2001/7/9号

梅雨はどこに行ってしまったのでしょうか?連日暑い日が続いてますね。
こう言う時は、外の温度と映画館の温度の違いで体調を崩しやすいので
気をつけましょう。今週は敢えてこれをイチ押しにしました!!

パール・ハーバー  監督:マイケル・ベイ  出演:ベン・アフレック、ジョシュ・ハートネット
Pearl Harbor  2001年 アメリカ映画
今週のイチ押し作品!:少年時代からの親友同士レイフとダニー。二人は戦闘機のパイロットになる。レイフは自ら志願しイギリス軍空軍飛行隊を決意する。彼には恋人のイヴリンに「必ず戻る」と約束し旅立って行った。しかし、レイフは撃墜され死亡の報告がダニーに届く。イブリンを励まし続けたダニーは、いつしか彼女を愛するようになる。そしてイヴリンも・・。そしてイヴリンが妊娠を知った日、なんとレイフが戻ってきた。折りしもその時、日本軍は和平交渉を続けながらも、真珠湾への奇襲攻撃を虎視眈々と狙っていた。そして運命の日1941年12月7日、日本軍の戦闘機がオアフ島に集結した・・・・。

私評:若者たちの愛と友情を引き裂いて・・・。ハリウッドの超大作には歴史的な事件と恋愛を絡ませた作品が多いです。古くは「風と共に去りぬ」「誰が為に鐘は鳴る」「武器よさらば」、そして「タイタニック」なんかもそうですね。この映画はまさにその典型であり、ある意味お手本通りの展開を見せる。かなり史実に忠実に作られたそうですが、どうなんでしょう?ただ、この映画は20世紀の記録映画ではなく、アメリカ至上主義のエンターテイメント映画。まさにハリウッドの力を見せつける映画でした。前半の恋愛と友情シーンもベタではあるけれど、私は気に入ってます。そして圧巻は日本軍の奇襲シーン。約45分にも及ぶ襲撃シーンは、本当に壮絶だった。容赦なく降り注ぐ爆弾と銃弾。そして次々と沈められる母艦。映画史上最高の戦闘シーンだった。しかし、この映画には反戦のメッセージはあまり感じられない。 日本人の描き方にも嫌悪を抱く人もかなりいると思います。その辺りをどう捕らえるかによって、映画の評価も変わってくるでしょう。でも、「アルマゲドン」を楽しめた人は、けっこうイケル映画なのではないでしょうか?私は充分過ぎるくらい,映画を堪能しました。

ココニイルコト  監督 : 長沢雅彦  主演 : 真中瞳、堺雅人
Kokoni Irukoto  2001年 日本映画  
「好きなように生きてたら、ええんとちゃいますかぁ」・・。広告代理店に勤める志乃は不倫相手の上司の妻に手切れ金を渡され、大阪支社に飛ばされてしまう。 かなりのショックを受けるが、彼女はじっと耐えていた。初出勤の日、彼女と一緒に途中採用された男、前野と出会う。どことなくお調子者の彼だったが、初の接待で失態を演じてしまった彼女を救ってくれた。ある日、大阪支社に志乃の元上司が訪れる。動揺した彼女は会社を飛び出してしまう。そんな彼女を前野は自分の友達の店に誘った。しかし、前野は彼女の秘めた心を言い当て、逆にその事で彼女を怒らせてしまう・・・。

