2003/4/12号


けっこう映画を見ているつもりなんだけど、全然追いつけない・・・。見たい映画がまだまだ山積みです。
今回もイチ押し候補が多かった中、選ばれたのは2本のアジア映画でした。

アイ  監督 :ダニー&オキサイド・パン  出演:アンジェリカ・リー、ローレンス・チョウ
the EYE  2001年 香港・タイ映画
今週のイチ押し:幼少のころ失明したマンは20歳になり、角膜移植をして視力を取り戻した。ある夜、マンは病院の隣のベッドにいる老女のもとに黒い服を着た男の姿を見た。翌日、その老女が死亡したことを知らされる。以来、彼女の目に死者が映るようになる。飛び降り自殺をした少年、書道教室の女、彼女の体をすり抜けていった少年。恐怖におびえるマンだったが、ある事件を境に恐怖から開放される。しかし、彼女を再び恐怖が襲う。そしてマンは彼女の担当医とともに、元の角膜の持ち主を探しタイへと渡る。そしてその持ち主の悲劇を知り愕然とする・・・・
私評:ボクの通信簿見なかった??・・・・パン兄弟といえば、一昨年の「レイン」がとても印象的だった。スタイリッシュで美しい映像に酔いしれた。今回彼が選んだテーマは超常現象。しかし、ホラー映画というひとつの枠では括りきれない作品になっていました。オープニングは観客の度肝を抜くようなショッキングなシーンを見せておいて、思いきり恐怖を煽る。映像も然ることながら、「音」でドッキリさせれらてしまった。このシーンで席を立つ人が何人かいました。しかし、物語の中盤は怖いながらも感動的な逸話が挿入される。そこでホッとしたのもつかの間、大興奮のラストシーンへと突入していきます。一粒で3回美味しいというストーリーはグリコアーモンドチョコの上を行く展開。これは唸らずにはいられません。そして映画を見終えた後、もう一回見たくなりました。主演のマンを演じるのは本上まなみにそっくりなアンジェリカ・リー。彼女は美しいだけじゃなくて、表情がすごく豊か。それゆえ彼女が恐怖におびえるシーンはすごくインパクトがあります。今後が期待される女優です。もちろん、パン兄弟の作品も!とりあえず、この映画のオープニングとエンディングは話さないようにと書かれているので触れません・・・・・。
クローサー 監督:コーリー・ユン  出演:スー・チー、カレン・モク、ヴィッキー・チャオ
夕陽天使  2002年 中国・アメリカ映画
今週のイチ押し:香港にそびえ立つ世界最大のIT会社のセキュリティーシステムがウィルスに侵された。会社の信用問題に関わる大事件を救ったのは「電脳天使」という謎の人物。感謝の気持ちを込め、社に招かれてやってきたのは美しい女。しかし、ウィルスを注入したのも実は彼女リンと妹のクワンの企みだった。あっという間に社長を殺害すると、厳しいセキュリティのこの会社を難なく脱出した。二人は殺し屋で今回の仕事も何者かが二人の依頼したものだった。犯行現場にはコンという女性刑事がいた。彼女は独自の視点から犯人像を割り出そうとする。ところが依頼人は邪魔になった電脳天使と、目障りなコンに刃を剥く。そして強大な悪と3人の女たちの戦いが始まった・・・。
私評:「あなたにはまだ無理よ」「私だってできるわ」・・・香港版の「チャーリーズ・エンジェル」はたまた「キャッツ・アイ」だと信じていた私。ところが、この映画は意外な展開を見せてくれます。冒頭でスー・チーがビルの最上階でターゲットを仕留めるシーンでは、「マトリックス」ばりのアクション+CGが見られます。このシーンがまた、カッコいいんですよ。砕け散るガラス、その中で縦横無尽に飛び回るスー・チーがめちゃ美しい。(顔はお笑い系なんだけど・・)そして物語は実に小気味良くサクサクと進んでいきます。途中で姉妹の過去のトラウマとなるシーンなどけっこうシリアスなシーンも多いです。しかし、このようなシーンを挿入することによって物語に深みが出て、またキャラクターに親近感を抱けます。カーアクション、銃撃戦、そしてクライマックスのヴィッキー+カレン Vs 倉田保昭の肉弾戦は迫力満点でした。出資先がソニーピクチャーズだったし、監督がトランスポーターのコーリー・ユンだったのでハリウッド色が強い作品かと思ったのですが、香港のアクション映画のテイストをビンビン感じさせてくれる映画でした。私はすごく好きな映画です。
8 Mile  監督:カーティス・ハンソン  出演:エミネム、キム・ベイシンガー
