2003/12/07

やはり私はいわゆる文芸大作が好きみたい・・・・

復活  監督:タヴィアーニ兄弟  出演:ステファニア・ロッカ、ティモシー・ピーチ
Resurrection  2000年
今週のイチ押し:ネフリュードフはある裁判の陪審員として裁判所に出廷した。そこで彼は我が目を疑った。被告人はなんと彼が過去に愛した女だった。しかも、自分から彼女の元を去ったのだ。彼女の名前はカチューシャ。彼女は窃盗、殺人の疑いがかけられていたが、どうみても無実。しかし、今の彼女は娼婦に身を落としていたため誰も庇おうとはしない。そして彼女はシベリアの刑務所への徒刑となった。彼女がここまで堕落したのは自分の責任と、ネフリュードフは悩む。彼女との出会いは、彼が青年の時。ひと夏を過ごした叔母の家だった。純真な青年だったネフリュードフはカチューシャに淡い思いを抱く。そしてその3年後、2人は再会。復活祭の夜に彼はカチューシャを誘惑し、そして己の欲望を満たした。次の朝、彼はカチューシャに金を握らせ、旅立っていった。カチューシャは信じていた男に裏切られたショックで深く傷つき、そしてしだいに身を落として行ったのだ。ネフリュードフは己の持つすべての力を使いカチューシャを救う決意をするが・・・。
私評:カチューシャ。ぼくは君を愛していたのだろうか?それとも・・・高校生の推薦図書でもあるトルストイの名作。私は「アンナ・カレーニア」や「戦争と平和」を高校のときに読んでこの作品は20代の後半に読んだ。実はこの作品はトルストイの友人の実話がベースになっている。そしてトルストイがいわゆる「宗教的改心」をしたあとの作品という事でも、興味がある作品なのです。彼はこの「改心」で過去の懺悔をしたのですが、ことの他「肉欲」に対する懺悔をしたらしい。つまり、この作品の主人公のシチュエーションは、ある意味トルストイ自身の「懺悔」でもあるのかもしれません。これは私が「復活」を読んだときに得た雑学なのですが・・。この映画は原作をかなり忠実に描いています。この作品は主人公のネフリュードフの「贖罪」がメインのテーマになっている。そして彼の思いが通じても、お互いの大きな愛は二人を結びつける結末にはならないのです。これが「理不尽」でもあるのですが、すごく納得のいく思い遣りの表れなんですね。そして当時の帝政ローマの上流社会から、底辺で生きる人たちまでが見事に描かれています。そしてそんな背景と男女のドラマを見事に融合させ、一大叙事詩に作り上げたのはイタリアのタヴィアーニ兄弟。今回もまばゆいばかりに美しい映像を随所に盛り込み、そしてそれとは対照的な暗く汚い世界も隅々まで描き切りました。まさに「大河ドラマ」。私はこういう映画が大好き!!
女はみんな生きている  監督  出演:カトリーヌ・フロ、ラシダ・ブラクニ
Chaos  2001年 フランス映画
今週のイチ押し:主婦のエレーヌは夫のポールと二人暮し。会社の社長でもある夫は忙しさもあるのだが、わざわざ彼に会うために田舎からやってくる母親とも会おうとしない勝手な男。一人息子はアパートで恋人と同棲中。しかし、彼は二股を掛けている。ある夜、パーティに出かけるエレーヌとポールの車の前に一人の女性が助けを求めて賭けてくる。しかし、ポールは知らん顔。しかも、ポールは救急車を呼ぼうとするエレーヌを制して、血で汚れた車を洗車機に入れた。翌日、エレーヌは前夜の女性の事が気になり救急病院をしらみつぶしに探し、やっと居所を突き止める。痛々しい姿の彼女を見て、エレーヌは仕事も家事も放棄して彼女の看護をすることにした。彼女の名前はノエミ。娼婦の彼女はどうやら売春組織に追われているらしい。ノエミはエレーヌの看護により、回復していく。エレーヌがいなくなり困っていたのは夫のポール。彼は必死にエレーヌの携帯電話にメッセージを残すが、そこに愛情は感じられなかった。そんな時、買春組織の男たちがノエミの居所をつきとめ病院にやってくる・・・
私評:全面戦争よ!!・・・・フランスから女性には痛快な、男にはチクリと痛い映画がやってきた。とにかくこの映画の良い所は痛快なテンポです。ジェットコースターのように次々と事件が起き、そして予想もできないエンディングに向かって物語は全力疾走。フランス語だから良く分からないけど、セリフも早口なような気がしました。続々と登場するどうしようもない男たちと、惨めな女たち。しかし、女たちは男たちに反旗を翻すのです。その爽快さと言ったら・・・。最高です!!ましては、日頃セクハラな上司に悩まされているOLや、遊び好きな男を恋人に持った女性や、ふた言目には「忙しい」で相手もしてくれない亭主を持った女性には、まさに最高な映画でしょう(笑)。ラストで夕日の海を見つめる女たちの顔の凛々しかったこと・・。監督はやっぱり女性なんですね。コリーヌ・セローの映画は「赤ちゃんに乾杯」だけ見ています。エレーヌ役にカトリーヌ・フロ、ノエミ役にはラシダ・ブラクニ。この二人はグッドですよ〜。そしてポールの母親役のリーヌ・ルノーがまた良いんです。私が注目したのは息子の恋人役のクロエ・ランベール!可愛いです!!また、この映画で使われている音楽が良いんですよ〜。爽快な気分で映画館をあとにできました!!
