2002/3/11号

すっかり,春らしくなった今日この頃。重いコートを脱いで外で遊びたい気持ちを押さえ(?)
映画館に通う私でした・・・

シッピング・ニュース  監督:ラッセ・ハルストレム  出演:ケビン・スペイシー、ジュリアン・ムーア
Shipping News  2001年 アメリカ映画
クオイルは冴えない中年男。幼少時代に父親に海に投げ込まれて以来、水が嫌いだ。彼は仕事でも目立つことなく、新聞社の印刷機の前で座るだけの仕事を選んだ。そんな彼の前に突如現れた美女がいた。彼女の名前はペタル。あっという間に関係を持ち,結婚した二人だったが、ペタルは根っからの男好き。娘のバニーが生まれてからも,彼女をほったらかしで男漁りに出かけた。しかも、ある日ペタルはバニーを連れて家を出て,彼女を売ってしまう。その罰か,ペタルは車の事故に遭い短い生涯を閉じる。娘と二人きりになったクオイルは,両親を訪ねてきた大叔母のアグニスとともに、クオイル家の発祥地ともいえるニューファンドランドへと渡る。そこで彼は船の情報港湾(シッピング)ニュースの記者として職を得るが・・・
私評:お茶を飲みなさい。お茶は心を落ちつかせるのよ・・・原作はE・アニー・プールのベストセラー小説。原作とはちょっと設定が違うけど、2時間弱の映画の中には数々のエピソードがいっぱい詰まっている。ちょっと展開が早過ぎるかもしれない。静かに人間不審のクオイルが,恋を知り,愛を知り,絶望を知り、責任を知り、安らぎを知り・・徐々に大人の人間として成長していく様が描かれる。不器用でも、まっすぐに人を見つめる事を・・・監督は「サイダー・ハウスルール」「ショコラ」のラッセ・ハルストレム。彼の作品って人の温かさが伝わってきますよね。この映画でも彼の持ち味はすごく活かされていました。主演はアカデミー賞俳優のケビン・スペイシー。こんなフワフワした男も演じられるのですね。新たな土地で彼が思いを寄せる女性は出演作が本当に目白押しのジュリアン・ムーア。彼の大叔母役はラッセ監督の常連になるのか?ジュディ・デンチ。(ショコラに続いての出演です) クオイルが働く新聞社のオーナーがスコット・グレン。編集長はイギリス映画の常連ピート・ポスルスウェイト、彼の同僚はリス・エヴァンス、そして遊び人にして淫乱な妻を演じるのは、あのケイト・ブランシェット。キャスティングも贅沢です。
ビューティフル・マインド  監督:ロン・ハワード  主演:ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス
Beautiful Mind  2001年 アメリカ映画
冷戦下のアメリカ。第2時世界大戦で非常に役に立った暗号解読に軍も躍起になっていた。そんな時に現れたのがジョン・ナッシュという男だった。人付き合いは下手だが,数字を読む事に関しては天才的な才能を持った彼は古典経済学の創始者,アダム・スミスの理論を覆してしまう。こうして彼は一躍,脚光浴びる。そして初めて知った恋。そんな彼の才能に目を付けたのは、国防省に勤めるバーチャだった。そして最高機密の解読に着手するナッシュの身の回りには、不可解な出来事が続発する・・・・

私評:彼の姿が見えますか?それは良かった。・・・・ジョン・ナッシュとは実在のノーベル賞学者、ジョン・フォーブス・ナッシュ・ジュニアの事。50年近くも己の中に潜む病と戦い続け、そしてノーベル賞を受賞するまでの話です。天才が故に潜り込んでしまった,深い深い穴。答えのないものに答えを見出そうと、もがき苦しむ彼の人生はまさに波乱万丈。しかし、この描き方が実に上手いです。現実と空想の境をここまで説明するのは,映像を通して以外は考えづらいですよね。ちょっと,サスペンス風のノリもあって、2時間10分があっという間でした。主演は昨年「グラディエーター」でオスカーを獲ったラッセル・クロウ。前回のマッチョなイメージをかなぐり捨て、新しい境地を見出した感があります。彼の妻にして生涯彼を支え続けた気丈な女役が、アイドルから演技派女優に脱皮したジェニファー・コネリー。彼女がこの映画の芯になっています。そしてアヤシイ国防省のエージェントがエド・ハリス。彼はなんとなくいつも通りでしたね。監督はキャプラの後を継ぎ、新・アメリカの良心監督と私が呼んでいるロン・ハワード。本当に彼の映画にはハズレがないです。今年のオスカーレースの大本命だけの事はあります。この映画の大きな謎は、スクリーンでご確認下さい。
コラテラル・ダメージ  監督: アンドリュー・デイビス  主演:アーノルド・シュワルツェネッガー、フランチェスカ・ネリー
Collateral Damage  2001年 アメリカ映画
ベテラン消防士のゴードンは、妻子との待ち合わせに遅れてしまう。やっと,辿りつき二人に手を振る彼の目の前でテロ事件が起きた。穏やかなLAの昼下がり、爆破事件によってゴードンは大切な二人を失ってしまう。しかも、その事件の直前、彼は犯人とすれ違っていたのだ。犯人はコロンビアのテロリスト「ウルフ」。捜査に協力するゴードンだったが、捜査当局の動きは鈍い。なぜなら、彼らはまずは外交を優先させていたからだ。そして死んだゴードンの妻子は、”ある目的のための犠牲”、つまり「コラテラル・ダメージ」とされる。納得ができないゴードンは単身、コロンビアに乗り込み、愛する妻子の復讐を遂げようとするが・・・・