8 Mile  2002年 アメリカ映画
1995年、ミシガン州デトロイト。この街はかつては隆盛を誇ったものの暴動、ドラッグが蔓延っている。この街の都会と郊外、そして白人と黒人の境界線、それが「8 Mile Road」だ。ヒップホップのクラブ「シェルター」では毎週末ドープ(最高)・ラッバーを競うラップ・バトルが行われていた。その中でも異色を放っていたのが白人のラッパーB・ラビットことジミー・スミスだった。仲間たちと「313」というチームを作り、いつか大物になることを夢見ている。しかし、彼はプレッシャーから本領が発揮できずにいた。最近、別れた恋人のこと。トレーラー暮らしの母親と幼い妹。様々な悩みが彼を取り巻いている。ある日、彼は勤め先のプレス工場でアレックスという女と出会う。彼女はモデルになりこの街を出ることを夢見ている。そして二人は恋に落ちる。二人はお互いの夢を叶えることができるのか?そしてB・ラビットは8 Mileを超えるため、ラップ・バトルに再挑戦する・・・・・。
私評:「よーし、飲みに行こうぜ!!」「いや、俺は仕事に戻る」・・・・ヒップ・ホップ界の問題児エミネムが主演の青春映画です。先日のアカデミー賞で最優秀オリジナル歌曲賞をゲットしたのも記憶に新しいですね。この映画はほとんどエミネムの自伝と言っても良い内容です。彼はまさにこんな場末のクラブのラップバトルで技を磨いてきた。それゆえこの映画の彼はすごく輝いています。映画初出演とは思えないほどの演技と、そして存在感を見せつけます。もちろん、映画の中で彼のヒップホップも堪能できます。監督は「L.A.コンフィデンシャル」のカーティス・ハンソン。それゆえこの映画はドラマの部分でもしっかりとした作りになっていて、ただのミュージック・ビデオ的な映画とは一線を画しています。B・ラビットの母親を演じるのは「L.A.・・」でオスカーを獲ったキム・ベイシンガー。若い男に溺れ、堕落していく女を好演。こういう役者が出ていることでドラマがすごく締まりますね。そしてアレックスを演じるのは「サウンド・オブ・サイレンス」のブリタニー・マーフィ。今回の彼女はセクシーですよ〜!でも、ラップのリリックに強引に字幕をつけているのが辛いですね。オリジナルの言葉で理解できれば、面白さも倍増なのに・・・。
魔界転生 監督:平山秀幸  出演:窪塚洋介、千葉真一、麻生久美子
Makai Tensho  2003年 日本映画
徳川軍は妖術を操るという天草四郎時貞を恐れ、12万の兵を天草に送った。島原の乱。そして女、子供にいたるまで切支丹を全滅に追いやった。四郎も最後まで戦ったもののついには・・・。数年後、江戸は将軍家光の下で、平和を保っていた。しかし、徳川家康の嫡男、紀州藩主徳川頼宣は次期将軍の座を狙っていた。そんな彼の前に現れたのは島原の乱で死んだはずの天草四郎だった。四郎は頼宣の目の前で、やはり死んだはずの荒木又衛門を転生させて見せる。妖術「魔界転生」。四郎は次々と剣豪たちを転生させ、頼宣とともに江戸幕府の転覆を図る。しかし、そんな紀州藩の不穏な動きを察知した柳生十兵衛が頼宣を追う。そんな十兵衛の前に次々と魔界からの使者が立ちふさがる・・・・・。
私評:俺は俺、誰の元にもつかん。しかし、魔界からの者はすべて斬る・・・・私は山田風太郎の原作がすごく好きなんです。それゆえ、81年版の「魔界転生」も今回の映画もちょっと不満があります。でも、逆に映画ならではの面白さもあります。原作では天草四郎は転生する魔界衆の一人でしかなかったのですが、映画では思い切り主演に添えている。これは映画ならではの演出ですよね。(原作は変な妖術を使う爺さんが転生させています。)今回は原作で登場しない、意外な大物が四郎によって転生させられたりもします。なるほどと思う展開だったのですが・・・。魔界衆は荒木又衛門(加藤雅也)、宮本武蔵(長塚京三)、宝蔵院胤舜(古田新太)、十兵衛の父親柳生但馬守(中村嘉葎雄)、クララお品(麻生久美子)、そして天草四郎時貞(窪塚洋介)という超豪華な剣豪たち。対するのは柳生十兵衛(佐藤浩市)。これはちょっと時代劇を知っている人なら興奮せずにいられませんね。主演の窪塚&佐藤もすごく良かったのですが、私の目を引いたのはクララお品役の麻生久美子。今回は妖艶な悪女役なのですが、これがまた良いんです。凝った特撮とリアルなチャンバラシーンがこの映画の見所でしょう!但馬守対十兵衛、そして四郎対十兵衛の戦いは必見!