ポロック 2人だけのアトリエ  監督・出演 : エド・ハリス 出演:マーシャ・ゲイ・ハーデン、ジェニファー・コネリー
Pollock
1941年、グリニッジビレッジで兄の家に居候するジャクソン・ポロックの姿があった。「ピカソがみんなやっちまった!!」彼は泥酔して叫んだ。そんなある日、彼の元をリー・クラズナーという女性が訪れる。彼女は展覧会に出品されるポロックの絵を見て、彼の才能を見抜き会いにきたのだ。3週間後、ポロックはリーのアトリエを訪れる。そして2人の間には何かが芽生えた。10代の頃からアルコール依存症だったポロックはリーと付き合い始めても直らなかった。しかし、彼女の計らいでペギー・グッゲンハイムという画商に見込まれ、彼女と契約を交わす。絵の具をチューブから直接キャンバスに擦り付ける独特の画法は独創的で、絵画界の新たなスタイルを構築したのだ。そして43年には初めて個展を開いた。しかし、良い評判だけが彼に浴びせられるわけではない。しかも、酒は彼をどんどん追い詰めていく。しかし、浮浪者のようにボロボロになり家に帰ってきたポロックをリーは優しく受け入れる。そして2人はNYの喧騒を逃れ、ロングアイランドの片田舎に引っ越す。穏やかで幸せな日々が続いていく。しかし、芸術家の定めか、ポロックは再びスランプに陥る・・・・・・・・
私評:絵を描きなさい!あなたが絵を描かないで、何をするというの?私は絵を描くあなたを愛しているの・・・・ポロックという画家をご存知だろうか?私はまったく知りませんでした。そして彼が映画の中で描く絵画も全然良いと思えない。元々、絵心がない私にとって、この映画の題材はちょっとまずかったかもしれない。これがミュージシャンの話なら、音楽というアートを理解しながら見れるのに・・。しかし、アーティストというのは因果な商売ですよね。自分の作品がどんなに素晴らしくても、認められなければ何にもならない。また、高名なアーティストほどそういった葛藤が多かったのでは?このポロックは自分の作品に関してはすごく強い意思を持って相対しているのですが、心の弱さを酒で補う術を知っているがために・・・。そしてお決まりのようにあっけない最期。なんだかとても虚しい気分になりました。主演で監督も努めたのはエド・ハリス。彼はどうしてもマッチョなイメージが強かったのですが、最近の彼の作品を見ると一皮剥けてインテリなイメージが漂うようになった。「めぐりあう時間たち」の時のエイズの詩人とちょっとイメージが重なった。そして素晴らしかったのがマーシャ・ゲイ・ハーデン。ポロックと彼の作品を愛する事だけに生涯を捧げた女を好演。そして脇役ながら印象的だったヴァル・キルマーとジェニファー・コネリー、そしてすっかり歳をとったエイミー・マディガン。
1980(イチキューハチマル)  監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ  出演:ともさかりえ、蒼井優、犬山イヌコ
1980  2003年 日本映画
1980年。少女たちの間では聖子ちゃんカットが流行し、音楽はテクノブーム。スペースインベーダー、漫才ブーム、ノーパン喫茶が大流行。そしてルービックキューブも・・・。羽柴家には腹違いの3姉妹がいた。長女のカナエは高校教師。生徒の名前も覚えられない、テキトウな性格。夫にはわがまま放題をしたあげく家を飛び出し実家に戻っている。次女のレイコは元アイドル。しかもB級。ところがここ1年ほど行方不明になっていた。戻ってきた彼女はなんとカナエの高校に教育実習生として赴任してくる。しかし、レイコは元来の淫乱で、すぐに男と寝てしまうというなんとも恐ろしい病気を持っていた。そして彼女は赴任したその日に、男子生徒と・・・。3女のリカは高校2年生。映画サークルに所属している。今回、映画サークルでは300万円もの大金を使い映画の作成をしていた。リカはその作品の主役だった。しかし、その映画の中でヌードのシーンがあり、リカは悩んでいた。そして出来上がった映画は・・・・・・
