2003/10/26

今年見た映画も、まもなく200本になろうとしています。
今回は待ちに待った、あの怪作と日本のアニメがイチ押しです。

東京ゴッドファーザーズ  監督:今 敏  声の出演:江守徹、梅垣義明、岡本綾
Tokyo Godfathers  2003年 日本映画
今週のイチ押し:新宿のホームレスのギンちゃん、ハナちゃん、そしてミユキの3人はクリスマスの夜にごみの山の中で赤ん坊を見つける。ドラッグ・クイーンのハナちゃんはこの子は天からの授かり物と大はしゃぎ。勝手に「清子」と言う名前までつけてしまう。こうして3人は赤ん坊の名付け親(ゴッドファーザー)になったのだ。3人は清子の親を探して、ひと目親の顔を見てから、直接清子を返すことにした。雪の降り始めた東京の街で3人は行動を始める。自称元競輪選手だったというギンちゃんの知られざる過去が暴かれ、ハナちゃんも決して戻らないと誓った古巣を訪ね、そしてミユキは偶然父親と顔を合わせ・・・と、次々と事件が彼らを襲う。そしてついに清子を捨てた張本人を見つけ出すが・・・
私評:俺たちはただのホームレスだ。アクションスターじゃない・・・アニメーションには、アニメーションにしかできない独特の世界を持っていますよね。しかし、今監督のアニメの登場人物は実写以上にリアルだ。それゆえしっかりした声優を使わないとキャラクターの良さが引き出せない。とにかく、今回も主演の3人のキャラクターが最高なんですよ。次々と信じられないような事件が彼らを襲うのですが、それが実に楽しくて、悲しくて・・・。映画を見始めてすぐにこの3人がめちゃめちゃ好きになってしまいました。そのリアルさは人物だけではなく、街の描写も細部まで実にリアルに描かれています。オープニングのクレジットでは、街の看板やネオンにキャスト・スタッフの名前は出るのですが、その辺りの演出は大好きです。監督は「Perfect Blue」「千年女優」の今敏。映画の中で、レンタルビデオ屋さんに、しっかりこの2作品のポスターが貼ってありました!)3作目にして最高傑作を送り出した感があります。声優はギンちゃん役は江守徹、ドラッグ・クイーンのハナちゃんはワハハ本舗の梅垣義明、ミユキは岡本綾。 この3人はアニメのキャラクターとピッタリでした!!きっとこの映画を見終えたら、誰もが笑顔になれるでしょう。
キル・ビル Vol. 1  監督 :クエンティン・タランティーノ  出演:ユマ・サーマン、ルーシー・リュー
Kill Bill Vol.1  2003年 アメリカ映画
今週のイチ押し:4年半前、結婚式場で惨殺事件があった。幸せいっぱいの筈のブライドは、元々所属していた殺人集団のボス、ビルに頭を撃ち抜かれる。事件から4年後、ブライドは息を吹き返す。そしてその時彼女は、何もかも失ったことを知る。夫も、そして身篭っていた子供までも・・。そして彼女の中に湧いてきた思い。それは「復讐」の2文字だった。まず、彼女が訪ねたのは沖縄だった。そこで彼女は服部半蔵という男を探し当てた。彼は日本刀作りの名人。半蔵はブライドの気持ちに触れ、生涯最高の刀を作り上げ、そして彼女に授けた。次に彼女は東京へと向かう。そして彼女が訪ねたのはウォーレン・イシイの元。彼女の全てを奪い去った殺し屋4人のうちの一人だ。ウォーレンは東京でヤクザのボスになっており、彼女の取り巻きも数知れず。しかし、ブライドは刀一本を引き下げ、彼女に戦いを挑む・・・・
私評:やっちまいなー!・・・長い沈黙を破って、やっと帰ってきたタランティーノ。タランティーノの映画の面白さは、とにかく何でもありの世界です。映画オタクのタランティーノが、今まで見た途方もない数の映画の中から、面白いコンテンツを引っ張り出して、彼流にアレンジして映像にしている。しかも、今回は日本の仁侠映画の世界が描かれているから、また笑えるんですよ。エンド・クレジットでは梶芽衣子の「恨み節」まで使うオタクぶり・・。正直言って、これって日本人にしか受けないのでは??(笑)そして相変わらずのスプラッターな映像も私的には大興奮。しかも、スタイリッシュでカッコ良いんです。劇中の音楽の選択は文句なしのカッコ良さ。これぞタランティーノ・ワールド。私はノリノリで映画を楽しみました。主演は監督が彼女のためにこの作品を書いたというユマ・サーマン。もう、この役は彼女以外には考えられない。カッコよすぎるぞ!とにかく最高です!!そしてウォーレン・イシイ役は最近映画に出まくりのルーシー・リュー。彼女の日本語が一番良かったかも??日本からは、思いきり笑わせてくれる千葉真一、存在感はピカイチのGOGO夕張役の栗山千明、そして國村隼が渋いやくざの役を熱演!!登場シーンこそ少ないもののダリル・ハンナがすごい迫力でした。パート2は来年の春の公開だとか。果たしてこの物語がどう締めくくられるのか?そしてビルが映画の最後に言ったセリフも気になる〜!!
