2001/3/25号

2週間分をアップします。イチ押しにしたい映画がいくつもあったのですが
涙を飲んで2つにしました。 こんなにたくさんの良い映画と出会えて幸せです。

スターリングラード  監督 : ジャン・ジャック・アノー  主演:ジュード・ロウ、ジョセフ・ファインズ、エド・ハリス
Enemy at the Gate  2000年 アメリカ・ドイツ・英国・アイルランド
今週のイチ押し作品!:1942年泥沼化する戦争の中、ヴァシリはスターリングラードの激戦地に送られる。銃弾の飛び交う戦場で充分な武器もなく若者たちは解き放たれた。ヴァシリはやっとの思いで手に入れたライフルでドイツ兵を抹殺。その腕前は天才的だった。ヴァシリの才能を買った青年将校のダニロフは、ヴァシリをヒーローに祭り上げ士気の落ちたロシア軍のカリスマ的存在に仕立て上げた。一人、また一人とドイツ兵を撃ち抜くヴァシリ。そして彼は運命の女ターニャと出会い恋に落ちる。 その頃、ドイツ軍もヴァシリを撃たんと恐るべき刺客を差し向けた・・・。 

私評:スゴイ映画だった。思わず言葉をなくした。オープニングのスターリングラードへ渡るボルガ川のシーンはあの「プライベート・ライアン」も凌駕するほどの迫力だった。敗戦色の濃かった前半は、死に行く若者たちの絶望と苦悩が画面から滲み出ていた。その恐ろしさたるや・・・。しかし、この映画のスターたちは本当に素晴らしかった。 主演のジュード・ロウは今までの彼の映画の中でも最高。そして将校役のジョセフ・ファインズ、ターニャ役のレイチェル・ワイズ、狂気のスタ−リングラード地区指揮官のボブ・ホスキンス、そしてドイツの冷徹なスナイパーのエド・ハリス。彼ら全てが本当に素晴らしい演技を見せてくれた。爆撃シーンのド迫力で、思いきり興奮させてくれたあと、二人のスナイパーの静かな戦いが始まる。 息詰まるふたりの男の戦いはこの映画の真の見せ場でしょう。 また、このふたりがめっちゃカッコ良いんだ。 制作費8500万ドルを注ぎ込み、こんな素晴らしい作品を作り上げたのは「セブン・イヤーズ・イン・チベット」のジャン・ジャック・アノー。 やはり彼も天才だった・・。 劇場公開が始まったらまた観に行きます!!

サトラレ  監督 : 本広克行  主演:安藤政信、鈴木京香、八千草薫
Satree-Lex  2001年 日本映画
週のイチ押し作品!:自分の心が喋らなくても人々に伝わってしまうと言う不思議なの力を持った「サトラレ」。しかし、彼らはそんな能力の裏にはとてつもない才能を隠し持っていた。 彼らは人類の大きな貢献をする為に国から、彼ら自身が「サトラレ」とは気づかれないように厳重に保護されていた。里見健一もそんな「サトラレ」の一人。彼の能力を最大限に活かすよう、彼のもとに精神科医の洋子が派遣された。初めて出会った「サトラレ」に戸惑いを隠せない洋子だったが、徐々に彼の人間性、そして純粋さに触れて・・・。
私評:めっちゃ泣きました。この映画は3つのパートに分れている。まずは「サトラレ」とは何か?そしてどのような対応が取られているのかを、面白おかしく描いている。そして次はそんな彼らの不幸。「サトラレ」であるが故に人々からは敬遠され、煙たがられるが彼にはそんな理由がわかる由もない。そんな彼の「自覚していない」不幸を傍目から見守りながら、ある種の「同情」を抱く洋子。彼女のセリフの中の「見えない檻」と言うのが、その全てかも・・。そして迎える感動のクライマックス。安藤政信は良いですね〜。本広監督の「スペース・トラベラーズ」でも、すごく印象的だった。そして素晴らしいのがふたりの女優。まずは、鈴木京香。彼女のセリフってすごくストレートで説得力がある。健一の気持ちをすごく理解してしまった彼女が、どう言う態度をとるかはこの映画の見所です。そして健一のおばあちゃん役の八千草薫。ラストの桜の下での彼女の顔は素敵だった・・。本広監督らしい、お遊びを探すのもこの映画の楽しみかも??「スペトラ」でも登場した、ぬいぐるみの熊さんは、ちょっとウケました。そして鈴木京香が飲んでいたビールが「モルツ」だったり・・。 笑いと涙と感動が一度に楽しめるこの映画。 ぜひ、また見てみたい!クライマックスの繰り返し繰り返し聞こえてくる健一の心の声を聞きながら、私は涙を堪える事ができませんでした・・・。
