2002/12/30号

今週見た映画は、全てをイチ押しにしたいくらい。しかし、これまで出会った映画の中でも
1、2を争うくらいのパワフルムービーをイチ押しにしました。

夜を賭けて  監督 :金守珍  出演:山本太郎、ユー・ヒョンギョン、風吹ジュン、六平直政
Through The Night  2002年 日本・韓国映画
今週のイチ押し:第2次世界大戦が終わり10年が経った大阪。アジア最大の兵器工場の跡地に老婆が訪れては鉄を掘り起こしていた。彼女は工場の川向こうにある在日コリアン部落の住人だった。老婆は鉄を売り大金を手に入れた。その噂はすぐに部落中に知れ渡り、男たちは総出で工場後へと向かった。しかし、ここは立ち入り禁止区域。警察の目を盗んでは鉄を運び出す。貧乏のどん底だった彼らの部落は、活気付き光が見えたかのように見えた。しかし、警察との攻防戦は日増しに激しくなっていく。部落に3年ぶりに戻ってきた金義夫は、若者たちのリーダーとなり窃盗団「アパッチ」を率いる。しかし、ついに警察は最後の手段へと踏み切った・・・・
私評:知恵のある者はアタマ使え。わしら、知恵のない者はカラダ張る・・・・・なんて熱い青春映画なんだ。実在した大阪の在日コリアン窃盗団「アパッチ」。彼らの破天荒だけど真っ直ぐな生き方が清々しかった。そのテンションの高さは半端じゃない。ギラギラした目、そして今にも爆発しそうな男たち。そしてそんな男たちに一歩も引けをとらず素手で殴りあう女たち。これがコリアンパワーなのか??しかも、この映画のセット(舞台になる大阪の部落)は韓国に作られた。総工費5億のセットの中をとにかく走り回る役者たち。とにかくこの映画のパワーに圧倒されないように!裏を返せば、勢いだけの映画と言えるかもしれない。しかし、この勢いが私にはすごい快感だった。主演はこの映画は彼のために作られたと言っても過言ではない山本太郎。彼の迸るパワーがスクリーンからビンビン伝わってきます。そしてこの映画で目を引いたのはいつも悪役が多い六平直政。山本太郎と六平直政のパワーとパワーのぶつかり合いも見所。そしてあまりにもコ汚いババア役の樹木希林と清川虹子。ここまでやるか!そしてすっかりオバさん役が板についてきた風吹ジュンも、粗野な男たちの中でも魅せます!とにかく見ていて、自分の中の血が沸々と煮え立って行くのが分かるくらい興奮した。そしてこんなに熱くなれた自分が嬉しかった。
 
シャーロット・グレイ  監督:ジリアン・アームストロング  出演:ケイト・ブランシェット、ビリー・クラダップ
Charlotte Gray  2001年 アメリカ映画
第2次世界大戦下、ロンドンで看護婦をしながら気ままに生きていたシャーロットは、汽車の中でリチャードという役人に声をかけられた。フランス語の本を読んでいた彼女に目をつけたリチャードは、彼女をパーティーに呼び、パリで行われているレジデンス活動に参加しないかと声を掛ける。そのパーティでシャーロットは空軍のパイロットのピーターと出会い、ひと目で恋に落ちる。しかし、ピーターは翌日、戦地であるフランスへと飛び立ち、そのまま行方不明になってしまう。ピーターの安否を気遣うシャーロットは、居ても立ってもいられずレジスタンス活動への参加を決意し、訓練を開始する。そしてついに南フランスへと飛び立った。そこで彼女が出会ったのは、活動に命を賭ける青年ジュリアンだった。シャーロットは連絡員とのコンタクトに失敗し、連絡員はドイツ兵に連行され殺害されてしまう。自分の背負った任務の大きさと厳しさをあらためて知らされたシャーロットは、彼女自身の身の危険が迫ったことを知り、ジュリアンの父親の家に家政婦として住み込むことに。しかし、そこにはユダヤ人の少年が2人匿われていた・・・・
