2002/10/2号

素敵なラブストーリーに出会えました。決してハッピーな話ではありませんが・・・

アイリス  監督 : リチャード・エア  出演:ジュディ・デンチ、ケイト・ウィンスレット
Iris  2001年 イギリス映画
今週のイチ押し:1950年、アイリスとジョンは出会った。快活で言葉を自由自在に操る才女アイリスに内気で奥手でしかも言葉にどもりのあるジョンは一目惚れしたのだ。一見不釣合いの二人だったが、アイリスの良さを一番理解できる男としてジョンは選ばれたのだ。やがて二人は結婚する。そしてアイリスは執筆活動に、そして講演にと活躍の場を広げていく。そしてそんな彼女を敬愛のまなざしで見つめるジョンがいつもいた。月日は流れた。今やアイリスはイギリスでは有名な女流作家となっていた。しかし、彼女を突然の病魔が襲う。彼女はアルツハイマーになり、日々言葉をなくして行く。ジョンは必死になって彼女を守ろうとするのだが・・・・
私評:「なんだい?アイリス、なんと言ったんだい?」「アイ・・・ラブ・・・ユー」・・・めちゃ感動でした。またしても、すごい愛の物語に出会う事ができました。アイリスとは実在の女性です。彼女はイギリスで最も素晴らしい女性と称えられたアイリス・マードックのことです。彼女がいつもモチーフにしていた「愛と自由」をテーマに多くの作品を書き上げました。また、この映画の原作を書いたのは彼女の夫のジョン・マードックです。快活で人とコミュニケーションする事、そして言葉を大切にして美しい言葉を書きとめていく事が大好きな彼女にアルツハイマーというのは、余りに残酷な仕打ち。そして泉のように湧き出していた彼女の才能が封印されてしまう。私は自分でよく言うのですが「言葉は紡ぐもの」ですよね。誰にとっても「言葉」は大事なコミュニケーション・ツールでしょう?これを奪い取られたら、私は気が狂うかも?言葉をなくしたアイリスは翼をもがれた鳥のようでした。ところが、今までアイリスを陰から見守っていたジョンが、アイリスの支えになっていく。40年にも及ぶ彼女への愛が彼の原動力になっていくのです。この映画のアイリスを演じる二人の女優は、本当に最高。若きアイリスを演じるのはケイト・ウィンスレット。知的でいて快活なアイリスを好演。しかし、彼女は映画でよく脱ぎますね〜。(私的には嬉しいけど・・)今回もオールヌードで泳ぐシーンがあります。そして老後のアイリスはイギリスの重鎮ジュディ・デンチ。知的だった彼女が日々、言葉を忘れ恐怖に見まわれるところ、そして病気が進み抜け殻のようになってしまうところなどは、本当に名演技でした。そしてジョン役は「ムーラン・ルージュ」のジドラー役や、「ブリジット・ジョーンズの日記」でブリジットの父親役が印象的だったジム・ブロードベント。彼はこの作品でアカデミー助演男優賞を獲得しています。愛の形は様々ですか、私はアイリスとジョンの愛に共感し、そして感動しました・・。
完全犯罪クラブ  監督:バーベット・シュローダー  出演:サンドラ・ブロック、マイケル・ピット
Murder By Nmbers  2002年 アメリカ映画
同じハイスクールに通う金持ちでわがままなリチャードと天才的な頭脳を持つジャスティンはある計画を企んでいた。校内では接点を持たない二人だったが、彼らは人を殺し完全に隠匿する計画を立て実行した。翌日、女性の死体が発見される。死因は絞殺。事件の担当になったのは「ハイエナ」の異名を持つ女性刑事のキャシーとパートナーのサムだった。さっそくプロファイルを開始する二人。そして一人の男に辿り着き逮捕までこぎ着けた。しかし、どうにも納得がいかないキャシーは自分の直感を信じリチャードとジャスティンを追いはじめる・・・。
私評:なぜ、男たちが私をハイエナと呼ぶか分かる?ハイエナのメスには小さなペニスが付いているのよ・・・・。面白い映画なのに、めちゃめちゃ地味に公開されていますよね。私は前々からこの映画が見たかったので気にはしていたのですが、突然の公開を聞いてビックリしてしまいました。映画の方は久々に謎解きを楽しみました。しかし、最初から犯人は明かされていて、そこにどうやって辿り着いたかを楽しませる映画です。しかも、その完全犯罪を解き明かす展開もすごく面白い。後半はちょっとしたアクションシーンもあってサービス満点です。これは実在のある事件が元になっている。「完全犯罪」とう言葉がありますが、もしかしたら、そんな事件は実際に幾つもあるのかもしれませんね?しかし、意味もなく人をゲームのように殺すなんて事は、あってはならないです。できる事なら映画の中の犯人に、苦汁を舐めさせるシーンも加えて欲しかったな・・。主演はサンドラ・ブロック。今回は化粧気もなくワイルド、そしてヒステリックで執念深く、実は暗いという(最低じゃん・・)女刑事。しかし、映画が終わる頃にはしっかり彼女を好きになっている。不思議な女優ですね〜。殺人犯の二人の青年もすごく良いです。インテリなジャスティンはどこかで見た事があると思ったら、「ヘドウィグ&アングリー・インチ」でヘドウィグの恋人を演じていた男でした。キャシーのパートナーのベン・チャップリン、生徒相手に麻薬を売る用務員役はクリス・ペンと脇役も充実しています。見所満載でした!
王様の漢方  監督:ニュウ・ポ  出演:チュウ・シュイ、渡辺篤史、ノーマン・リーダス
Great Wall, Great Medeicine  2002年 日本・中国合作映画
日本の小さな会社の社長、市川はビジネスのため中国に渡っていたが業績が悪い彼の会社は火の車。市川は子供の時から緊張したり興奮すると目がかすみ痛くなるという病気を持っていた。商談に決裂した彼はまさにその症状に襲われた。その時彼を救ってくれたのは漢方医のリ先生だった。彼は一瞬にして市川の長年に渡る持病を完治してしまったのだ。そんな時、市川が思いついたのは「漢方ツアー」だった。病気に悩む日本人をリ先生の元へ連れて行こうという考えだ。やがて日本から4人の患者がやってくる。リ先生は不思議な治療法で次々と彼らを癒していく。そして患者たちは体ばかりではなく心までも癒されていくのだった・・・・