アタック・ナンバー・ハーフ 監督 : ヨンユット・トンコントーン 主演:
Satree-Lex 2000年 タイ映画
私評:この映画はタイに実在し、しかも国体で優勝したチームのお話。バレーは上手いけど、「オカマ」だという理由からチームに入れてもらえないモンとジュン。しかし、新しいバレーボールチームの募集を見て、ふたたびチャレンジし、見事に選手に選ばれた。その監督はなんと「おなべ」。 モンとジュンは彼らの「オカマ」のバレー友達を呼び集めてなんとかチームができあがった。チームは連戦戦勝。全てが順風満帆のように思えたが・・・。信じられないような事がこの世にはあるんですね。原題のSatree-Lexとは、このチームの名前で「鋼鉄の淑女」の意味です。 もう、この映画のおバカさには脱帽。 もうとにかくめっちゃ明るい映画。 でも、それだけではなく夢と希望がたくさん! そしてスポーツ映画特有の感動もあります。この辺りがただのコメディではないです。タイは元々「オカマ」が多い国らしいのですが、この映画のベースになった本物の「オカマ」チームのおかげで、「オカマ」たちも市民権を得たとか・・。 あやしい映画ですが思いきり笑い飛ばしてしまいましょう。 エンド・クレジットの部分で「本物」の登場シーンがあり、ビックリ。 「オカマ」がバレーの国体で優勝???なんて疑っていましたが、この映像を見て納得。 すごいです。 エイプリル・メイ・ジュンのトリオが夢に出てきて、うなされました・・・(笑)
東京攻略  監督:ジングル・マ  主演:トニー・レオン、イーキン・チェン、ケリー・チャン
Tokyo Raiders  2000年 香港映画
私評:香港映画の底力?? 結婚式当日に新郎の高橋が現れず、式をキャンセルしたメイシーは彼を追い東京にやってきた。彼女のお供(?)は新居のインテリアデザインをしたというユンだった。高橋の捜索をしていた二人は突然日本のヤクザに襲われる。逃げる彼らを助けたのは日本在住の私立探偵リンだった・・。笑えました〜。 元来、私は香港映画ってあまり、見ないのです。特にラブストーリーは・・・・。この映画はどんな映画だか見るまで知らなかったのですが、いわゆるドタバタのアクションと、そして笑いが多いので、、お気楽に見ることが出来ました。 この映画に限らず、香港映画はツッコミどころが多くて「おいおい、それはないだろう・・」みたいなシーンが多い。この映画もそんなシーンのてんこ盛りなんだけど、まあ、硬いことは言わないで・・。トニー・レオンは私は苦手なんです。やたらと決めのポーズをつけたがるのが、鼻に付く(お前はクラーク・ゲーブルか?)でも、この映画の彼はコミカルでスケベで好感が持てました。イーキン・チェンは相変わらずカンフーの技が切れてますね。ケリー・チャンも美しい・・・。でも、彼女は眉間に皺ばかり寄せているので、そのうち・・・? トニーとケリーは日本語のセリフもけっこうあって、大変だったと思う・・・けど、めっちゃ笑えます。 活字では表すことが出来ないのですが、変なイントネーション。 でも、生粋の日本人の(はず)遠藤久美子のセリフより遥かに上手かったです! 他に日本からは阿部寛、仲村トオル、柴崎コウ〈ワンシーンしか発見できず)ら、けっこう良い面子が登場。でも、良さが出ていたのは阿部寛だけでした。香港の若者たちの憧れ(らしい)東京を、カッコよくスタイリッシュに描くことがこの映画の目的だったんでしょうね。 それ故都内の地理を良く知っている人は、色々とツッコミたくなるかも?? あまり粗を探さずお気楽に楽しみましょう。アクションシーンは「西部警察」みたいなノリでしたが、日本ではこれくらいが限度なのかな? そんな規制の中で、よく撮影をしたと誉めてあげたい! 