私評:ハロー、私の名前はシャーロット・グレイ・・・・・このラストのセリフが印象的だった。ケイト・ブランシェットはやっぱりすごい女優だ!この映画の彼女は今までの彼女の出演してきた映画のどのキャラクターとも違う。しかし、彼女は色んな側面を持っているんですね。決して、美人ではないのですが彼女の魅力でスクリーンから目が離せなかった。今回の彼女は恋する乙女から、愛する人たちを守るためどんどん強くなっていく女を演じている。それは戦争という恐ろしい世情が生んだものでもあり、愛する男のためでもあり、そして幼い少年たちを守ろうとする母性(?)からも生まれてきたのでしょう。メインのストーリーはそういった女性の話なのですが、平行してフランスでの悲惨な戦争の実情も見事に描き出しています。列車の爆破、続々と登場する戦車、そして同胞たちの裏切りなど、戦争サスペンスとしてもすごく楽しめる映画です。都内では単館で公開されていますが、実はかなりの大作映画なのです。でも、やはり見所はケイト・ブランシェット。
犬夜叉 鏡の中の夢幻城  監督:篠原俊哉  出演:山口勝平、雪之五月、原田美枝子
 2002年 日本映画
犬夜叉、かごめ、弥勒、そして珊瑚はついに宿敵の奈落を倒した。そして弥勒の手の風穴も消えた。しかし、四魂の玉のかけらは見つけられずじまい。同じ頃、神楽は奈落に掴まれていた心臓が元に戻り、奈落の死を知った。しかし、姉の神無に誘われ、富士の裾野の命鏡の祠へと向かう。そこで待っていたのは天空の姫を名乗る神久夜(かぐや)。自分の言うことを聞けば真の自由を与えるという条件の元で、神楽は神久夜の欲する5つの宝を集めた。その日から満月が続く怪現象が起こる。ついに犬夜叉たちの前に姿を現した神久夜。かぐや姫伝説、この地に伝わる天女の羽衣伝説、そして弥勒の祖父が残した謎の遺言の秘密が今解き明かされる。しかし、あまりにも強大な力を持つ神久夜の前に犬夜叉の爆流破も封じ込められてしまう。しかも、神久夜の放った矢がかごめの背中に・・・・。
私評:私は今のままの犬夜叉が好き。半妖のままで良いじゃない・・・映画の開始からいきなり犬夜叉軍団と奈落の凄いバトル。これでつかみは完全にOK!そしてやっとの思いでやっつけたと思ったら、またまた強敵が登場。これが犬夜叉の面白いところですね。また、登場するキャラたちがどれも個性的で面白い。私はあのスケベな弥勒が好きです(笑)。高橋留美子の作品は「うる星やつら」「めぞん一刻」「らんま1/2」、そしてこの「犬夜叉」とどれもみんな好きなんですよ。でも、この作品は特に映画向きかもしれませんね。しかも、今回はついに犬夜叉とかごめが・・・・??新キャラの神久夜の声は名女優原田美枝子が担当。「わらわは・・・」なんてセリフが似合うのはやっぱり彼女しかいないでしょう。スリルも笑いもたっぷり詰め込んだ超・エンターテイメント作品です。めちゃ面白かった!!!
