2003/3/1号

今週はドラマ、ホラー、コメディ、童話と幅広ジャンルを鑑賞。
イチ押しはフランスの「愛の伝道師」の映画です。

歓楽通り  監督 :パトリス・ルコント  出演:パトリック・ティムシット、レティシア・カスタ
Rue Des Plaisirs  2002  フランス映画
今週のイチ押し:20世紀中盤のパリ。一人の男の子が娼館の中で生を受けた。彼はプチ=ルイと名付けられ、外の世界を知らずにずっと娼館で成長していった。彼の幼い頃からの夢は「運命の人に出会い、その人を一生かけてしあわせにする事」だった。そんな彼の前についにミューズが現れた。彼女の名前はマリオン。薄幸のこの娘をひと目見て、プチ=ルイは彼女のために全てを捧げる決意をする。献身的に愛を注ぐプチ=ルイ。そして彼女の夢だった歌手になるための手引きをし、そして彼女を幸せにする男を見つける。そしてプチ=ルイはマリオンが幸せでいることを、そっと傍らで見ていた。しかし、マリオンの幸せにひびが・・・・
私評:君を幸せへと導く夢先案内人になりたいね・・・。久しぶりのルコント作品。この前に見たのはたぶん「橋の上の娘」ですよね。今回のルコント作品のテーマは「無垢な男の見返りを求めない愛」。官能的なパリの娼館が舞台というところも、実にうまい設定です。しかし、私はこのプチ=ルイがめちゃめちゃ好きになってしまったのです。ただのイイ人という言葉では彼を形容できない。なにか神々しささえ感じてしまった。ある意味では、彼は人間としての(また男としての)何かが欠落しているのかもしれない。また、人によってはただのお人よしと思ってしまうかもしれない。しかし、私は「人を幸せにするのにこんなアプローチの仕方もあるんだ」と妙に感心してしまった。というか、ルコント監督が「何でもギブ&テイクだ」と考えがちな私の感性を叩き潰してくれました。マリオンを演じるレティシアはめっちゃ美しいです。オーラが出まくりです。そして注目は当時の娼館の煌びやかなセット。そしてそこで男たちに愛を売る娼婦たちの煌びやかさ。面白かったです!!
ホワイト・オランダー  監督:ピーター・コズミンスキー  出演:アリソン・ローマン、ミシェル・ファイファー
White Olender  2002年 アメリカ映画
15歳の少女アストリッドは母親と二人暮し。母親のイングリッドは美しく聡明な女性だったが、独善的でアストリッドは彼女の完全な支配下に置かれていた。しかし、ある日イングリッドは恋人の裏切りに逆上し彼を殺してしまう。裁判の判決は終身刑。それまでイングリッドと自分だけの世界で育ったアストリッドは福祉事務所の管理下に置かれ里親の所へと送られる。最初の里親は派手な中年女のスターと彼女と同棲中のレイのところだった。そこにはアストリッドの他にも里子がいた。獄中からイングリッドは「他人に気を許すな。」とアストリッドを叱咤するのだった。そこの生活にもやっと慣れてきた頃、ある事件が元でスターたちとの生活はあっけなく終わってしまう。そしてそれから2回も里子に出されたアスリッドは、それぞれの環境の中でイングリッドの教え以外の事を学んでいく・・・・
