2003/2/9号

今回はゴキゲンなミュージカルがイチ押し。アカデミー賞最有力候補の
呼び声も高いが、それだけの力を持った映画です。

シカゴ  監督 :ロブ・マーシャル  出演:レニー・ゼルウィガー、リチャード・ギア、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ
CHICAGO  2002年 アメリカ映画
今週のイチ押し:1920年代、シカゴ。ロキシーは今日も憧れのヴェルマのステージに見とれていた。彼女が歌う「オール・ザット・ジャズ」をいつか自分も歌うことを夢見ながら・・。ロキシーは彼女をクラブのマネージャーに紹介すると嘘をついた不倫相手を撃ち殺し監獄に送られる。しかも、彼女の憧れヴェルマも不倫をしていた自分の夫と妹を殺し同じ監獄に入っていた。敏腕検察官に死刑を予告されたロキシーは看守のママの手助けで、今まで裁判では無敗を誇る悪徳弁護士ビリーを紹介される。ビリーはマスコミを煽り、ロキシーは監獄にいながら時の人となってしまう。しかも、その人気はかつての大スターヴェルマを凌ぐほどに。そしていよいよ裁判の日がやってくる・・・・
私評:夫殺しの女が一人では・・・、でも二人なら!!・・・ボブ・フォッシーの大ヒットミュージカルの映画化。しかも、監督はこの舞台の振り付けを担当したロブ・マーシャル。映画はまさにこてこてのミュージカル映画です。歌に踊りに、そしてセリフまでもが流れるような展開。2時間弱の映画ですが、終わるまでは早かったです。この主演の3人が歌って、踊るなんて想像もでいませんでしたが、なかなかのものです。特にキャサリンは歌もうまいし、ダンスも豪快!彼女の「オール・ザット・ジャズ」は最高でした!レニー嬢はなんと言ってもリチャード・ギアとの掛け合いが面白い。裁判のシーンは大爆笑。そしてレニーを腹話術の人形にしてギアが歌うシーンもめちゃ面白かった。この3人を見てるだけでもこの映画は充分楽しめました。そしてこの映画のもう一つの見所はセットです。現実の世界から、いきなりステージにトリップするところの照明もすごく印象的。そしてそのシーンのアタマに必ず登場するのがティ・ディックス。彼の"Ladies and Gentlemen"で歌が始まるのですが、めちゃカッコイイです〜。そしてロキシーの気弱な夫役のジョン・C・ライリーがイイ味出してますよ〜。彼が歌う「ミスター・セロファン」もグッドです。ミュージカルの面白さがいっぱい詰まったこの傑作。映画を見終えた後は、思わず顔がニコニコしちゃいました。今回の試写会ではサントラもプレゼントしてもらったのですが、これがまた最高!聞きまくってます。
銀幕のメモワール  監督:ピエール・グランブル  出演:ブノワ・マジメル、ジャンヌ・モロー
Lisa  2001年 フランス映画
若い映画監督のサムは第2次世界大戦前に一世を風靡した伝説の銀幕スター、シルヴァン・マルソーの伝記ドキュメンタリーの企画を立てた。彼は手に入れた一枚の写真に写っていた女性、リザを探し当てた。ところが彼女はなかなかシルヴァンについて語ろうとしない。しかし、サムの誠意に打たれたリザは若き日の生涯の恋について語り始める。彼との出会いは彼女が収容されていたサナトリウムだった。偶然、映画の撮影でこの地にやってきたシルヴァンはリザを見て一目惚れ。リザも22年の生涯で初めて恋をした。二人はどんどん惹かれ合っていく。ところが第2次世界大戦が勃発し、シルヴァンは兵役にとられてしまう。そしてリザは彼が戦地で捕虜収容所に入れられたというニュースを、シルヴァンの母親から聞かされる・・・その時、サムはナチにより戦争孤児になった両親の話を聞かされる・・・・
私評:「大切なルールがひとつ。キスはダメ。病気がうつってしまうわ。」「そんな事は気にしない。僕にうつしてくれ」・・・素晴らしい題材の映画を、丁寧に作り上げた秀作でした。過去の事象を探るうちに、だんだんと過去と現在が一つになっていく。この映画はリザの回想録と、サムの成長を両方から描いた作品です。リザはフランス映画界の重鎮ジャンヌ・モローが、そしてサムはフランス映画界のプリンス、ブノワ・マジメルが見事に演じています。そして若き日のリザを「TAXI」のマリオン・コティヤール、シルヴァン役はサガモア・ステヴナンが演じているのですが、この二人がまた良いんですよ・・。そして物語は過去にあった悲劇へと続いていきます。そして現在では、リザもある種の悟りを開き、サムは一皮向けて自分が作るべき映画の方向性を見出していく。最近、第2次世界大戦でのナチスに酷い目に遭わされるユダヤ人の映画がたくさん来ていますね。しかし、この映画はフランスが舞台なので、また一味違う感慨深さがありました・・・・。今日は初日だったので、プレゼントとしてマンナンフーズの「エステダイエット」を貰いました(笑)。
