2002/9/18号

今回はどれもイチ押しになりうる作品です。私が一番気に入ったのは
すごくマイナーな作品でした・・・・

記憶のはばたき  監督: マイケル・ペトロー二 出演:ガイ・ピアース、ヘレナ・ボナム・カーター
Till Human Voices Wake Us  2001年 オーストラリア映画
今週のイチ押し:15才のサムは寄宿学校の夏休みを利用して、故郷のジェノアへと帰ってきた。放任の父とは言葉も交わさず、彼は幼なじみの少女シルヴィーの元へと向かった。ちょっと大人になったシルヴィーに目を奪われるが、ふたりはすぐに幼なじみに戻る。そしてダンスパーティーの夜、ふたりはパーティーを抜け出し湖へと向かう。初めてのキス。しかし、その直後に悲劇は起こった。サムがちょっと目を離した空きに足の不自由なシルヴィーは湖に呑まれてしまった。結局、遺体は見つからなかった。月日は流れ、サムは精神分析医となる。彼の元に父の死を知らせる電話が入る。父の遺言により埋葬はジェノアで行われることになった。久々に訪ねる故郷。サムは列車の中でルビーという女性と出会う。その夜、サムは嵐の中で鉄橋から川に飛び込んだルビーを救ったが、そのショックでルビーは記憶をなくしてしまう。ところが、ルビーはシルヴィアの思い出を呼び起こすのだった・・
私評:湖に映る月が波で揺れるとバレリーナに見えるの・・・・。なんてステキな映画なんだ!この映画は少年時代と、成人後の2つが舞台になるが映画の中ではその2つが、かっちり分かれていて映画的手法であるフラッシュバックや回想シーンは一切使われていない。まずは、前半のピュアなんだけど、ちょっと危険な感じがするサムとシルヴィーの話に私はメロメロ。自転車の二人乗り、夜の森、月を映す湖・・・・。そこはまさに二人だけの世界。時間を追うごとに少しずつ積み上げていった愛。しかし、悲劇が一瞬にしてそれらを奪い去る。この時点で二人にかなり感情移入していた私は胸が痛くなった。そして大人になったサムが再びこの町を訪れる。町は以前にも増して寂れているが、シルヴィーと過ごした森や湖はそのままなのですね。そしてルビーが見せる幾つもの奇跡。それがシルヴィーそのものなのです。悲しくも美しい、そして不思議なこの映画に私は泣いた。大人のサムを演じるのはオーストラリア出身のガイ・ピアース。そしてルビーを演じるはイギリスのヘレナ・ボナム・カーター。二人がすごく良いです。しかし、彼ら以上に良いのが少年時代のサムを演じるリンドレイ・ジョイナーとシルヴィー役のブルック・ハーマン。こんな映画に出会いたかった。そして出会えて良かった。私は大好きな映画です。 
OUT  監督:平山秀之 出演:原田美枝子、倍賞美津子、室井滋、西田尚美
OUT  2002年 日本映画
夜中のお弁当詰めのパートをする4人の女たち。それぞれが問題を抱えながらもじっと我慢を重ねて生きている。ある夜、雅子の元にパート仲間の弥生から電話が入る「旦那を殺しちゃった。助けて」。雅子は弥生に自首を勧めるが臨月の彼女を不憫に思った雅子はとりあえず死体を自分の車のトランクに隠した。翌日、弥生は死体のことなど忘れたように雅子に頼りっきり。仕方なく,同じパートのヨシエ(師匠)に相談を持ちかけた。母親の介護に疲れたヨシエは雅子から提示された金額に惹かれ、死体処理を手伝う事にする。雅子は死体をバラバラにして生ゴミと一緒に出す方法をとった。自宅の風呂場で解体を始めたところへ,同じくパート仲間の邦子がやってくる。ブランド好きで破産寸前に彼女は雅子に金を借りに来たのだ。そして強引に彼女も仲間に引き入れる。解体した体を袋に入れて持ちかえった邦子は居ても立ってもいられず墓地のゴミ捨て場に捨ててしまう。翌日,その袋をカラスが穿り、遺体は発見され大事件となる・・・。