私評:あんな人であっても、母は私を愛している・・・・・この映画はよく内容も知らずに見に行ったのですが、すごく面白かったです。少女のアストリッドがアイデンティティを探し求める話です。母親と娘の関係にも色々とあると思うのですが、この映画のように「愛が強すぎる」事によって子供を圧迫してしまうこともあるかもしれません。また、アストリッドにとっては母親が全てだったのですが、彼女を失い他人と触れ合うことによって色々と学んでいくのです。アリソン・ローマンが純情で無口な少女からどんどん変わっていく様子が、悲しくもありそして逞しく見えたりもします。彼女の演技は素晴らしかったです。そんなアリソン嬢をサポートするのが名女優の3人。母親役はミシェル・ファイファー。彼女の言葉は決して間違ってはいないのですが、剥き身の剣のように人を傷つけます。決して愛すべきキャラクターではないのですが、ミシェルが演じることによってすごい人間的な厚みを与えます。そして最初の里親はショーン・ペン夫人のロビン・ライト・ペン。派手だけどちょっと軽い女役です。しかし、激情型の女を見事に演じています。そして二人目の里親役は、あのレニー・ゼルウィガー!!心が弱い女性を好演。しかし、彼女って本当に芸の域が広い・・。そしてアストリッドのボーイ・フレンド役は「あの頃ペニー・レインと」のパトリック・フュジットです。ちなみに「ホワイトオランダー」とは夾竹桃(きょうちくとう)の事。身を守るために茎や葉からは毒性が強い乳液が出るんだそうです。まさに美しくあるための毒を放つ、この映画のイングリッドのようですね。
クリスティーナの好きなコト  監督:ロジャー・カンブル  出演:キャメロン・ディアス、クリスティーナ・アップルゲイト
The Sweetest Thing  2002年 アメリカ映画
クリスティーナは本気の恋より気軽な恋を楽しんでいるが、すでに28歳になりそんな自分をちょっとだけ心配している。その日はルームメイトのジェーンが失恋したので、彼女を励ますため親友のコートニーを伴ってクラブへと。そこでジェーンのために声を掛けた男ピーターに不思議な感情を抱いてしまう。ホテルの部屋でのパーティーに呼ばれたのに、なぜか彼女はすっぽかしてしまう。しかし、そんなクリスティーナを見てコートニーは彼女が本気で恋をしてしまった事を見抜いていしまう。サマセットの町でピーターの兄の結婚式があると聞いていた二人は、彼の結婚式に突入し、ピーターと再会する事を決意する。しかし、その結婚式はピーター本人の式だった・・・・。
私評:Don't go looking for Mr, Right. Look for Mr. Right Now!! ・・・「誠実君なんか探さないで、今楽しめる男を探しなさい!」。これは劇中でクリスティーナことキャメロンが言うセリフですが、彼女が言うと実に様になってしまう。映画の中でも男にモテモテのいい女役なのですが、キャメロンが演じると嫌味じゃないのが不思議。これは女性が見てもそう思えるんじゃないかな??今回も自慢のヒップを振りながら大暴れ。キャメロンってやっぱりコメディエンヌでいて欲しいな〜。最近は「セックス&シティ」がヒットしているように、女性が本音で語る映画がヒットしますよね。今回は映画版だという事もあり、シモネタも全開!!しかし、ここまでやってくれれば気持ちがイイですよ。彼女の親友役のクリスティーナ・アップルゲイトがまた、めちゃ面白いんですよ。キャメロンと二人でずっと漫才やってる感じです。そして男にフラれてばかりのジェーンを演じるのがセルマ・ブレア。彼女ってクールなイメージがあったのに、この映画ではそのイメージを完全にぶち壊してます(笑)。アルマゲドンのテーマのシーンは最高でした。もう、椅子から落ちるくらい笑ってしまった。きっとエアロスミスも喜んでいるでしょう・・??そしてクリスティーナとコートニーが田舎のブティックでファッションショーをするシーンも最高!!笑えた〜!!しかし、男としてあまり女の本音は聞きたくないという気もしますが、どうでしょう?やはり秘密が多い方が良くない??