私評:スガシカオの主題歌が印象的だった予告編。主演は今が旬の真中瞳。けっこう、そそられる映画でした。心を頑なに閉ざし、人を信じる事を止めてしまった若い女性が、一人の男と出会い心を開いていくという話です。ちょっとした大阪ツアーも楽しめます。しかし、最後にあんなオチがついているとは・・・。途中でなんとなくは読めたのですが、ちょっと切なかった。男女を問わず、なんとなく何もかもがイヤになって、捨て鉢になってしまうことってありますよね。でも、自暴自棄になるのではなく、人との交流を止め自分の殻に閉じこもってしまった事ってないでしょうか?私は過去にそんなことがあったので、志乃の気持ちも汲み取れた。そして「ええんとちゃいますかぁ」を繰り返す、前野には最初の頃は「ちっとも、ええことあらへん」と思っていたのですが、だんだんと彼の真意も汲み取れて・・。前野役の堺雅人も、最初は不気味だったけど(笑)良かったです。骨董品屋の寝てばかりいる店主役の鶴瓶が、ラストでニヤリとさせてくれますよ。
彼女を見ればわかること  監督:ロドリゴ・ガルシア  主演:グレン・クローズ、キャメロン・ディアス
Things You Can Tell Just By Looking At Her  1999年 アメリカ映画
誰だって、孤独なのさ・・・。女医のエレインは年老いた母と二人暮し。新しい恋を見つけたようだが、彼から電話が掛かってこない。そこに占い師のクリスティーンが現れる。彼女のタロットカードはエレインの心をズバズバと当てる・・。レベッカは女性ながら銀行の支店長。3年も不倫を続け、妊娠した事に気付く。弱さをひたすら隠す彼女になぜかホームレスナンシーが付き纏う。ついにレベッカは中絶を決心するが・・。ローズは童話作家。一人息子と二人暮しだ。彼女の家の向かいに一人の男が引っ越してくる。その男性に興味を抱くローズ。そんな時、息子からショッキングな事を聞かされる・・。占い師のクリスティーンは恋人(女性)のリリーと二人暮し。しかし、リリーは病に冒され死期が迫っていた。リリーは必死にクリスティーンに触合いを求めるが、死を恐れているのはむしろクリスティーンの方だった・・。高校時代の同級生の自殺死体を調査する女性刑事のカルメンは盲目の妹、キャロルと二人暮し。キャロルはハンディこそあるものの、社交的で男性経験も豊富。そんな妹にいつも複雑な思いで化粧をし送り出すカルメン。しかし、キャロルも弱さを持っていて・・・。

私評:なんとも贅沢なキャスティングのこの映画。上には書いていませんが、その他にホーリー・ハンター、キャリスタ・フロックハート、キャシー・ベイカーという、すごい顔ぶれ。しかし、本家本元のアメリカでも公開されたのかされなかったのかが分らないくらいひっそりとやってきた映画。しかし、公開されるや口コミで、観客は増える一方。実際私が見に行った時も、満席でした。しかも、その8割以上が女性!(日本の映画は女性に支えられているのです!)一応、5つの話のオムニバスなのですが、登場人物が微妙に他の話に噛んでいたりして、おもしろいです。しかし、なんと言っても見所は、ハリウッドを代表するような名女優たちが、弱さを露呈して悩み苦しむ事でしょう。特にグレン・クローズの演じる孤独な中年女は、なんとも悲しい。ほとんどセリフがないのですが、それがまた良いんですよ。また、キャリスタの演技も素晴らしい。どうしても「アリー・My・ラブ」のイメージが強い彼女ですが、この映画では触ると壊れてしまいそうなほど、弱い女を演じています。ホーリー・ハンターのラストの崩れ方も印象的。やはり、良い役者は良い映画を作りますね! 
ニュー・イヤーズ・デイ 約束の日  監督 : スリ・クリシュナーマ  主演:アンドリューリー・ポッツ、ボビー・バリー
New Year's Day  1999年 イギリス映画
17歳の詩・・・。ジェイクとスティーブンは友達同士。金持ちの息子スティーブンと生活保護を受けているジェイクは生まれ育った環境こそ違うものの、お互いに惹かれあっていた。16歳のクリスマスを先生や友達と一緒にスキー旅行に出かけた彼らは最高の時を過ごしていた。しかし、悲劇が起こった。突然の雪崩が彼らを飲み込んだのだ。生き残ったのはジェイクとスティーブンの二人だけ。そして二人は来年のニュー・イヤーズ・デイまでに12の約束ごとをやり遂げ、その日に一緒に死ぬ約束をする。そして次々と課題をクリアして行く彼ら。 そして次の新年が近づいてくる・・・。