私評:人間、大人になったからってオトナにはなれないのよ・・・・・。1980年って、私にとっては「ついこの間」と言う感じがするのですが、考えてみればもう23年前。私は高校を卒業して専門学校に入り、学校、ライブ、バイト、そして映画と寝る間も惜しんで動き回っていた。私の学校があった新宿には「ツバキハウス」ができてよく通った。新宿のルイードというライブハウスで、佐野元春、山下久美子、白井貴子、シャネルズらを見に通った。そしてスペースインベーダーにはめちゃめちゃはまった・・。80年は私も思い出がいっぱいあるので、この映画に出てくる当時のブームには思わずニンマリしてしまった。しかし、時代が変わっても変わらないものももちろんあります。それは男女の仲だったり、家族の仲だったり・・。まあ、製作者や監督が1980年代を懐かしむ映画であって、それに共感できるかどうかは見る人しだい。笑えるツボも多いけど、ちょっとシニカルになりすぎているかも??しかし、1980年って本当に色んなことがあった年なんですね・・・。主演の3姉妹はとってもグッドです。ともさかりえの軽さ、犬山イヌコのアホサ、そして蒼井優ちゃんの可憐さ・・。この3人がいい感じで絡まってます。そしてレイコの元恋人で有名タレント役の及川光博が最高!!その他にも隅から隅まで怪しい人がいっぱい出てきます。ほんの一瞬だけ登場する有名人を探すのも面白いかも??今度、私の1980年というエッセイを書こうかな〜と思ってます。
アンダーワールド  監督・レン・ワイズマン  出演:ケイト・ベッキンセール、スコット・スピードマン
Underworld  2003年 アメリカ映画
何世紀にも渡りヴァンパイアとライカン(狼男)は戦いを繰り広げてきた。しかし、6世紀前にライカンの首領のルシアンが死んだ事により、形勢は一気にヴァンパイアに傾いていた。そして今夜もヴァンパイアの戦士セリーンたちはライカンの残党をハントしていた。地下鉄での壮絶な銃撃戦の後、セリーンはライカンたちが人間の男、マイケルを追っていたことを突き止める。マイケルは特殊な家系を辿った、選ばれし男だったのだ。しかも、ルシアンは死んでなどいなかった。そして彼は新たにとんでもない計画を企んでいたのだ。そしてルシアンを殺したとされていたヴァンパイア軍のリーダーのクレイブンも、実はライカンと繋がっていたのだ。ヴァンパイアとライカンの新たな戦いの火蓋は切って落とされた・・・
私評:人間と愛し合ってはいけないのよ・・・めちゃめちゃスタイリッシュなアクション・ホラー映画がやってきた。ご存知のとおりヴァンパイアは夜の生き物なので映画は夜のシーンばかり。月明かりの青白い光の下で蠢く2種のクリーチャーたちが不気味でもあるのですが、とてもカッコいいんです。注目は狼男の変身シーン。「狼男アメリカン」やM・ジャクソンの「スリラー」の頃とは映像の技術が格段に進歩しているので、人間から狼男への変身の特撮はすごい。そして変身が早い。そんな獣たちに2丁拳銃をガンガン撃ちまくるヒロイン、ケイト・ベッキンセールがまた良いんですよ。今まで、どうもパッとした役がなかった彼女も、ついにはまり役を見つけたって感じですね。トリニティーには及ばないものの、彼女のアクションも注目です。この映画でルシアンを演じている男は彼女の前夫。そして彼と別れた後、この映画の監督と婚約したという、彼女にとってはある意味、忘れられない映画かも??マイケル役は期待の二枚目スコット・スピードマン。この映画は続編が作られると言う事なので、そちらも期待できそうです。面白かったです。
ケイティ  監督:スティーブン・ギャガン  出演:ケイティ・ホルムズ、ベンジャミン・ブラット
Abaodon  2003年 アメリカ映画
