2001/4/11号

映画が大好きな私も苦手な分野があります.その一つが香港映画の
ラブ・ストーリー。そして相米慎二監督作品・・・。今回チャレンジしてきましたが・・・・。

星降る夜のリストランテ  監督 : エットレ・スコーラ  主演:ファニー・アルダン、ヴィットリオ・ガスマン
La Cena  1998年 イタリア・フランス合作
今週のイチ押し作品!:ローマのリストランテ「アルトゥーロの店」は今日も大繁盛。店を仕切るのはフローラ。今日のお客の面々は、常連の老詩人、息子の学位取得の祝う母息子、派手好きの母と何かを打ち明けようとする地味な娘、一人で特別席に座った青年、一人の女性をめぐって争奪戦を開始した男たち、新作の劇について討論をする劇団員、妊娠の心配をする若いカップル、不倫中の大学講師と女生徒、日本人(?)の親子・・・。そして店の外のテーブルでは誕生祝をする若いグループ。店のなかはそれぞれの人生のドラマが語られる。今宵も店は大繁盛です・・・。

私評:こういう群像劇も楽しくて良いですね。 小さなレストランは数々のドラマを持ち込んだお客たちで溢れている。 それぞれのテーブルで語られるドラマの向こう側のテーブルでは同時進行で別のドラマがある。でも、確かにレストランてそうかもね?たった1夜の物語なのですが、この店では毎日、こうやって色々なお客がそれぞれのドラマを持ち込んでくるのでしょう。まるでレストランが大きなお鍋で、それぞれのドラマが具材。 それを煮込んで作った料理が一本の映画になっている。こういう映画の作り方ってすごく好きだ。残念なのはイタリア語が分からない事。 というのは、隣のテーブルでの会話が字幕に出ないからなんです。字幕に出ない部分でどんな会話が交わされていたのかは興味津々です。登場人物のみんなが主役のようなこの映画の中で店を仕切るファニー・アルダン、老詩人のヴィットリオ・ガスマンが印象的。そしてめっちゃ可愛いマリー・ジラン、偏屈な料理長エロス・パーニなどなど、曲者役者がいっぱいです。監督は「BARに灯ともる頃」のエットレ・スコーラ。

