2004/3/2

またしても、韓国映画の奥の深さを思い知らされた・・・。

悪い男  監督:キム・ギドク  出演:チョ・ジェヒョン、ソ・ウォン
Bad Guy  2001年 韓国映画
今週のイチ押し:孤独なヤクザハンギは、街で見かけた女子大生ソナに一目ぼれをする。さりげなく近づいた彼に対して、ソナの態度は冷たかった。恋人とのデートに出かけようとする彼女に対し、ハンギはいきなり唇を奪ってしまう。しかし、彼はその場に居合わせた兵士たちに取り押さえられ屈辱を味わった。強い復讐心とそれ以上に強い彼女への興味からハンギはソナに罠を仕掛け、自分が仕切っている売春宿に売り飛ばしてしまう。処女だったソナは売春宿の一室で屈辱的な喪失をする。そしてその部屋のマジックミラーの向こうでは、ハンギが複雑な面持ちで彼女を見ていた。徐々に娼婦に変わっていくソナを見守るハンギ。しかし、彼はソナを抱く事はなかった。ところがハンギの弟分のミョスンがソナを愛してしまい、ハンギが仕掛けた策略を話してしまう。激しい憎悪がソナの中に沸き起こる。しかし、次第に売春外の生活に馴染んできたソナは、彼女たちをガードするハンギを突き放す事も、受け入れることもできずにいた・・・
私評:本当に悪い男ね。あなたが死んだら私はどうしたらいいの??・・・すごい映画でした。最悪の出会いから、ハンギはソナを地獄に突き落とし、落ちるところまで落ちた二人に妙な気持ちが芽生える。ハンギの過去は良くは分からない。しかし、彼は落ちるところまで落ちた男。つまり彼にはソナを自分と同じところまで叩き落す必要があったんですね。そんな非人道的な事は、私は大嫌いで映画自体も嫌いになりそうなのに、私の気持ちを繋ぎとめたのは主演のチェ・ジョンヒョンの悲しそうな瞳のせいなんです。しかも、彼は映画の中で一言しかセリフがないんです。それゆえ、彼はほとんど全編「目」で演技をするのです。そして今どきの女子大生から娼婦へと身を落とす体当たり演技のソ・ウォン。この二人はキム・ギドク監督の「魚と寝る女」でもコンビでしたね。そういえば「魚と寝る女」では、相手役のソ・ウォンが一言も喋らない女だった・・。果たしてあなたはこの映画の二人の気持ちに近づくことができるか?理解することは不可能です、感じるんです・・。
ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション  監督 :ジョー・ダンテ  出演:ブレンダン・フレイザー、ジェナ・エルフマン
Looney Tunes Back In Action  2003年 アメリカ映画
ここはワーナーブラザーズの重役会議室。女性ながら敏腕の副社長ケイトは、バックス・バニーの陰に隠れてパッとしないダフィー・ダックをクビにしてしまう。スタジオの外に連れ出そうとしたダフィーは逃走を図る。その場にいたスタントマン志望の警備員DJはケイトの命令でダフィーを追うがあまりに大暴れしすぎてスタジオをメチャメチャに壊してしまい、彼もお払い箱になってしまう。ダフィーなきあとバックス・バニーは一人奮闘するが、ダフィーのいないバックスは笑いを取れず・・。それが原因でケイトもクビになってしまう。意気消沈して家に帰ったDJはスパイ映画のスターだった父親からSOSのメッセージを受け取る。実は彼の父は秘密諜報部員だったのだ。父親救出のためにラスベガスへ向かうDJとダフィー。そして彼らを追うケイトとバックス。そして彼らはとんでもない事件に巻き込まれていく。舞台をラスベガスから、パリ、アフリカと移し2人と2匹の大冒険が続く・・・・・・・
私評:ここはエリア51じゃないのよ。あれはニセモノ。ここがホンモノでエリア52よ・・・アニメと実写の合成といえば、ロバート・ゼメキス監督の「ロジャー・ラビット」がすぐに連想されますよね。あれから歳月が流れ、特撮の技術はさらに向上。とにかく実写の映像の中にルーニー・テューンズのキャラクターたちが見事に融合しています。アニメのキャラクターの中でも有名なツッコミキャラのバックス・バニーとボケキャラのダフィー・ダックがめちゃ笑わせてくれます。そしてこの2匹とドタバタを繰り広げるのがブレンダン・フレイザーと「僕たちのアナ・バナナ」のジェナ・エルフマンです。彼らの体を張ったアクションシーンには脱帽です。子供の映画だとばかり思っていた私ですが、実は大人が楽しめるシーンがてんこ盛りなんですよ。バックスの演じる「サイコ」の名シーンや、パリの美術館の中で絵画の世界で大暴れしたり・・。そして私的に大好きなのが冒頭のワーナーブラザーズのスタジオの中でのアクションシーン。W/Bの意外なキャラクターが登場しますよ〜。悪の親玉役は全然本人だと分からなかったスティーブ・マーティン、DJの父親はそのまんま007のティモシー・ダルトン、そしてエリア52のアヤシイ科学者役でジョーン・キューザックが登場します。これは面白かったです!!!
