2004/9/20

ついに見に行った、邦画話題作は予想以上に強烈で
心に痛みを残す映画でした・・・

誰も知らない  監督:是枝裕和  出演:柳楽優弥、YOU、韓英恵
Nobody Knows  2004年 日本映画
今週のイチ押し:引越しの荷物がトラックからアパートに運ばれていく。大家には二人暮らしと嘘をついた福島けい子とその息子の明。本当はあと3人の子供がそこにはいた。子供が多いと狭いアパート暮らしができないので、3人の子供は隠れて生活をしている。これも苦肉の策なのだ。けい子は4人の子供の母親だが、子供たちの父親はそれぞれ違う。この年になってもけい子は男なしでは生きていけない。それゆえ、明に子供たちの面倒を押し付けては、自分は男のところに転がり込んでしまう。そんな状況ゆえ、子供たちは学校にも行っていない。そんなある日、けい子は20万円の現金と「しばらく家を留守にします」という置手紙を残して家を出て行ってしまう。お金が底をつくまでは、兄弟で楽しく暮らしていたが、ついにお金がなくなると明は子供たちの父親の元を訪ねてはお金をせびる。しかし、そのお金もなくなってしまい電気、水道も止められてしまう。それでも子供たちは気丈に生きていく。そんなある日、明が外出中に悲劇が起こる・・・・
私評:お金を貸して。ゆきに飛行機を見せてあげたいから・・・是枝監督の作品って、役者がほとんどアドリブで喋るので、『ワンダフルライフ』や『ディスタンス』ではかなり役者の技量が試された。でも、やはり演技をしてしまうんですよね。ところが、今回は子供たちが主人公なのでその辺りが実に上手いんです。そしてそこにはまさに「リアルワールド」が存在していました。この映画の元になった「西巣鴨子供置き去り事件」についてちょっと調べてみた。それはまさにこの映画と同じ状況だった。4人の子供は出生届も出されておらず、形式的には「存在しない子供たち」だった。しかも、事件が明るみに出るまで、かなりの時間があったにも関わらず周りの人たちは子供たちの存在を知らなかったという。それは「誰も知らない」子供たちだけの世界。映画の中にもそれは確立していた。映画を見ていて、私は子供たちの「強さ」に感動した。子供たちだけの小さな社会が形成され、ルールができ、そして助け合う心が育っていく。いつ、終止符が打たれてもおかしくないような彼らの生活だったが、あそこまで長続きした『力』の源は一体なんだったのか?それは皮肉な事に『母親への愛情』だったのかもしれない・・。映画の後は何とも遣る瀬無い気持ちでいっぱいになってしまった。実際、自分が住んでいるマンションの住人を全部知っているかというと、そんな事はない。(しかも、私の住んでいるマンションは10世帯しか入っていない。)それが都会では当たり前になっている。それって本当は恐ろしい事なのかも??主演はカンヌで最年少主演男優賞を獲得した柳楽優弥君。そして彼の妹の北浦愛ちゃん、弟役の木村飛影君、そしてめっちゃ可愛い末娘の清水萌々子ちゃん。彼ら4人が4人とも素晴らしい。そして映画の中で彼らの成長がはっきり見えるんです。母親役にはこれまた、ピタッリの配役だったYOU。そして彼らと不思議な縁で関わる中学生役に「ピストルオペラ」の韓英恵。社会派作品と呼ぶべき作品です。 