私評:あんた,夢はないの? なーい。そういえば私,夢なんて全然ないや・・・桐野夏生さんのベストセラーが映画化された。しかも、主演の4人は最高の女優たちが集まった。全然バラバラの個性の4人が、それぞれの味を生かして物語を牽引していきます。女性が主役の映画はあるけれど、個性がこんなにもバラバラの4人の女が主役の映画って珍しいかも??シノプシスを読むとけっこう陰惨な話みたいですが、この映画は笑えます。室井滋と西田尚美はコメディエンヌでもあるので分かるのですが、原田美枝子,倍賞美津子までもが笑わせてくれます。私が原作を読んだ時は「こんな犯罪からはイチバンほど遠い存在」だったはずの女たちだったのですが(本のコーナーにそんな事を書いています)、今では女性のこんな犯罪も珍しくないですね。しかし、映画の中では彼女たちを取り巻く男たちはバカだったり、つまらない男だったり、暴力亭主だったり・・・。唯一、香川照之が演じる十文字はちょっと人間臭いヤツでしたが・・。そしてこの映画の意外な発見が間寛平!血も涙もない冷酷な男役です。劇中はニコリともしない。もちろん,桐野さんのオリジナルの原作はすごく面白いのですが,映画用に練られた新しい展開もグッド。ただ,欲を言えば、私的には最後がダラダラしすぎた。もっと,早い時点でエンドマークを出して良かったと思います。原田美枝子が倍賞美津子のタバコに火をつけるシーンがあるのですが、某フランス映画でA・DがC・Bのタバコに火をつけるシーンが被りました。それがまた,めちゃカッコイイんですよ。それとオープニングで「OUT」のタイトルが出る前のシーン。カッコイイです。果たしてこのタイトルの「OUT」を、あなたはどう受けとめるか?
ディナーラッシュ  監督:ボブ・ジラルディ 出演:ダニー・アイエロ、エドアルド・バレリーニ
Dinnerrush  2001年 アメリカ映画
NYのトライベーカにある人気のイタリアン・レストラン「ジジーノ」。この店のオーナールイもかつては、博打の元締めをしていたギャングだったが、今は気質のビジネスマン。しかし、彼の旧知の友人がギャングに射殺され落ち込んでいた。この店のシェフ、ウードはルイの息子。斬新で奇抜な料理がこの店の人気を不動の物にしたのだが、ルイは昔ながらの料理に拘っていた。この日も「ジジーノ」は超満員。わがまま邦題で口の悪いギャラリーのオーナーと若きアーティストたち、カウンターにはお調子者の自称ウォール街のビジネスマン、ウードと関係を持っている料理評論家、ルイが招いたNY市警の刑事夫妻、そして特等席にはルイの友人を殺したギャングたち。彼らはこの店のデミ・シェフのダンカンが博打で摺った金を回収しにやってきたのだ。しかも、この店のビジネスパートナーになりたいとルイを脅すのだ。今日も満員の「ジジーノ」は忙しさのピーク"ディナーラッシュ"を迎えていた・・・。
私評:俺は母さんの作った、昔ながらの料理が良いんだ!・・・・・たった、一夜の物語なのですがこの店に集う人々は、それぞれにドラマを持ち、そしてそれらをこの店に運び込むのです。元来、レストランってそういう物ですよね。しかし、この日の「ジジーノ」はちょっとばかりレベルが違う。幾重にも積み重ねられた、それぞれのドラマを実にテンポ良く、そして明快に描き出す演出は最高です。そんなドラマと同時に次々と出されていく料理の数々にも要注目です。この店は実際にNYにある店を使って撮影されたのですが、カメラワークが圧巻です。満員の店内、狭い階段、コックが走りまわる厨房を、カメラが摺り抜け、潜り抜けていく。本来なら遠い位置や上から映すところを、カメラが混雑の中央に据えてあるんですね。これによって店の忙しさや混雑ぶりがより一層伝わってきます。主演は"イタリア人役なら俺に任せろ"のダニー・アイエロ。適役でしたね〜。息子のウード役はエドアルド・バレリーニ。彼は「ロミオ・マスト・ダイ」に出てたらしいけど、記憶にありません。その他に印象的だったのがアーティストを目指すウエイトレス役のサマー・フェニックス。むかつくギャラリー・オーナーとのやりとりは最高!そしてもう一人、博学のバーテンダーがグッドでした!映画の最後にはあっと驚くどんでん返しがあります。果たして誰が仕掛けるのか??