赤目四十八瀧心中未遂  監督 :荒戸源次郎  出演:大西滝二郎、寺島しのぶ、大楠道代
 2003年 日本映画
兵庫県尼崎に辿りついた、世捨て人になるにはまだ若い男、生島。かつては文学も志した彼だったが夢破れ、この街へと流れ着いたのだ。彼はセイ子姉さんから焼き鳥の臓物さばきと串刺しの仕事を得る。単調な仕事の繰り返しは彼に安息を与えていた。そのアパートには不思議な人々が住んでいた。刺青師の彫眉、隣室で怪しい呪文を唱える買女、そして猛禽のようにすごい目の光を放つ女、綾がいた。彼女の背中一面には迦陵頻伽の刺青が翼を広げていた。彼女により至福の時を味わった生島は、綾の「この世の外へ」という一言に誘われて、死出の旅路、赤目四十八瀧を登ることを決意する。山間の美しい木立の中を二人は歩き続ける。そして・・・・
私評:殺されるかもしれないと思った。死んでもいいと思った・・・・平成10年に直木賞を受賞した車谷長吉の原作の映画化です。とにかくこの映画の展開はダルイ。しかし、そのダルさは苦痛ではなく、むしろ快感なんです。時間が止まってしまったかのような尼崎のアパートの一室。そして冒頭から四季折々の美しい映像が、見事に画面に納められている。(シネスコの画面を使ったのは正解でしたね)それらがまるで静止画のように脳裏に飛び込んでくる。そして登場人物が一人としてまともでない。誰もが奇人で、個々の存在が不思議なオーラを放っている。前半部分でアパートの住人との交わりは、思い切り笑えました。しかし、生島と綾のまぐわいの辺りからは一転して純愛のテイストが・・。しかし、この映画は抽象的表現がすごく多いです。説明をあれだけカットしているのに、上映時間は2時間半以上。不思議な迷宮の世界にどっぷりと浸かれますよ。生島を演じるのは大西瀧二郎。無名の彼をいきなり主演に抜擢したのは、彼の持つ何ともいえない雰囲気からなのでしょう。そしてこの映画がやはり初主演となった寺島しのぶ。自らこの綾の役をやりたいと直訴したという。その意気込みがこの映画では存分に生かされている。そしてアヤシイ刺青師の内田裕也。とにかくアヤシイんです。そして不気味なんです。セイ子姉さん役は大楠道代。この原作がとても読みたくなりました。(今日、買っちゃいました・・・)
アップタウン・ガールズ  監督:ボアズ・イェーキン  出演:ブリタニー・マーフィ、ダコタ・ファンニング
Uptown Girls  2003年 アメリカ映画
モーリーはNYでいちばんの華だった。今は亡き伝説のロックン・ローラーの娘の彼女は父親が残した莫大な遺産で社交界でもひときわ目立つ存在。まさに、パーティ三昧の彼女の人生はずっと続くと思っていた。しかし、皮肉な運命が彼女を待ち受けていた。なんと彼女の会計士が彼女の全財産を持ち逃げしたのだ。一文無しになった彼女は生まれて初めて「仕事」をしなくてはならなくなった。友人のおかげでやっと見つけた仕事は音楽界のエグゼクティブ、ローマ・シュラインの娘、レイの子守役だった。ところがこのレイは8歳なのにやたらと大人ぶっている。早熟なだけではなく、異常なほどに神経質で、しかも細菌恐怖症。大人なのに子供のような感覚しかないモーリーと、子供なのに大人ぶったレイはぶつかり合ってばかり。しかし、ある事件から二人の間には不思議な友情が芽生え始める・・・・・・
私評:子供が一人で乗れたのはティーカップだけ。それに乗ってグルグル回り続けたわ。今でもまだ乗っているような気がするの・・・・なんだか、ミエミエのストーリーなのにこんなに楽しいのは、二人の主演女優のキャラクターでしょうね。もしかしたら、ハリウッドで今、いちばん旬の女優かもしれないブリタニー・マーフィと子供なのに、メチャ老け顔の(笑)ダコタ・ファンニングの二人のアンサンブルは私を思い切り楽しませてくれました。なんたってこんな突拍子もないキャラクターなのに、二人ともピタリとはまっている。ふたりの会話は前半は漫才なのですが、時間を追うごとに不思議な感動をもたらしてくれました。実は私がこの映画を見たいと思ったのはブリタニー・マーフィが出演しているからなんです。先日公開された「ジャスト・マーリッジ」を見逃してしまったので、今回は速攻で見に行きました。彼女って映画ごとに違うキャラクターを見事に演じる演技派だと思ってます。今回はコメディエンヌとしての才能を見事に開花させましたね。これからも注目の女優です。一方、ダコタちゃんはこれからどんな大人になっていくのかが楽しみ。(実は私は彼女がちょっと苦手・・)そしてこの映画で忘れてならないのがイケメンの二人の男優。ジェシー・スペンサーとドナルド・フェイソン。女性陣は要チェックでしょう!こういう肩の凝らないコメディーは大好きです。そして後半は感動でちょっとウルウルしちゃいました・・・。
