2003/6/1号

今週も大作はないものの、面白い作品にいっぱい出会えました。中でも
イチ押しの2作品は、かなりお気に入りです!!

ブルークラッシュ  監督 :ジョン・ストックウェル  出演:ケイト・ボスワース、ミシェル・ロドリゲス
Blue Crush  2002年 アメリカ映画
今週のイチ押し:ハワイ在住のアンはサーフィンの才能に恵まれていたが、数年前の事故がきっかけで恐怖心が心に住みついてしまった。彼女の親友のエデンはアンの才能を信じ、2週間後に行われるサーフィンの大会「パイプライン・マスターズ」に出場するアンに期待を寄せていた。そんなある日、彼女たちが勤めるホテルにフットボールの花形選手たちが、バケーションで訪れる。スター選手のマットと恋に落ちたアンはサーフィンへの熱が冷めてしまう。そしてついに大会の日がやってくる。オアフ島のノースショアは、巨大な波が次々とパイプを形成していく、サーファーにとっては伝説の地。しかし、一歩間違えば命をも落としかねない。次々と波に飲み込まれていくサーファーたち。そしてついにアンが大波に挑む・・・・。
私評:これはあなたの波よ。乗りなさい!!・・・・・これは若い女の子たちの青春映画です。サーフィンを通して少女が成長していく様は、見ていて爽快です。しかし、この映画の主役は彼女たちではなく、ノースショアの波そのものかもしれません。10mはゆうにあろうかという巨大な波。しかも、サーファーたちはその波のトップからボトムへと飛び込み、そしてパイプラインを潜り抜けるのです。そのシーンの迫力はすごいです。映像も物凄いのですが、音がまた凄いので、この映画は音響の良いところで見ましょうね。主演はケイト・ボスワース。彼女はこの映画のためにサーフィンを特訓したとのこと。そして彼女の親友エデンを演じるのは「バイオハザード」のミシェル・ロドリゲス。今回もイイ脇役を演じております。アンは果たして自分の中の恐怖を乗り越えることができるのか?そして大会の勝敗の行方は??これは言えませんので・・・・。映画を見終えた後の、あの何とも言えない爽快感!!スポーツ映画ならではの感動があります。
ホーリー・スモーク  監督:ジェーン・カンピオン  出演:ケイト・ウィンスレット、ハーヴェイ・カイテル
Holly Smoke  1999年 オーストラリア=アメリカ映画
今週のイチ押し:若く美しい女性ホーリーは友人とインドを旅して、ヒンズー教の導師に魅せられ彼に傾倒してしまう。ホーリーを一人残してオーストラリアに戻った彼女の友人は、ホーリーの家族にその事を打ち明けた。心配した家族は母親を現地に送り込み、父親が危篤だと嘘をついて彼女をオーストラリアへと連れ帰った。そしてアメリカから「カルト会脱会請負人」のPJを雇い入れる。彼は3日間で彼女の洗脳を解くという。そして砂漠の離れ屋で二人の戦いが始まる。PJの思惑通りの2日間が過ぎ、彼は自信を持っていたが3日目から形勢が異なってくる。プロフェッショナルのPJの心の中で、今までになかった葛藤が生まれ、ついには欲望を開放してしまう。そしてホーリーとPJは「二人の間に生じた問題」の答えを模索する・・・
私評:「俺を罵れー!!」「中年のスケベおやじ!!ふざけるんじゃないわよ!」・・・オーストラリアの女性監督ジェーン・カンピオンの作品です。しかし、彼女は主演の女優を本当に裸にしてしまう。身体だけではなく、心まで剥き出しにするのです。「ピアノレッスン」のホーリー・ハンター、「ある貴婦人の肖像画」のニコール・キッドマン、そして今回はケイト・ウィンスレットを剥き出しにされてしまった。しかし、ケイトはこの監督の演出に見事に応えている。カンピオンの作品に通じているテーマは「女性の愛と性」。剥き出しになった欲望、そして心のどこかに隠していた本能を開放するとある人は強くなれるが、ある者は堕落してしまう。そこで初めて生まれる「愛」や「やさしさ」もあるんですよね。この映画のホーリーはある答えを見つけるのですが、それは彼女を思い切り傷つけると同時に、強くしたのです。そして予期せぬこの事実にすっかり惑わされ、そしてついには自我を忘れていくハーベイ・カイテルが、またすごい演技をします。まるでカンピオン監督の女性としての怒りの矛先が、すべて彼に行っているような気がしました。ハーベイのファンにはちょっとショッキングでさえある設定です。ケイトはこの映画でもしっかり全裸になっております(笑)。彼女が脱がなかった作品って、もしかして「エニグマ」だけ??しかし、1999年の映画が、なぜ今頃まで公開されなかったのでしょうか??