ズーランダー  監督・主演:ベン・スティラー 出演:オーウェン・ウィルソン、ミラ・ジョヴォヴィッチ
Zoolander  2001年  アメリカ映画
スーパー・モデルのズーランダーは3年連続で年間最優秀モデルの座をキープしていたが、新進のモデルのハンセルに4年目は阻まれすっかり落ち込んでしまった。それに追い討ちを掛けるかのように、仲の良いモデル仲間の(超・おバカ)事故死、そしてタイム・マガジンには「Idiot」と酷評されモデル界を去る決意をする。久しぶりに故郷に帰るが家族にも歓迎されず結局はファッション界に返り咲き。しかも、今イチバンのトップ・デザイナーのムガトゥに採用され復活を懸ける。しかし、ムガトゥを陰で操るナゾの組織は、ファッションショーの会場に訪れるマレーシアの首相の暗殺を企んでいた。そしてズーランダーの洗脳を開始する・・・・。
私評:最新のキメのポーズは「マグナム」っていうんだ。まだ,試験中だよ・・・良いな〜、アメリカのバカ映画って大好き。ベン・スティラーってやはりすごい才能を秘めていますね。この映画は製作、原案、脚本、監督、主演と大活躍。それだけに気合いも入ってます。それにしても知能指数が低いギャグの数々は圧巻。おバカなんだけど計算されているんです。次から次へと襲い来るギャグの嵐に私は笑いっぱなし。映画が終わる頃は腹筋が痛くなりました。また、ベン・スティラーに1歩の退けも取らないのがオーウェン・ウィルソン。彼は最近映画に出まくってますよね。この映画ではズーランダーに負けないスーパーモデルで、しかもおバカな役。これがけっこう様になっています。また、この映画でタイムマガジンの記者役の美女クリスティーン・テイラーは,この映画がきっかけでベンと結婚したそうな・・。(羨) ナゾの美女,カティンカ役は「バイオハザード」で私の心を奪った(?)ミラ・ジョヴォヴィッチ! なんだか全然雰囲気が違うぞ〜!!でも、そんな彼女もステキ・・。そしてこの映画の超・豪華なカメオ陣たち!!ナタリー・ポートマン、ウィノナ・ライダー、デヴィッド・ボーイ、クリスチャン・スレイター、スティーブン・ドーフ、そしてズーランダーとハンセルの勝負の審判がデヴィッド・ボウイ、ズーランダーのとうちゃんがジョン・ヴォイト、そしてナゾのホームレスがデヴィッド・ドゥカプニー!オースティンに負けるとも劣らないコメディの傑作です!映画の後はきっとワム!の「ウキウキ・ウエイク・ミーアップ」とフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「RELAX」を口ずさんでしまうでしょう!? 
千年女優  監督:今 敏 声の出演:荘司美代子、飯塚昭三
Chiyoko, Milenum Actress  2001年 日本映画
映画製作会社の社長の立花は往年の名女優、藤原千代子の半生を描くドキュメントの製作を請け負う。彼女は30年前に忽然とスクリーンから姿を消してしまったのだ。元々、彼女の大ファンであった立花はさっそく千代子の家を訪ねた。彼の目の前に現れたのは齢は重ねたものの確かに千代子だった。そして今回の撮影の条件だった「鍵」を受け渡す。ついに撮影が始まった。少女時代に匿った若き絵描きのこと、そして彼に抱いた恋心、満州に渡った彼を追うために映画界に入った事・・。そして彼女はずっと彼を追っていたのだ。しかし、ある日を境に千代子は映画界を去り、以来人目を忍んでひっそりと生きてきたのだ。しかし、立花自身も千代子とは意外な関わりを持っていた・・・・
私評:これはイチバン大切なものを開ける鍵・・・・・ドリーム・ワークスが世界配給をしなければ危うく埋もれてしまいそうだったこの映画。私は「Perfect Blue」はあまり好きじゃなかったので、この映画もあまり期待は掛けていなかったのですが見に行って良かった!千代子が語る過去の映画のシーンに立花とカメラマンが入りこみ、映画を語りながらも千代子の恋愛も語っていく。次々と映画から映画へと移っていくそのテンポの素晴らしい事!これはまさにアニメならではのノリですね。恋愛もの、時代劇、最後にはSFまで登場します。映画の中では"演技"していたはずが、いつしか実際の彼女の恋物語にオーバーラップしていく演出がすごく好きです。純真で一途な千代子の恋物語も良いのですが、ずっと千代子のファンだった立花の話もこの映画の見どころです。こんなファンタジーが見たかった。
サイン  監督:M・ナイト・シャマラン 主演・メル・ギブソン、ホアキン・フェニックス
