2002/2/11号

今回のラインナップもバラバラだな〜。2週間で8本観ました。
今週も試写会がいっぱいあるので頑張って通います・・・。

ストーミー・ナイト  監督:ラム・ゴパル・ヴァルマ  主演:ウルミラー・マートンドカル、マノージ・バージパイ
Kaun  1999年 インド映画
一人留守番をしている若い女がいた。外は土砂降りの雨で、気分はブルー。しかも、テレビのニュースは続発する殺人事件の報道を繰り返し放送している。そんな時、チャイムが鳴った。ずぶ濡れの男は家を間違えたらしい。しかし、彼は執拗に彼女に話しかける。ただ、雨宿りがしたいだけだというが・・。仕方なく彼を家に入れた彼女だったが、彼への疑いはピークに達する。そして逃げ出そうとしたドアの外にはピストルを持ったもう一人の男が・・・・。
私評:♪ニャ〜ニャニャニャ〜ニャ〜♪映画を見終わったあと、この歌が耳について離れない。私はマサラムービーは嫌いですが、インド映画は決して嫌いなわけではございませんので。サタジット・レイのような素晴らしい監督もインドは輩出しているのです。そしてこの映画がどうかというと、超B級テイストをプンプン臭わせた、いわゆるキワ物系の映画。しかし、この映画で評価したいのは恐ろしいまでのインパクト。演技がどうだとか、演出がどうだとか、シナリオがどうだとかは置いといて(笑)、主演の女性の「これでもか〜!!!」と言わんばかりのオーバーアクション、必要の3倍以上の大音響、そしてめっちゃしつこい演出。作り手はマジなのでしょうが、笑いまくってしまいました。でも、ラストのオチはなかなかでしたよ。3人+猫一匹+死体が一個しか登場しない映画なので、低予算ではあるのですが、それゆえの捻りや技が随所に見られます。マサラ・ムービーと決定的に違うのが、上映時間の短さと歌と踊りがないことです(爆笑)。キワ物映画ですが、見てみる?? 
地獄の黙示録 特別編  監督:フランシス・フォード・コッポラ  主演:マーロン・ブランド、マーティン・シーン
Apocalypse Now Recux  2001年 アメリカ映画
ベトナム戦争末期のサイゴンでウィラード大尉はミッションが下るのを待っていた。そしてようやく彼に下された特命はカンボジアのジャングルに消えた米軍特殊舞台のエリート中のエリートであるカーツ大佐の抹殺だった。カーツは原住民と米兵を囲い、自らの牙城を築き、その王国に君臨しているという。そして4人の部下と共にナン川を遡っていく。様々な試練を乗り越え、彼らはカーツの元へと急ぐ。しかし、ウィラードはカーツの資料に目を通しているうちに、彼のカリスマ性に魅せられ、自分のミッションに疑いを抱き始める・・・・・
私評:恐怖だ・・・、地獄の恐怖だ・・・・。1979年、私はこの映画の公開版を観た。コッポラといえば、その時にはすでに「ゴッドファーザー」という名作をこの世に送り出し、巨匠と呼ばれていたがこの映画は彼を狂気に走らせ、完成はしないのでは?と騒がれていた映画だった。当時、高校生だった私は、あまりのスケール大きさに、ただただ唖然とするばかりだった。しかし、その時はこの映画のメインテーマである「人間の狂気」には触れる事ができなかった。その後、何度かこの映画をビデオで見て、コッポラが一番語りたかったであろう「恐怖」の数々を感じ取る事ができた。それは狂った人間の「恐怖」であり、それを司る「体制」の恐怖だった。そして今回、久しぶりにこの映画を、しかも大スクリーンで観て感じ取った事。それは「美しさ」だった。この映画は「狂気が創りあげたアート」だった。それはヘリ空挺師団の空爆シーン然り、竹林を焼くナパーム然り、そしてまたアメリカ軍最後の拠点、ド・ラン橋の異様な明かりと炎だったり。思わずため息がでた。そしてこの映画は最強のキャスティングを擁している。混沌としたジャングルの中で、最後まで平静を保ちつづけ、ほとんど仙人と化したカーツを演じるマーロン・ブランドの存在感、爆弾の雨の中でサーフィンを試みるクレイジーなカウボーイ隊長がロバート・デュバル、カーツに傾倒する狂気の写真家はデニス・ホッパー、そして若き日のローレンス・フィッシュバーンの姿も。そしてマーティン・シーンの最高傑作ですね。Must See This Time!
 カンダハール  監督:マフセン・マフマルバフ  主演:ニルファー・パズィラ、ハッサン・タンタイ
KANDAHAR  2001年 イラン・フランス映画
アフガニスタンからカナダに亡命した女性ナファスは、妹からの悲痛な手紙を受け取り、ふたたび祖国へと戻ってきた。妹は地雷を踏み、足をなくしてしまったため亡命を諦め、そしてカンダハールでのあまりに悲惨な現況を嘆き、次の日蝕の日に命を断つというのだ。手紙を受け取りすぐに妹の元へと旅だったナファスだったが、手続きなどに時間がかかり数ヶ月を無駄にしてしまい、日蝕まで後3日と迫っていた。タリバン政権の元では女性は、ほとんど自由が利かず旅は難航する。そして彼女はあまりに悲惨なアフガンの惨状を目の当たりにするのだった・・・・。