富江 re-birth  監督 : 清水崇  主演:酒井美紀、遠藤久美子、妻夫木聡
Tomie Re-Birth  2001年 日本映画
私評:何でレイトだけなんだ?? 美大生の英雄は美女の肖像画を一心に書いていた。震える手でナイフを手にした彼はモデルの女をめった刺しにした。目の前に横たわる彼女に向かって彼はつぶやいた「富江、愛しているよ・・」。そこに現れた英雄の友人の巧と俊一は英雄のため富江を森の奥深くに埋葬した。落ち込んでいる英雄のために、ふたりは合コンを行う。そこに遅れて現れた女の顔を見て英雄はショックのあまり自殺をしてしまう。そう、その女は昨日森に埋めたはずの富江だったのだ・・。とにかく、富江と言う女のキャラがめっちゃ怖い。「リング」の貞子も怖いけど私的には「富江」の方が上を行ってます。彼女の武器はその類稀な美貌。その美しさの前で男たちは狂気に走るのだ。そして殺したいほど彼女を愛してしまうのだが、それが彼女の目論み。富江は死んで再生し、そして増殖をする究極の生命体なのだ。お〜、怖い・・。今回の富江はシリーズの3作目。1作目は菅野美穂が、2作目は宝上舞が富江を演じたのだが、今回の酒井美紀はまさにはまり役だった。殺される間際ににっこり笑って「ウフフ・・、また会いましょう!」って言うシーンがなんとも不気味でした。そしてもう一人のヒロインは遠藤久美子。巧のガールフレンドでついには富江の毒牙に・・。「東京攻略」ではあんなに下手だったセリフもこの映画では全然OKでしたよ。低予算の中で作ったチープな特撮シーンもなかなか見応えありでした。ビデオが出たら見てね〜! 
アメリカン・サイコ  監督 : メアリー・ハロン 主演: クリスチャン・ベール、ウィレム・デフォー
American Psycho  2000年 アメリカ映画
私評:超金持ちの悩みなんて分かる由もない??ウォール街の若きエグゼクティブのベイトマン。マンハッタンの超高級フラットに住み、贅沢三昧の日々を続けている。異常なまでの潔癖症と負けず嫌いの性格は、彼の性格を少しずつ蝕んで行った。そして彼のストレスのはけ口となったのが「殺人ゲーム」。ホームレス、娼婦、そしてついには友人にまで彼の衝動はとどまる所を知らなかった・・。 この映画の原作を読んだのはけっこう前だったのですが、彼の心理をイマイチ掴みきれずにいたのですが、このように映像になるとビシビシと伝わってきますね。それはやはり主演のクリスチャン・ベールの演技の凄さでしょう。鬼気迫るというのはまさに、この演技を言うのでは??そして女性監督のメアリー・ハロンならではの繊細で美しい映像もこの映画の見所ですね。オープニングのレストランへと流れて行く展開は唸らされた〜!!そして彼を囲むあやしい女たち。彼の婚約者役はリース・ウィザースプーン。いかにも世間知らずのワガママお嬢さまと言った役どころがピッタリ。そして密かに彼に憧れる秘書役はクロエ・セヴィーニ。地味な役どころではあるのですが、彼女はとても気になる・・。そしてこの映画の中で一番ノーマルに見えるのがウィレム・デフォー(笑)。前半のかなりシニカルでブラックな笑いと、後半の畳み込みはとても良いバランスになっていると思います。でも、ラストのオチはちょっと・・・。 
もういちど  監督:ポール・コックス  主演:ジュリア・ブレイク、チャールズ・ティングウエル
Innocence  2000年 オーストラリア映画
私評:予告編に騙された!その@・・・。70歳が近づいたクレアの元に1通の手紙が届く。差出人は50年前に愛し合った初恋の相手アンドレアスだった。久しぶりの再会を果たした二人は昔話に花を咲かせ、語っているうちにいつしか昔の気持ちを取り戻していった。アンドレアスはすでに妻をなくしていたが、クレアには45年も連れ添った夫がいた。しかし、クレアはアンドレアスへの気持ちを押さえる事ができなくなる。アンドレアスは末期ガンに冒されていたのだ・・・。ラストは意外な展開でちょっとビックリ。予告編に騙された〜!そう言う意味ではこの映画の予告編って実に良くできていたと思う。クレアを演じるジュリア・ブレイクは本当に美しいおばあさん。美しさと同時に長年積み重ねた知性と気品を兼ね揃えている。私は後で知ったのですが、この映画で夫婦を演じるジュリアとテリー・ノリスは本当の夫婦なんですね。実際の夫婦が妻の不倫に悩むというキャスティングは、リアリティーを醸し出している。残り少ない人生の最後の最後で妻に裏切られたと思う夫が、実に可哀相で・・。しかも、黙って不倫を続ければ良いものをわざわざ夫にそのことを告げるなんて、あまりに残酷過ぎる。クレアとアンドレアスが愛を深め、幸せな顔をすればするほど、クレアの夫のジョンが不憫に思えてしまった私は、ちょっとこの映画のテーマにノレなかった・・・。ラストの教会でアンドレアスがパイプオルガンを弾き、クレアが踊るシーンはとても好きなんですけど・・・。
