2002/10/16号

今回は久々に怖い思いをした、変り種ホラー映画と
勢いが止まらない日本映画がイチ押しです。

フレイルティー 妄執  監督・主演 :ビル・パクストン  出演:マシュー・マコノヒー、パワーズ・ブース
Frailty  2001年 アメリカ映画
今週のイチ押し:テキサスでは「神の手」という文字を残すバラバラ殺人事件が続発していた。犯人の特定は難航していた。そんなある日、FBI捜査官ドイルの元へフェントンというが現れる。彼は一連の殺人事件の犯人を知っていると言う。しかもそれは自分の弟だと・・。そして彼が葬った被害者の遺体が埋めてあるというバラ園を目指す。そしてフェントンは事の始まりを話し始める。1979年の夏。フェントンは父親と弟と3人で質素ながらも幸せな日々を送っていた。しかし、ある日父親が天使からのメッセージを聞いた。それは「この世にはびこる悪魔を殺せ!」というものだった。そして何かに導かれるように見つけた斧と手ぶくろ。その日から父親の悪魔狩りが始まった。人間の皮をかぶった悪魔だと父は言うが、フェントンには到底理解できなかった。そして弟までが次第に父親に感化されていく・・・・・。
私評:すべては神の思し召しなのだ。我々は選ばれたのだ・・・2001年アメリカの小さな映画祭に出品されたこの映画を見て、かのサム・ライミ、S・キング、J・キャメロン、J・モストウ、そしてI・ライトマンが絶賛したのがこの映画です。低予算の映画ですごい特撮もなければ、特殊メイクもない。ところが、(特に)アメリカ人の心に根ざした「善と悪」「神と悪魔」を鋭く抉った作品です。勝手な思い込みなのか?それとも悪魔に心を奪われたのか?人々を次々と殺しまくる父親。それはつい昨日までは、本当にやさしく楽しい父だったのに・・。そして子供たちにも自分の行いをさせようとするのです。この辺りがめちゃ怖いです。この狂った(?)父親を演じるのがビル・パクストン。この映画は彼が以前から温めていた題材を彼自身が監督して映画化したもの。それゆえこの役は、まさに彼の真骨頂です。そして成長した彼の息子を演じるのがマシュー・マコノヒー。独特の雰囲気を持ったこの作品の要になる役ですが、さすがと言う感じです。そしてこの映画には信じられないような大どんでん返しが待っています。それを知って、またぞーっとすることでしょう。この映画は血が出ないのに「PG−12」というのが売りになっています。見終えて、なるほどと納得できる映画でした。子供にはあまり見せたくない映画ですね・・・。
木曜組曲  監督:篠原哲雄  出演:鈴木京香、原田美枝子、富田靖子、西田尚美、加藤登紀子、浅丘ルリ子
Suite deJeudi  2002年 日本映画
今週のイチ押し:4年前、女流作家の重松時子が謎の薬物死を遂げた。現場にいたのは5人の女たち。けっきょく事件は時子の自殺と断定された。以来、毎年時子の家に集う5人の女たちが今年も一堂に会した。そこに届けられた大きな花束には「皆様の罪を忘れないため、今日この場所に死者のために花束を贈ります」と言うメッセージが添えられていた。差出人の名前はフジシロチヒロ。これは時子の遺作「蝶の棲む家」の主人公の名前だった。その夜、時子の異母姉妹の静子が口を開いた。「私が殺したのよ」。果たして時子の死の裏にはどんな事実が隠されていたのか?そして彼女は殺されたのか?もし、殺されたのであれば、いったい犯人は誰か?5人の女はお互いを探りあい、そしてある結末へとたどり着く・・・・
私評:木曜日が好き。大人の時間が流れているから。丁寧に作った焼き菓子の香りがするから・・・・・この映画の展開や結末について書くことは、ご法度なので絶対ネタばれはしませんのでご安心を。舞台は家に向かう坂道と海が見える見晴台、そして屋敷の中と言う限られた空間だけ。これはまさに舞台用の原作かもしれない。しかし、篠原監督は細かなカット割で映画ならではの演出をしてくれます。そして出演者のすごいこと!まさに今の日本の女優を代表する5人が集まった。しかも、すごく個性的な女優たちばかりが、演技で火花を散らします。そして故人の時子との間にあった数々の確執が徐々に明らかになっていく展開は最高でした。原作は恩田陸さん。彼女の緻密でしかも私の推理を次々と裏切っていく展開には感動ものでしたね。それとこの映画に登場する、数々の料理にも要注目です。その料理やワインをこの女たちが食いまくり、飲みまくります(笑)。こういう映画についてあまり語りすぎるのはタブーってもんですね。この映画を見た方とは、ぜひネタばれトークしたいですね。
 