私評:I'll Be Back! ・・・・言葉通り,シュワが帰ってきた。昨年公開予定だったこの作品は、9月11日のNYでのテロ事件のため,公開が延期されていた。確かにこの映画の爆破テロは、被害に遭われた方たちには生々しいでしょうね。半年経ってもその傷は癒えてはいないでしょうから、この映画に批難が集中したのも納得できます。しかし、最後の締めくくり方に救いがあるかもしれませんね。テロで被害を受けたからといって,報復に出ていたらいつまで経っても和平は進展しないでしょう。 今回のテーマでシュワルツェネッガーをヒーローにしてしまったら、これもまた問題がありますよね。シュワちゃんは最近けっこうボコボコにやられるシーンが多くなった。今回もかなり苦戦を強いられておりました。しかし、彼の映画はやっぱり火薬の量が多い。ミサイルはぶっ放すは、マシンガンの掃射はあるは、大爆発はあるは・・。そういった見所は満載です。特に後半の30分はなかなかの盛り上がりを見せました。監督は「逃亡者」のアンドリュー・デイビス。映画の中に「逃亡者」を髣髴させるシーンも・・・。本当にチョイ役で登場のジョン・タトゥーロとジョン・レグイザモが・・・。
サウンドトラック  監督:二階 健  主演:SUGIZO、柴咲コウ、山口小夜子
Soundtrack  2002年 日本映画
バイオリン奏者の兄・志音と童話作家の妹・美砂は、二人でひっそりと生きてきた。美砂は幼少時に目の前で両親が殺され,以来言葉を無くしている。そんな彼女のために志音はバイオリンを奏で、志音の心の闇を取り除くべく美砂は童話を書きつづけた。しかし、ある事件が元で、美砂は命を落としてしまう。ショックから眠る事に逃避を始める志音。数年後、志音の前に美砂にそっくりの女が現れる。彼女の名前はミサ。明るく快活な彼女の登場により、志音は少しずつ元気を取り戻して行くが・・・・

私評:夕ご飯はオムライスでイイ??・・・ モノクロの画面の中で,赤だけが際立って見える。これは二人が幼少の時に,両親の血飛沫を浴びて以来のトラウマ。だから、オムライスにもケチャップは使わない。大好きなストロベリーアイスも果肉抜き。こんな変なこだわりを持つのがこの映画。とにかく画面は凝りに凝っている。独特な映像はメルヘンチックな世界とリアリティーの中間が醸し出されている。それゆえ、映画のストーリーは極めて単純だ。どちらかというと映像を「見せるだけ」の映画かも?そんな世界にピッタリな二人の主人公は元LUNA SEAのSUGIZOと、今や日本映画の若手ナンバー1女優の柴咲コウ。コケティッシュな二人のキャスティングは納得です。そして何度も繰り返される音楽が耳に残る。なんとも不思議な映画でした・・・。
ミルクのお値段  監督:ハリー・シンクレア  主演:ダニエル・コーマック、カール・アーバン
The Price of Milk  2000年 ニュージーランド映画
ニュージーランドの片田舎に住むルシンダとロブは相思相愛の理想のカップル。美しい大自然の中で二人は幸せの絶頂にいた。そしてついにロブはルシンダにプロポーズをする。しかし,あまりの幸せがちょっとルシンダを不安にさせる。「この幸せがずっと続くのかしら・・」。そこでルシンダは親友のドロソファに相談をすると、彼女はロブの愛を試す、様々なアイデアを授けた。その日からロブを怒らせるような,彼女の悪戯が始まる。そしてついに温厚なロブもついにキレてしまう・・・・

私評:牛はどうした??このキルトを取り戻すために売ったわ・・・・・とにかく,ニュージーランドの美しい景色には溜息が出る。広大な平地に小さな丘。そこをルシンダが裾の長〜いインドの衣装を着て,歩くシーンは最高です。こんな土地で育ったからこそ、すごく純真な女の子になったのかもしれませんね。しかし、悪戯があまりに度が過ぎると・・・。こんな事をしては,温厚な私だって怒るよ(笑)。また、物語に登場する謎のネイティブ・インディアン(??)の家族が、ルシンダに数々の試練を与えます。本当に謎の家族??彼らってなに??この映画をほのぼのといって良いのか?? ちょっと「アメリ」とかぶる部分があるかもしれませんね? この映画は昨年の東京ファンタスティック映画祭のQフロントセレクションのグランプリ作品でした。


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