私評:かわいいお人形が落ちていても、触っては行けません。それは爆弾です・・・。話題騒然のアフガニスタンの実情を克明に語った問題作です。この映画のベースになったのは主演のニルファーの元に届いた友人からの手紙だった。(ニルファーは映画の中と同様、アフガニスタンからカナダへと亡命している)そしてこの話を監督のマフマルバフへと告げ、アフガニスタンへの旅を映画にして欲しいと懇願した事が発端になっているのだ。最終的にはフィクション映画になったが映画の中で語られる、数々の出来事は私の常識をはるかに超えた出来事でした。善悪の区別もつかない無知な少年、義足を作る工場だけが儲かっているという現状、地雷の恐怖、そして女性への不当な扱い・・。ストーリーはあってないようなもの。しかし、平和な国で過ごしている私たちはこんな惨状の元でも生きている人たちがいるということを認識しなくてはいけないのかもしれない。そこはまさに死と隣り合わせの、この世の地獄に見えた。
マリー・アントワネットの首飾り  監督:チャールズ・シャイア  主演:ヒラリー・スワンク、ジョエリー・リチャードソン
Affair of the Necklace  2001年 アメリカ映画
王家の直系の名家ヴァロリア家に生まれたジャンヌは優しい両親と幸せな暮しをしていた。しかし、父親の政敵の手により領地は没収され、父親は嬲り殺され、母親も父の後を追うように他界しジャンヌは9歳にして孤児になってしまう。彼女の手に残されたのはヴァロリア家の家系図だけだった。15年後、美しく成長したジャンヌは爵位を得るため遊び人の伯爵ニコルと結婚した、彼女には失った家と領地を取り戻すという大きな野望があったのだ。そして彼女は王妃マリー・アントワネットに近づこうとする。そんな折、王家の御用達の宝石屋がとんでもないネックレスを作りマリーに売込みに行く・・・・。

私評:私が欲しいのは失った家と領地だけです・・・。愛する両親を失い、以来きっと辛い思いばかりをしてきたジャンヌには、幼少時代の家族との幸せな日々が生きる原動力であり、それを取り戻す事によって幸せになれると信じていたのでしょう。しかし、彼女の企てたネックレス事件がルイ王朝を倒す引き鉄になるとは・・・。放蕩三昧のルイ16世とマリー・アントワネットを斬首台に導いたのだ。女の執念とは実に恐ろしいですね(笑)。そしてこの執念深い女を演じるのは、イマイチパッとしないヒラリー・スワンク。しかし、彼女以外に誰がこの役を?と考えると他に思い浮かばない。逆に脇役なのに華があるマリー・アントワネット役のジョエリー・リチャードソン。彼女は「パトリオット」の時から目をつけてました。枢機卿にはシェイクスピア役者のジョナサン・プライス。彼が良いです。そしてジャンヌと一緒に枢機卿をたぶらかす、怪しいまじない師がクリストファー・ウォーケン。ピッタリでした。映像の美しさ、そして音楽の選曲の良さも要チェックです。しかし、あのネックレスはそんなに高価なものには見えませんでした。
害虫  監督: 塩田明彦  主演:宮崎あおい、蒼井優、りょう、田辺誠一
Harmful Insect  2001年 日本映画
サチ子は中学一年生の女の子。母親が情緒不安定で手首を切ったことがあり、小学生時代には担任の教師と付き合ったりして他の子よりは大人びていた。しかし、そんな彼女は学校でも阻害され、しだいに学校には行かなくなる。そんな時にに出会ったのがタカオだった。街のチンピラの彼とは不思議と気が合い、次第に時間を共有し始める。そしてタカオに紹介された不思議な男キュウゾウと一時の楽しい時間を過ごす。しかし、サチ子はクラスメートの夏子の熱心な誘いで、ふたたび学校へと通い出す。そんな彼女に痛烈な事件が次々と襲う。いたたまれなくなったサチ子は、小学校時代の担任・緒形を訪ねることにした・・・・。