Signs  2002年 アメリカ映画
元・牧師のグラハムは妻を交通事故でなくし、神職から身を引いた。今は息子、娘、そして弟と過ごしている。ある朝、グラハムは自分の畑に巨大なミステリーサークルを発見する。その日以来、奇怪な出来事が続発する。世界中で発見されたミステリーサークルのTVに釘漬けになる家族。そして不可解な事を言い出す娘。目に見えぬ恐怖に襲われ、怯える家族の目の前に、ついに"それ"は姿を現わす・・・・・・・・
私評:See ・・・and Swing Away・・・・やってくれました、シャマラン監督。相変わらずじっと見据えるカメラが怖い。最近はスピーディーで、コマ割が多い映画ばかりですが、シャマラン映画は違う。あくまでも怯える人間の視線で、ゆっくりとじっくりと見せつける。これがめっちゃ怖い。100分くらいの映画なのですが、一瞬たりとも目が離せない。でも、終わってからよくよく考えると大した内容じゃないんですよね。これは「シックスセンス」「アンブレイカブル」でも言える事。要は見せ方なのです。また、これが映画の面白いところです。しかし、どうって事ないストーリーの中に家族の事、神の事など深いテーマをしっかり掲げていて、それらが感動を呼びます。主演はメル・ギブソン。シャマラン映画の常連B・ウィリスには、この役はできませんね。やっぱり良いお父さん役はメルにお任せ。しかし、いつもはマッチョで悪に完全と立ち向かっていくメルが今回は怯え、逃げ惑う。それがまた、恐怖を煽るのです。弟役はホアキン・フェニックス。彼の存在もこの映画の恐怖を、そして笑いを盛り上げる重要なファクターです。息子役はマコーレ・カルキンの弟、ロリー君。そして娘役がめっちゃ可愛いけど不気味な(?)アビゲイル・ブレスリン。監督のシャマラン自身も重要な役で登場します。見終わったあと、あれこれと話したくなりますよ! 
イノセント・ボーイズ  監督:ピーター・ケア 主演:キーラン・カルキン、ジョディ・フォスター
The Dangerous Lives of Alter Boys  2001年 アメリカ映画
フランシスは厳格なカソリック系の学校に通う14歳の少年。ティム、ウェイド、ジョーイと4人でコミックを執筆中だ。主人公はスーパーヒーローの彼ら4人。そして恐るべき宿敵は彼らの学校の校長でもあるシスターだ。若いパワーを持て余している彼らはあれこれとイタズラを考えている。今度のイタズラは校舎の上部に掲げられた聖母マリアの像を盗み出す事。4人はチームワークと運でまんまと盗み出す事に成功する。フランシスは同級生のマージに夢中だった。付き合い始めた二人は日に日に親密になっていく。しかし、彼女の口からとんでもない事実を聞かされる・・・。また、4人が書いたコミックが校長に見つかりフランシスとティムは停学になってしまう。学校にし返しをしようと企んだ彼らはとんでもない事態に巻き込まれてしまう・・・
私評:退屈と危険のどちらを選ぶんだ??・・・・原作はクリス・ファーマンという人です。彼は31歳という若さでこの世を去りました。彼の処女作にして遺作となったのがこの映画。その作品に惚れこんだジョディー・フォスターが製作を買って出て、しかも自ら出演を果たしたのがこの作品です。見ていて少年たちのいたずらや純真な恋愛に、心地良さを感じつつも、なにか今一つインパクトが足りないんです。マージの秘密やラストの衝撃は本来であればショックや涙に繋がるはずなのですが・・・。役者はすごく良いので、監督の演出の甘さなのでしょうね。主演は兄貴がマコーレ、弟は「サイン」のロリーのキーラン・カルキン。すっかり役者家族になっている・・。彼はイイ子ぶらない演技が良いですね。そしてフランシスを演じるのはエミール・ハーシュ。ほとんど新人の彼ですがなかなか良い演技を見せてくれます。マージを演じるのはあの年齢にして、あの艶やかさは!のジェナ・マローン。最近は「海辺の家」や「ドニー・ダーコ」でもちょっとはじけた女の子を演じていました。そしてそして堅物のシスターを演じるのがジョディ・フォスター。いわゆる憎まれ役ですが、これがまたピッタリ!遠足のバスの中で彼女の歌声を聞いて妙に感動してしまいました。題材が良いだけに、私はもったいない作品だと思ってしまいました。


前回の記事も読んでね〜!



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