マレーナ  監督:ジュゼッペ・トルナトーレ  主演:モニカ・ベルッチ、ジュゼッペ・スルファーロ
Malena  2000年 イタリア映画
私評:少年時代って・・・。 第2次世界大戦下のイタリアの田舎町。少年レナートは女神と出会う。彼女の名前はマレーナ。町の男なら誰もが知っている女。彼女の夫は戦争に借り出されていた。レナートは彼女とは一言も口をきけずに、遠くから彼女を見守るだけしかできなかった。 そして夜な夜な夢の中でご対面。しかし、彼女の良からぬ噂が起こって・・・。 主人公の少年はジュゼッペ監督の分身なのでしょうか? 私も少年時代に大人の女性にはめっちゃ憧れました。身近なところだと、友達のお姉さんとか・・。しかし、女の子の性の目覚めの映画は、すごく崇高だったり、逆にスキャンダラスだったりするのに、男の子のはいつでもコメディーですね。私がこの映画を見てすぐに思い出したのは「フェリーニのアマルコルド」と「青い体験」です。 (なんとどちらもイタリア映画だ!) 少年の性への目覚め、そして大人の女性に認められるための背伸び。 でも、こういう積み重ねがこの映画のレナートを、「アマルコルド」のチッタを、「青い体験」のニーノを、そして「私」を”おとなの男”にしたのでしょう。 しかし、そんなノスタルジックでほのぼのした映画だけには決してさせないのがトルナトーレ監督。 マレーナに振りかかる数々の悲劇を目の当たりにしながらも、自分が子供であるが故に何も助けてあげることができないレナート。そして彼は目の前に立ちはだかる現実を思い知らされます。それは弱さでもあり、そして未熟さでもあり・・。この辺りの演出はさすがと言う感じでした。主演のモニカ・ベルッチの美しさ、そして体当たりの演技は素晴らしいの一言。 自分は外見だけの女優ではないのだと、訴えているようにも映った。 すばらしい!! 
タップ・ドッグス  監督:デイン・ペリー  主演:アダム・ガルシア、ソフィー・リー
Bootmen  2000年 オーストラリア・アメリカ映画
私評:ダンスの常識を覆せ!オーストラリアのニューキャッスルの鉄鋼所で働くショーンは、いつしかタップダンスで成功したいと常日頃から思っていた。そして仲間を呼び集め結成したパフォーマンス軍団「Bootmen」。鉄鋼所が閉鎖に追い込まれた事実を知ったショーンは有料でライブを行い、従業員の救済を試みるが・・・。 タキシードにステッキを持ったタップを捨て去り、ワークブーツに金具を打ち付け、ロックのサウンドに乗って踊りまくる。 スマートさはないけれど、ほとばしる情熱、そして何よりもタップを踊ることが大好きだ〜!と言う心の叫びが聞こえてくるようだ。 ストーリーはその他に兄と恋人との三角関係や、父親との確執などが盛り込まれていて、ちょっとだけですが「遠い空の向こうに」とかぶった。 主演のアダム・ガルシアは「コヨーテ・アグリー」でパイパー・ペラーボの恋人を演じた青年。 彼がまたタップダンスが上手いんだ!彼の恋人役がクリスティーナ・リッチ似のソフィー・リー。彼の友達でダンスチームに加わる面々に中には、本当のBootmenのメンバーもいるそうです。このBootmenですが、来日もしており〈知りませんでした・・)先日行われたシドニー・オリンピックでは開会式でパフォーマンスを披露したそうです。 ラストの鉄鋼所のライブシーンは、すごい迫力。 私は鳥肌が立ってしまった。 カッコイイ〜!! タップダンスのシーンだけでも十分見る価値ありですよ!!
ファーストフード・ファーストウーマン  監督:アモス・コレック  主演:アンナ・トムソン、ジェイミー・ハリス
Fast Food, Fast Woman  2000年 米・仏・伊・独合作
私評: お手軽フード、お手軽女??NYのダイナーで働くベラは恋愛も人生もちょっと停滞気味。今日は母親が紹介した男と初デート。友人のシェリーのアドバイス通り「子供は嫌い!」「その日のうちにベッドイン」はできたけど・・。ダイナーに通ってくる偏屈なオヤジたち。ポールは新聞の交際欄で知り合ったエミリーとデートを重ねるが、後1歩がどうしても踏み切れない。そしてシーモアは偶然立ち寄った覗き部屋のストリッパーに恋をしてしまう・・・。これはとても不思議な群像劇。 ベラ自身もちょっと変わった女だけど、彼女の周りの人たちも・・。 でも、誰もがみんなピュアなハートの持ち主でつい、庇ってあげたくなってしまう。自分自身が不器用でイライラすることもあるけど、ハッピーな事はきっとどこにでも転がっているんだよね。上手く行かない人生も捨てたもんじゃない! そんなメッセージが伝わってきた。主演のアンナ・トムソンはスゴイ美人ではないけど、とても魅力的。あの細い体に、バイタリティーが漲っている。私が好きなエピソードはポールとエミリーの熟年コンビの純愛。幾つになってもあんな気持ちを持ち続けて行きたいな。この映画は根強い女性ファンが多く、リピーターが多いらしいです。私が観に行った日も若い女性で映画館はけっこう埋まっていました。これはなかなか拾い物の映画でしたよ!! 