なごり雪  監督:大林宣彦  出演:三浦友和、ベンガル、須藤温子
Nagoriyuki  2002年 日本映画
東京で一人ぼっちの時間を過ごしている梶村祐作。彼はまもなく50歳になる。妻のとし子は彼の元から逃げて行ってしまった。そんな時、一本の電話が入る。それはほとんど忘れかけていた故郷の臼杵の友人、水田からの電話だった。「雪子が死にかけている。帰ってこないか?」そして祐作は28年ぶりに故郷の臼杵の地に立った。駅には彼の思い出がいっぱいあった。早速病院を訪ねた祐作は、包帯だらけで顔も見えない雪子見て愕然とする。そして自分の青春時代を思い出す。雪子との出会い。彼女が自分に恋心を抱いていたのは知っていたのに。そして東京の大学に通うことになった祐作を送ってくれた日。雪子と交わした約束。しかし、今となっては戻っては来ないあの日々。・・・・・・。
私評:そしてあなたは私を見て、きっとこう言うの。「今、春が来て君はきれいになった。去年よりずっときれいになった」って・・・・私は「かぐや姫」世代ではないのですが、解散寸前くらいに間に合ったくらいです。なごり雪は伊勢正三よりイルカのイメージが強いですね。しかし、この歌は大好きで自分でもギターを弾いてよく歌ってました(笑)。この映画のストーリーはオリジナルの歌詞のイメージだと、東京の物語なのですが映画では大分県の臼杵が舞台になっています。雪のほとんど降らないこの町と「なごり雪」の繋がりのストーリーはなかなかグッドですよ。しかし、祐作と雪子の恋話はなんとも悲しい。若い頃の祐作の表情が読めないんですよね。彼は雪子のことを好きだったのか?それとも・・・。そして映画のセリフの中に「なごり雪」の歌詞がそのまま使われたりします。私はこれがめちゃ良かったのですが、人によっては引いてしまうかな?また、出演者のセリフが三浦友和以外はみんな棒読みなんです。これは監督が意図して行ったらしいのですが、どうなんでしょうね?監督は大林宣彦。私は彼の映画は大好きです。最近、あまり見てないのですが、やはり彼の映画は暖かいですね。ノスタルジックな気分に浸った私は、この映画の雰囲気に酔いました。
テキサス・レンジャーズ  監督:スティーヴ・マイナー  出演:ジェームズ・ヴァン・ダー・ビーク、ディラン・マクダーモット
Texas Rangers  2001年 アメリカ映画
1870年代、アメリカテキサス州とメキシコの国境。ジョン・キング・フィッシャーの盗賊団は、町を襲い金品を盗み女をさらい、そしてその町は死体の山が築かれた。家族を奪われ、唯一生き残ったリンカンはテキサスレンジャーズに入るためブラウンズビルを目指す。銃の扱いもままならぬリンカンだったが、レンジャーズの隊長マクネリーは彼の入隊を認めた。30人ほどの小隊となったレンジャーズは、キング・フィッシャーの後を追う。しかし、数で圧倒的に勝るフィッシャーズに叩きのめされ多くの犠牲者を出してしまう。隊長の日誌の代筆を頼まれたリンカンは、隊長が余命幾ばくもないことを知り愕然とする。しかし、若きレンジャーたちは危機を掻い潜り、仲間の死を乗り越え成長していく・・・・・。