アイデンティティー  監督 :ジェームズ・マンゴールド  出演:ジョン・キューザック、レイ・リオッタ
Identity  2003年 アメリカ映画
豪雨に見舞われたある街。一軒のモーテルに次々と人が集まってくる。豪雨の中でタイヤがパンクしてしまったジョージ一家。事もあろうか、雨の中でタイヤを交換中に妻のアリスが後ろから来た車に跳ねられてしまう。車を運転していたのはエド。元々は警官だったが今では、かつての人気女優カロラインのお抱え運転手。ジョージの息子のティミーを含む5人は、とりあえずモーテルにアリスを担ぎこんだ。管理人のラリーから電話が不通だと聞かされエドは一人、病院に向かい車を走らせる。その途中、車の故障で往生していた娼婦のパリス、そして新婚のルーとジニーも合流する。雨のため街は洪水になり、どこにも行けないと分かったエドは渋々モーテルへと引き返す。そしてそこに、また1台の車が到着する。それに乗っていたのは刑事のロードと死刑囚。そしてこのモーテルに10人の人々が集った。最初の被害者はカロラインだった。ランドリーの乾燥機の中から彼女の頭部だけが発見されたのだ。そしてそこに残されていた鍵の番号は「10」。そして宿泊客は次々と殺されていく。孤立したモーテルは外部の者を寄せ付けないため、犯人はこの中にいるはず・・・・??
私評:私たちの共通点は何??・・・・先日公開された「閉ざされた森」も面白かったけど、この映画もどんでん返しの連続で楽しかったです。とりあえず、小さなネタバレもこの作品の楽しみを損なう可能性があるので、表面だけになりますが・・。この映画はアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」に新たな捻りを加えた作品です。「そして・・」では一人死ぬごとに、インディアンの人形が減っていったように、この映画ではルームキーが残される。現実離れした事件の裏側にはとんでもない事実が隠されているのですが、途中までの展開を見て、まったく分からなくはないと思います。実際、私はラストから2番目のオチは嗅ぎつけてしまった。まあ、このオチを知った時点で何でもありの映画になってしまうのですが・・・。この映画で好きなのが、最初のみんながモーテルに集まってくるところ。それぞれが意味を持ってモーテルに集まってくる。それを一気に見せるところが「うまい!」と思いました。ジョン・キューザック、レイ・リオッタという両極端な個性を持った俳優をがっぷり組ませたのも良いですね〜。そしてこの映画の役柄そのもののような、端役に甘んじているレベッカ・デモネイが、なんだかとても悲しい・・。ところで・・・、このパンフレットの紙、臭いんですけど・・・。
阿修羅のように  監督:森田芳光  出演:大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子
Ashura no Youni  2003年 日本映画
竹沢家の4姉妹が一堂に会した。3女の滝子がみんなを呼び集めたのだ。実は70歳を迎える彼女たちの父親に愛人と子供がいると言うのだ。偶然、その現場を見かけた滝子は興信所を雇って調査をさせたのだ。4人はこの事を胸にしまい母親には決して告げないと誓い合った。長女の綱子は夫に先立たれた未亡人。しかし、出入りをしている料亭の妻のある男と付き合っている。次女の巻子は典型的な専業主婦。しかし、最近夫が浮気をしているのでは?と気になって仕方がない。3女の滝子は潔癖症で、男を寄せ付けない性格。しかし、興信所に勤めていた男に言い寄られている。4女の咲子は行動派でボクサーの恋人と同棲をしている。しかも、彼の子供を身篭って・・・。父親のことも気になるが、自分の事にも精一杯の彼女たち。ところがある日、まるで自分たちの事を書いたかのような投書が新聞に掲載される・・・。
