2002/10/10号

日本映画がすごい!ハリウッドの感動作を押さえて邦画2作品が
私のイチ押しです!!

阿弥陀堂だより  監督 :小泉堯史  出演:寺尾聰、樋口可南子、北林谷栄、田村高廣
Amidado Dayori  20021年 日本映画
今週のイチ押し:東京に住んでいた孝夫と美智子の夫婦は、孝夫の故郷である信州へと越してきた。新人賞こそ獲ったものの後の作品が売れない作家の孝夫と、大学病院のエリート医師の美智子。しかし、美智子はプレッシャーに負け心身ともに病んでしまったのだ。二人はさっそく阿弥陀堂と呼ばれる小さな小屋を訪ねた。そこに住んでいるのは96歳になるお梅というおばあちゃん。二人はまっすぐで飾らない彼女に惹かれていく。ある日、孝夫は村の広報誌に「阿弥陀堂だより」というコラムを見つける。それはこの村に住むのどに障害を持ち話すことができない小百合という少女が掲載しているものだった。孝夫と美智子の二人はこの村の自然と温かい人々の気持ちに触れ、都会では到底見つける事ができなかった「何か大切なもの」を発見する・・・・
私評:遠くを見たのなんか、久しぶりだわ・・・。日本の美しいところは数多くありますが、やはり四季を通して模様替えをする大自然が一番のような気がしませんか?この映画では1年の季節の移り変わりを丁寧にカメラに収めています。穏かで木々が生まれ来る春、全ての生命が活発な夏、紅葉に囲まれ自分までもが染まってしまいそうな秋、そして静かで全てをそっと包み込む冬。映画館の大画面でこの風景を見せられたら、誰もが「きれい!」と思うでしょうね。そして日頃、人工物に囲まれて生きている私にはそんな風景が刺激的なんです。そしてそこに住む人々の優しいこと・・。そんな大自然と共存していると人間の本来の優しさが滲み出てくるのかな? また、人々のやり取りはいわゆる日本人特有の「侘び」「寂び」の世界に相通ずるのです。主演の寺尾聰、樋口可南子は最高でしたね。あくまでも自然に演技をしている。そして阿弥陀堂のお梅ばあちゃんを演じるのは北林谷栄。本当に演技なのかと目を疑ってしまいました。でも、彼女の「大誘拐」を見ている私はもちろん演技だと分かっていますが・・。そして阿弥陀堂だよりを書く少女役の小西真奈美も良いですね〜。(ちょっと原田知世に似てる?)孝夫の恩師役の田村高廣とその妻役の香川京子も。みんなこの映画を見て癒されてください。
ドールズ  監督:北野武  出演:菅野美穂、西島秀俊、深田恭子、三橋達也
Dolls  2002年 日本映画
今週のイチ押し:人もうらやむカップルだった松本と佐和子。しかし、松本は彼女を捨て社長令嬢との結婚を決めた。結婚式の日、松本は佐和子が自殺を図り命は取り留めたものの気が狂ってしまったことを知らされる。居ても立ってもいられず松本は佐和子のいる病院を目指す。そこにいたのは昔の明るさを無くし空っぽになってしまった佐和子だった。病院から彼女を連れ出した松本は赤い糸で二人の体を縛り宛てもなく歩き始める・・・ヤクザの親分は齢を重ね今ではほとんど隠居暮らし。彼の護衛に着いた若者を見て、彼は若い頃毎週土曜日に彼にお弁当を作ってくれた良子のことを思い出す。彼女は言っていた「毎週土曜日にお弁当を作ってここで待ってる」思いたって昔、良子と会っていた公園を訪ねた親分は我が目を疑う。そこには昔と同じワンピースを着た良子がお弁当を持って彼を待っていたのだ・・・アイドル歌手の春奈の大ファンの温井は彼女の追いかけ。ところが春奈は車の事故で左目を失い芸能界を引退する。人知れず海辺の町で暮らす春奈を温井は訪ねた。しかし、彼は昔の美しい彼女の記憶だけを残し両目をカッターで突いていたのだ・・・
