2003/9/1号

やっと、訪れた本格的な夏の暑さ。こんな時は映画館で涼みましょう。
怖い映画を見れば、効果は倍増??

座頭市  監督 : 北野武  出演:ビートたけし、浅野忠信、岸辺一徳、ガダルカナル・タカ
ZATO-ICHI  2003年 日本映画
今週のイチ押し:とある宿場町。この土地はやくざの銀蔵一家と腹黒商人扇屋が全てを仕切っていた。問答無用の絶対政治には誰も逆らうことができない。そんな町に3組の客が訪れた、一人は謎の盲目の按摩師、座頭市。そして妻同伴の凄腕の浪人服部源之助、そしてもう一組は旅芸者の姉弟おきぬとおせい。服部は病床の妻の薬代を得るために銀蔵一家の用心棒になる。腕の良い用心棒を得た銀蔵は、周りのやくざの組を片っ端から潰しに掛かる。一方、座頭市は野菜売りのおうめに厄介になっていた。おきぬとおせいの二人は、幼いときに両親を殺した仇がこの町にいることを知る。やがて、この町は血で血を洗う殺戮の街へと変わっていく。座頭市の仕込み剣が唸りをあげる・・・・。
私評:真っ暗闇で奴と戦ったら勝てるかね・・・・北野武監督の最新作は、完全にエンターテイメントに徹したアクション時代劇。とにかく役者ビートたけしの座頭市はめちゃ強いです。しかも、パワフルでまさに"ブッタ斬る"と言う感じ。戦いのシーンでは飛び散る血飛沫をCGで書き込んでます。そして太刀まわりもすごくカッコいい。特に浅野忠信が剣を鞘に収めるところなんか、ちょっと西部劇が入ってます(笑)。また、従来の北野作品の大半はダークでシュールな作品が多かった中、この作品では笑いもいっぱい。笑い担当はガダルカナル・タカ。そして注目すべきは音楽です。北野作品の常連だった久石譲から鈴木慶に変わり、ダンサンブルな音楽がとても気持ちよいです。田んぼでの足音、畑に桑を入れる音、大工作業の音がいつしか音楽になっていき、そしてラストは壮大な村祭りになって行きます。しかし、この映画のオチにはビックリ。しかも、2回も・・・・。念のために申し上げますが、勝新太郎の座頭市とはまったく別物です。(おめえさんたち、あっしを斬ろうっていうのかい・・よした方が・・・なんてセリフはありません<笑>)
福耳  監督 : 瀧川治水  出演:宮藤官九郎、田中邦衛、司葉子、高野志穂
Fuku Mimi  2003年 日本映画
フリーターの高志は、テキトウな性格で仕事も長続きしないし、将来のことも何も考えていない。そんな彼が次に選んだ仕事は老人向けマンションの仕事。実は彼には別の目論見があった。それは彼が入院していた病院の看護婦の"けい"がここで仕事をしていることを知ったからだ。高志は彼女に恋心を抱いていた。仕事の初日、彼は仕事場の玄関で変な老人に出会う。しかし、その老人富士郎はすでに死んでいたのだ。不思議に思った彼は部屋で、何気なく覗き込んだ鏡を見てビックリ。そこには富士郎の姿が・・。なんと、死んだ富士郎は生前好きだった女性への思いを諦めきれず、高志にとり憑いたのだ。嫌がっていたいた、高志もある事件をきっかけに富士郎に協力をするが・・・・。
私評:彼女をゲットするために、俺にとり憑いたのかよ!!・・・宮藤官九郎といえば、「GO」や「ピンポン」そして「池袋ウエストゲートパーク」などの脚本家として有名ですよね。そんな彼が役者として、ご年配の役者さんたちを相手に大活躍。まさに、はまり役でした。しかし、この映画は心に優しい映画です。映画の最初の頃の高志は、礼儀も知らず、言葉遣いも知らないバカ者。そんな彼が映画の中で精神的に成長していくのが面白いです。そして彼にとり憑くのが田中邦衛というのがまたグッドです。その他にも司葉子、坂上二郎、谷啓、多々良純、千石規子、宝田明などが老人組で大活躍。しかも、宝田明はオカマ役!!笑って笑って笑って、ちょっとだけ感動して・・心がぽかぽかと温かくなる映画です。しかも、この映画は今後の日本が抱えるシルバー問題についても提議しています。他人事じゃないですよね・・。そしてこの映画の見所のひとつは舞台となる浅草! 面白かったです〜!!