CQ  監督:ローマン・コッポラ  出演:ジェレミー・デイヴィス、アンジェラ・リンドヴァル
CQ  2001年 アメリカ映画
1969年、パリ。アメリカからやってきた青年ポールは映画の編集の仕事をしていた。彼にはこの地でで知り合ったパリジェンヌの恋人がいた。彼は仕事では近未来SF映画「ドラゴンフライ」の編集をしていたが家では自らの実生活を綴る自主映画に没頭していた。その事は恋人の反感を買い、二人の間には溝ができてしまう。一方、「ドラゴンフライ」は監督のアンドレイがプロデューサーと対立し降板。次の監督に選ばれた新進気鋭の若手フェリックスも自動車事故に遭い、映画の製作は一向に進まなくなってしまう。そんな時、ポールに監督の仕事が与えられる。今まで撮影した映画に最高のエンディングを付けろとプロデューサーに言われたポールが、悩みに悩んだ挙句作ったエンディングとは???しかも、ポールは映画の主人公ドラゴンフライを演じるシルヴィアに惹かれていく・・・・
私評:謎って大好き・・・・フロンシス・コッポラの息子、ローマンが満を持しての映画監督デビュー。しかし、これがまたじつに面白い作品になっています。1969年当時の古めかしさがキッチュで不思議な感じを醸し出します。音楽もアナログ志向のMELLOWというポップバンドが手掛けていて、これがまた映画の雰囲気にピッタリ!セットの小道具や役者の衣装までがかなりアンティークなんです。それがまた、めっちゃオシャレに見えるのは、私くらいの年齢の人だけかな??また、この劇中の「ドラゴンフライ」は完全にジェーン・フォンダの「バーバレラ」を意識してますね。チープなんだけどキュートで、しかもお色気タップリの主人公がカワイイ〜!!ところが、こんなレトロな映画なのに映画館は若い女性でいっぱいでした。彼女らの反応を知りたいですね。主演は「プライベート・ライアン」「ミリオンダラー・ホテル」のジェレミー・デイヴィス。そしてドラゴンフライを演じるのはめちゃめちゃキュートなアンジェラ・リンドヴァル。もう目がハート・・・。脇役にフランスの名優ジェラール・ドパルデュー、「タイタニック」のビリー・ゼーン、そしてローマンの実の妹、ソフィア・コッポラもチョイ役で登場します。見ていて本当に心地よい、素敵な映画でした。
ピーターパン2 ネバーランドの秘密  監督:ロビン・バッド  声の出演:ハリエット・オーウェン、ブレイン・ウィーバー
Peter Pan Return to Neverland  2002年 アメリカ映画
第2次世界大戦下のロンドン。少女時代にネバーランドで大活躍したウエンディーも、大人になり今では2人の子供の母。しかし、ピーターパンの冒険の話を子供たちに聞かせ育てていた。戦争が激しくなり夫は戦争に借り出され、子供たちも疎開しなければならない。しかも、そんな夜に娘のジェーンは母親の話をあざ笑った。ところが、その夜ロンドンの空にフック船長の海賊船がやってきた。フックはジェーンをウエンディーと間違えてさらって行った。行き先はもちろんネバーランド。しかし、ジェーンの危機を救ったのはあのピーターパン、ロストボーイズ、そしてティンカーベルだった。おとぎ話だとばかり思っていたウエンディーから聞かされた冒険の数々。それが今、目の前で繰り広げられ驚くジェーン。ちょっぴり大人になったジェーンが失いそうになっていた「何か」が彼女の心の中に蘇ってくる・・・・
私評:We Can Fly, We Can Fly, We Can Fly 〜♪ 私は子供の頃からピーターパンが大好きでした。今ではこんなオヤジになってしまいましたが、いつもこの映画を見た頃のように「ドキドキワクワク」の冒険心を持ち続けていきたいと思っていました。でも、やはり現実の社会の中に身を置くとネバーランドの冒険ははるか昔の夢空時になっていたんですね。そんな錆びついた心にふたたび「ドキドキワクワク」を与えてくれたのが「ピーターパン2」でした。年月をj経てもネバーランドは昔のままでした。ピーターはもちろん、ロスト・ボーイズもフック船長も、ティンカーベルもスミーも、そして海賊たちも・・。見ていて子供の頃の自分に少しずつ戻って行く自分が、なんだか嬉しかったです。いつまでもこんな気持ちを持ち続けていたいですね。今回の悪の(?)新キャラクターはチクタク鰐の代わりのチクタク(?)蛸。これがまた笑わせてくれます。そして最後の最後にウエンディーが・・・。このシーンは感動だった〜。この名作はいつまでも語り継がれていくのでしょうね。私も元気をいっぱい貰いました!!

