今回も素晴らしい映画のオン・パレード。カンヌとは相性が悪かった私が、
久々に感動したパルムドール作品がイチ押しです・・・・。
戦場のピアニスト | 監督 :ロマン・ポランスキー | 出演:エイドリアン・ブロディ、トーマス・クレッチマン | |
The Pianist | 2002年 ポーランド・フランス映画 | ||
今週のイチ押し:1939年9月、ドイツ軍がポーランドに侵攻した日ユダヤ人のピアニスト、ウワディク・シュピルマンはラジオ局でピアノを奏でていた。その日から徐々に始まったドイツ軍によるユダヤ人の迫害。ウワディクの家族も例外ではなかった。そしてついにゲットーへ送られそうになるが、ウワディクだけは救いの手を差し伸べられ汽車に乗らずに済んだ。汽車に乗ったユダヤ人は二度と戻っては来なかった。その場は助かったもののウワディクは表に出ることもできず、逃亡を重ねる日々を送っていた。しかし、彼の目の前で数え切れないほどのユダヤ人が殺されるのを目の当たりにするのだった・・・ | |||
私評:汽車に乗って殺された方がマシだったかもしれない・・ロマン・ポランスキー監督が満を持して作り上げた第2次世界大戦の悲劇。しかし、この映画の主人公ウワディク・シュピルマンは実在のピアニスト。そして彼の回想録がこの映画だ。とにかく恐ろしい。まるで虫けらのように次々と殺されていくユダヤ人たち。そしてそれを平然とやってのけるドイツ兵。これはまさに地獄絵だった。そんな中でも生まれながらのピアニストウワディクはいつかまた、ピアノの前に座ることを夢見る。匿われた部屋に置いてあったピアノを弾きたくても音が出せず、鍵盤に触れずにピアノを弾くシーンは素晴らしかった。今までホロコースト物の映画はかなり見てきましたが、これはその決定版です。思わず目を逸らしたくなるようなシーンも多々ありますが、これは全て実際に起きた事実なのです。いつの時代でも、この悲劇を私たちは忘れてはいけない。そして向かい合わなければいけない。ここ数年のカンヌ作品とは、どうも相性が悪かったのですが(「息子の部屋」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「鬼が来た」「ピアニスト」・・・)、この映画はシビレタ! | |||
13階段 | 監督:長澤雅彦 | 出演:反町隆史、山崎努、笑福亭鶴瓶 | |
13 Steps | 2002年 日本映画 | ||
今週のイチ押し:喧嘩相手を殺害してしまい服役中の青年三上は、仮出所を果たした。そんな彼に刑務官の南郷は、服役中の死刑囚の冤罪を晴らすための調査の同行を依頼する。しかも、死刑囚は事件前後の記憶を無くしていて、唯一その夜「階段」を登っているところを思い出す。死刑執行までのタイムリミットが迫る中、二人の捜査は少しずつ真実へと近づいていく。そんな時、南郷がかつて死刑執行をした事実を語り始める。果たして彼らは真実へと辿りつくことができるのか?そして死刑囚の冤罪を晴らす事ができるのか??・・・・ | |||
私評:貴様も死んでしまえ!・・・・これはミステリーというジャンルだけでは括りきれない作品だった。死刑の是非、そして人の命の重さを切々と語りかける映画だった。死刑になって当たり前の人間もいることも否めないが、そうでない人間だっているかもしれない。この映画の中で山崎努演じる南郷が、かつて絞首台のボタンを押して死刑にした男のエピソードは心臓を掴まれる思いだった(死刑囚を演じるのは雨上がり決死隊の宮迫)。そしてかつて映画では描かれる事の少なかった、死刑を前に泣きわめく死刑囚の話も、かなり衝撃的だった。この映画はミステリーを備えた、重い人間ドラマなのです。反町が演じる三上は、寡黙で到底ヒーローではない。それゆえ、反町のような男が三上を演じる必要があったのでは??山崎努は最高でした!。そして脇役の、鶴瓶、大杉漣、井川比佐志、大滝秀二らが、しっかりと脇を固め映画に重みを加えます。監督は「ココニイルコト」「ソウル」の長澤雅彦。この映画でも確実な演出を見せています。しかし、私が一番印象的だったのは、寺島進と宮迫の二人でした。 | |||
裸足の1500マイル | 監督:フィリップ・ノイス | 出演:エヴァーリン・サンビ、ケネス・ブラナー | |
Rabbit Proof Fence | 2002年 オーストラリア映画 | ||
1931年、西オーストラリア。オーストラリア政府は先住民族アボリジニの子どもたちを親から強制的に隔離し、白人社会に適応させようとする政策を実施していた。14歳のアボリジニの少女モリーは、8歳になる妹のデイジー、従姉妹で10歳のグレイシーはある日突然、政府の保護局に母親の目の前で捕まってしまう。そして彼女たちは故郷から2400kmも離れた施設に入れられてしまう。しかし、モリーは幼い二人の少女を連れて施設を逃げ出す。そして故郷を目指してひたすら歩き続けた。そしてモリーは故郷でも見たウサギ避けのフェンスを見つける。これを辿れば故郷に着ける!しかし、施設は彼女たちを捕らえるため追っ手を放った・・・・ | |||