私評:天命は変えることはできないが、病はどうにでも癒す事ができる・・・実に怪しい映画です(笑) 日中国交正常化30周年記念作品という事で両国が共同で作りあげた作品です。主演のチュウ・シュイと渡辺篤史以外は、演技もセリフもひどいもんです。ノーマン・リーダスは飾り物みたいで可愛そう・・(「8月の狂騒曲」のリチャード・ギア以上です<笑>)演出もかなり酷い・・。また、薬膳料理のようなものがたくさん見れるのかと思ったのですがキワ物料理しか出てこないし・・。(あの頭がついたままの料理はどうにかしてください・・)しかし、この映画の主題はそんなところじゃないのです。悠久の万里の長城から見下ろす山々、そして中国の文化が産み出した漢方の秘伝とそしていかに生きるかという考え方の違いなどを、教科書を読むかのように語りかけてくる映画です。映画を見終えた後、なぜか自分が健康になったかのような錯覚に陥りました。この映画は見る漢方なのかも??あくまでも自然体で、自然と調和して生きていくことの大事さ。化学調味料の料理やインターネットのコミュニケーションへの警鐘でもあるのかも??まあ、映画としての評価はできなくても、見る価値ありの映画なのかもしれません。
ジャスティス  監督:グレゴリー・ファブレット  出演:ブルース・ウィリス、コリン・ファレル
Hart's War  2001年 アメリカ映画
上院議員の息子トミー・ハートは中尉のポジションをもらい、しかも危険の少ない任務についていた。しかし、ある日、彼はアメリカ兵に扮装したドイツ軍に捕まり捕虜収容所へと送られる。アメリカ軍の兵舎を牛耳るのは大佐のマクラナだった。将校の兵舎がいっぱいだったため、彼は別の兵舎へと移された。数日後、新たに捕虜として送られてきたアメリカ兵の中に二人の黒人の将校がいた。ハートと同じ兵舎に送られた彼らは将校であるにも関わらず不当な差別を受ける。数日後、ハートの兵舎の白人軍曹が殺害された。容疑者は黒人の将校だった。そこで収容所内では異例の軍事裁判が行われることになる。弁護士に選ばれたのはハートだった。裁判が進む中、新たな真実が次々と暴露される。しかし、その事件の裏には驚くべき事実が・・・・・