キス☆キス☆バン☆バン  監督:スチュワート・サッグ  出演:ステラン・ステラスガルド、クリス・ペン、
Kiss Kiss Bang Bang  2000年 イギリス映画
名うてのヒットマンのフィリックスも、まもなく50歳。最近はすっかり腕も落ち引退を決意した。彼の後継者は若いジミー。彼はフィリックスを尊敬していた。ところが殺し屋の組織は、そう簡単にはフィックスを辞めさせてはくれなかった。ついには、組織は彼に殺し屋を送り込んだ。その中にはジミーも含まれていたが・・・・一方、殺し屋以外に仕事をしたことがないフィリックスは金に困り始め、アンティーク商のボブに依頼をすると彼はすんなりとある仕事をくれた。なんと、それは彼の息子・ババのベビー・シッター。しかも、ババは33歳にもなって、一度も外に出たことがないという超箱入り息子だった。我慢の限界に来たフィリックスはババを外に連れ出す。初めての外の世界に喜びと戸惑いを隠せないババ。しかし、そんな二人にヒットマンの影が・・・・・
私評:Whisky! no ice no water・・・・この映画もめちゃ面白い。どのシーンもどこかで見たことがあるような気がするのですが、そんな色々な映画の良い所を寄せ集めたような映画です。ヒットマン同士の銃撃戦、ババとフィリックスの微妙な信頼と愛情、そしてフィリックスと恋人のシェリー、ババが出会う女神ミア、フィリックスと舎弟のジミーの関係、そしてフィリックスと父親の関係と色々なドラマが盛り込まれている。しかも、どの関係もすごく印象的なのです。笑いもいっぱいあるし、アクションシーンもあるし、涙もあるというお得版の映画。特にこの映画の悲劇の後のラストシーンはすご〜く好きです。フィリックスを演じるステラン・ステラスガルドって「グラス・ハウス」でリーリー・ソヴィエスキーを引き取るおじさん(悪役)の人だったんですね。映画を見ているときは気付かなかった。ちょっとジェームズ・ウッズに似てるかも??渋い声がセクシー。クリス・ペンにはビックリでした。予告で見たときはちょっと違和感があったのですが、映画で見たらあまりにはまり役なのでビックリ。キリンのぬいぐるみがあんなに似合う役者は他にはいないでしょう!?ジミー役は「ビューティフル・マインド」で主人公の友人?を演じたポール・ベタ二ー。そして要注目はミア役のマルティン・マカッチョン嬢。イギリスでは有名な歌手らしい。映画を見終わった後、きっとやさしい気持ちになれるでしょう。
Jam Films 監督:行定勲、北村龍平、岩井俊二 他  出演:魚谷佳苗、吉本多香美、広末涼子 
Jam Films  2002年 日本映画
いつの頃からか、紙の上に必ず現れるARITA。今までARITAがいることが当たり前だった私。ところが、ARITAは誰のところにでもいるわけではなかった。22歳になった私は恋人もでき、彼にはARITAのことを話しておこうと思った。しかし・・・・岩井俊二監督「ARITA」より
私評:短くてもイケる!・・・・日本を代表する若手映画監督7人が短編映画を作り一本のオムニバス映画にしてしまった。集まった面子がすごい!「VIRSUS」の北村龍平、「命」「木曜組曲」の篠原哲雄、「らせん」「アナザヘブン」の飯田譲治、「皆月」の望月六郎、「溺れる魚」「劇場版TRICK」の堤幸彦、「ひまわり」「GO」の行定勲、そして「リリィ・シュシュのすべて」の岩井俊二というすごい顔ぶれ。なんと望月六郎以外の監督は、私のホームページで「イチ押し」の作品に掲げれらているのだ!そして短編がどうだったかというと・・・、私はつまらなかった。なんだかアメリカ映画のカトゥーンを見ているようで薄っぺらでなんの印象も残さない映画ばかり。しかし、作品の端々にそれぞれの監督の「らしさ」を垣間見れたのは収穫だったかも??(実は私は望月六郎監督作品は未見) 特に北村龍平、岩井俊二は冒頭をちょっと見ただけで彼らの作品と分かる。これは良い事かも知れないけど、じつはワンパターンなのかも??それでも飯田譲治監督の「コールドスリープ」はけっこう好きかも??やはり、これだけ技量のある監督には、こんなお遊びみたいな映画ではなく、しっかりした映画をきっちりと作ってもらいたいというのが私の本音。


前回の記事も読んでね〜!



I Love Movieに戻る