フォーン・ブース  監督 :ジョエル・シューマカー  出演:コリン・ファレル、フォーレスト・ウィテカー
phone Booth  2003年 アメリカ映画
詐欺師まがいの、自称パブリシストのスチュワートは、今日も口八丁手八丁で仕事を仕切る。そしていつもの電話ボックスにやってきた。ここの電話ボックスから、今目を付けている女パメラに電話をするためだ。携帯からの電話は妻のケリーが簡単に通話履歴を調べられるので、敢えてこの電話ボックスから電話をするのだ。その時、急に公衆電話のベルがなった。何気なく電話を取ったスチュワートに相手が告げた。「この電話を切ったら、お前の命はないぞ。お前のことを銃で狙っている・・」電話ボックスの外で待っていた娼婦たちが騒ぎ立て、そこにやってきた男が電話口の向こうの男に銃で射殺された。しかし、なんとスチュワートが犯人だと勘違いされてしまう。やがて警察に包囲されるが、スチュワートは電話を切ることができない。しかも、状況を警察に伝えることもできないのだ。とんでもないゲームに巻き込まれたスチュワートに犯人はある要求を出す・・・。
私評:ケリー!俺はここからパメラに電話している。彼女とファックしたいからだ・・・・久々に小粒ながらもスパイスの効いたハリウッド映画に出会えた。この夏は超大作が揃ったのでこういう低予算の映画が逆に小気味良いです。上映時間も81分と超お手ごろ。映画の舞台はNY8番街53丁目にある電話ボックス。映画の大半はこの電話ボックスの周りで撮影されている。しかも、スチュワートはほとんど電話ボックスの中にいるため、こちらまで変な閉塞感が伝わってきて、息苦しくなってきます。ましてや、常に銃が主人公を狙っているため、まったく気が抜けません。多少強引な展開があるものの、興奮しっぱなしでした。主人公は「実はこういう嫌味で軽い男が本性なのでは?」と思わせるコリン・ファレル。しかし、なぜか憎めないキャラクターなんです・・。彼の妻役はピッチ・ブラックのラダ・ミチェル、パメラ役には「ギフト」「ワンダー・ボーイズ」のケイティ・ホームズ、警官役には「ゴースト・ドッグ」のフォレスト・ウィテカー。これは面白いですよ〜!
デス・フロント  監督:マイケル・J・バセット  出演:ジェイミー・ベル、アンディ・サーキス
Death Watch  2002年 イギリス映画
第一次世界大戦時。ヨーロッパの西部戦線では激しい戦いが繰り広げられていた。まだ、16歳の少年シェークスピアが所属する、イギリス軍のY中隊はボロボロに傷つきながらも逃げ延び、ドイツ軍が占拠していた塹壕を奪った。しかし、この塹壕は不気味な雰囲気を漂わせていた。鉄条網が張り巡らされ、累々と横たわる死体の数は計り知れず。そして捕虜にしたドイツ軍兵士は「早くここを立ち去れ。さもないとお前たちは互いに殺しあう。ここには魔物がいる」という。しかし、彼の言葉は正しかった。10人の小隊の兵士はひとり、またひとりと命を落としていく。果たしてこの地にはいったい何があるというのか??そして少年シェークスピアが見た真実とは・・・・。
私評:中隊長の命令に従うんだ。だって、中隊長は狂っている。軍曹、あなただけが頼りなんだ・・・この映画はまず発想が面白いですよね。西部戦線の銃弾が飛び交う中で、やっと生きながらえた兵士たちが敵の銃弾を避けるために見つけた塹壕に、別の恐怖が潜んでいた。塹壕の外も地獄、しかし中にいても・・。こんな絶体絶命の状態の中で次第に正気を失っていく兵士たちが怖いです。もちろん、要所で登場するゾンビ(?)や襲い掛かってくる鉄条網も怖いけど、正体を見せない「何者か」が一番怖い。ネタバレになるので、詳しくは書けませんが、逃げ場のない所で起こる怪奇現象はじわりじわりと怖さわが染み入ってきます。そして映画の中では、ほとんどのシーンが雨や霧でそれがまた怖さを増幅させるんですね。主演は「リトル・ダンサー」のジェイミー・ベル。180度まったく違う映画に、なぜ挑んだのでしょうね?? ラストはなんとも不可解な終わり方でした・・。
天使の牙 B.T.A.  監督:西村了  出演:大沢たかお、佐田真由美、萩原健一
 2003年 日本映画
