言し、リンダをトミーの妻、イーディの元へと連れて行く。イーディもリンダの才能に衝撃を受ける。チリはイーディが昔、エアロスミスの追っかけをしていて、メンバーの洗濯係りをしていた事に乗してスティーブン・タイラーに直撃。ついにリンダはエアロスミスと共演という、とんでもないチャンスを手に入れた。しかし、これで黙っていられないのがニック。憎きチリに刺客を送る。また、トミーが借金をしていた極悪音楽プロデューサーやロシアン・マフィアが絡み、事件はドンでもないことになろうとしていた・・・
評:Watch me !!・・・私の大好きな映画「ゲット・ショーティ」の続編が10年の時を経てスクリーンに帰ってきた。この作品のジョン・トラボルタ演じるチリ・パーマーという男がめちゃめちゃカッコいいんですよ。まさに「Cool」な男。彼を中心になんだかとんでもない面子が次々と現れ、笑わせてくれます。とにかく、この映画の見所はキャストです。もちろん、一番はトラボルタ。そして「パルプ・フィクション」以来の共演となるユマ・サーマン。2人がまた、一緒に踊るんですよ〜!!そのダンスがカッコいいのなんのって。そして私の好きなエアロスミスのライブまで見れちゃう。しかも、ジョー・ペリーが気の利いたセリフまで言っちゃうんですよ。そして歌姫リンダ役はクリスティーナ・ミリアン。ニック役はハーベイ・カイテル、ニックの子分をヴィンス・ヴォーン、彼の「オカマ」の用心棒をザ・ロック(彼は最高!!)、その他にもジェームズ・ウッズ、ダニー・デヴィート、本人役でジーン・シモンズ、セルジオ・メンデスなどなど、これでもか!というくらいの超豪華キャスト。監督はF・ゲイリー・グレイです。今年最高の映画になりそう。
ノロイ  監督:白石晃士  出演:小林雅文(?)
 2005年 日本映画
今週のイチ押し:怪奇現象のルポライター小林雅文の自宅が全焼した。焼け跡から妻の遺体が発見されたものの小林の姿はなく、以来彼は行方不明となっていた。彼が最後に手がけた作品は「ノロイ」というタイトルだったが内容があまりにも危険な要素を含んでいたため発売には至らなかった。「ノロイ」の事件の発端は1年半前。隣の家から複数の赤ん坊の泣き声がするという通報だった。隣の家に住んでいたのは石井潤子という女で小林の取材を言葉汚く断った。そのやりとりを撮影したビデオには、やはり赤ん坊の声が・・。次の事件は小学生を対象にした超能力実験。一人の少女が透視などの実験で恐るべき能力を発揮する。しかし、彼女は数日後に失踪してしまう。同じ頃、アンガールズの心霊スポット訪問に同行した女優の松本まりかは現場で突如悲鳴を上げて倒れてしまう。そのビデオに残っていたものとは・・・
私評霊体ミミズ〜!!!・・・この映画は全編をビデオカメラで撮影した、ドキュメンタリータッチになっている。いったい、どこまでがフィクションでどこからが事実なのかは分からない。そんな作品を作るうえで大切なのは有名人を使わないこと。実際この映画の主要キャストは無名の人ばかりだし、クレジットでも出演者の名前は出ない。ただ、唯一超能力少女役が「いぬのえいが」や「世界の中心で愛を叫ぶ」に出演していた名子役、菅野莉央ちゃんだったのが失敗かな。彼女は有名でしょう?物語はいくつかの事件が、次第にひとつになっていき、まさに「ブレアウィッチ・プロジェクト」みたいなクライマックスで終わりかと思ったら、その後にとんでもない展開が待っています。思わず鳥肌が立ちました。劇場には夏休みの最後の方だったこともあり、高校生くらいの女の子がけっこう来ていたのですが、何度も悲鳴を聞きました。そして途中退場者も・・・。監督は、今後Jホラーを牽引していくであろう白石晃士。プロデューサーは一瀬隆重。
マザー・テレサ  監督:ファブリッツィオ・コスタ  出演:オリビア・ハッセー、セバスティアーノ・ソマ
Mother Teresa  2003年 イタリア・イギリス映画
1946年、カルカッタの女学校で教鞭をとっていたテレサは、とある事で院長と対立しダージリンへの転任命令を受けた。任地に赴く途中で彼女は、行き倒れの男の口を通してイエスの声を聞いた。「私は渇く・・」無断でカルカッタに戻ったテレサは、自分の居場所は修道院の中ではなく、貧しい人々の中だと知り修道会に「院外活動」の許可を求めた。しかし、回答はNO。ところがテレサの熱意に打たれたエクセム神父により決定はバチカンに委ねられた。医療の実地訓練を受けながら返事を待っていたテレサの元に、院外活動を許可する手紙が届く。そしてテレサは白地に青の新しい修道服に着替えストリートでの活動を開始する。時には物乞いまでするテレサには非難の声も集まるが、逆に彼女の行動に賛同する人たちも増えていった。そして4年後、テレサは新しい修道会「神の愛の宣教者会」の設立を申し出る・・・・
私評:私は神が手に持つペンにすぎません・・・口コミで女性客を中心にどんどん集客を伸ばしているこの映画。私もマザー・テレサの名前は知っていたものの、彼女の偉業の数々は映画を通して初めて知りました。この映画の中でテレサが語るセリフには、数々の名言が含まれています。その言葉の「優しさ」と「暖かさ」に私は感動してしまいました。そしてマザー・テレサがあれだけの偉業をなしえたその原動力が「意志の強さ」だと悟りました。映画自体はこれだけの物語を強引に2時間に納めている感があって、もうちょっとじっくりと作ったら良かったのに・・と思いました。テレサを演じるのは「ロミオとジュリエット」のオリビア・ハッセー。この映画はもう、彼女の独壇場です。マザー・テレサの話し方を真似るだけではなく、真っ直ぐで力強い視線、そして体全体からにじみ出る暖かさを見事に体現していました。こんな渇いた時代だからこそ、もう一度地球上にいる、自分よりはるかに貧しい兄弟たちに目を向けてみることが大切かも。映画の中でミーティングに出されたミネラルウォーターが$3であることを知ったテレサが、「これ一本で一人の子供が1年間食べられる」と言っていました。監督はファブリッツォ・コスタです。
サマー・タイムマシーン・ブルース  監督:本広克行  出演:瑛太、上野樹里、真木よう子
Summer Timemachine Blues  2005年 日本映画