船を降りたら彼女の島  監督:磯村一路  出演:木村佳乃、大杉漣、大谷直子
 2002年 日本映画
東京の出版社に勤める久里子は、結婚を決意しその事を両親に伝えるために久しぶりに故郷の島に帰ってきた。両親は古い校舎を改造し旅館を営んでいる。しかし、その事がなかなか言い出せない。校舎のなかを歩いていた久里子は、ふと自分が小学生時代に大好きだった隆司のことを思い出す。彼は今どうしているのだろう?彼と一緒に収穫をしたみかん。愛媛に古くから伝わる鶴姫伝説と、姫が贈ったという鈴の逸話。それらが次々と彼女の頭の中に蘇ってくる。そして彼女は幼馴染の健太と一緒に隆司を探すことに。そして彼女はついに彼の居所を突き止めるのだが・・・。
私評:わが恋は三島の裏のうつせ貝、むなしくなりて名をぞわづらふ・・・・なんともほのぼのとした映画でした。舞台が四国の島というのが私にはすごく魅力的でした。しかも監督は「がんばっていきまっしょい」の磯村一路だし・・。ところが東京の上映はあっという間に終わってしまい、ビデオ待ちを決め込んでいたら出張先の福岡で見ることができました。美しい島の風景、そしてそこで紡がれていく親子の絆、そしてはるかノスタルジックな少女時代の思い出。映画を見ている間、本当に心地良かったです。ラストで彼女が再び島を離れるときは、一皮も二皮も剥けたように見えた。主演は木村佳乃。普通っぽい彼女がこの映画にはピッタリだった。そして両親を演じるのは日本が誇る名バイプレイヤー大杉漣、そしてこれまた適役だった大谷直子。久里子の叔母の美容師は、めっちゃオバサンになってしまった烏丸せつ子。幼馴染の健太役は照英。そして久里子の松山の友人は「オー・ド・ヴィ」の演技が印象的だった小山田サユリ。「がんばって・・」もそうだったけど、普通の人々の物語。それゆえ自分に近い人たちに話に感じられ、また共感もできるのでしょう。面白かったです。
リベリオン  監督:カート・ウィマー  出演:クリスチャン・ベール、エミリー・ワトソン
Equilirbrium  2002年 アメリカ映画
第3次世界大戦後、政府は人間のあらゆる感情を抑えるため、精神に作用する薬プロジウムを開発した。これを国民に毎日投薬することを義務づけ、徹底した管理国家体制を敷いた。しかも、感情を煽る芸術はすべて禁止され音楽も絵画も、そして文学も禁止されていた。こんな政府に反旗を翻す者たちもいた。感情のない人間にはなりたくない、そして人間らしくありたいと願う彼ら。しかし、反逆者は「聖職者」の異名を持つプレストンを中心とする警察に追われ厳しく処罰された。ある日、いつものとおりプロジウムを投与しようとしたプレストンは誤って薬をこぼしてしまう。仕方なく薬なしで仕事を続けるプレストンの中で、今まで薬によって抑制されていた「感情」が頭をもたげ始める・・・・・。
私評:これからが本番だ!・・・・銃と武術の型を融合させた究極の戦闘武術「GUN=KATA」。映画を見るまでは「なんじゃこりゃ?」って感じだったのですがスクリーンで見たらめちゃカッコイイ!この「GUN=KATA」のアクション・シーンも面白いのですが物語の設定もイイです。しかし、感情を抑制するためとはいえ芸術のない世界なんて私には耐えられませんね。こと「映画」と「音楽」は私の生きる糧なんで・・。しかも人を愛する感情まで抑えているんですよ。それゆえ薬が切れてどんどん人間らしさを取り戻していく主人公がすごくリアルで感情移入ができました。主演はクリスチャン・ベール。『アメリカン・サイコ』以来、マッチョ路線をひた走る彼はあのアブナイ「目」が良いんです。そしてアブナイと言えばこの人も・・。エミリー・ワトソン!今回は控えめですが、要所要所でいい演技を見せます。そしてチョイ役で登場のショーン・ビーンもいい味出しています。B級映画とバカにすることなかれ!


前回の記事も読んでね〜!



I Love Movieに戻る