2003/5/25号

今回は超大作はありませんが、小粒でピリリと辛い佳作が揃いました。

Bモンキー  監督 :マイケル・ラドフォード  出演:アーシア・アルジェント、ジャレッド・ハリス
B. Monkey  2001年 イギリス映画
今週のイチ押し:ギャンググループの一員のベアトリスは、常に完璧な仕事をこなしてきた。彼女のコードネームは「Bモンキー」。しかし、仕事を終えては酒とドラッグに浸り、いつしか自分を見失いそうになっていた彼女は、この仕事から足を洗おうとする。そんな時、彼女が出会ったのは小学校の教師で、夜は入院患者のために病院でDJをしているアランだった。アランは彼女を一目見て恋に落ち、ベアトリスも彼の一途な思いを受け入れ、二人は愛し合うようになる。しかし、以前の仕事仲間のポールが金をくすねた事で、ギャング団のボスの怒りを買い、その怒りはベアトリスにまで及んできた。全てを投げ捨てアランとベアトリスはロンドンを捨て田舎町へと逃げるが、フランクの魔の手はここにまで及んできた・・
私評:本当の名前はベアトリーチェ。英語の名前は嫌いなの・・・・この映画を見ていてまず浮かんできたのは、リュック・ベッソンの名作「ニキータ」です。しかし、このヒロインは運命を受け入れることなく、必死に愛に生きようとするところが良いです。しかも、見るからにパンクな女が真面目を絵に描いたような男にどんどん落ちていくところも、私的にはすごくポイントが高いです。そのパンクな女を演じるのはイタリアホラー映画界の巨匠、ダリオアルジェントの娘アーシア・アルジェント。最近だと「xXx」でいい演技をしていましたね。(でも、「xXx」より「Bモンキー」のほうが先に作られています。)また、映画の中で彼女がバンバン脱いでくれるのも、私的にはすごくポイントが高いです(笑)。アラン役は「Mr.ディーズ」のジャレッド・ハリス。ヤク中でどんどん堕落していくポール役はルパート・エヴェレット、そしてベアトリスを変質的に愛する若者ブルーノ役はジョナサン・リース・マイヤーズ。彼らの演技もすごく印象的です。
ミッシング・ガン  監督:ルー・チューアン  出演:チアン・ウェン、ニン・チン
The Missing Gun  2001年 中国=アメリカ映画
警察官のマーは妻に叩き起こされた。うるさい彼女の声を聞きながら制服に着替える。そのとき、いつも腰のフォルダーにあるはずの銃がない!家中を這いつくまわり、息子のかばんをひっくり返すが見つからない。事の重大さに凍りつくマー。彼は前日に参加した妹の結婚式で意識がなくなるほど飲んで、酔っ払った。しかも、途中で記憶がなくなっていた。きっと。そこで銃をなくしたのだ。彼は妹夫婦を訪ね、そして式に参加した友人を訪ねるが銃はいっこうに見つからない。ついに彼は警察署長にその事を打ち明ける。職務を解かれたマーは引き続き独自の捜査を続けるが、彼の銃を使った殺人が起きてしまう。残された銃弾は2発・・・・・。
私評:20時間前に失くした?汽車なら北京まで行けるぞ。飛行機ならアメリカまで行ける。アメリカなら良いけど・・・この映画のシチュエーションは黒澤明の「野良犬」と同じなので、なんとなく比較してみてしまった。でも、この映画はすごく面白かったです。主演のチアン・ウェン他、登場人物のちょっと過剰な演技。そして不思議なシーンがたくさん挿入される遊び心いっぱいの映像。心地良いテンポ。90分足らずの映画なのですが、内容がぎっしりなのです。オープニングのクレジットが終わると、すぐに銃がないことに気づくのですが、その間3分もないのでは?あとは転がるように物語が流れていきます。彼の周りの怪しい人物たちから犯人を捜しながら、マーの苦悩をたっぷり味わってください。そして怒涛のエンディングにはちょっと感動してしまった・・。主演は「鬼が来た!」「宗家の三姉妹」のチアン・ウェン。彼って普通のおっさんって感じが良いです。監督はこれが劇場デビュー作なんですね。今までの中国映画のイメージとはまったく違う映画。思い切り楽しみました!
ブロンドと柩の謎  監督:ピーター・ボグダノヴィッチ  出演:キルスティン・ダンスト、エドワード・ハーマン
The Cat's Meau  2001年 アメリカ映画
1924年。ロサンゼルスに停泊中の新聞王ハーストが所有する船にセレブたちが集まってきた。招待されたのは(まだ芽が出ていない頃の)チャップリン、大物プロデューサーのトム・インスと彼の愛人で女優のマーガレット・リヴィングストン、英国人の女流作家エリノア・グリン、女性ゴシップ記者ロリー・パーソンズなど、総勢15名。今回のホストはハースト自身と彼の愛人のマリオン・デイヴィスだった。歌い、踊り、そして禁酒法の元であるにもかかわらず酒も飲み放題の乱痴気騒ぎの中で、ハーストはマリオンとチャップリンの関係が気になって仕方がない。そのマリオンはハーストをひたすら愛し、チャップリンを拒絶していた。一方、最近落ち目のプロデューサーのトムはハーストと手を組み、また映画制作に乗り出したいと企んでいたが、ハーストには軽くかわされてしまう。そこで彼がハーストの気を引くためにとった手段は、マリオンとチャップリンの「ネタ」を提供することだった。そしてついにハーストは堪忍袋の緒が切れて・・・。
