2002/9/26号

今回はどれもイチ押しになりうる作品です。私が一番気に入ったのは
すごくマイナーな作品でした・・・・

チェンジング・レーン  監督 : ロジャー・ミッチェル  出演:ベン・アフレック、サミュエル・L・ジャクソン
Changing Lanes  2002年 アメリカ映画
今週のイチ押し:ニューヨークのマンハッタンを一台の車が疾走していた。運転しているのは若手敏腕弁護士のギャビン・バネック。遺産相続に関わる重要な書類を裁判所に届ける途中だった。時を同じくして隣の車線を走っていたのはドイル。彼はアルコール依存症のカウンセリングを受けていた。そしてこの日、子供たちの親権をめぐりやはり裁判所へと車を走らせていた。その瞬間、二人の車は接触事故を起こす。激しく中央分離帯に突っ込んだドイル。ギャビンは強引に小切手だけを渡し、その場を去ってしまう。裁判に遅れたドイルは親権を剥奪される。ギャビンは何とか裁判には間に合ったものの、一番重要なファイルを小切手と一緒にドイルに渡してしまったことに気づく。彼の裁判のタイムリミットは午後5時。ギャビンは必死にドイルを追うが・・・・。
私評:彼からは20分間を奪ってしまった・・・・サスペンス映画としても面白いけど、社会派映画として私は評価したい。車線変更による事故のためにお互いがずるずると足を引っ張り合う。映画を見ているうちに双方へ次々と感情移入できます。最初は「ギャビン、お前は酷いヤツだ・・」と思っていたけど「やっぱり良いヤツなのか?」と思えたり「ドイルはかわいそう・・・」なんて思っていたのに「それはやり過ぎでしょう!!」と思えたり、二人の間を行ったり来たり。お互いの状況が状況だっただけに、双方の行動も十分理解できるのです。それゆえ、いつも以上に悪意が増幅され、思わぬ行動に出てしまう。自分でも同じ立場だったらやりかねない??また、こんな時代だからこそ作れた作品ではないでしょうか?次から次へと刻々と変わっていく二人の状況、そして立場。息詰まる二人のかけ引きが最後の最後まで楽しませてくれました。主演のベン・アフレックとサミュエル・L・ジャクソンは最高でした。特にサミュエルはいつもよりテンションを押さえ気味で、要所要所で感情を爆発させます。新しいジャンルのサスペンス映画の誕生です。
エンジェル・アイズ  監督:ルイス・マンドーキ  出演:ジェニファー・ロペス、ジム・カヴィーゼル
Angel Eyes  2001年 アメリカ映画
シカゴ警察のタフな女性警察官のシャロンは家族との諍いのため、深く傷つきその傷を隠すかのようにがむしゃらに仕事に打ち込んでいた。ある日、ハイウェイで交通事故が起きる。その場に居合わせたシャロンは瀕死の重症を負った被害者に必死に語りかけていた。そして被害者が最後に見たもの・・・、それはシャロンの必死な瞳だった。月日は流れた。警官が屯すダイナーがギャング団に襲われた。その場に居合わせたシャロンは犯人を追うが、逆に犯人に襲われ銃口を向けられる。絶体絶命のピンチを救ったのはキャッチと名乗る男だった。果敢にも犯人に向かい押さえつけたのだ。名前以外は謎に包まれたキャッチだったが、シャロンはどんどん惹かれて行くのだった。二人は急速に近づいて行ったが、シャロンは彼の過去を探り出し大きな試練にぶつかる。また、頑なに過去を遠ざけていたキャッチも同様に、自らの過去と向かい合うことに・・・・
私評:「ハロー」「留守番電話はあるんでしょう?留守電に話しをするから電話を切って」・・・・予告編を見てて勝手にサスペンス映画だと決め込んで見に行ったので、ちょっと肩透かしにあいました(笑)。想像とは違ったけど、すごく良い映画でしたよ。途中からオチは見えてしまうのですが、映画の作りがすごく上手いので飽きさせません。しかし、この映画の見所はなんと言ってもジェニファー・ロペスです。この映画のために鍛えたという見事なボディ。アクションシーンも随所にあり魅せてくれます!しかも、相変わらず美しい・・・。共演はいつもこんな役が多いジム・ガビーゼル。今回は「素敵な笑顔」を持った男役。目立ちすぎもせず、かと言って重要な役柄をしっかりこなす名脇役です。そして物語は後半を向かえ、お互いがそれぞれのトラウマと相対します。私はこのシーンがけっこう好きです。期待してなかったせいもあると思いますが、私は大満足の映画でした!