私評:「・・・・・・・・・」北野武監督の10作目はなんとラブ・ストーリーだった。しかし、相変わらずこの監督の映画はセリフが少ない。つまり、彼はストリーテラーではなくて映像を見せるアーティストなんですよね。この映画ではとにかく美しい映像を随所に見せてくれます、四季折々の絵画のような景色を画面に切り取っていく。登場人物たちはみんな切ない何かを持っている。そしてそれぞれが非常識だけど一途な愛を貫こうとします。それが良い悪いではなく、これらの愛は北野武の中では「美」なのではないでしょうか?私はすごく気に入ってしまいました。この映画の女性たちって映画のタイトルどおり「人形」みたいなんですよ。顔は真っ白だし、表情は乏しいし。映画の冒頭で演じられる文楽の人形の方が、表情が豊かなような気がしました。そして普段はどっしりと動かない北野流のカメラが、今回はけっこうチョコチョコと動き回ります。この辺りもちょっと奇を狙ったのかな?主演の菅野美穂がすごく良いですね。彼女はスクリーンだと本当に映える。チュウハイのCMなんかでないで、映画にもっとガンガン出て欲しいな。そして音楽は北野作品にはなくてはならない久石譲、そして華麗なまでの衣装を担当したのは山本耀司。
 
クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア 監督:マイケル・ライマー  出演:スチュワート・タウンゼント、アリーヤ
Queen of the Dammed  2002年 アメリカ映画
100年の眠りから覚めたヴァンパイアのレスタトは現代の音楽を聴いて驚く。そして彼はとんでもない行動に出る。ヴァンパイアの常識を打ち破り、自らの招待を明かし、しかもカリスマのロックスターとして君臨したのだ。そして一度だけのコンサートを企画する。彼は他のヴァンパイアたちを挑発する。そして彼の歌声により古代エジプトを支配していたヴァンパイアの女王、アカーシャが目を覚ます。強力な力を持つ彼女が復活し、彼女の伴侶に選んだのがレスタトだったのだ。彼女は言う。「世界は私たちの前にひれ伏す」と。しかし、レスタトの前にヴァンパイアの研究をしている一人の女性が現れる・・・・・・・・・・・・。
私評:出てこい、出てこい、闇の中から・・・・アン・ライスの小説は大好きなので、今回のこの映画の原作である「ヴァンパイア・レスタト」も「呪われし者の女王」も読んでいました。原作ではアカーシャが古代に行った非道の数々、どのようにしてヴァンパイアとなったのか?、そしてどうして長き眠りに就いたのかが克明に語られているのですが、映画ではけっこう端折られていました。レスタトといえば8年前の「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」のトム・クルーズのイメージが強いのですが、今回のスチュワート・タウンゼントはトムのイメージを吹っ飛ばすほどセクシーで、そしてかっこ良かったです。なんたってアン・ライスのヴァンパイアはきれいじゃなくちゃいけないのですから。しかし、この映画の注目はアカーシャを演じたアリーヤですね。一昨年の8月に飛行機事故でこの世を去った若き歌姫のこれが遺作になるんですよ。また、このアカーシャ役がすごく様になっていました。S・タウンゼントといいアリーヤといいこの映画は良い役者に恵まれましたね。アン・ライスのレスタトシリーズにはまだ「悪魔メムノット」「肉体泥棒の罠」があるのでこちらも映画化を期待したいです。
ジョンQ 最後の決断  監督:ニック・カサベテス  出演:デンゼル・ワシントン、ロバート・デュバル、レイ・リオッタ
John Q  2002年 アメリカ映画
ジョンは妻と息子の二人暮し。貧しいながらも幸せな日々を送っていた。ところが突然の不幸が彼を襲う。一人息子が野球の試合中に倒れたのだ。病院に運び込まれた彼の病名は心臓肥大症。心臓の移植をしない限り命が危ないとの診断だった。ところが心臓移植には莫大な費用がかかり、しかもジョンが加入している保険では、心臓移植はできない。彼は家財を売り飛ばし必死に金を貯めるが到底追いつかない。日一日と弱っていく息子のために無力な自分にできること・・・・。それは病院を乗っ取り、ドナー登録のリストに自分の息子を載せることだった。人質をとり病院に立てこもったジョンはあっという間に警察に取り囲まれてしまう・・・・・・・。