CODE 46  監督 :マイケル・ウィンターボトム  出演:サマンサ・モートン、ティム・ロビンス
CODE 46  2003年 イギリス映画
近未来。環境破壊が進み、都市部の人間を徹底的に管理する社会がそこにはあった。パペルと呼ばれる滞在許可証の不正な発行が行われていることを知ったウィリアムは、犯人を挙げるべく上海へと渡った。上海のパペル印刷工場を訪れたウィリアムはそこでマリアという女性と出会い心を惹かれる。実はこの事件の犯人は彼女だった。ウィリアムは己の職務を忘れ、彼女にのめりこんでいく。そして彼女が実際に偽造パペルを渡す現場をも垣間見てしまう。マリアの逮捕を避け、家があるシアトルに戻ったウィリアムは、マリアが偽造パペルを渡した男が死亡したことを知り、再び上海へと舞い戻った。しかし、工場にもアパートにも彼女の姿はなく、なんと病院に収容されていたのだ。しかも、彼女はCODE46に該当する罪を犯したため、彼の記憶を消されていた。しかし、彼女は誕生日のたびに見る不思議な夢でウィリアムと出会っていたのだ。果たしてCODE46とは? そしてウィリアムとマリアの意外な繋がりとは??・・・・
私評:I Love You, I Love You, I Love You・・・・悲しくも美しいラブ・ストーリーに私は泣いた。一瞬にして惹かれあう男と女。二人は意外な接点を持ち、それは禁断の愛へと導いていく。運命を感じさせる相手との禁じられた愛。しかし、その思いにブレーキを掛けることは誰にもできない・・・はずだった。近未来、私たちは自らの記憶さえもコントロールされてしまうかもしれない。最近だと「ペイチェック」でも、そんな設定がありましたね。そして何事もなかったかのように過去を、そして抱えきれないほどの思いをも消し去り生きていく。これが果たして幸せなのか??この映画の中で「管理される人々」に、私たちも徐々に近づいているような気がした。しかし、そんなシステムをも超える、運命的な繋がりを信じたくなった。それにしてもこの映画のサマンサ・モートンはイイです。あの掴み所のない彼女の雰囲気がこの映画には最高のフレーバー。フラッシュの中でセクシーに踊るシーンはサイコー。そして彼女に溺れていく男を演じるティム・ロビンスがまた、実にイイのです。主演の二人に思い切り感情移入していた私。そして監督のM・ウィンターボトムが描き出す絵画のような世界が、また良いんです。舞台を上海に選んだのは正解でしたね。
娘道成寺 蛇炎の恋  監督 :高山由紀子  出演:中村福助、牧瀬理穂、風間トオル
 2003年 日本映画
高層ビルの屋上で真っ赤な衣装に身を包み「娘道成寺」を踊る女がいた。彼女の名は詩織。彼女は有名な女形の村上富太郎が認めた唯一の女弟子だった。しかし、その直後、彼女はその身を宙に放った。詩織には遥香という双子の姉がいた。二人は幼い頃にアメリカに渡り、洋舞のダンサーとして成功を収めていた。遥香は妹の死の原因を探るため、富太郎に近づく。そして彼が舞う「娘道成寺」に魅せられ、自らが主演をする洋舞の公演を諦めてまでして富太郎の弟子入りを果たす。女の情念を異常なまでに突き詰める富太郎。しかし、そんな彼に遥香は惹かれていく。もしかして、詩織も同じ想いを抱いていたのでは?そんな考えが遥香の中に芽生え始める。そんな時、富太郎を敬愛する弟子の秀次は邪魔者になりつつある遥香に新進気鋭の女形花丸の存在を教える。かつて富太郎とはライバルだった花丸。そして詩織との間にもただならぬ関係があった・・・・・・
私評:「女を演じるためには、女を捨てるのです」「「いやです。私は女。だから・・・」・・・私は歌舞伎は見ませんが、経鹿子娘道成寺は知っておりました。この悲恋物語と現代の男女が不思議に絡んでいく。そして劇中何度か演じられる舞台の高尚な事・・・。その世界は私の知らない耽美でいて幻想的な世界。その不思議な世界に魅了されていく女と、男ながらにして「女以上に女を知る」女形の不思議な交わりが、この映画の見所。そんな世界にどっぷり漬かってしまった。圧巻は世界遺産にも指定されている高野山の根元大塔の前での舞い。朱塗りの塔の前で、白い着物と赤い着物で舞う富太郎の姿は艶やかで、そして神々しいまでに美しかった。富太郎を演じるのは9代目中村福助。彼の女形姿って決して美しくなのですが、何ともいえない味わいがあります。そして詩織、遥香の二役を演じるのは牧瀬理穂。彼女って演技とかもけっして上手くないと思うのですが、あの真っ直ぐな感じがこの映画では映えていました。花丸役には風間トオル。監督はこの作品が2作目にあたる高山由紀子。女性監督ならではの演出が随所に見られました。
ディープ・ブルー  監督:アラステア・フォザギール、アンディ・バイヤット  声の出演:マイケル・ガンボン
DEEP BLUE  2003年 イギリス・ドイツ映画
製作7年、撮影フィルム7000時間、ロケ地200ヶ所。地球表面の約70%を占める海。しかし、私たちは海のことをほとんど知らない・・・・・
私評:我々は深い海の底について月の表面ほどの知識もない・・・・オープニングで映し出される波。まさにその瞬間、私は海に足を突っ込んでいた。そして果てしない海原へとスクリーンの中を泳いでいく。そんな錯覚に襲われた。これは正直言って劇場で観て何ぼの映画です。あの大画面で、そして最大限の音響と最小限の明かりの中で見てこそ楽しめる映画。だからこそ、この映画を2回も見に行ってしまったのです。美しい映像の数々はため息が出るほど華麗でいて、また荘厳でもある。そして海の中でも数々のドラマが日々演じられているのです。そのひとつは食物連鎖。弱肉強食の世界はかなり残酷でもあるのですが、地球の歴史の中で、幾度となく繰り返されてきたこれも事実。最初の方でシャチに襲われるアザラシの子供のシーンはすごかった・・・。そしてクジラの子供を襲う(やっぱり)シャチのシーン、魚の群れに集まるサメ、そして鳥たち・・・。よくぞカメラに収めたものだと感心してしまいました。そして最大の見所は深海魚たちの生態ではないでしょうか?光の届かない遥か深い世界でも生命は息吹き、そして生を全うしている。筋書きのないドラマをふんだんに盛り込んだ最高の海洋ドキュメンタリー。この映画がヒットした理由も分かりますよね。 


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