ビロウ  監督:デヴィッド・トゥーヒー  出演:マシュー・デイビス、オリヴィア・ウィリアムズ
Below  2002年 アメリカ映画
第2次世界大戦中。アメリカの潜水艦タイガー・シャークは大西洋上でイギリスの病院船の生存者救出の命令を受けた。現場には3人の生存者がいた。その中には看護婦のクレアがいたが、当時潜水艦に女性が乗る事は不吉とされていて、艦内は不穏な空気が流れる。そんな中でドイツの戦艦が彼らの潜水艦に接近してくる。潜航し沈黙のままに彼らの行き過ぎるのを待とうとしていたその時、突如ベニー・グッドマンのレコードの音楽が艦内に流れた。その音を聞き取ったドイツ艦は、彼らに爆雷の雨を降らせた。それ以降も怪奇な現象が艦内で次々と起こり始める。そして何者かによって潜水艦は暴走をし始める。果たして目に見えぬ者の正体とは?そしてその者の目的は??事件はこの潜水艦のクルーの意外な秘密に隠されていた・・・・・。
私評:とんだ疫病神だぜ・・・潜水艦映画は数々ありましたが、どれも共通しているのはあの閉塞感ですよね。映画で見ているこちらまで息苦しくなってくる。しかし、今回のアメリカの潜水艦はUボートなんかと比べると意外と広いんです。これは実際にそうだったらしい。前半部分で潜水艦の内部、そしてダイブする際の映像、ドイツ艦からの爆雷、そして(これは初めて見たのですが)ドイツ艦によるフック作戦(?)など、すごくリアルで手に汗を握るシーンが続く。そして中盤からは怪奇な事件が起こり、ホラーなテイストの映画へと変わっていきます。今回は宣伝でも言ってますが「外の敵と中の敵」の挟み撃ちに会うところが面白いですね。そしてついにゴーストの出現から、潜水艦で起きたある事件が浮き彫りにされていく。この辺りの展開もすごく面白いです。次々と起こる悲惨な事件は、けっこうグロテスクだったりするのですがこういう映画にありがちな、変なしこりがまったく残らない映画です。キャストはあまり有名な人はいませんが、潜水艦に乗り込んでくる女性は「ラッキーブレイク」の人でした。
ピノッキオ  監督・主演:ロベルト・ベニーニ  出演:ニコレッタ・ブラスキ、カルロ・ジェフレ
Picocchio  2002年 イタリア映画
フィレンツェの町を白い馬車が走っていく。(馬車だけど、引っ張っているのはねずみ) それに乗っていた青い妖精は蝶を解き放つと、その蝶は一本の丸太に止まった。するとその丸太はまるで生き物のように動き出す。そして町の中を飛び跳ねていく。そして丸太はジェペットの家の前で止まった。ジェペットはその丸太を見て、すぐにインスピレーションが沸いた。「これから人形を作ろう」。まるで丸太が彫って欲しいと言っているかのようにジェペットはあっという間に人形を作り上げた。そしてその人形を「ピノッキオ」と名付けた。驚いた事にピノッキオは言葉を話した。(しかも、すごくおしゃべり) 外の世界を見て学校に行きたいと言い出したピノッキオのため、貧乏なジェペットは衣服を売って教科書を手に入れた。さっそく、学校へと向かったピノッキオだったが途中の人形小屋につい足が向いてしまう。そこには彼と同じ人形たちがショーを行っていた。小屋の親方に気に入られたピノッキオは5枚の金貨を手にする。しかし、お人好しで世間知らずな彼は、あくどい猫と狐に騙されてしまう・・・・・。
私評:あ〜、パパー!パパー!僕が悪かったよ〜。イイ子になるよ〜・・・・世界中で超有名な童話が、あの「ライフ・イズ・ビューティフル」のロベルト・ベニーニによって映像化された。しかも、ピノッキオをベニーニ自身が演じているのです。最初に鼻の伸びる予告編を見たとき、正直言って引いちゃいました(笑)。「なんでベニーニがピノッキオなんだよ!!」映画で初めてベニーニが出てくるシーンでも、そんな不安は拭いきれず・・。ところがこのおしゃべりで世間知らずな少年がベニーニと重なって来たのです。私はベニーニのあの煩さが嫌いだったのですが、これって煩い子供と同じだったんですね。ストーリーはあえて書くまでもないくらい有名なのですが、今回はオリジナルに忠実に作ってあるらしい。(オリジナル版を知らないので・・)そしてイタリア映画としては破格の制作費を注ぎ込んだらしいのですが、それはフィレンツェの町のセットや、随所に登場する特撮などで頷けます。ピノッキオの心の支えになる青い妖精は、「ライフ・イズ・ビューティフル」でも、ベニーニの妻を演じたニコレッタ・ブラスキ。(実生活でもパートナーだそうです)この映画はかなり子供向けに作られていますが、大人の私には懐かしい感じがする映画でした。ベニーニは相変わらず苦手ですが、この映画はOKでした!


前回の記事も読んでね〜!



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