私評:社会は金持ちのためのものなのか??・・・今回は奇しくもアメリカのオスカー俳優が父子の映画で対決(?)です。しかし、この映画はそんな父子の話だけではなく、現在の社会が抱える問題にも一石を投じている。この映画の中で病院は息子の手術を頑として断るのですが、それも理解できるのです。病院長のアン・ヘッシュが「誰にでも手術をしてしまったら、収拾がつかない」と言うようなセリフを言うのですが確かにそうなんですよね。ひとつの例外は幾つもの例外を作ってしまうからです。しかし、良心だけで作品を見ればこんなに不幸な家族を救ってあげればハッピーな話で片付いてしまうのですが、そう簡単にはいかないのです。そしてついにジョンが取る究極の手段とは・・。主演はやっぱり善人が似合うデンゼル・ワシントン。彼の息子への愛は本当に涙ものです。そして脇を固めるすごい面子を完全に食ってしまいます。まさに彼の一人芝居。その脇役人はロバート・デュバル、レイ・リオッタ、ジェームズ・ウッズ、そしてアン・ヘッシュ。すごいでしょう!まさに感動作と呼ぶにふさわしい作品です。
ロード・トゥ・パーディション  監督:サム・メンデス  出演:トム・ハンクス、ポール・ニューマン、ジュード・ロウ
Road To Perdition  2002年 アメリカ映画
1931年。二人の息子と妻をこよなく愛するマイク・サリヴァンにはもうひとつの顔が合った。彼が住むロックアイランドの町を牛耳るギャングのボス、ルーニーの片腕として冷酷な殺し屋が彼の仕事だった。ルーニーはマイクを我が子のように可愛がっていたがルーニーの実の息子コナーは、マイクを苦々しく思っていた。マイクの息子たちは父親がなぜ銃を持って出かけるのかが不思議でならなかった。ある日、マイクの長男マイケル・サリヴァン・Jrは父の車に忍び込み父の仕事を探ろうとする。しかし、彼の目の前で父は銃を放ち人を殺してしまう。しかし、その事件の発端はコニーだった。ルーニーにその事を責められたコニーは腹いせにマイクの妻と次男を殺害する。偶然、家を留守にしていた長男だけが生き残った。怒りに震えるマイクはコニーに復讐を誓う。そして長男のマイケルを連れ、コニーを追うのだった・・・・・・・・(この映画で父親はマイケル・サリヴァン、息子はマイケル・サリヴァン・ジュニアとなっていたので、父をマイク、息子をマイケルと書きました)

私評:俺たちは天国には行けない」「でも、マイケルは行ける」・・・・アメリカン・ビューティの監督サム・メンデスが次に選んだ題材は父と息子の物語だった。マイクとマイケル、ルーニーとコニー。いくらヤクザな稼業でも父親が息子を思う気持ちは変わらない。というか、そういう家族の方が絆は強いのかも?当時は常に父親は息子のヒーローであったのでしょうね。今は「尊敬」「憧れ」の父親より「フレンドリー」な関係が多いでしょう?そんな厳しさと裏返しの愛情の方が私的には心に沁みますね。私の考えはちょっと古風かな??主演のトム・ハンクスは文句なしの名演技。厳格な中に息子を守るために必死な父親がこんなに似合うなんて・・。彼って本当にどんな役でもできてしまうのですね。しかし、私の中ではポール・ニューマンの演技が最高でした。できの悪い自分の息子のために愛するものを失っていく。本当に悲しい男役でした。また、殺し屋のジュード・ロウにはかなりビックリ。彼は二枚目路線で行くのかと思っていたのですが、まさか・・・。また、マイクの妻役はジェニファー・ジェイソン・リーでした。
明日があるさ The Movie  監督:岩本仁志  出演:浜田雅功、酒井美紀、渡辺嘉葎雄、柳葉敏郎
Ashita ga Arusa  2002年 日本映画