シェフと素顔と、おいしい時間  監督:ダニエル・トンプソン  出演:ジャン・レノ、ジュリエット・ビノシュ
Decalage Horaire  2002年  フランス映画
パリ、シャルル・ドゴール空港。ミュンヘンに向かう飛行機で飛び立ったフェリックスは悪天候のために空港へ逆戻り。彼は別れた恋人の家族の葬式のためにカナダへと向かうはずだった。携帯電話で必死に恋人に言い訳をするフェリックス。一方、派手なファッションに身を包みながらも、どことなく貧乏くさい(?)ローズは暴力的な夫と別れてメキシコへと飛び立つはずだったが、空港職員のストライキにより待ちぼうけ。そんな男と女が空港でばったり出会った。携帯を借りただけのはずの二人は、どことなくシンパシーを感じ始めていた。飛行機が飛ぶまで滞在のホテルにローズを呼んだフェリックスは、彼女の天真爛漫さにいっそう心を惹かれる。一方のローズも堅物で神経質なフェリックスに・・。知り合ったばかりだからこそできる、二人の会話により、お互いがお互いの心の傷を埋めはじめる。そしてついにフェリックスの飛行機が出発する時間に・・・・。
私評:携帯の暗証番号は1954・・・・フランス映画の人気者の二人が初めて顔を合わせた。とにかくこの映画はこの二人の会話によって紡がれ、そして動いて行きます。最初私は「ジャン・レノがラブコメ??」と、ちょっと疑っていたのですが、彼は実に良いキャスティングでした。それもそのはず、この映画の脚本は当初から彼をイメージして作られたのです。一方、私がビックリしてしまったのがジュリエット・ビノシュ。アップにした髪、そしてめちゃ濃いメイク。「どこのおばさん??」って感じ。ところが、このドンくさい女のキャラがすごく好きになってしまうから不思議。しかも、めちゃめちゃ可愛いし、笑わせてくれるんですよ。そしてある事件が元で、彼女がアップにしていた髪を下ろしメークを落とすのですが・・・。その時思ったのは「あ〜、やっぱりジュリエット・ビノシュだ!」(笑)。 とにかくこの二人の会話がめちゃめちゃ面白いです。最初は全然かみ合っていないのですが、徐々に会話にリズムが出てくる。そして・・・・。これは「ちょっとおしゃれな大人のラブ・ストーリー」。公開される劇場が六本木ヒルズの映画館というのも、ピッタリな感じがします。熟年の二人の役者の絶妙な会話をお楽しみあれ〜!それとこの映画のプレスシートって、エアチケットになってるんです。これがまた、おしゃれ・・。
恋愛寫眞  監督:堤幸彦  出演:広末涼子、松田龍平
Collage of our life  2003年 日本映画
カメラマンの誠人のもとに3年前に別れた恋人の静流から手紙が届いた。彼女はNYにいるという。手紙と一緒に送られてきた、彼女が撮った写真。その素晴らしさに誠人は思わず嫉妬してしまう。そんな時、静流がNYで殺されたという噂を聞く。誠人はさっそくNYを訪ねるが、次々と不幸が彼を襲う。そんな彼に手を差し出したのは大の日本贔屓の黒人カシアスだった。彼の協力の元で、誠人は静流の家を突き止める。しかし、彼女はメキシコに出ていた。3年前に別れたときに「プロのカメラマンになったら、再会しよう」と言っていた静流を思い出す。静流の部屋で彼はアヤという女性と出会う。彼女は静流のルームメイトだという。いてもたってもいられなくなった誠人は、カメラを手に静流がシャッターを押した場所を追いかけてまわる。そして彼は悲しい事実を知ることに・・・・