私評:俺たちは正義のために戦っているんじゃないのか?これでは盗賊と一緒じゃないか・・テキサスレンジャーズを描いた映画は幾つもありましたが、これはその最新作。これと言った捻りはないものの、お気軽なアクション映画として楽しむなら十分合格点です。移動しては戦い、また移動しては戦いというパターンの90分。銃撃戦はなかなか迫力がありました。しかし、なぜ今、西部劇なのでしょうね?私が今回この映画を見に行った一番の理由は監督がスティーブン・マイナーだったからです。といっても、この監督はあまり知られていないですね。実はこの監督は「13日の金曜日」の2と3の監督。つまり、ジェイソンの生みの親なのです。また、彼は「ハロウィンH20」でもなかなかの演出を見せていました。今回はちょっと毛色が違うので、比較にはなりませんが、テンポの良い演出は高得点を挙げたいです。レンジャーズの男たちはけっこう知らない男ばかり。唯一、軍曹役でロバート・パトリックが出てましたね。また、牧場の娘役のレイチェル・リー・クックが、むさ苦しい汚い男たちの映画に花を添えていました。彼女って顔が小さいのにパーツが大きいんですよね。めっちゃ可愛かったです。これで、また映画のポイント・アップ!!
容疑者  監督:マイケル・ケイトン・ジョーンズ  出演:ロバート・デ・ニーロ、ジェームズ・フランコ
City By The Sea  2002年 アメリカ映画
ニューヨーク警察の刑事ビンセントは、敏腕刑事として名を馳せていた。しかし、彼は妻と子供を置いて逃げ出したという過去を持っている。ブルックリンで麻薬のディーラーが殺されるという事件が起こる。その事件を追っていたビンセントは、その事件の容疑者が自分の息子ジョーイであることを知らされる。離婚の原因はビンセントの暴力だったため、ジョーイとの時間はほとんど持てず、父と息子の間の溝は深いものになっていた。14年前に妻と子を置いて出て以来、久しぶりにロングビーチに戻ってきたビンセントはその寂れ方にショックを受ける。幼い頃からビンセントはこの町に住んでいた。貧しい家で、生活を苦にしたビンセントの父親は、裕福な家の子供を誘拐し、事故からその子供を殺してしまい、彼自身は有罪となり処刑された。今回の殺人事件の容疑者の父であり、過去の殺人犯の息子という微妙な立場のビンセント。捜査をはずされたビンセントだったが、なんと彼のパートナーのレッジまでもが殺害されてしまう。そんな時ジョーイから一本の電話がビンセントに入る。・・・・・
私評:俺は殺してない。今度だけは信じてくれ・・・・最近のアメリカ映画は、父親と息子の絆を描いた映画が多いですね。「海辺の家」「ロード・トゥ・パーディション「ジョンQ」と、どれも名優が演じている。デ・ニーロはそういった部分では真打登場ってところですかね?この作品は縦軸に殺人事件、そしてそれを追う警察というストーリーを置き、横軸にビンセントの過去、そして今の恋人、そして息子との絆を置いている。しかも、横軸の方が長くて太い。タイトルや予告を見る限りでは事件が主軸みたいですが・・・。しかも、このストーリーは実話が元になっているのですね。デ・ニーロはやっぱりすごいです。けっこう退屈なストーリーではあるのですが、最後のデ・ニーロと息子の(ジェームズ・フランコ)のやりとりはめっちゃ感動的でした。この映画の監督は「ボーイズ・ライフ」でデ・ニーロと組んでいますが、これまた父と息子の話。彼の得意分野なのかな??ビンセントの今の恋人役はフランシス・マクドーマン。彼女は映画の中ではどうもパッとしませんが・・・。原題の「City By The Sea」って言うのは、寂れたロングビーチの町のこと。栄華を誇ったこの町はまるきり寂れてしまっている。これは父親という責任、そして男としての、人間としての責任をが欠如し、空洞のようになった人間関係を表しているのでしょうか?デ・ニーロのファンにはたまらない映画かもね??


前回の記事も読んでね〜!



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