私評:なんでもない・・・・・。これが彼女のラストのセリフだった。でも、全然なんでもない事なんてない。運命に見捨てられたかのように怒涛の如く襲いかかる不幸を、涙も見せずにぐっと堪える宮崎あおいちゃんの姿が印象的だった。あおいちゃんといえば「ユリイカ」のまったくセリフなしの演技が印象的だったが、今回もほとんど口を利かないちょっと捻くれた女の子がピッタリでした。時折見せる笑顔がめちゃかわいい・・。しかし、あのラストは良いんだけど不満が残る。これはもちろん制作側の意向なんでしょうが、このあと、いったいどうなっていくのかが実に知りたいところです。サチ子の友人の夏子は「リリィ・シュシュ・・」で鮮烈デビューをした蒼井優ちゃん。彼女もすごく良いです。そして母親役がりょう。めちゃ心が弱い女を演じた彼女もすごく良いです。チョイ役陣の寺島進、光石研、大森南朋、伊勢谷友介らも、お見逃しなく。
ムッシュ・カステラの恋  監督・出演:アニエス・ジャウイ  主演:ジャン・ピエール=バクリ、アンヌ・アルヴァロ
Le Gout Des Autres  2000年 フランス映画
ムッシュ・カステラは、会社の社長。不満がない事もないが、一応人並み以上の生活を送っている。小生意気なコンサルタントからの勧めで英会話を始めようとするが、すぐに断ってしまう。しかし、その夜妻と見に行った芝居で主役を演じていたのは、あの英会話教師のクララだった。その姿に一目ボレしてしまったカステラは、すぐに英会話のレッスンを再開。果敢に彼女にアタックするが見事に失恋してしまう。そしてカステラの周りの人間が自分をどう見ていたかを悟ってしまう・・・・。

私評:「いつ結婚する?」 「今の仕事が終わったらすぐにどう?」「良いわね!」「冗談だよ。」「私もよ!」・・・またまた、小粋な群衆劇に出会えました。歳はとっても、誰もがみんな子供みたいな恋愛をするんですよね。ロマンチストなフランス人ならではの演出が可笑しくもあり、微笑ましくもあり、そして意地らしくもあり・・。主人公のムッシュ・カステラのキャラクターが良いですね〜。能天気で、軽薄で、いわゆる田舎者。自分をバカにしていると信じているコンサルタントの若造以外には、けっこう気を使って好かれようとしている。彼の妻は典型的なワガママお嬢さま。なんでも自分の思う通りにならないと機嫌が悪いし,カステラに文句をタラタラ・・。彼の運転手はアメリカで浮気をしているであろうGFの事を信じて疑わない律儀な男。そして彼とつるんでいるボディーガードはバーの女と・・・。そのバーの女は男運が悪くても、いつか本当の愛に出会う日を心待ちにしている。そして彼女の友達がカステラが好きになる女優・・。こんな人間関係です。でも、みんなが不器用なんですよ。押したり引いたりができなくて,押してばかりか引いてばかりの人ばかり。それって純な証拠なのかも?? でも、カステラにとって一番ショックだったのは、自分はもっとみんなに認められていると錯覚していたこと。意外と自分が思っているほど,周りの人は自分の事なんて思っていないのかも??たとえ、それが夫婦でも・・。数々の試練を乗り越えたカステラの笑顔はステキでした。
金色の嘘  監督:ジェイムズ・アイボリー  主演:ユマ・サーマン、ケイト・ベッキンセール
The Golden Bowl  2000年 イギリス・フランス・アメリカ映画
20世紀初頭。ローマの古城で逢引をするアメリーゴ卿とシャーロット。シャーロットは彼を心から愛していたが、彼はアメリカ人の億万長者の娘マギーと婚約していた。また、マギーはシャーロットの親友でもあったが、マギーは二人のかつてのロマンスは知らなかった。数年後、幸せに暮らすアメリーゴとマギーの元へ、シャーロットが訪ねてくる。そしてシャーロットはマギーの父親アダムから求婚される。マギーは心から喜んだがアメリーゴは複雑な心境だった。数年後、シャーロットはアダムの妻として社交界で人気者になっていた。しかし、彼女のそばにはいつもアメリーゴがいた。しかし、マギーとアダムは気にする事もなく,二人を信じていた。その一方で、この父娘はあまりに親密で、シャーロットとアメリーゴには入り込めない絆があった。そしてシャーロットとアメリーゴはついに一線を超え、ふたたび結ばれてしまう・・・・。