インプラント  監督:ロバート・ハーマン  出演:ローラ・リーガン、マーク・ブルーカス
They  2002年 アメリカ映画
大学院の卒業面接を控えナーバスになっているジュリアは、幼馴染のビリーに呼び出される。彼は体に奇妙な傷を植えられ、しかも何者かが彼を殺しに来ると怯えきっていた。そしてあろう事か、彼女の目の前で自殺をしてしまう。ビリーの葬儀で会った、彼の友人からも奇妙な事を聞かされる。彼女はかつて「夜驚症」だった。ビリーも、そしてビリーの友人の二人も・・・。そしてビリーの友人二人も、忽然と姿を消してしまう。「彼ら」の次のターゲットはジュリアだった。彼女も額に傷を植えられてしまう。そして闇の中に蠢く「彼ら」は執拗に彼女を追い回す・・・・。
私評:暗闇に気をつけろ。そして子供の泣き声にも・・・俺は助からない・・・・・この映画はいわゆるスプラッター映画ではありません。暗闇に蠢く怪物が、獲物をどんどん暗闇に誘い込み、そして連れ去ってしまう。この暗闇というのが私たちの日常に存在する物陰だったり、ドアの向こうだったりするのです。そして物陰からの囁くような物音。それも日常で聞き覚えのある音だったり・・。その辺りで思い切りリアルなイマジネーションを抱かせておいて、ついに「彼ら」が登場。でも、彼らの目的は分からずじまい・・。製作にウェス・クレイブンが携わっているせいか、この映画はある意味「エルム街の悪夢」の番外編のようにも思えました。監督はあの名作「ヒッチャー」のロバート・ハーマン。この映画の怪物のしつこさはまさに「ヒッチャー」のジョン・ライダーを髣髴させます。主人公の目線でいつも暗闇に追いかけられる展開は、まさに正統派ホラー映画と呼ぶにふさわしい作品といえるでしょう。
アレックス  監督:ギャスパー・ノエ  出演:モニカ・ベルッチ、ヴァンサン・カッセル
IRREVERSIBLE  2002年 フランス映画
マルキュスとピエールはある男を追っていた。ゲイの集まる場所で、二人はついにある男にたどり着く。冷静だったピエールもついに切れた。そして男の顔にイヤというほど打撃を加えた。なぜなら、その男は二人がもっとも愛する女アレックスを犯し、そしてズタズタになるまで暴行を加えた男だと信じたからだ。(実は別人) あの時、パーティー会場を出る彼女を、一人きりにしなければ・・。そんな後悔は怒りを増幅させる。マルキュスは、このパーティーの前に彼女と交わした愛の時間を思い出していた。それはまさに至福のひと時だったのに・・・・・・
私評:未来は既に決まっているそうよ・・・・この映画は昨年のファンタスティック映画祭のクロージングで、しかもスニーク・プレビューで公開されすごい反響を呼んだ映画です。実は私はその時にこの映画を見たのですが、はっきり言って嫌悪感以外の何物も心には残りませんでした。しかし、この映画は究極の地獄を冒頭に持ってきて、徐々に幸せだった時間に逆戻りしていくという構成になっています。それゆえいくらか救われる部分もあるのですが・・・。今日、2回目のこの映画を見た感想はやはり前回と同じでした。私の中ではどうしても許せない領域の映画なんですね。ラストの映像を見たときに陶酔するなんて事は、絶対にありえない。だって、彼女が辿る地獄のような行く先を私たちは知っているのだから・・。ギャスパー・ノエの映画は全て見ていますが、どれ一つ私には合いませんでした。彼の映画を良いとか、悪いとか評価するのではなく、私は生理的にまったく合わないという事です。アレックスも賛否両論が飛び交う問題作です。もちろん、この映画を素晴らしいと思われる人も多々いると思います。しかし、私はもう2度とこの映画は見ません。そして恐らくギャスパー・ノエの映画も・・・。それは私個人の中で、自分の倫理のボーダーラインを超えてしまっているからです。主演のモニカ・ベルッチの美しさが、この映画の悲劇をより一層引き立てるのです。そしてほとんど狂人のようになってしまうヴァンサン・カッセルも本当に痛々しい。


前回の記事も読んでね〜!



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