ここは田舎町のとある高校。真夏の猛暑の中で「SF研究会」のメンバーは同じ部室内にある写真同好会の依頼で、野球に精を出していた。そして部室に戻るとそこは灼熱地獄。しかし、その時悲劇が起こった。この部室をオアシスに変えるエアコンのリモコンにコーラがこぼれてしまったのだ。しかも、このエアコン、リモコンでしか操作ができない。その時、部室の中に突如としてタイムマシーンが現れる。なんと30年後の未来から、自分たちの後輩である「SF同好会」の生徒が乗ってきたのだ。タイムマシーンと知った彼らはとりあえず、昨日に戻って壊れていないリモコンを持ってこようとする。しかし、過去を変えることの危険性を知った彼らはなんとか復旧に努めるが、トラブルがトラブルを呼び事態は最悪に・・・・??

私評:すごい時間のスペクタクルだよ・・・面白い。面白すぎる。「踊る大走査線」の本広監督が手がけたおばかな青春グラフィティ。しかし、表面は能天気な若者の話なのですがタイム・パラドックスの面白さ、不思議、そして疑問が続々と登場。映画の冒頭で訳の分からなかった演出が、次々と繋がってひとつの物語がしっかりと描かれていくのです。特に私は「河童伝説」のくだりが大好き。元が舞台の戯曲だっただけに、会話のセンスも最高。日本映画に、また新たな傑作が登場しました。この作品のオリジナルは「ヨーロッパ企画」の舞台作品。とにかく完璧なシナリオです!!主演はTV版「ウォーターボーイズ」の瑛太、そして我らが上野樹里ちゃん、ハリウッド版「The Juon」の真木よう子。その他の面子も個性的なキャストです。監督は本広克行。彼らしい演出の「隠れキャラ」探しも面白いですよ。
奥様は魔女  監督 : ノーラ・エフロン  出演:ニコール・キッドマン、ウィル・フェレル
Bewitched  2005年 アメリカ映画

落ち目の映画俳優ジャック・ワイヤットは、なんとか過去の栄光にすがっているものの、人気はがた落ち。しかも、夫婦仲もうまくいかず散々な毎日。そんな時、彼の元に降って沸いたのが60年代の人気TVドラマ「奥様は魔女」のリメイクだった。ダーリン役に抜擢された彼は、魔女であるサマンサが主役のドラマをダーリン主役のドラマにすべく、サマンサ役には新人を起用することに決めた。ジャックが街を徘徊していると、あの鼻の動きができるブロンドの美女を発見。彼女の名はイザベル。さっそく彼女を起用してドラマ作りがスタートした。しかし、イザベルは本物の魔女で魔法を封印して普通の恋をして普通の生活を送りたいと思っていたのだ。そんな時に目の前に現れた頼りがいのない男ジャックに、彼女も恋をしてしまう。しかし、イザベルは本当のことを彼に告げなくてはならない。自分自身が魔女だということを・・・・

私評:これが本当の私なの・・・相変わらず後光が射すぐらい美しいニコール・キッドマン。とにかくこの映画の楽しみの80%は彼女の魅力。まあ、これは私個人の意見ですが・・。そんなニコール様が今回はとてもお茶目で、キュートでした。今回の映画はTV版とはちょっと趣向が違いロマンチックなラブ・コメディになっていました。それもそのはず、監督は私の大好きな「めぐり逢えたら」のノーラ・エフロン。しっかりポイントが押さえられていて、安心して最後まで映画を楽しめました。ただ、残念なのがダーリン役のウィル・フェレルが出しゃばりすぎなところですね・・。その他共演はシャーリー・マクレーン、マイケル・ケイン、ジェイソン・シュワルツマン、ヘザー・バーンズなどなど、憎いキャスティングです。それにしても私はニコール様を大画面で観ているだけでウットリ状態。でも、この映画の楽しみ方はそれでイイのだ??