ついに日本でも民間企業による宇宙のビジネスが始まろうとしていた。種子島から今まさに飛び立とうとしているロケットのスポンサーの一つに「トアール・コーポレーション」の名前があった。この企画をハンドリングするのはエリート軍団の営業1課。望月を先頭に意気盛んだ。望月と同期の浜田は第13課の課長。到底売れそうもない陶器を必死に売りまわっていた。そんなある日、その陶器に目をつけた男がいた。彼は独自でロケットを作っている博士で、元々は日本を代表するロケット工学の一人者だった。浜田は子供の頃からの夢である、ロケットで宇宙に行くことに近づこうと博士を援助する。しかし、望月らが手掛けていたロケットは不発に終わってしまう。そしてついに博士のロケットが完成を向かえる・・・・。

私評:大人が夢を見たらあかんのか〜!!・・明日ある♪明日がある♪あし〜たがあ〜る〜さ〜♪ あのCMがなんと映画になってしまった。吉本興行ご一行様が総出演のこの映画なので、もちろん笑いもいっぱいありますが、感動もあるんですよ。映画のテーマはずばり「夢」少年時代の夢を叶えた人っていったいどれくらいいるのでしょうか?日常に流され、その日ぐらいの私には「夢」ってけっこうきつい言葉なんですよ。この映画の浜田課長と同じで私も少年時代、アポロの映像を見て宇宙に行きたいと思っていたのですが、この夢は叶うのかな?まあ、嘘っぽい話でもあるのですが人間夢を忘れたらいけないですね。主演の浜田雅功はこの役にピッタリでしたね。吉本軍団の中ではココリコの二人が良かったです。そしてエリート女史には見えない酒井美紀、そしてやはりエリートには見えない柳葉敏郎と藤井隆には笑えました。あと、私的に良いキャスティングだと思ったのが浜田の妻役の相楽晴子と博士役の中村嘉葎雄!軽い映画の中でこういうキラリと光る役者がいると映画が締まりますね。松本人志は・・・・言えません。
宣戦布告  監督:石侍露堂  出演:古谷一行、夏八木勲、佐藤慶、杉本哲太
Sesen Fukoku  2002年 日本映画
福井県の海岸に国籍不明の潜水艦が座礁した。さっそく調査に出た県警は潜水艦の中で重火器と銃殺されたと思われる死体を発見する。一方、首相官邸では政府高官が集い政府の対応について討議をするが、情報が少ない中で一向に方針が定まらない。潜水艦の乗組員を捕らえ、事情を聞きだすと、なんと潜水艦は北東人民共和国のもので国の最強の軍事組織が日本に送り込んだ部隊だった。警察は特殊部隊のSATを投入。そして彼らは無断で銃器を用い応戦する。しかし、相手の攻撃は想像以上で、政府はついに自衛隊を出動。「自衛隊を動かせば、北に対し宣戦布告したことになる」一触即発の緊張状態の中で、政府が打った作とは?そしてついにアメリカまでもが、動き出す・・・・・
私評:この国はまともに喧嘩もできないのか?・・・私は原作を読んだので、よけいにこの映画を楽しめたかも?映画を見る前に、政府の組織と官僚の役職と役割を把握していると分かりやすいかもしれません。今の日本は非武力を掲げて「平和」と思っているところがありますが、うかうかしていると大変なしっぺ返しが来るのかも??北朝鮮との問題に直面している日本にとってはすごくタイムリーな映画かもしれませんね。政府の動きの緩慢さも映画の中で皮肉っぽく語っています。売名行為にばかり精を出す某首相と同じか??前半はちょっとテンポが悪いのですが、自衛隊が動き出す辺りから俄然面白くなってきます。アクションシーンもふんだんに盛り込まれています。しかし、最終的にはちょっとコンパクトにまとまりすぎた感がありました。こういう映画に関しては、ハリウッド映画には到底及ばないと言う、邦画の現実が・・・。映画の中での首相役は古谷一行。ちょっと小泉さんにキャラが似ているかも?この映画の中ですごく良かったのが夏八木勲、財津一郎、そして佐藤慶!やっぱりこういう映画には、彼らのような重鎮が必要ですね。しかし、杉本哲太が首相の秘書役っていうのは・・。ミスキャストのような気がします・・・。


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