まぼろし  監督:フランソワ・オゾン  出演:シャーロット・ランプリング、ブリューノ・クレメール
Sous Le Sable  2001年 フランス映画
マリーとジャンは長年連れ添った夫婦。今年もフランス南西部のランドに二人で出かけていった。二人だけの掛買いのない時間を過ごすはずだった。二人は人気のないビーチに出かけた。そしてマリーが昼寝をしてる間にジャンは姿を消してしまう。事故なのか?それとも失踪なのか?警備隊に助けを求めたマリーだったが、ジャンはついに発見されなかった。パリに戻ったマリーに変化が現れる。いるはずのないジャンと、あたかも一緒にいるかのような発言をし始める。実際、彼女はジャンのまぼろしと過ごし、そして語っていたのだ。現実に目を向けることができず、どんどんとまぼろしはリアルになっていく。そんな時、警察からジャンらしき男の水死体が発見されたという連絡が入る・・・・・
私評:あなたって軽いのよ・・・。そんなことを言われたのは初めてだ・・・・・・フランソワ・オゾンの新作です。と言っても、昨年の作品ですが・・。彼の今までの映画は性的に倒錯していたり、すごくブラックなコメディーだったりと、一筋縄では行かぬ作品ばかりでしたが、この映画は違う。クラシックと呼んでも良いのではないでしょうか?一人の女性の苦悩と哀しみを静かに、丁寧に描いています。 大事な人を失った悲しみから逃れるため、現実を否定してしまうヒロインに、あのシャーロット・ランプリング。さすがに歳をとったな〜と言う感じは否めませんが、あのスタイルの良さにはビックリです。また、さりげなく映画の中でも英語とフランス語の両方を使い分け知的な部分も見せてくれます。 しかし、彼女はこういう不幸な女が似合う。(これは褒め言葉ですが・・・)ラストの海辺のシーンは美しい。あんなに悲しく、虚しいシーンなのになぜでしょう? そして彼女が見せる涙をどう解釈する??
歌え!フィッシャーマン  監督:クヌート・エーリク・イェンセン  出演:ベルレヴォ−グ男声合唱団
Cool & Crazy  2000年 ノルウェイ映画
ヨーロッパ大陸の大北端にある小さな町ベルレヴォーグ。この町には90年の歴史を持つ男声合唱団がある。こんな片田舎に住みながらも男たちは幸せそうに人生を語る。壮大な自然との共存、仲間たちとの友情が語られる。そして彼らはロシアのムルマンスクのコンサートに招待される。初めての大舞台に緊張隠せないメンバーたち。そして幕は上がった・・・・・
私評:みんな良いヤツばかりさ。だから、この町を出て行くことはない・・・・・。この映画を見ていて一番心に残ったのは、彼らの友情です。誰もがこの町を愛している。しかし、実際は町は寂れていて、仕事もあまりない。そして冬の寒さは半端じゃない。しかし、そんな小さな町だからこそ、こんなに暖かな人と人の交流があるんでしょうね。そして男たちは合唱団に入る。そこは男たちの友情を育む場所だから。老いも若きも歌うことが大好きで、しかもマジで上手い!もしかして、男たちにとってはこれが合唱団じゃなくてダンスや、武道や、インドアスポーツでも良かったのかもしれないけど・・・。しかし、この映画のためだと思いますが吹きすさぶ吹雪の中や、北風が吹き荒れ波しぶきが上がる防波堤で歌を歌ってた彼らは、なんだか可哀そうだった。ただ、そんな感動的な音楽シーンのほかに、このおっさんたちのぼやきにも似たインタビューがけっこうだらだらとあって、この部分は長く感じてしまいました。


前回の記事も読んでね〜!



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