私評:問題です。マヨヌードルは美味しいでしょうか??・・・ 写真ってすごく面白いですよね。最近、私はいつもデジカメを持ち歩いていて、何か面白いものがあると撮影しています。ましてや、今の時代携帯電話にカメラがついているのですからね。写真はすごく身近なものになりましたね。この映画ではそんなスナップ写真が無数に散りばめられています。しかし、この映画の広末はめちゃ可愛いです。彼女って「普通を演じる」のが上手いですよね。話し方とか動き方が、なんとも自然で普通で・・・、だからと言って下手なわけではない。今回はちょっと不思議が入った女性役で、これがまたピッタリでした。松田龍平はまだまだ、演技は下手だけど、父親の優作に顔が似てきましたね。時折見せる、キリリとした眼差しはまさに父親譲り。彼もイイ役者に育ってほしいです。この映画は彼の「英語の」ナレーションによって語られていくのです。めちゃ下手な英語が、最初は気になったのですが、途中から気にならなくなりました(笑)。あと、映画全体の雰囲気、そして堤監督お得意のシュールなギャグも実に良いのですが、無駄に長い銃撃戦はつまらなかったです。しかし、後はどこを切っても面白い映画でした。なかでもNYのツインタワー跡のシーンとかもすごく印象的。しかし、やはりこの映画の一番の見所は写真の被写体の広末です。
ダブル・ビジョン  監督:チェン・クォフー  出演:レオン・カーファイ、デヴィッド・モース
Double Vision  2002年 香港・台湾・アメリカ映画
台湾市内の大企業の社長が、うだるような暑さの中で「凍死」した。数日後、議員と不倫した女性が火の気のないところで、全身火傷で死亡。二人の身体からはカビのような菌が発見される。そしてついに第3の事件が。アメリカ人の神父が腹を割かれ、内臓を水で洗われた後に、再び戻すという残忍な殺され方をする。そこで警察はFBIの有能なプロファイラーのケビンを呼びよせる。彼の通訳になったのはホアン刑事。元々優秀な警官だった彼は以前に警察署内の汚職を告発して以来、自閉症気味。二人は捜査を開始するとケビンは現場であるものを発見する。また、事件を追うホアン刑事は社会人間学の学者から閻魔大王による死の呪いが書かれた、5つの地獄の話にたどり着く。氷、炎、腹割き、心臓抜き、そして舌抜き・・・。そして警察はある宗教団体のアジトへと乗り込むが・・・・。
私評:残念だが人間は想像以上に残忍だ・・・ソニー・ピクチャーズのアジア映画シリーズ第3弾。これは正統派ホラー映画ですね。最近流行のシリアルキラーではなく、本当に邪悪な影の力と人間の戦い。プロットは取ってつけたような箇所があるのですが、それ以上に面白い物語の展開に、私はのめり込みました。しかも、人間ドラマもしっかりと描かれているし・・。この映画の中で異彩を放っているのがデヴィッド・モース。あのでかいアメリカ人が台湾の映画に出演していること自体が不思議なのですが、これがピタリと画面に収まっている。そしてFBIでは常に「常識の範囲」で仕事をしてきた彼に、超常現象の壁が立ち塞がるところが面白いです。また、家族からも距離を置き、職場でも鼻つまみの刑事が、この事件を追いながら己自身の問題とも直面していく。この辺りの設定が面白い。そしてついに本当に邪悪なものが・・・。しかし、二つの瞳を持つ少女は本当に不気味。ショートヘアーの貞子みたいな感じがしたのですが、いかがでしょう??最後の締めは、思わずニヤリとしてしまいました。こういうオチは嫌いじゃないですよ。


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