容疑者 室井慎次  監督:君塚良一  出演:柳葉敏郎、田中麗奈
The Susupect Shinji Muroi  2005年 日本映画

警視庁の室井管理官が東京拘置所に拘留された。容疑は彼が捜査本部長を担当していた事件で取調べを受けていた警官が逃走し、捕獲前に交通事故で死んでしまった事件の過程においての正当性を問うものだった。そして被害者=容疑者の母親の告訴により室井は「特別公務員暴行陵虐罪の共謀共同正犯」の容疑でついに逮捕されてしまう。この事件を裏で操っていたのは弁護士の灰島だった。そしてこの事件をきっかけに警視庁と警察庁の権力闘争が表面化し、室井にさらなるショックを与える。室井の弁護士になったのは若い小原という女性だった。彼女は過去に警察から受けた屈辱から、警察を憎んでいた。しかし、室井の真摯な性格は、徐々に小原に信頼を与えていく。室井は事件の遺留品から、ある共通点を見つけ出し本格的な事件解決のために、捜査の続行を誓うが・・・

私評:警察官として謝罪する。すまなかった・・・「踊る大走査線のスピン・オフ」第2弾。今回は、今までのシリーズの脚本を書いてきた君塚良一がメガホンをとった。この映画の事件自体はたいして大きな事件でもないのですが、そんな事件に翻弄される室井と周りの人々の友情と交流が見事に描かれている。それゆえ、今までのシリーズのような軽いノリの映画ではなくかなり重厚な感じがしました。それにしても室井を演じる柳葉敏郎のしかめっ面を2時間近くも見せられいい加減うんざりしてしまったことも事実です。しかし、「踊るシリーズ」「交渉人 真下・・」とリンクするようなセリフやシチュエーションが多いので、関連シリーズを見ていると思わずニヤリとさせられますよ。その他の出演者は小原役で田中麗奈、悪徳弁護士灰島は八嶋智人、新宿の刑事役は哀川翔、そして踊るシリーズから筧利夫、真矢みき、北村総一郎、小野武彦、斉藤暁などなど。でも、私は「交渉人 真下正義」の方が好きだな・・。ところで警視庁と警察庁の違いって知ってますか?
ふたりの5つ分かれ路   監督:フランソワ・オゾン  出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデキス、ステファン・フレイス
5 x 2  2004年 フランス映画

マリオンとジルは今、離婚を承認する書類にサインをした。これで今まで2人が育んできた結婚生活にピリオドを打つことに。その後、2人はなぜかホテルの部屋で体を重ねようとする。しかし、それがむなしい錯覚だとマリオンが気づいたがジルは強引に彼女を押さえつけるのだった。なんとも気まずい雰囲気が漂う部屋を先に出たのはマリオンだった・・。その少し前、マリオンとジルはゲイの兄と彼のボーイフレンドを呼んで小さなパーティを催した。その席で浮気の話に至ったジルは、マリオンと一緒に参加したあるパーティで、乱交パーティに参加したことを打ち明けた。マリオンはそんなジルを見ていたのだ・・。そして二人の時代は出産の日、結婚式の日、そして出会いの頃へと遡っていく・・・・

私評:勝ち負けじゃない。終わっただけよ・・・・二人の男女の紡いできた年月を遡って見せる手法をとったこの映画。しかし、描かれている二人の男女の話は表面的には、そんなに強烈な内容ではないのです。ところが、それぞれに言い出せない秘密があったり、心の葛藤があったりするんですね。その中でも結婚式の夜のマリオンの体験は毒がいっぱい。その辺りの演出がまさに、フランソワ・オゾンらしさなのです。かなりヤバイです。そして映画の最終章のラストで、やっとふたりになれた彼らが夕日の沈もうとしている海を歩いていく長―いシーンがあります。そのシーンがとても印象的だったのは、これから先の彼らのことを知ってしまっている私が彼らに「ちょっと待て!」と言いたくなったからなのですね。二人とも素晴らしかったです。100組のカップルがいればドラマも100通りできる。そんな物語のひとつを覗き見したような気分にさせられました。主演はヴァレリア・ブルーニ・テデスキとステファン・フレイス。監督は「8人の女たち」のフランソワ・オゾンです。


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