私評:彼を殺すつもりはなかった・・・・1920年代のセレブたちが、実名で登場するだけでもなんだかワクワクしますよね。このメンバーの中でも特に有名なのが喜劇王チャップリンと新聞王ハースト。チャップリンも「黄金狂時代」の製作中で映画の中の色々なアイデアを船の中で練っているのですが、「黄金狂時代」を知っている人ならニヤリとさせる伏線がいっぱい。そしてハーストは「市民ケーン」でも題材にされましたが巨万の富を持ちながらも疑い深く、そして愛に飢えている男。彼のそんな雰囲気が良く出ています。しかし、この事件は実際に起こった事件。船の中で殺人(?)が起きたのですが、関係者が全員沈黙を通し事件は闇に葬られたのだそうです。主演はマリオンを演じるキルスティン・ダンスト。「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」でもそうでしたが、彼女はこういうコスチュームものがすごく似合う。今回のマリオン役は、まさにうってつけでした。監督は「ペーパームーン」「ラストショー」のピーター・ボグダノヴィッチ。古きよき時代のハリウッド映画のアナログでレトロなテイストをビンビン感じさせる演出は、彼らしさを感じました。女優たちの煌びやかな衣装、そして全編に流れる懐かしいジャズのナンバー。私は好きですね〜。また、この映画のジェニファー・ティリーはすごくコミカルで可愛いです。彼女も芸域が広いですね〜。
バンガー・シスターズ  監督:ボブ・ドルマン  出演:ゴールディー・ホーン、スーザン・サランドン
The Banger Sisiters  2002年 アメリカ映画
LAの場末のライブハウスで働く、元・グルーピーのスゼットは勤務態度が怠慢で仕事をクビになってしまう。くよくよしていた彼女はふとした事で、昔の写真を発見する。そしてグルーピー時代に二人で「バンガー(ヤリマン)・シスターズ」と呼ばれていた友人ヴィニーを思い出す。いても立ってもいられずスゼットはヴィニーの住むフェニックスへと向かった。途中のドライブ・インで神経質な作家ハリーを拾い、旅の道連れ&ガソリンのスポンサーになってもらう。そしてついにヴィニーの元を訪ねたスゼットは、昔の面影などまったく残していない弁護士の夫人のヴィニーを見てショックを受ける。しかも、ヴィニーはお金でスゼットを追い返そうとする。過去を封印し、良妻賢母のお手本のような女になっていたヴィニーだが、スゼットの影響を受け、彼女の中に眠っていた本能が目を覚ます・・・・??
私評:20年ぶりに見るわ。ミュージシャンたちのペニスの写真・・・ゴールディ・ホーンは御歳58歳、スーザン・サランドンは57歳。この二人はめちゃ若いですよね。ゴールディーは整形に次ぐ整形でだいぶ崩れていますが(?)、相変わらずめちゃめちゃキュート。スーザンはちょっと無理があったけど(笑)、はじけていました!この二人が60年代の伝説のグルーピーという設定が、またピッタリでしたね〜。しかも、二人の会話の中には実在のミュージシャンの名前がどんどん出てきます。ジミー・ペイジに至ってはなんと○○○の写真まで!(本物かどうかは謎ですが)そして二人が崇拝するのがドアーズのジム・モリソン。映画の中でも、もちろんドアーズのナンバーは使われています。その他にもご機嫌なロックの音楽がてんこ盛り。良いですね〜。ハリー役はこんなトボケタ役もできるのかとビックリのジェフリー・ラッシュ。彼も笑わせてくれます。そしてヴィニー長女役はエリカ・クリステンセン。私は彼女の「プール」のときのサイコなイメージが拭いきれない・・。しかもこの映画の中でもプールで・・・・??次女役のエヴァ・アムッリはスーザンの実の娘です。顔もそっくりですよ。
略奪者  監督:ルイ=パスカル・クーブレーブ  出演:ジャン=ユーグ・アングラード
sueurs  2002年 フランス映画
灼熱の砂漠を一台のトラックが疾走していく。彼らは空港で10トンもの砂金を強奪し、ある目的地へ向かって車を飛ばしていた。今回の発起人は航空管制官のノア。彼は名うてのラリー・ドライバーのハーヴェイと彼の相棒のヴィクター、そして銃の名手にしてヒットマンのシモンを雇い入れ今回の計画を実行した。しかし、あまりに個性が強い4人はトラックの中でも諍いが絶えない。特にハーヴェイとシモンはまったくそりが合わずついには憎みあうようになる。そしてついに・・・。しかし、彼らは裏切りを重ね、ついにはお互いがお互いを追うことに。灼熱の太陽の下で飢えと渇きとの戦い。道なき道に待ち構える地雷。そしてついに目的地が見えたとき、そこに残っていたのは・・・・・。
私評:ヤツは危険すぎる・・・・・ストーリーは至って簡単です。とにかくゴール目指して難関を潜り抜けて到達するまでの話。しかし、この映画のすごいところは4人の男たちの諍い。とにかくぶち切れてます。前半の30分くらいは、彼らの迫力に圧倒され、そして荒削りだけどスタイリッシュな映像に目が釘付け。しかし、だんだんとワンパターン化してきちゃうのがちょっともったいない。しかし、灼熱の太陽が彼を焦燥させ、いらだたせ、そして狂わせて行く過程はめちゃ面白いです。まっちょでクレイジーなドライバーを演じるのは「ベティ・ブルー」のジャン=ユーグ・アングラード。今までの雰囲気とは全然違うので、ちょっと見ただけでは彼とは気づかないでしょう。迫力のカーアクションを見れただけでも、十分拾い物の映画でしょう!


前回の記事も読んでね〜!



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