2002/6/23号

今回は良い作品ばかり。『富江』以外はイチ押しにしても良い作品です。
違う意味で『富江』もイチ押しなんですけど・・・

暗い日曜日  監督:ロルフ・シュベール  出演:エリカ・マロージャン、ステファノ・ディオニジ
Gloomy Sunday  1999年 ドイツ/ハンガリー映画
今週のイチ押し:1930年代末、ラズロと彼の恋人イロナはブタペストに一軒のレストランを開く。ラズロの拘りから、店にはピアニストを置くことにした二人はさっそく、ピアニストのオーディションを開く。オーディションに遅れてきた無名のピアニスト・アンドラーシュの悲しくも美しい旋律に心打たれた二人は彼を雇い入れる事にした。店はイロナの人気も手伝い大繁盛する。イロナの誕生日の日にアンドラーシュはプレゼンとの代わりに自作の曲をプレゼントした。「暗い日曜日」の誕生だった。やがて、イロナとアンドラーシュに惹かれあうようになる。それに気付いたラズロが選んだのは、3人での愛の共有だった。アンドラーシュの作った「暗い日曜日」はレコード化され、世界中で大ヒットするが、このレコードを聞きながら自殺する事件が相次ぐ・・・・
私評:恋の嘆きつぶやいては、ただ一人むせび泣く・・暗い日曜日・・Gloomy Sunday・・・・シビレタ〜。悲しくも美しい大人のラブストーリーでした。理不尽な男たちと女の関係を見事に描いたシナリオ、美しい映像、音楽、そして最高の演技陣。映画の完璧さに私はシビレタ!特に人物描写、そして彼らの微妙な心の動き、葛藤の描き方は素晴らしかったです。もちろん、この話はフィクションなのですがこの音楽にまつわる自殺者の話は本物。何度も映画の中でこの曲を聴かされるのですが、愛する人に捧げた曲が、死に行く者へのレクイエムになってしまったと言うのは、本当に皮肉な事ですよね。イロナを演じるエリカ・マロージャンが美しい。彼女が美しいからこそ成立するストーリーでもあります。彼女のアブナさが男たちを翻弄するんですね・・。あまりに悲しい展開に心臓を掴まれたようで、最初に見たときには息苦しくなってしまいました。ラストは完璧な締めくくりで、これまた唸らされた。これから先、何度も見たくなる映画ですね。
海辺の家  監督:アーウィン・ウィンクラー  主演:ケビン・クライン、クリスティン・スコット=トーマス
Life As A House  2001年 アメリカ映画
今週のイチ押し:建築デザイナーのジョージは一人暮らし。別れた妻との間に息子がいるが、二人の間には深い溝が横たわっている。そんなある日、彼は長年勤めた仕事を解雇されてしまう。しかも、会社を出た途端に倒れ、病院に担ぎ込まれる。病名は癌。余命は数ヶ月だと宣告される。病院のベッドに一人横たわっていた彼は、淋しさと一緒に今までの人生のむなしさを噛み締める。退院した彼は、元の妻を訪ね、息子のサムと一夏を過ごしたいと申し出る。そして残された短い時間を、海辺の家の建築に費やすことにした。ドラッグに溺れる息子との共同作業が進む中、元の妻、そして彼女の夫、子どもたち、近所の人々を巻き込み、家は着々と完成に近づいていた・・・
私評:今日以外の、今までのことは全部謝る!泣きました・・。最近本当に、涙腺が緩い私。歳をとったせいかな??でも、この映画の涙は癌に冒された父親の悲劇だけではありません。もう一つの見所は、やはり息子との交流ですね。最初は「強引に押しつける愛」のように思えたのですが違うのです。普通の会話が、こんなにも力があるなんて・・・。しかも、笑いもたくさんあるんですよ。ケビン・クラインはもちろん素晴らしいのですが、息子役のヘイデン・クリステンセンがすごく良いです。母親役のクリスティン・スコット=トーマスとの駆け引き、そしてラストの物も言わずとも理解し合うシーンは最高でした。ケビン・クラインは本当に病人のようで、見ていて痛々しかったです。しかし、彼が病床の床から見た物・・・,このシーンはみんな泣くでしょう。でも、見終わった後がなぜか清々しいのです。本来なら悲しいだけの話で終わってしまうのですが、この映画はちがう。ジョージが人生の最後になし得た奇跡を目撃して下さい。これはきっと見る人に力を与える映画だと思いますよ・・・。
セッション 9  監督:ブラッド・アンダーソン  出演:ピーター・ミュラン、デヴィッド・カルーソ
Session 9  2001年 アメリカ映画
マサチューセッツ州ダンバーズに実在する精神病院の跡。丘の上のその病院に足を踏み入れた男たちがいた。この病院を公共施設にするため、改修の業者の男たちが仕事を請け負ったのだ。それぞれにトラウマ、悩みなどを抱えた男たちはこの廃墟の中で、目に見えぬ恐怖に出会う事になるのだ。リーダーのゴードンは会社の経営がうまく行かず、しかも妻との間にも何かあるらしい。ゴードンのパートナーのフィルはゴードンの異常に気付いていた。しかし、この仕事の褒賞の高さから、仕事を無事に終わらせるための焦燥感に煽られる。マイクは優秀な父を持ちながらドロップアウトした過去を持つ。ハンクはフィルの女を奪い一緒に暮らしている。若いジェフはゴードンの甥で、初めて仕事に加わった。しかし、彼は暗所恐怖症・・・。この男たちの間に、「疑惑」が生まれた時から、彼らのバランスは加速度をつけて崩れ始める・・・・・