私評:お母さんに会いたい!・・・これも実話です。この映画の小説を書いたのは、主人公の少女モリーの実の娘です。そしてこの小説に惚れ込んだフィリップ・ノイスが監督・脚本を買って出たのです。ノイスというとアクション系の監督のイメージが強かったのですが、彼の祖国であるオーストラリアの歴史の汚点でもある、この政策を自らの手で描きたかったのでしょう。しかし、これはまさに奇跡です。3人の少女が90日もかけて1500マイルも「歩き続けた」、そしてついには成し遂げたのです。(途中でひとりは捕まってしまうけど・・)主演の少女は恐らく無名の役者だと思いますが、すばらしい演技を見せます。そして彼女たちを捕らえる政府の高官役は、イギリスの名優ケネス・ブラナー。ラストシーンで(今はすっかりおばあさんになった)本物のモリーとデイジーの映像が入ります。感動の一作です! | |||
ウエルカム!ヘブン | 監督:アグスティン・ディアス・ヤネス | 出演:ペネロペ・クルス、ビクトリア・アブリル | |
Welcome! Heaven | 2001年 スペイン映画 | ||
最近悪人ばかりが増え、天国は過疎状態、地獄は満員御礼。そんな中で天国の作戦本部長のマリーナは一人の男に目を付ける。彼の名前はマニ。彼をなんとしても天国に呼び寄せたい!そしてマリーナは天国イチの歌手ロラを彼の妻として送り出した。そして彼が今まで犯した罪を購う手伝いをする。しかし、地獄も彼を呼びよせんと、強力な使者を送り出した。セクシーな地獄のウエイトレス、カルメンをマニの従姉妹として送り出したのだ。果たしてマニの運命は?しかし、物語は意外な方向に進んでいく・・・・ |
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私評:「あんたには負けない」「甘く見ないで」・・・ペネロペ・クルス、通称ペネ子の魅力爆発。何だかんだいって私は「オープン・ユア・アイズ」以来、彼女の作品は劇場で見てるんですよ。今回も完全にペネ子が目的で見に行ったのですが、映画自体もすごく面白かった。天国は白黒のパリ、言葉はもちろんフランス語。地獄は英語。そしてこの世はスペイン語。(ちなみに天国行と地獄行を決める裁判所はラテン語)。だからこの映画には4カ国の言葉が行き交うのです。ペネ子はもちろん英語とスペイン語。もうひとりの主演ヴィクトリア・アブリルはフランス語とスペイン語を使い分けるのです。なんてインターナショナルな映画なんだ!(笑)しかし、途中から物語りは意外な方向に進み始めます。そして意外な結末。そしてカルメンの意外な秘密も・・。でも、私的にはペネ子がカンフー・ファイティングに合わせて踊るシーンを見れただけでもすごく幸せ。その他共演は「8人の女」のファニー・アルダン、「アモーレ・ペロス」のガエル・ガルシア・ベネラルという多彩な取り合わせ。面白かったです〜。 | |||
フィアー・ドット・コム | 監督:ウィリアム・マローン | 出演:スティーブン・ドーフ、ナターシャ・マケルホーン | |
Fear Dot Com | 2002年 アメリカ映画 | ||
地下鉄の駅をフラフラと歩く男。彼は線路の上で遊ぶ真白な髪の少女を助けようと線路に降り電車に跳ねられ死んでしまう。彼が握り締めていた「恐怖のインターネットサイト」の本。そして目からの出血。事件を担当したマイクは「ドクター」と呼ばれる連続殺人鬼との戦いを続けていた。ドクターは女性を捕まえては彼女たちを殺害し、しかもその殺害現場をネットで公開していたのだ。そんな時、警察署に一人の男が連行されてきた。ドイツからの留学生の男は目から血を流しながらわめき散らしていた。彼の家を捜索するとそこには女性の死体が・・。しかも、連行された男も48という数字を壁に残し死んでいった。保険局のテリーとこの事件の死因を探っていたマイクは、誰もがあるインターネットのサイトを訪れていたという事実を掴む。訪れたものは48時間で死んでしまうというFeardotcom.comというサイトを、マイクも見てしまう・・・・・ | |||
私評:Don't you play with me, Mike??・・・・昨年のファンタスティック映画祭で一度見ているので、今回2回目のこの映画。設定が「リング」に似ていることで、ジャパニーズホラーへの挑戦!みたいに言われていますね。正直、この映画のシナリオはあまり良いとは言えません。かなり穴だらけで、いまいち釈然としない点も多い。でも、この映画の面白さは二つの事件が意外な結びつきを見せることです。そして今や、誰もがやっているインターネットが、死の引き金になるというのが面白い!この辺りも「リング」っぽいと言えるかも?主演はアヤシイ映画にばかり出ているスティーブン・ドーフ。でも、映画の展開から行くと主役はナターシャ嬢の方なんですよね〜。殺人鬼のドクターを演じるのはスティーブン・レイ。彼は良いキャスティングでしたね。監督のウィリアム・マローンは「TATARI」の監督。スタイリッシュな映像は健在です。 |
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