私評:俺たちが捕虜だとわからないんだ!人文字を作れ!!P・O・W・・・・・また、戦争映画か・・ハリウッド映画どうなっちゃってんの?なんて気分でこの映画を見にいったのですが、まったく違う切り口の戦争映画でめちゃ面白かったです。人種問題を鋭く抉った社会派ドラマです。しかし、この状況では「正義」がいつもまかり通るとは限らない。そこに相対するのが「犠牲」です。クライマックスはこの2つのキーワードが前面に現れ、私を悩ませました。私はどちらを選ぶだろうか?しかし、映画は意外な答えを出してきます。もうこれ以上は言えません。主演は(やけに鼻の下が長い)ブルース・ウィリス。今回は控えめで渋い演技を見せてくれます。でも、美味しいところを持って行っちゃうんです(笑)ハートを演じるのは「タイガーランド」のコリン・ファレル。今回は「タイガーランド」の時とは違う実直な青年役。彼も今後が楽しみですね。この映画ってもともとは「ハーツ・ウォー」というタイトルでチラシとかも作られていましたよね。これを聞いた時私は「Hearts' War」つまり、「心の戦争」の事だと思ったのですが、良く見たら「Hart's War」で「ハートさんの戦争」だったのですね。これからは原題もしっかり調べようっと。
ダウン  監督:ディック・マース  出演:ナオミ・ワッツ、ジェームズ・マーシャル
Down  2001年 オランダ・アメリカ映画
NYの超高層ビル「ミレニアム・タワー」は今日も大賑わい。しかし、このビルのエレベーターでアクシデントが起こる。妊婦たちを乗せたエレベーターが突然止まってしまい閉じ込められたのだ。事故を報告されたエレベーターの管理会社に勤務するマークとジェフはさっそく点検に向かうが、故障箇所は発見されなかった。しかし、マークはどこか腑に落ちなかった。しかし、マークの予感は的中し、その後もエレベーターでの事故が続発する。事件に首を突っ込んできた女性記者と一緒に謎を追っていたマークは、意外な事実を発見する。過去に起きたエレベーター事故、軍が密かに開発していた物、そして・・・・・
私評:あなたはもう、エレベーターに乗れない・・・。実は私はエレベーターに閉じ込められたことがあります。たしか4―5年前。停電で真っ暗になったエレベーターの中に一人取り残された時は、この世の終わりだと思いました。あの時、救出に来てくれた茶髪のおにいちゃんは天使のように見えた・・。さて、この映画はと言うと怖いシーンや残酷なシーンはほとんど予告編で見せてしまっているので、あまり刺激はありませんでした。ところがエレベーターが人間を襲うなんていうとんでもない話を、けっこうしっかりと作り上げています。もちろん、ありえない話なのですが・・。主演はツイン・ピークスのバイク青年のイメージしかないジェームズ・マーシャル。今回もかなり地味です(笑) ヒロインはこういうキワ物映画が続くナオミ・ワッツ。今回はちょっとおキャンな女性新聞記者役ですが、これもけっこう良いですよ。美しいし・・。脇役も豪華な顔ぶれ。エレベーター会社の社長がロン・パールマン、開発者をマイケル・アイアンサイド、そして事件を追う刑事役をダン・ヘダヤというアブナイ面子。楽しませていただきました。


前回の記事も読んでね〜!



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