どつかれてアンダルシア(仮)  監督:アレックス・デ・ラ・イグレシアス  主演:サンティアゴ・セグラ、エル・グラン・ワイオミング
Niki and Bruno  1999年 スペイン映画
私評:予告編に騙された! そのA・・・アンダルシアの片田舎で出会ったニノとブルーノ。場末の飲み屋の歌手だったニノ、そしてその店の従業員だったブルーノは息投合し、二人で一旗上げようとテレビ局のオーディションを受ける。彼らを見てピンときた怪しげな男フリアンに誘われ立った初舞台でブルーノはニノを思わず「どついた」・・・。すると会場は大爆笑!以来、彼らはどつき漫才で一世を風靡し超人気者になるが、しだいに二人の仲は悪くなり、ついにはお互いを憎み合うようになる・・・。あの怪しげな予告編で、歌いまくり踊りまくっていた二人のシーンは映画にはまったく登場しない。全編大爆笑の映画を期待していた私は、まったく違う展開にちょっと面食らってしまった。しかし、それは良い意味での裏切りで映画自体は、しっかりした人間ドラマに仕上がっていた。 もちろん笑えるシーンもたくさんあるのでどうぞご安心を!ニノとブルーノのどつき漫才も笑えます。しかし、この映画のポストカードはめっちゃ笑える。これくらい映画の中身と本編がかけ離れた宣伝をした映画があっただろうか?でも、私は充分楽しみましたよ。
風花  監督:相米慎二  主演:小泉今日子、浅野忠信
Kaza-hana  2000年 日本映画
私評:寂しい男女のさ迷う心の行き場は??北海道に子供を預け東京で風俗嬢をしているゆり子と、泥酔したうえ万引きをして謹慎処分を受けている官僚の廉司。彼は酔った勢いでゆり子と北海道に同行すると約束した。性格も環境もまったく違う二人の珍道中が始まる。しかし、娘に会えないゆり子、そして旅行中に解雇を言い渡された廉司は孤独と寂しさを抱えながらお互いに寄り添っていく・・。相米慎二監督得意の,アドリブをバシバシ効かせた長廻し撮影が私は苦手だ。特にそういうシーンには役者の技量が要求されるが、今回の二人はちょっと役不足だったようだ。しかし、オープニングの満開の桜。雪の平原のシーン、そして迎える夜明け・・。なんとも美しい映像でした。 小泉今日子,浅野忠信の二人は”絵的”にはこの映画にピッタリ。アンニュイな雰囲気の小泉今日子は、人生の辛苦を知り尽くし,疲れ果てた雰囲気がピッタリ。 浅野忠信は・・・・。 クライマックスの北海道の平原のシーンは神秘的ですごく好きだ。浅野忠信は雪の中で水に入ったり上着を取ったり、小泉今日子は雪の上に寝そべったり・・・。寒かったでしょうね。
花様年華  監督:ウォン・カーウァイ  主演:トニー・レオン、マギー・チャン
In the mood for Love  2000年 香港映画
私評:ウォン・カーウァイはやっぱり苦手です・・。1962年、香港。新聞社に勤めるチャウと秘書をしているチャンは偶然アパートの隣人同士になる。お互い妻と夫を持つ身の二人は貞淑な生活を送っていたが、お互いの妻と夫が事もあろうに不倫をしている事を知る。次第に時間を共有するようになった二人は、罪悪感に苛まれながらもお互いに惹かれ合っていくのだった・・・。「欲望の翼」「恋する惑星」「ブエノスアイレス」と3つとも好きになれなかった私にとって、ウォン・カーウァイは鬼門でした。今回の「花様年華」は昨年の東京国際映画祭でも高い評価を得て、見た人たちの評判を上々だったのでとても期待していたのですが、やっぱり私の肌には合わなかった・・・。 確かに映像の美しさ、そして大胆なカメラワークなど、映像を見る限りは彼のこだわりが理解でき、唸らされる部分も多かったのですが、二人のやり取りがどうも私の理解を超えているんです。二人の会話や逢引きのシーンは見ていてイライラしてくるんですよね。しかし、この映画の評価が高いと言う事は納得できます。ただ、単に彼の映画が私の肌に合わないだけなんです・・。もう一つ苦手なトニー・レオンはこの映画では全然鼻につかなかったです。煙草の煙を燻らせながら、二人の愛のゆくえに悩む彼の姿はとても絵になっていた。そしてあの色っぽいチャイナドレスに身を包んだマギー・チャンもとても良かったです。残念ながら私はウォン・カーウェイ映画とはこれで「さようなら」です・・・。


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