私評:ここで何してる・・・・。先日見た「es」といい、この映画といい、意欲的なホラー映画が現れました。どちらの怖さも、血や内臓を飛び散らせる映画ではなく、人間の心の奥底に潜む『影』がじわりじわりと襲いかかるのです。この映画の中でも『影』は要所要所に効果的に現れ、私の心臓を鷲掴みにしました。暗闇の恐怖を久々に味わいました。前半はちょっとダルイ感じがしたのですが15分も経った頃にはドキドキ。彼らの中の誰かが犯人なのか?それともこの建物に潜む邪悪な何かなのか?それは見てのお楽しみと言うことで。この映画のタイトル「セッション9」とはカウンセリングの番号です。マイクが見つけた録音テープに隠されていた驚愕の事実・・・・。オチも最高でした。主演はケン・ローチ監督作品の常連ピーター・ミューラー。彼がスゴイ演技を見せますよ。監督は「ワンダーランド駅で」でのブラッド・アンダーソン。まったく違うアプローチの作品ですよね。最近主流のデジタルカメラを駆使した映像は、ちょっと粗くてなんとなく「ブレア・ウィッチ」を思い出しました。低予算ならではの苦労も垣間見れますが、その辺りは演技陣と演出で十分補われています。怖い!!
キル・ミー・レイター  監督:ダナ・ラスティング  出演:セルマ・ブレア、マックスー・ビーズリー
Kill Me Later  2000年 アメリカ映画
銀行勤めのショーンは妻子ある上司と不倫中。一行に進展しない二人の中にはもう,うんざりしていた。しかも、その日上司の妻の妊娠を知らされる。幸せそうな二人を見たショーンは屋上へと駆け上った。時を同じくしてチャーリーと二人の男がショーンの銀行に強盗に入る。万事計画通りに済んだ彼らの目の前にはなんと警察官が・・。飛び降り自殺をしようとしていたショーンを見つけた人が、警察に通報したのだ。チャーリーは屋上へと一目散。ショーンを人質に取ることにした。一緒に逃げる事を承諾したショーンだったが、彼に条件を叩きつけた。「その代わり後で殺してね」・・・・


私評:こんな所から飛び降りたら死んじゃうわ・・・だって、死にたいんだろう??・・・痛快に90分間走る続けるクライム・アクション映画。逃げる二人、追う警察のチェイスも面白いけど、やっぱり見所は二人の微妙な駆け引きですね。セルマ・ブレアは最近だと「キューティー・ブロンド」でリース嬢に突っかかるインテリ女が印象的だったけど、こういうちょっとぶっ飛んだ女も良いですよ。しかも,逃げる時の走り方がめちゃカッコイイ。こんなカッコイイ走りを見たのは「ラン・ローラ・ラン」のフランカ・ポテンテ以来です。黒ずくめの服に真っ赤なルージュが決ってます!監督は女性なんですね。すごく遊びの多い映像がテンポ良くて心地よいです。スロー、コマ送り、アイリス、反転色、時計の逆回転等など,印象的な映像がてんこ盛り。しかも、音楽の選曲がすごく良い!単館で寂しく上映中の映画ですが、これは拾い物の映画でした。ラストはちょっと笑えた・・・。
富江 最終章〜禁断の果実〜  監督:中原俊  出演:安藤希、宮崎あおい、國村隼
Tomie Final Chapter  2002年 日本映画
高校生の登美恵は、大人しく目立たぬ少女。学校では3人の不良の使いっ走りで苛められてばかり。そんな彼女の唯一の楽しみは小説を書くことだった。ある日、彼女は美しい少女と出会う。彼女の名前は富江。同じ呼び名の富江に登美恵はシンパシーを感じ、しだいに惹かれて行くのだった。ある日、登美恵は富江を家に招いた。登美恵の父、和彦は富江を見てショックを受ける。彼が見たのは25年前、自分が大好きだった女、そして親友によって惨殺された富江だった。富江は25年前の自分たちに戻ろうと言い寄る。まだ、登美恵がいなかった頃の二人に戻ろうと・・・・・・。

私評:「お父さんが氷屋で良かった。」「俺も初めてそう思ったよ」・・・・伊藤潤二の傑作ホラーマンガ「富江」の第4弾です。私は全部劇場で見ているのですが、前作「富江 Re-birth」がめちゃ怖かった。今回は主演に『ガメラ3』や『妖怪伝さくや』で印象的な演技を見せた美少女、安藤希と『ユリイカ』『害虫』で絶賛された宮崎あおいを配し、しかも監督は『12人の優しい日本人』『コンセント』の中原俊と言う事で、期待度は200%。しかも、映画の前にこの3人の舞台挨拶まで見てしまったものだから、テンションは最高潮!でも、「怖さ」と言う点ではイマイチでしたね。しかし、面白いのが「富江」と「登美恵」のアヤシイ関係。まさに「ロリ・レズ」なんですね。これは監督も言ってました。ストーリー演出も、かなりツッコミ所が満載で映画の後の粗探しには事欠かさないかも??中原監督もホラーは苦手なんですね・・。主題歌は安藤希が自ら作詞をし(中原監督と共同で)歌っていますが、これがまた良い歌なんですよ。二人の可愛い女優は今後が期待されます。


前回の記事も読んでね〜!



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