私評:あなたなしで未来なんて・・。私は身ひとつで今日にでも出ていけるわ。あなたと・・・・・エドワード朝のロンドンを舞台にした男と女の恋の駆け引き。嘘が嘘を呼び、仕舞には身動きができなくなるというのは定番なのですが、複雑に絡み合った人間関係、欲望、そして裏切りが話を一層複雑にして盛り上げます。でも,私がこの映画を見に行った一番の理由は、ジェームズ・アイボリーの映画だから。まるで,絵葉書を切り取ったような美しい景色、そして絵画、彫刻を見事に画面に納めています。ヨーロッパならではの美しい景色は本当に溜息が出るくらい・・。そしてその美しさに負けないくらいゴージャスなユマ・サーマン。彼女は本当に良い女優になりましたね。見た目だけでなく演技派になってきました。そして彼女のゴージャスさを引き立てるためなのか?実に地味なケイト・ベッキンセール。そして老い役も板についてきたニック・ノルティ、そして二人の秘密を知っているおばさんを演じるアンジェリカ・ヒューストン、彼女の夫がジェイムズ・フォックス、アメリーゴ卿はジェレミー・ノーザムと完璧な布陣。ゴージャスなイギリスを堪能しました。
ピアニスト  監督:ミヒャエル・ハネケ  主演:イザベル・ユペール、ブノワ・マジメル
La Pianiste  2001年 フランス・オーストリア合作
厳格な中年のピアノ教師エリカ。彼女は厳しい母親のせいで、ロマンスもないままこの歳になってしまった。その偏った人生は彼女に、病的な趣味を植えつけた。アダルトショップやドライブ・インシアターでのセックスの覗き、そしてマゾヒストでもあった。しかし、彼女は鉄仮面のような表情をくずす事はなかった。そんな彼女の前に爽やかな美青年が現れる。彼の名はワルター。しかも、ワルターはエリカの演奏を聞き人目ボレしてしまう。そして彼女に自分の心を打ち明けるが、彼女は意外な要求を彼につきつけるのだった・・・・。

私評:私には感情がないの。仮にあっても理性が勝るわ・・・。こんなに気持ち悪い女は見るのもイヤだ。でも、そんな嫌悪感を抱かせる,キモイ女を演じたイザベル・ユペールはある意味すごい女優なのかも??初っ端のアダルト・ショップのシーンで「おえー!」って感じでした。しかも、そんな彼女をブノワ君が好きになるのだ。しかも、あんな事をされて・・。それでも,好きでいられるか??私はいられません(笑)。また、輪をかけて気持ち悪いのがエリカの母親のアニー・ジランド。この母娘の関係も実に変です。しかし、カンヌはどうしてこう言う作品を選ぶのでしょうか?めっちゃ神経を逆撫でされました。この映画で良いのはシューベルトを始めとしたクラシック音楽の数々。特にピアノ・ソナタは良いです。この映画のラストは、ちょっと尻切れトンボだったので、この先がどうなるのかが、知りたいです。果たして・・・。インパクト勝負の映画ですね。


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