私評:高校時代に私が好きだったグループでNSPというバンドがあった。こてこてのラブソングを歌う彼らの曲に「17歳の詩」という曲があり、私はめっちゃ好きだった。映画を観終って一番最初に思ったのが、この『17歳の詩』だった。行き所のない若さをもてあまし、大人と子供の境界線で悩み苦しむ17歳。しかし、この映画の二人は自分たちの人生のエンドマークを定め、それに向かって爆走する。それが逆に生きる事の意味を学ばせていく。ところが最後の最後で、ある秘密を知らされ・・。辛い思いをしながら生きるのと、幸せなまま死ぬのとどっちが幸せか?なんて答えは、誰にもわからない。きっとこの映画には、明確な答えなんてないのだと思う。映画のラストも、この後どうなるのか?という疑問符を残す終わり方だし・・。そして彼らが最後にとった行動の是非も、それぞれに違うと思う。色んな人の意見を聞いてみたくなる映画です。
ディスタンス  監督:是枝裕和  主演:ARATA、寺島進、夏川結衣
Distance  2001年 日本映画
僕たちは被害者なのか、加害者なのか・・・・。3年前に世間を騒がせたカルト教団による、大量殺人事件。しかし、その信者は焼かれその灰は湖にと撒かれた。事件から3年後の今日、加害者の遺族の4人が山道を上っていく。毎年恒例になった現場の湖での供養だ。兄を亡くした勝、妻を亡くした実、夫を亡くしたきよか、そして姉を亡くしたという敦。しかし,帰り道で思わぬハプニングが彼らを待っていた。何者かに車を盗まれてしまったのだ。途方に暮れる4人。そしてやはり、供養に来ていた信者の生き残りの坂田も、バイクを盗まれてしまう。仕方なく坂田の案内で当時、信者たちが利用していた小屋で1夜を明かすことにした・・・。

私評:「ワンダフルライフ」の是枝監督の最新作。日本版ドグマとでもいうべきか、映画は手持ちカメラで撮影され、音楽は使わない。もちろん、セットも使用せずロケのみ。そして彼特有の,インタビュー形式を多く取り入れて物語は進んでいく。そして4人の遺族たちの現在、そして家族の教団への入信,出家の過程が,少しずつ明らかになっていく。そして浅野忠信演じる坂田によって、教団の生活が語られる。この辺りの持って行き方が,実にうまい!もちろん登場する役者たちの演技も素晴らしいが。監督の演出には唸らされた。しかも、役者たちは自分のパート以外は知らされておらず、他の役者たちとどう関わっていくのが分からないまま,演技をさせられたという。おもしろいですね。主演のARATAと伊勢谷友介は「ワンダフル・ライフ」でも,イイ味を出してましたが、今回も良かった。そして新たに寺島進、夏川結衣、浅野忠信が加わった。脇役人もりょう、遠藤憲一、山下容莉枝ら,個性派揃い。特に私の好きな夏川結衣は良かった〜。そして一人異彩を放つ寺島進も,相変わらずのキレ方でめっちゃインパクトがありました。淡々と語られる登場人物の心情が、こんなにうまく描かれた作品は,なかなかお目に掛かれない。そして最後に一つの謎が明らかになるので、それもお楽しみに。
 レクイエム・フォー・ドリーム 監督:ダーレン・アロノフスキー  主演:エレン・バースタイン、ジャレッド・レト
Requiem For A Dream  2000年 アメリカ映画
脳髄に直撃の映像!・・・孤独な未亡人サラはチョコレートが大好き。TVを見ながらチョコを食べている時が至福の時だ。そんな彼女に1本の電話が。いつも見ているTV番組に出演の依頼が来たのだ。さっそく,お気に入りの赤いドレスを着ようとしたが、太ってしまい着れない! さっそくピルによるダイエットを開始したが・・・。彼女の息子のハリーは友達のタイロンとヘロインの売人として一儲けをしようと企む。しかし,ビジネスはうまく行かず恋人のマリオンともども、ドラッグ中毒になっていく。そしてマリオンはドラッグ欲しさに体を売り始める。そしてハリーとタイロンも破滅の道を歩み始める・・・。


私評:「π」の監督ダーレン・アルノフスキーの最新作です。繰り返し使われるドラッグの映像、TVの映像が脳を刺激する。そしてなんとも言えない、心地良いテンポで物語が進んでいきます。(人によってはめちゃ嫌がると思いますが・・。)でも、私的にスゴイと思うのが、こんなハイパー・パンク・ムービーにアカデミー賞女優の、エレン・バースティンが出演していること!チョコとテレビ好きのおばちゃんから、ドラッグ中毒になり、どんどん現実と離れていく役なのですが、鬼気迫るものがありました。やっぱり,彼女はすごい!また、スゴイのがジェニファー・コネリー(ヘア・ヌード付き!) 彼女がどんどん堕落していく様が恐ろしいです。この映画は「夏」「秋」「冬」の3部作になっているのですが、それぞれ「平凡な日常」、「狂い出した歯車」、「破滅への道」になっています。 繰り返し見れば、色々な謎が見つかりそうな映画です。しかし、オススメして良いものかどうか・・・???


前回の記事も読んでね〜!



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