男社会の警察組織の中で、必死に仕事に励む女明日香。彼女の心の支えは恋人で同僚の刑事の古芳だった。巨大な麻薬組織クラインとの攻防の中、「自分以外の誰も信じるな」と明日香に言い聞かせる古芳の真意は掴みきれない。そんな時クラインのボス君国の愛人のはつみから警察に電話が入る。彼女は警察に保護を求めてきたのだ。はつみと接触を果たした明日香だったが、君国の部下によって追い詰められ二人は撃たれてしまう。しかも、はつみを撃ったのは・・・。病室で目を覚ました明日香は鏡を見て愕然とする。なんと、そこに映っていたのははつみの顔だった。体が無事だったはつみに、明日香の脳を移植したのだ。明日香はアスカとして生まれ変わり、クラインの摘発のために囮となって潜入する。そしてついに君国と接触することに成功する。そこに現れたのは古芳だった。彼は単身明日香の仇を打つために組織に乗り込んできたのだ・・・・。
私評:Not Gonna Get us・・・ 大沢在昌のベストセラー本が映画化された。大沢氏自身が一番映像化して欲しかった作品というだけあって、彼自身も映画化のためにかなり尽力したようです。私は原作を読んでいないのですが、2時間の映画の中に、かなりぎっしり詰め込んであって、途中辺りは強引な展開になってしまいました。しかし、こういう映画にありがちなドロドロした陰気臭い作品にならず、スタイリッシュでカッコいい映画に仕上がっています。それは映像のカッコ良さもあり、そして出演者のカッコ良さもあり。監督はCGアート出身の西村了。そして出演者はこういう二枚目はお任せの大沢たかお、モデル出身のすごい美女佐田真由美、そして悪役はめっちゃシブイ萩原健一。また、この映画はハードボイルドであるとともに、ラブストーリーでもあるのです。そういうシーンは本当に美しい映像になっています。
HOTEL  監督:マイク・フィッギス  出演:リス・エヴァンス、サルマ・ハエック、ルーシー・リュー
Hotel  2001年 イギリス・イタリア合作
ヴェニスのリド島に佇むホテル・ウンガリア。風格のあるホテルでもあるが、なぜか怪しい雰囲気が漂う。ある夜、チェック・インした客は地下の牢屋部屋に案内された。そこで従業員との晩餐会。しかし、そこでは怪しげな肉料理が振舞われた。そしてホテルに映画の撮影隊がやってくる。シェークスピアの「マルフィ公爵夫人」を"ドグマ"映画のスタイルで撮影しようとしている。しかし、その裏では数々の思惑が絡み合っていた。しかも、TV局がこの撮影を密着取材すると一方的に宣言する。さっそく撮影がスタートするが、その夜監督が何者かに撃たれ、「目だけは動く」不思議な昏睡状態になってしまう。しかし、撮影は止められない。また、出演者、スタッフがひとり、またひとりとホテルの地下の暗闇に連れ込まれて・・・・
私評:どんな気分なの?自分の彼女に衣装を着せて、自分より良い男とセックスさせるのって・・・・この映画ははっきりとしたストーリーを持っていません。映画の撮影をしていることと、ホテルが怪しいことが中心としてありのですが、そこに雑多な人々がどんどん首を突っ込んでは去っていく。また、とても実験的な映画でもあります。元々、ちゃんとしたシナリオもなくその場その場で役者と監督が話し合いをしながら、撮影をしていったと言うことです。しかも、セリフも即興が多いらしい。そんな中でビックリするようなきわどいセリフがバンバン飛び出してきます。これは本音なのかも? そうだとするとサルマ・ハエックが、ルーシー・リューに浴びせたあの一言は本音??監督は「リービング・ラスベガス」「セクシャル・イノセンス」のマイク・フィッギス。いつも美しい映像で私を唸らせた監督だが、今回はデジカメによる撮影。4つのカメラを同時に動かすなど、トリッキーな撮影はあるのですが・・・。出演者はジョン・マルコビッチ、リス・エヴァンス、フルロン・バロウズ、ミア・マエストロ、デイヴィッド・シュワイマー、サルマ・ハエック、ルーシー・リュー、キアラ・マストロヤンニ、ジュリアン・サンズ、バート・レイノルズなどなど、超豪華な布陣。最後に監督が役者に宛てた手紙を・・@洋服は自前です。 Aヘア及びメイク班はいませんので自分でやってください。 B輸送システムがないので自力で集合 C出演料は全員平等です。映画がヒットしたら歩合がでます。(だけど、映画は大コケ) D台本はありません Eスケジュールもしっかりと立てることが不可能です・・・・。


前回の記事も読んでね〜!



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