私評:女は阿修羅だね〜・・・。この物語はかなり有名なので、ご存知の方も多いでしょう?私は昔のTVドラマを見ていました。というわけで、話自体は知っていたのですが、新しいキャストで見ると、また一味違った面白さがありますね。物語の面白さは太鼓判を押されている作品を、森田監督と多彩なキャストたちが、この作品をどう料理をしているかが一番の見所でしょうね。森田芳光と言えば「模倣犯」でとんでもない事をしでかしてしまった監督。今回もちょっと不安だったんですよ。ところがこの映画は実に面白かったです。やはり、森田監督はCGなんか使わずに、こういう演出で勝負した方が良いですよね。4姉妹を演じるのは大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子という豪華な顔ぶれ。それぞれが自分のキャラから一番遠い役を演じているような気がしたのですが、これがまたピタリと収まっているからスゴイ。そして彼女たちの母親役は八千草薫。彼女はTVシリーズでは黒木瞳の役で出演していたんですよね。そして阿修羅な女たちに対抗する男たちは父親役で仲代達矢、巻子の夫が小林薫、そして探偵役は中村獅童。彼らがまた実に良いんですよ。良い脚本に良い役者が揃えばつまらない訳がない!笑いも涙も感動も2時間15分の中にしっかり詰め込まれています。昭和50年代のちょっと古めかしい設定もすごく良かったですよ。
精霊流し 監督:田中光敏  出演:内田朝陽、松坂慶子、田中邦衛、高島礼子
Shouro Nagashi  2003年 日本映画
美しく優しい母親の深い愛情に包まれ雅彦は幼少時代を長崎で過ごした。母は彼がバイオリン奏者になることを夢見ていた。そんな母親の夢を背負い、雅彦は鎌倉の母の妹、節子の家に移ることになった。ある日のこと、母親が鎌倉へとやってきた。雅彦は二人の前でバイオリンを奏でてみせる。しかし、母の夢をかなえる前に、母はこの世を去ってしまう。叔母の家には春人という雅彦と同い年くらいの少年がいた。後妻だった節子と春人は血は繋がっていなかったが春人はいつも節子の愛情に飢えていた。時は経ち大学生になった雅彦は、自動車工場でアルバイトに明け暮れていた。いつしかバイオリンはケースの中にしまいっぱなしになっていた。そんなある日、節子は離婚をして長崎に帰ると言い出す。一方、鎌倉では雅彦と春人が一人の女性に恋をしていた。彼女の名前は徳恵。徳恵は雅彦に気があったが、雅彦はいつまでも中途半端な自分に納得ができず、徳恵の気持ちを受け止めることができなかった。やがて、雅彦も自分を見つめ直すために長崎に戻るが、そこで彼は父親から「ある事実」を聞かされる・・・・・
私評:私、信じていることがあるの。自分に正直に生きていれば、傷つくことはあっても、不幸にはならないって・・・。さだまさしの原作が映画化されました。彼のふるさと長崎の美しい景色、そして母親と息子の悲しくも美しい物語がベースになっています。ただ、ひとつの物語の中にたくさんのエピソードが、詰め込まれすぎている感が拭いきれません。それは演出を中途半端にさせ、せっかくの良い話がどんどん駆け足で過ぎ去ってしまうと言う結果になってしまった。これが残念でしたね〜。ところで「精霊流し」というと、私は小さな船にロウソクを灯し流すものだと思っていたのですが、長崎の精霊船はデカイ!それをはっぴ姿の男たちが担いで海まで届けるのです。そしてその船を海に放ち、どこまでも見送る。このシーンは実際に長崎で行われている様子を再現したものだけあって、荘厳でしかも神聖な感じが画面から伝わってきました。そして長崎の海を見下ろす丘からのショットの美しいのなんのって・・・。役者陣はすごく良い面子が揃っています。中でも私の目を引いたのは母親役の高島礼子。松坂慶子が妹だという設定はちょっと無理があったけど、息子思いの良い母親を熱演。そして雅彦が働く工場の社長、椎名桔平と従業員の山本太郎が良い味を出していました・・。エンド・クレジットで流れるさだまさしの「精霊流し」の歌はしみじみと心に沁みてきました・・・。


前回の記事も読んでね〜!



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