女子大生のケイティは卒業を目前に控え、就職活動、そして卒論の作成と忙しい毎日を送っている。そんな彼女の前に一人の刑事、ハンドラーが現れる。2年前に失踪した青年、エンブリーの捜索をしていたが、ケイティと彼がその直前まで付き合っていた事を突き止めたのだ。しかし、ケイティも彼の失踪の原因はまったく分からず、彼を失った当時は悲しみにくれていたと言う。そんなある日、彼女の前にエンブリーが姿を見せる。最初はなんとなく彼女の視界を横切っていたエンブリーも、ついにケイティに接触してくる。そしてしきりに彼女を誘惑する。ケイティは数々のプレッシャーも後押しして精神的にも、肉体的にもボロボロになっていく。そんな彼女を支えたのはハンドラーだった。ケイティの中で幼少時代の父親との確執、2年前のエンブリーとの出来事、そして現在が複雑に絡み合う。そして導き出された事実とは・・・・
私評:私を連れて行って・・・・・なんだかアヤシイ登場人物が次々と現れ、どんな展開になるのか?話が読めません。それこそ99分のうちの90分くらいまで、話が見えてこない。この辺りはけっこう退屈だったのですが、最後に「なるほど!」というオチが用意されています。考えてみれば、けっこうシンプルなオチなのですが、ヘンな登場人物たちが物語をかき回すのです。刑事のハンドラー、エンブリー、図書室にいるヘンな女ムーシー、ケイティを盲目的に好きなハリソンなどなど・・・。また、それぞれを演じている役者が適任者ばかりなんです。果たして隠された事実を見出す事ができるか??主演のケイティを演じているのは「フォーン・ブース」「ギフト」のケイティ・ホルムズ。彼女って美人じゃないけど個性的で私は好きな女優です。刑事役は「デンジャラス・ビューティ」のベンジャミン・ブラット。ムーシー役は「乙女の祈り」のメラニー・リンスキー。そしてエンブリーを演じるのは期待のイケメンチャーリー・ハナムです。最後はちょっとゾクッとしますよ・・・。
スティール  監督:ジャラール・ピレス  出演:スティーブン・ドーフ、ナターシャ・ヘンストリッジ
Steal  2002年 フランス映画
4人組の強盗団が銀行を襲った。完璧な手際で金を詰め込むとローラーブレードで一気に逃亡。手際の良さだけではなく、彼らの運動能力はずば抜けていた。彼らは金だけが目的ではなく、盗みのスリルが原動力。まんまと警察の追っ手をかわしたスリムは美しい女と出会う。ところが、彼女は刑事。二人のアヤシイ関係が始まる。次の強盗も見事にやってのけた彼ら。しかし、そこには盗んだ金と一緒に高額の証券も紛れていた。その証券は巨大な悪の組織の持ち物。組織はなんなく彼らを突き止め、今度は彼らのために強盗をするよう強要する。次々と強盗を重ねるスリムたち。彼らを利用する組織。そして警察の三つ巴の攻防の勝者は??・・・・。
私評:この10万ドルは次の盗みの資金だ。このスリル、止められるか?・・・いきなりのローラーブレードの逃亡、トラックの片輪走行、ぶっ飛ぶパトカーととにかくアクションを見せる映画。これでもか!と言うくらい次々とアクションシーンが登場します。ストーリーはけっこう単純なので、このアクションに思い切り集中できます。スピード感溢れる映像がこの映画のすべてです。主演はスティーブン・ドーフ。本来であれば、彼なんかハリウッドの超有名スターになっていてもおかしくないのに、いつもB級作に甘んじているのはなぜ??そして美しい刑事役はナターシャ・ヘンストリッジ。彼女の美しさは頭のてっぺんからつま先まで完璧!!今回もその見事な体を惜しげもなく晒して、男性諸氏はそれだけでも大満足でしょう!!見終わったあと、何も頭に残っていないのですが、これはお気楽アクション映画のいいところ。84分と時間も短いのでちょっとアクションを楽しむのであれば最高の映画です。 


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