マスター・アンド・コマンダー  監督 :ピーター・ウィアー  出演:ラッセル・クロウ、マックス・パーキンス
Maseter and Commander:The Far Side of the World  2003年 アメリカ映画
180年ヨーロッパ征服を狙うナポレオンの前に、多くの兵士の尊い命が犠牲となり、イギリス軍はその兵力を補うために、幼い少年達までも戦場に送らざるをえなかった。弱冠 12歳の士官候補生ブレイクニーら少年たちは、伝説的な名艦長として名を馳せるジャック・オーブリー率いるサプライズ号に乗り込む。ジャック艦長は幾多の苦境を乗り越えてきた百戦錬磨の男。少年たちは憧れと尊敬の眼差しを彼に向けた。この艦の使命は、ナポレオン率いるフランス軍の武装船アケロン号を拿捕するとこと。それは危険な大追跡だった。攻撃力で圧倒的な優位に立つアケロン号と、荒れ狂う大海原を相手に、戦う術も知らない幼い少年達はひたすらにジャック・オーブリー艦長を信じ、愛する家族に再び会える日を夢見て戦い続ける。・・・・・・
私評:勇気を出せ!男たち!!・・・この映画の予告編や宣伝文句にはちょっと偽りがあります?もちろん、すごい戦闘シーンはひとつの売りではあると思うのですが、この映画の見所はひとつの船に乗り合わせた男たちの友情と成長の物語です。艦長を演じるラッセル・クロウが、「この船はイギリスそのものだ」みたいなセリフを言うのですが、まさに船の中は小さな国家であり、社会があり、ルールがあり、そして生活がある。そんな男たちの紡ぎ出すドラマがこの映画のいちばんの見所だと思います。主演のラッセル・クロウはとにかくカッコイイです。彼ってこういうカリスマ性を持った男を見事に演じますよね。私は今回のジャックと言う男と「グラディエーター」のマキシマスを重ね合わせてしまいました。また、大きく宣伝されているマックス・パーキンス少年は、確かに良い演技はしていますが決して物語のコアではないです。この映画の原作はパトリック・オブライアンの長編歴史小説。しかし、この映画で扱われているのは、その長編の一編でしかないらしい。それらを全て知った上でこの映画を見ると、また違う感慨があるのかもしれませんね。
ギャザリング  監督 :ブライアン・ギルバート  出演:クリスティーナ・リッチ、ヨアン・グリフィズ
The Gathering  2002年 アメリカ映画
イギリスのグラストンベリー。二人の若者が穴に落ちて無残な死を遂げた。しかし、彼らの事件がきっかけで埋められていた古い教会が発見される。ここでは教会に背を向けた形で奉納されたキリスト像と、壁に幾つも彫られた顔があった。美術専門家のサイモンは司祭の依頼に応じ、この教会の分析に当たった。そんな時、サイモンの妻のマリオンは雨の中を運転中に、若い女性を跳ねてしまう。奇跡的にほとんど無傷だった彼女だったが、キャシーという名前以外の記憶がなくなってしまう。マリオンはせめてもの償いにと、キャシーを家に招き、記憶が戻るまで滞在を勧める。しかし、事故以来キャシーは不思議な幻覚に戸惑っていた。さらに彼女を執拗に追い回す奇妙な人々にも気付いていた。そんなときサイモンはある答えにたどり着く。そして壁に彫られていたたくさんの顔についても。実は彼らは歴史上の大事件の時には、いつも現れていたのだ・・・
私評:昔一人の女の子がいました。彼女は悲惨な事件を見たのですが、何もしませんでした・・・この映画はいわゆるホラー映画なのですが、シナリオがすごく面白いです。いくつもの事件が複雑に絡んでいて、最後の謎が明かされたときは思わず膝を叩いてしまった。「ギャザリング」のこと、そして隠されていた教会のこと、そして大事件の前兆・・。しかし、いかんせん映画のテンポが悪い。途中はけっこう眠くなってしまった。しかし、そんな睡魔から私を救ったのはクリスティーナ・リッチーです。彼女はやっぱりホラーが似合う。あの顔はまさにホラー向きですよね。そして後半に差し掛かり、事件の謎が次々と解けていく。そしてけっこう感動的なラスト・・。あまり期待はしていなかったのですが、私はかなり楽しめました。リッチー嬢がこの村で恋をする青年は「タイタニック」でケイト・ウィンスレットを救ったヨアン・グリフィズ。どこかで見た顔だと思ってたんですよ・・。そしてもう一人印象的だったのが子役の少年ハリー・フォレスター君。ホラー映画に出てくる少年ってみんな演技が上手いような気がするのは私だけ??しかし、事件が起こるたびに、いつも同じ顔が野次馬のように顔を揃えていたら気持ち悪いですよね・・・。


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