日本の黒い夏 冤罪  監督:熊井啓  主演:中井貴一、寺尾聰、細川直美
Nihon No Kuroi Natsu  2001年 日本映画
私評: 1994年のあの事件が蘇る・・。「松本サリン事件」の冤罪報道を検証するドキュメントを製作している高校の放送部員がローカルTV局を訪れた。彼らを迎えた4人のTV記者たちは、事件を振りかえる。この大惨事の第1通報者である神部は容疑者不詳のまま家宅捜索を受け、しかも証拠不充分のまま殺人犯に仕立てられる。事件に群がるマスコミたちは、あらぬ証拠を並べ立てる。そしてそれを真に受けた視聴者たちは、神部を犯人と決めつけ疑わなかった。しかし、TV局の報道部長の笹野は、なぜかしっくり来なかった。そうしている間にも、神部は殺人者のレッテルを貼られ非難の渦中にいた・・・。昨年見た「破線のマリス」でもそうだが、マスコミの力と言うのは恐ろしい。私もこの事件の報道は良く覚えているが、河野氏(この映画では神部と言う名になっている)は、絶対に犯人だと思い込んでいた。しかし、蓋を開けてみれば犯人はあのオウム真理教だった。今日の映画を見て、一番に思ったのは警察のずさんさだ。映画の中で刑事役の石橋蓮司が「警察の面子・・」というセリフを言うのですが、河野さんは、まさにこのくだらない警察のプライドの被害者だった。そして第2にマスコミの過剰な報道。そしてそれを疑う事もなく鵜呑みにしてしまった私たち視聴者。「冤罪」の過程がこうやって上手く映画の中では語られていて、私はすごくショックだった。映画の中で神部を演じる寺尾聰がすごく良かったです。来年もアカデミー賞かな??そして取材する高校生役の遠野凪子の演技が素晴らしかったです。オウム事件をもう一度振りかえって、検証してみるのも、そろそろ良いかもしれないですね。ただ、この映画のラストがダラダラしてしまったのがとても残念でした。
ブラック・ボード 背負う人  監督:サミラ・マフマルバフ  主演:サイード・モハマディ、バフマン・コバディ
Blackboads  2000年 イラン映画
私評: カンヌ映画祭を涌かせた弱冠20歳の女性監督・・・。背中に黒板を背負った男たちが山道を歩いていた。彼らは爆撃で学校を失った教師たちで教師のいない村を歩き回っていたのだ。サイードは小さな町に辿りつくがそこはイラクからイランに渡ってきたクルド人の村。サイードはイラクまでの道案内を買って出た。もう一人の教師レブアルは危険な戦渦を潜りながら、密輸物資を運ぶ子どもたちの一団と合流する。読み書きを教えながらの道中は危険な旅だった・・・。北野武監督もこの映画を高く評価し、サミラ監督を「ダイヤの原石」と賛辞を贈ったとか・・。彼女の父親はあのモフセン・マフマルバフ。私の記事の中にも「サイレンス」「ギャベ」などがあります。どれもとても美しく、そして印象的な映画でした。その娘は父親譲りの素晴らしい映像をカメラに収めていました。茶色の大地を眼下に眺める山道、そして山道を歩む人々の姿・・・。しかし、どうもお話自体が冴えないのが残念でした。多分、私の前に立ちはだかったのは言葉や文化の違いだと思います。ちょっとしつこいくらいの演出も、私には辛かった・・・。イラン映画なので出演者は私の知らない人ばかり。実際、使われている人たちも無名の人ばかりのようです。


前回の記事も読んでね〜!



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